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まいかさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 213
性別 女性
ホームページ http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/
自己紹介 正直、生まれは平成じゃないです。かなり、昭和なムード。昔みた映画を思い出しながらレビューしますので、記憶がずいぶんあやふやかも。なにか変なところがあったら、http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/のほうにツッコんでおいてください。

好きな女優
 「或る夜の殿様」の山田五十鈴、「近松物語」の香川京子
好きな男優
 「お茶漬けの味」の佐分利信
好きなキャラクター
 グレムリンちゃんとマシュマロマン

☆評価基準
10点:超絶。ほとんど奇跡。
9点:傑作。かつ大好きなんだもーんッ!
8点:傑作だし、好きデス。
7点:素晴らしいです。好みの映画です。
6点:まあ、悪くないと思います。
5点:なにか気になるものはあります(~~;

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1.  タイタニック(1997) 《ネタバレ》 
予算的にも技術的にも、よくこれだけの映画が撮れたなあと感心します。脚本も緻密に練られていますが、そのうえで演出や特撮などを完全に制御できなければ、これだけの作品を実現できませんよね。 商業的にみると、レオナルド・ディカプリオのスター性や、セリーヌ・ディオンの歌の素晴らしさや、ラブストーリーの魅力だけでなく、歴史的な悲劇への関心もあるし、巨大なスペクタクルへの興味もあるし、ヒットの条件がいろいろ揃ったオールマイティな作品。さらに実際の映画を見てみると、メカニカルな部分の面白さがあったり、歴史科学ドキュメントとしての面白さがあったり、当時の欧米社会の内実を垣間見せる側面もあったりします。 タイタニック号は上流階級の人々を乗せた豪華客船というイメージがありますが、じつは三等旅客や船内の肉体労働者は貧困層だったわけで、上部と下部に分かれた船の構造がそのまま欧米の社会階層を象徴しており、そこからロミジュリ的な身分違いの恋が生まれ(デッキに立つヒロインを見上げるディカプリオは、バルコニーに立つジュリエットを見上げるディカプリオに同じ)、最後にはあらゆる階層の人々がもろともに沈んでいく物語的ダイナミズムが構成されています。 ヒロインが船首に立ってバックハグされるシーンが有名ですが、じつは物語的にいうと船首よりも船尾のほうが重要で、ヒロインは最初に自殺を試みたときにも最後に船が沈むときにも、同じ場所で貧しい絵描きの男に助けられます。船体が縦になった後、いったん真っ二つに折れて、ふたたび縦に沈んで船尾が没するまでの実際の経緯を、天地がひっくり返るようなスペクタクルや人々が海に落下していく恐怖だけでなく、主人公の男女が生き抜くドラマティックな物語にもうまく活かしている。 前半では、貧しい絵描きの青年が偶然にも船に乗り込んで上流階級の人々に交わっていく恋と冒険とが描かれますが、後半には、斧で手錠を断ち切るホラー展開とか、浸水する船内でのパニック展開とか、縦になった船から人々が転落していく恐怖とか、明るい星空のなかを沈んでいく船体のスペクタクル的な美しさとか、長時間の映画にもかかわらず最後まで見どころが多い。細かい点でいうと、汚い唾を飛ばしたり、コートを盗んだり、ポケットに宝石を入れたり、企業利益を重視する社長が船長に会話したりするシーンまでが、すべて後半への伏線として繋がっていく脚本も上手いです。 主演の男女以外にもたくさんの登場人物がいて(実在の人物がかなり含まれるらしいのですが)、それぞれに最後の選択が違っており、そこからキャラクターの背景も浮かびあがるのですね。とくにヒロインの婚約者の男と従者は、ピストルを振り回したり、幼い子供を利用したりして、それまでにも横暴な方法で成り上がった米国の一族であることが想像されます。
