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もっつぁれらさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 542
性別 男性

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1.  キートンの蒸気船 《ネタバレ》 
オープニングのパンニング。 小川のボートを捉えるカメラが左へと移動し、2隻の蒸気船を写し出す。 ここが映画的でカッコイイなぁと思ったのですが、前半ではあまりコメディとしての面白い個所が見つけられなかったです。 船長である父親とキートンが出会うシーンで「きっと俺より大きくなっているに違いない」と、ギャグの前フリをしっかり立てているからには当然その期待を越えなければ二流以下である訳ですが、ネームプレートを見て察知し乳母車の中の子供をあやしている姿に唖然としているだけでは、ギャグとしてはちょっと物足りなさがあるように思いました。 帽子を選ぶシーンもやはり今ひとつという印象で、他にも抜きん出た見どころは少なかったのですが、やはり最後の空撮ならぬ風撮のスケール感は見事と言えるでしょう。 前半でチョロっと出てきた水にドボンと落ちるのは、あれはあくまでも前フリ。 留置所ごと流されて父親がアップアップしたり、建物のセットを吹き飛ばすほどの風量ってどんだけデカい扇風機使ってんだというくらいの大胆なクラッシュでしたし、大木ごと飛ばされるシーンもクレーンで吊ってる事は分かり切っていながらも楽しく見れたと思います。 最後の牧師さんを救うというオチが若干弱かった感じもあり、6点止まりとさせて戴きます。
[映画館(字幕)] 6点(2015-01-03 21:31:54)
2.  バグダッドの盗賊(1924) 《ネタバレ》 
ストーリーに込み入った所がないので、頭を空にして観ることが出来る痛快冒険活劇と言えるでしょう。 空飛ぶ絨毯や怪獣とのバトルなどファンタジーの要素満載で、非常に楽しめる作品だと思います。 ダグラスが冒険に出たプロットで、海底で導かれるように岩の隙間に入ってみると豪華絢爛な部屋に綺麗な女性がいたという場面ですが、澤登翠さんの活弁によると竜宮城にたとえられておられましたが、日本の浦島太郎の物語に類似した話が外国にも存在するという事なのでしょうか。興味深い所であります。
[映画館(吹替)] 8点(2014-12-30 00:06:50)
3.  東への道 《ネタバレ》 
145分ver.を観たのですが、所々で本筋とは関係ないようなシーンが混じっていたこともあり、少々長く感じられたと思います。 長尺フィルムなだけあって、全部が良い保存状態であるというわけにはいかず、欠損している箇所がいくつかあり、そこに静止画を挿入したりスポークンタイトルでそのシーンの説明文を挟むなどといった方法で欠損部分を埋め合わせていました。 ストーリー全体に関して言えば、お決まりとも言えるリリアン・ギッシュの悲恋もののお話ですが、リチャード・バーセルメスの好演も奏功して、後半のサスペンスの雰囲気などは特に見ごたえのあるものになっていたと思います。 「私は人の妻にはなれないの」と部屋に逃げ込み、愛を受け入れることが出来ずにいるリリアンの姿には胸を打たれましたし、またリリアンが突然現れた雇い主に家を出ていくよう迫られる場面で、リリアンが自身を捨てた男を睨みつける時、二人をワンフレームに収めたショットから彼女が鬼気迫る表情で真実を暴く姿を捉えたカメラが、特に目立った仕事をしているわけではないものの、ここは自分に対し強烈なインパクトを残しました。 ラスト、家を飛び出して流氷の上に崩れるリリアンと彼女を探し当て助けにいくバーセルメス、そして眼前に迫る滝。このトリプルショットのクロスもさすがグリフィスという感じで見事だったと思います。 最後の結婚式のシーンで、コミカルなシーンが入ってきてしまったのが玉にキズで、このラストの大事なシーンはジョン・フォードやムルナウの傑作に見劣りしてしまって残念でしたし、よく考えるとタイトルの「東」も解釈が難しいです。