[地上波(字幕)] 10点(2023-07-02 01:04:24)(良:3票)
2.  ラ・ラ・ランド 《ネタバレ》 
何度か見たけど、見るたびに泣ける。最初から泣けてしまう。 夢を追う自称ジャズ通の男と女優志望の稚拙な娘。けっして才能があるのでもなければ、血のにじむ努力をするわけでもない。どこにでもいるような、安易に夢を追うだけの若者。でも、夢追い人なんて、みんなそんなもんですよね。だから、みんな星屑のように消えていく。 エマ・ストーンは、ある意味で思慮の浅い尻軽女です。ライアン・ゴズリングは、ラテン音楽やロックまがいのジャズを軽蔑してるけど、じつはモダンジャズについてさえ半可通でしかない。でも、多かれ少なかれ、ほとんどの夢追い人なんてそんなものですよね。だからこそ、哀しくて愛おしい。 この映画の音楽やダンスが「全然たいしたことない」といって嘲笑する観客もいたようですが、そもそもこの映画は、非凡な音楽家やダンサーを描いているのではなく、哀しいほど平凡な夢追い人の姿を描いているにすぎません。 主人公の幼稚さや安易さが納得できないと感じる観客もいたようです。かりに「品行方正な努力家が成功する話」なら応援できるのでしょうし、「幼稚な勘違い野郎が挫折する話」なら自業自得だと笑えるのでしょう。しかし、この映画はそのどちらでもない。勧善懲悪的な見方をすれば、さぞかしモヤモヤさせる話なのだろうと思う。菊地成孔に倣って「ジョン・レジェンドが善玉なのか悪玉なのか分からない」といった議論を展開したくなる気持ちも分かります。 しかし、これは勧善懲悪的なストーリーではありません。むしろ、安易な夢追い人であるがゆえに、誰しもが辿らねばならない哀しい人生の標本です。この映画を愛する人々は、きっと自分と同じような夢追い人の安易さと、幼なさと、哀れさを愛し、その逃れようのない後悔にやるせなさを感じるのです。 女優志望の娘は、さしたる才能がないにもかかわらず、無能なジャズ男に愛されたおかげで、いっときの女性としての輝きを放ち、それによって幸運をつかみ取ります。…成功なんて、そんなものですよね。けっして努力が報われるのでもない。能力が正しく評価されるのでもない。たんに運の巡り合わせだけで成功するのです。いくばくかの才能はあったかもしれませんが、それを引き出してくれたのは、才能のない男の見境のない愛だったのです。 おまけに、彼女は幸運のなかで結婚するのですが、そのときに選ぶのは、自分を愛して輝かせてくれた夢追い男ではなく、おそらくは業界の大物です。これも必然だといっていい。最初から決まっていたかのような運命です。 運命は自分で切り開くものだと信じている観客にとって、これは納得のいかない結末かもしれません。しかし、これは自分で運命を切り開く物語ではなく、むしろ自分たちの力ではままならない運命に翻弄される、無力な夢追い人の物語です。 音楽がとても美しい。そして、ハモサビーチの桟橋で出会った老黒人夫婦のダンスと同じように、哀れな夢追い男女が二人だけの世界で踊り続けた下手っぴいなダンスが、たまらなくたまらなく愛おしい。
[DVD(字幕)] 10点(2020-01-12 21:58:09)(良:3票)
3.  悲情城市
映画史に叩きつけたとんでもない傑作。と同時に、侯孝賢の作品の中では特異なほど密度の濃い映画でもある。彼の他の作品に比べて、ここには画面の外側に広がりを感じさせるような余裕がないし、時間の流れの中にも、ゆったりとしたものを与える余裕はない。それどころか、逆にこの映画の画面と時間の枠の中には、実際に描かれるエピソードをはるかに超えた大きな歴史の背景や出来事、あるいは壮絶な人間の関係や感情が、すべてギッシリと詰まっていて、映画の重圧感が物凄いです。まさに「歴史」というものの映画的表現があるとすればこれだと思わせるような力技。個人的には『童年往事』のようなゆったりとした作品のファンだったけど、さすがにこれは、好みの問題がどうあれ傑作だと考える以外にありませんでした。呆然とさせられるくらいに映画が凄かっただけ、エンディングがS.E.N.S.の音楽だったのは安易な感じがしたけれど。
[映画館(字幕)] 10点(2007-09-07 03:38:47)
4.  フェイシズ(1968)
これまた見たこともないような映画。「大好き」な映画とは思わないんだけど、この傑出した大胆さには10点をつける以外ありません。本当の意味で自由な大人の映画。カサヴェテスのような「自由」を追求することはわたしには怖くて出来ない。これがアメリカ人の自由なのかナ。とてつもなく強くなければ、こんな映画撮れない。こんな話も描けないし、こんな自由で大胆な映像も撮れない。ゲラゲラ笑ってバカ騒ぎをしながら互いに相手の心理を探りつづける渇いた空虚な光景は、ある意味サスペンスそのものなんだけど、こんな冷徹な世界の断面の切り方が、地球の人のものとはわたしには思えない。ほとんど近寄りがたいぐらいの突出したエネルギーが満ちあふれてます。わたしには、異様なこの映画の光景が、宇宙から来たものじゃないかとすら感じられる。   
10点(2004-03-31 16:59:32)(良:2票)
5.  遺言
牧牛や羊の、カランカラン・・、という鈴の音だけが映画を通してずうっと鳴ってる。大地の上で、人や動物が生きて、そして死んでいく。それだけ。それだけなのにボロボロ泣ける。あまりの映画世界の静かさに、一歩まちがうと眠ってしまうけど、最後まで見た時には、深い感動が押しよせてきます。わたしが考える、ほんとうの傑作中の傑作。
10点(2004-03-20 11:42:38)
6.  神の道化師、フランチェスコ
純粋で崇高な映画だなーと思う。フランチェスコが変な権力者にお尻ペンペンされてるシーンは、本来、聖人が侮辱されてる場面なんだから、見てる側は憤慨したり同情したりすべきなんだろうけど、どう考えても笑ってしまう。観てる人の反応を惑わせてしまうリアリズムが、全体としてかえって映画の崇高さを増してます。ロッセリーニの最高傑作。
10点(2004-03-18 10:29:24)
7.  サロメ(1987)
楽しいっ!これをきっかけに、ケンちゃんの映画にハマッた。いまだにケンちゃんの映画の中でいちばん好き。でも、彼の映画は意味不明なものも多いなかで、これがいちばんストーリーも分かりやすいし、初心者でもふつうに楽しめる映画だと思う。絢爛で、最高に淫靡なエンターテイメント!!この映画を見たときにはじめて、“映倫のぼかし”がジャマだと思いました。
10点(2004-03-18 01:20:09)
8.  吾輩は猫である(1936)
わたしが見た喜劇映画のなかで最大の傑作。 素人みたいな役者のヘタウマ演技、間のぬけた枠のとり方、べつに面白くないエピソード、中途半端なストーリー・・。何もかもがとても開放的です。すべてにおいて映画的な価値を作ることにコケてる。その「コケ具合」が、全体として、この作品になんともいえない可笑しみを生み出させてしまってます。いまなら学生サークルでつくった素人映画だといわれても、だれも疑問に思わないかも。でも、これを作ってるのは山本嘉次郎なのデス。この上達されたコケ映画を見てしまったらエド・ウッドなんかたぶん要らない。間のぬけた画面の、中途半端な位置で、登場人物がそばをすすってるシーンは、喜劇映画のひとつの到達点だと思いました。
10点(2004-03-18 00:57:11)
9.  ロシアン・エレジー
死ぬほど美しい。ていうかヤバイ。 「これって奇跡を目にしてるんじゃないか」と思うような瞬間が、上映中に何度かあります。ソクーロフの「ロシア主義的」なアブナさを批判する人がいるけど、たしかに、この美しさはそのぐらいアブナいと思う。
10点(2004-03-18 00:25:01)
10.  欲望のあいまいな対象
面白い!大好き! 円熟したブニュエルの、だれもが楽しめるようなオールマイティな魅力がたっぷりです。あいかわらずナンセンスなエログロギャグもふんだんに散りばめられてて、ブニュエルの臭いは至るところに感じられるけど、筋立てはまともだし、普通の人でも、ちゃんと楽しめる映画だと思います。キャスティングにも展開にも、とても創意があふれてて、それにくわえて、どこかラテン的な情感や哀歓も感じられて、味わいぶかい。もちろん、革命思想的な過激なムードも、まだまだ各所でとぐろを巻いてます。(~~)
10点(2004-03-17 23:47:33)
11.  ざくろの色
これは衝撃的だった・・。見たこともない映画。血とザクロでできた紙しばいみたい。“めくるめく”とはまさにこのこと。その色と音と、幻惑的な動きのリズムに圧倒される。でも、あのころシネヴィヴァンでなんども予告編を見たけど、じつは本編以上に、予告編のほうが衝撃だったし、魅力的でした・・。(~~ゞ  
10点(2004-03-16 21:33:43)
12.  暗殺の森 《ネタバレ》 
町山智浩の解説付き上映で観てきました。 なぜイタリア人のベルトルッチが、フランスや中国やアフリカやインドを舞台にして映画を撮ったのか、以前から疑問に思っているのですが、この映画ではイタリアとフランスが対比されているので、この後にフランスで「ラスト・タンゴ・イン・パリ」が撮られた理由もそのことに関係するのかもしれません。また、町山智浩の解説によれば、この映画は「ラストエンペラー」の構造によく似ているとのこと。つまり、みずからをファシズムの檻の中に閉じ込めた男の物語なのですね。のみならず、同性愛や舞踏会のモチーフの使い方もよく似ているとのことです。 また、町山は「ベルトルッチが師匠ゴダールのような左翼になりきれなかった」との趣旨の話をしていました。たしかにベルトルッチは(思想的にはファシズムに否定的だったとしても)、なんだかんだでファシズムのグロテスクな美しさを浮かび上がらせている面があるし、複雑ながら結果的にファシズムと同性愛の親和性を認めてしまっているようにも見える。つまり、思想的にはファシズムを否定していながら、美学的には肯定しているように見えるし、政治的倒錯が性的倒錯に重なり合うファシズムの美学的誘惑から逃れていないように思えるのよね。逆にいうと、ゴダールは、その種の「美学」に懐疑的だったのでしょう。 これがベルトルッチの最大の魅力であると同時に危うさでもあり、そういうところは日本の鈴木清順にも近い気がします。ヴィットリオ・ストラーロの映像も、そういう側面から批評的に捉えねばならないのでしょうし、坂本龍一の音楽だって、やはりゴダールの批評よりはベルトルッチの美学に近いんじゃないかと思います。さらにいえば、これはベルトルッチのセクハラ問題とも無関係ではないかもしれない。 でも、作品の素晴らしさは傑出しているし、ジョルジュ・ドルリューの音楽もヤバかったし、やっぱり9点はつけたくなります。
[映画館(字幕)] 9点(2023-11-11 10:06:11)
13.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
この映画の怖さは、スペクタクルとしてのゴジラの怖さもさることながら、それにもまして戦争のさまざまな記憶を蘇らせるところにある。それはたとえば特攻の記憶であり、被爆の記憶であり、孤児や娼婦があふれかえる敗戦後の悲惨や混沌の記憶です。 庵野秀明の「シンゴジラ」は岡本喜八を模範にしたと言われるけど、おそらく今作が模範にしたのは関川秀雄&伊福部昭による「ひろしま」や「わだつみの声」、あるいは今村昌平の「黒い雨」や山崎自身の「永遠の0」、あるいは「火垂るの墓」や「この世界の片隅に」のような諸々の日本の戦争映画だったのではないかしら? ちなみに「わだつみ」とは一義的には海神のことですが、それは同時に戦没学生の比喩でもあります。 これほど陰鬱な作品とは予想していなかったので、よくもわるくも驚きました。浜辺美波がこれほど荒んだ女性の役で登場するとも思わなかった。おそらく今作は、ゴジラを題材にした戦争映画の極北でしょう。つまり《初代ゴジラの精神に戻る》というのは、たんに「人間の味方」から「人間の敵」に戻るという生易しい話ではなく、「怪獣エンタメ」から「社会派作品」に戻ることを意味するわけですね。そのことを思い知らされた。 もし米国で怪獣を題材にした戦争映画を作れば、痛快な勝者の物語になるでしょうが、日本でそれと同じことをすれば、おのずと敗戦の陰惨なトラウマを呼び起こすことになる。今作のように《初代ゴジラの精神》にとことん振り切ってしまうと、おそらく一定の割合の観客は、その戦争の記憶の陰鬱さや心理的負担に耐えきれず、結局は「いつもの怪獣エンタメに戻してほしい」「痛快な怪獣バトルが観れればそれでいい」と言い出すはずです。したがって、日本のゴジラは、たえず「怪獣エンタメ」と「社会派作品」の間を往ったり来たりするしかないでしょう。 なお、浜辺美波がゴジラよりも不死身だったり、クレーンが折れても船が転覆しなかったりするのは、ツッコミどころではありますが、ごく常套的な観客サービスであって、とくに作品の欠点とは感じませんでしたし、神木隆之介をはじめとする演者の芝居も上出来で、演出上の欠点もとくに感じませんでした。  追記:ゴジラとワダツミについての細かい話は自分のブログにでも書きます。 音楽もかなり怖かったです。伊福部の「ダダダン、ダダダン」を裏返したような音型のミニマル。佐藤直紀は何か賞を獲るかもしれませんね。
[映画館(邦画)] 9点(2023-11-10 13:42:24)(良:3票)
14.  エル・シド 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 勧善懲悪的な図式ではなく敵味方が入り組んだ関係で、しかも敵対関係が和解に転じたりもするのだけど、映画はあくまで叙事的な描写にとどまっているため、人物(とくに妻シメンや恋敵ロドリゴや王アルフォンソ)の心境の変化などが分かりにくく、主人公の「正義」の所在がどこにあるか把握しにくいのも難点。さらに妻のシメンは、主人公を愛したり憎んだり和解したり出家したり投獄されたり出獄したりするのですが、その変遷も唐突で分かりにくい。もっとテーマを絞ってコンパクトな物語にまとめれば分かりやすくなるのだとは思う。 …とはいえ、あえて明快な物語やテーマに収斂させないところに、かえって叙事詩的な崇高さがある気もするし、実際、すべてのカットの絵画的な美しさに酔ったり、ミクロス・ローザの音楽に胸を踊らせたりしてるうちに、長尺の上映時間が思いのほかどんどん過ぎていって、それを堪能するのに3時間が長すぎるとは感じませんでした。イタリア映画の魅力とハリウッド映画の大作主義が幸福な形で結合しており、格調の高いスペクタクルはほんとうに中世の一大歴史絵巻を見ているみたい。どうやったらこんなものが作れるのかと驚嘆してしまいます。これを見てしまったら、その後の「スターウォーズ」なんかが安っぽい二番煎じにさえ思えてくる。前半の頑なな表情のソフィア・ローレンも、まるで神秘的な中世宗教画のように見えました。 あらためて主人公の正義について考えてみると、あれは単純な「忠義」ともいえないし「愛国」ともいえないし「信仰」ともいえない。異教徒を救う一方で恋人の父を殺したりもするし、祖国に身を捧げながら王の悪行を弾劾したりもする。それでいて、憎しみを乗り越えるべく和解にはつねに開かれている。これは「善政主義」ともいえるし、寛容な「国際主義」「平和共存主義」ともいえます。その点が現代的なテーマにも触れていると感じました。いつの時代にも肉親こそが憎み合うのだし、平和主義者こそが国内では売国奴と呼ばれてしまったりする。愛国右翼や宗教右翼を倒して左翼どうしが手を結ばなければ国際和平は実現しないのかもしれません(ちなみに、この映画でキリスト教とイスラム教の共存しうる世界を描いているアンソニー・マンはユダヤ人です)。 それにしても、これはGYAOに限った話かもしれませんが、音楽の音量に対してセリフの音量が極端に小さかったのは、リマスターの技術的なミスでしょうか?
[インターネット(字幕)] 9点(2023-02-24 15:25:31)
15.  悪名(1961) 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。とても面白かった。9点! 序盤はケンカばかりで、ただのむさい男たちのチンピラ映画かと思いましたが、女が登場するたびに画面が華やいで色香を増していき、終わってみれば意外なほどモダンな映画だったという印象です。 最初に出てきた中田康子はムンムンと下卑た色気がありすぎでしたが、次に出てきた水谷良重は、不美人ながらも物腰に"しな"があって、とても絵になっていた。とくに二階から屋根づたいに逃げるシーンはスペクタクルとして秀でていました。監督の田中徳三は「手錠無用」でも勝新をピンクのベッドに寝かせていましたが、水谷良重との寝起きのシーンでもピンク色を巧みに使って、勝新を可愛らしく見せていました。中村玉緒も美人じゃないけど可愛かったです。映画のなかでも実生活さながらに婚約してたのね(笑)。 工場の煙突が見える広い空き地の決闘シーンもカッコよかったし、自動車の撮り方なども粋でおシャレだったし、京都嵐山で女二人と別れるシーンも美しかった。 勝新は、同時期の「座頭市」では五十歳前後の貫禄ある中年男を演じてるのに、「悪名」では二十歳そこそこの小柄なあんちゃんを演じてる。まったく別の人間に見えるのがすごいです。角刈りでヒョロっとした田宮二郎はエンピツみたいでした。 シルクハットも含めてヤクザの親分たちはみんな弱っちく、ラストも大乱闘になるかと思いきや、女親分とサシで決着をつけて終幕。それがまた粋な終わり方で洒落ています。なお、地中海を舞台にしたイタリアのマフィア映画みたいに船で島を往来するわけですが、なぜ舞台を因島にしたのか調べてみたら、あの女親分が実在の人物だったのですね。
[インターネット(邦画)] 9点(2023-01-23 22:18:45)
16.  眠狂四郎 人肌蜘蛛 《ネタバレ》 
GYAO の無料動画で視聴。安田公義はこれで4本目。ここまでひとつもハズレなし。 序盤の奇天烈な構図やクローズアップやカット割りは、ちょっと鈴木清順を思わせるところもあるし、イタリアの変態モンド映画みたいでもあるし、荒涼とした射場の風景はマカロニウエスタンのようでもありました。そんなふうに序盤はかなりバタ臭い色彩とキワモノ・ゲテモノぶりを前面に出していた。 ところが、終盤になると、むしろ抑制された文体で乾いた表現に徹していて、まるで古典文学のような味わい。これがたまらなく渋い!そしてやっぱり美しい。内容はどう考えてもただのエログロなのに、不幸な出生を負った者たちの無残な最期を描き切って、文学的な風格を感じさせて終わるから、たんなるキワモノ映画には思えなくなるのですよね。途中までは7~8点のつもりでいましたが、最後には9点つけようと思わされました。 紫も須磨も、やはり狂四郎に惚れてしまうのですね。脚本的には、一閑が家武を殺してれば済んだ話じゃないの?…って気もするけど、そこらあたりが欠点になるかどうかはよく分からない。
[インターネット(邦画)] 9点(2023-01-18 10:13:33)
17.  緋色の街/スカーレット・ストリート 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。あまりの素晴らしさに打ちのめされました。これほどの傑作が2012年まで日本未公開だったとは! 設定そのものがとても魅力的ではあるものの、中盤まではサスペンスなのかコメディなのかハートフルストーリーなのかまったく予測できません。 ぎりぎりのところまでコメディタッチの洒落たサスペンスと見せかけて、最終盤で一気にノワールへと変貌する!これは結局のところ、しがなくも実直で勤勉だった中年男が、その善良さにもかかわらず転落するという報われない物語。今でいうところの「イヤミス」ですね。ラストシーンで「神の子は今宵しも」や「ジングルベル」などのクリスマスソングが流れるところも不気味で秀逸。べつにイヤミスが好きなわけではありませんが、この作品にはすっかり魅了されました。脚本がきわめて巧みで、とくに終盤部分で関係者の証言がみごとに一致するところなどは唸ります。 なお、原案はルノワールの「牝犬」だそうですが、タイトルを「Scarlet Street」に変えたのは、もしかしてゴシック小説の「緋文字(The Scarlet Letter)」やコナン・ドイルの「緋色の研究(A Study in Scarlet)」に関係してるんでしょうか?  追記:きっとNYのグリニッジ・ヴィレッジが赤煉瓦の町だから「スカーレット・ストリート」にしたんでしょうね。逆にいうと、そのために物語の舞台を、原作のモンマルトルからグリニッジ・ヴィレッジに変えたのだと思う。
[インターネット(字幕)] 9点(2022-09-18 02:48:37)(良:1票)
18.  水の中のナイフ 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 何ですか、この傑作は!水の上のロードムービー?めちゃくちゃスリリングで面白い!ポランスキーってこんな映画を撮る人だったの?当時の彼は弱冠29歳。これが長編デビュー作って非凡すぎる。しかも社会主義下のポーランドでこの自由で清新な作風!ポーランド映画というよりも仏ヌーベルバーグの文脈と言ったほうが正しいかも。 轢き殺す寸前まで意地を張り合った金持ちの男とヒッチハイカーの若者。その後もヨットの上で意地の張り合いが続き、手に火傷を負ったり、マストによじ登ったり、湖に飛び込んだり…。やがて妻の略奪と殺人もどきにまで発展する。 男が若者に語った「バカな意地っぱり船員」の逸話が、最後はブーメランのように男自身にも返ってくる。男どうしの些細な意地の張り合いと見栄の張り合いが無用な破滅をもたらしかねないという寓話。まあ、当時の東西冷戦だって似たようなものだったかもしれませんよね。
[インターネット(字幕)] 9点(2022-09-16 18:58:53)
19.  洲崎パラダイス 赤信号 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。すばらしい。他には見たことがないような非凡な傑作。  これは「入り口」の物語なのですね。赤線地帯の内側の様子は一コマも出てきません。何もかもが外側のギリギリの地点で繰り広げられる。そのことが、煮え切らない付かず離れずの男女の物語を何ともいえずスリリングにしています。 主人公の二人は突出して魅力的というわけでもないし、物語がそれほど面白いわけでもなく、原作を読んでみようという気にもならないけれど、やはり内と外の境界という絶妙な設定が効いていて、そこを出入りする人々や、その周辺で働く堅気の人々や、土砂を運ぶトラックや、水辺でボート漕ぎに興じる人々や、たわいもなく遊ぶ子供まで、すべてがスリリングに見えてしまって飽きません。 撮影所の技術に裏打ちされているとは思うけれど、まるでヌーベルバーグのようなしなやかさと軽さもあります。川島雄三の技ありの一本。
[インターネット(邦画)] 9点(2022-08-25 03:21:02)(良:1票)
20.  大魔神 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。素晴らしい!美しい傑作。 大映時代劇の様式的なドラマの文体こそが、特撮部分のリアリティを裏支えしています。「ゴジラ」や「ウルトラマン」のようなサイエンスフィクションの場合、特撮のスペクタクル部分に比べて、ドラマ部分が説明的すぎて弱いのが常だし、その結果としてリアリティを損ねがちだけど、そういう意味では本作の神話的なリアリティのほうが優っている。怪物の15尺(4.5メートル)という大きさにも臨場感と緊迫感があり、巨大すぎてかえってドラマ世界から乖離してリアリティを損ねたりはしていない。鉄鎖を用いて怪物の捕縛を仕掛けたり、枯れ木を乗せた荷車を燃やして火攻めにする戦法なども、よく考証されていると思う。 結末はやや呆気なく、欲をいえば城下の平穏な暮らしが再建されるまでを描いてほしかったけれど、84分であっさり語り終える簡潔な筆致こそが叙事詩的なリアリティにふさわしいのかもしれません。市川雷蔵の「眠狂四郎」や勝新太郎の「座頭市」のような時代劇美学と比べられることもあるでしょうが、わたしはむしろ溝口健二の「雨月物語」や「近松物語」に匹敵するような叙事詩的な説得力を感じました。
[インターネット(邦画)] 9点(2022-08-12 00:11:34)(良:1票)
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