[映画館(字幕)] 7点(2014-07-19 15:42:15)
4.  死の銀嶺 《ネタバレ》 
山が舞台となるだけあって、雪崩だ滑落だといったピンチとなる場面が勿論出てくるのですが、そういった境遇におけるスリルを描くのは本作ではあくまで二の次という印象で、それよりも、クラフト博士ら三人組と学生パーティーたちの登攀する様を時間を割いて丹念に描いていたところが特に自分にとっての好きなポイントです。 また、彼らの登攀シーンもさることながら、救助隊が松明を掲げて夜の雪山を歩くシーンや、崖の隙間に落ちた登山者を救出する場面での松明に照らされる氷柱の艶やかさなど、映像に関して言えば単純に山全体をカメラに収めただけという一般的な山岳美だけに留まる事のない熱意のようなものを感じました。 それと、公開当時には目を引いたであろう空撮ですが、あれだけ何度も旋回していたにもかかわらずその時の映像が一度も出なかったのがちょっと疑問なところですが、序盤で空からシャンパンをプレゼントするというシーンが伏線のように機能していたり、また、最後にクラフト博士が遺書を残して山に残るというラストもしんみりと心打たれるものがあり、良かったと思いました。
[映画館(字幕)] 7点(2014-04-29 23:54:37)
5.  燈台守 《ネタバレ》 
これはもう、映画そのものと言える程の神懸かり的な作品のように思えますが、スタートダッシュでやや遅れをとったのが非常に勿体無い感じがします。 丘の上で恋人と語らう回想シーンで、マッタリとした雰囲気の中で犬に噛まれるという非常に切迫感を欠いた描写がどうにも腑に落ちず、後半を知った後で考えると、この辺りでもう少し工夫が出来なかったのかと悔やまれます。 見どころは後半全部! 息子に狂犬病の症状が発症する辺りからのスリルはもう、ヒッチコックを凌ぐほど。 まず、舞台となる灯台が岬の先端ではなく、離れ小島にポツンと建っているというのがミソ。密室殺人の舞台をイメージさせるロケーションが実に良く、早い段階で灯台の上端から下を見下ろすショットを出したのも後々の切迫感をより増幅させることに一役買っていると言えます。 面白いのは、灯台から発せられる光が命の象徴として描かれているというストーリー設定。 “映画は、光と影が織り成す物語”という言葉を聞いたことがありますが、映画における光と命の象徴としての光。このオーバーラップが非常に面白い。 陸地で待つ女たちが光が消えたのを見て危機を察知する。救護船で灯台へ向かう乗組員が光を失った途端に混乱に陥る。全面漆黒の画面の中、一か所だけが白く映るほんのわずかな光に、とてつもなく偉大な力を感じずにはいられませんでした。 そして、灯台の中での親子のせめぎ合いのスリルも素晴らしい。 息子のいる上階へ向け階段を昇る父親が、途中で歩みを遅くする。たったこれだけの物凄くシンプルなアクションがグッと緊張感を増すような印象を与えるなんて、今まで何本も映画を観てきたのに、こんな簡単な事をこの今になって初めて知ったような気がしました。 更に、月明かりに照らされる息子の表情が弱い光で陰影が出て恐怖感が増幅される中での親子の格闘。そこに、救護に向かう船と岸壁に打ちつける波しぶきのショットとを重ねたトリプルクロスは、扉を狂ったようにはためかす風や荒波を起こす風の援護射撃も加わり、どのように表現してよいのか分からないほどの壮絶なシーンとして強烈に印象に残りました。 灯台という題材をもって光を描き、また扉を動かしてコマ送りのような演出をするなど、まさに“映画そのもの”を体感したような気分になりました。
[映画館(字幕)] 8点(2014-02-15 19:26:39)
6.  笑う男(1928) 《ネタバレ》 
自分が観た限りでの話になってしまいますが、1920年代から30年代前半辺りの映画って手足がないなどの障害を持った人がスクリーンに出てくることが他の年代よりも多い気がするのですが、そういった人が生み出す狂気というのが妙に怖く、本作で言えば主人公の表情が奪われたという設定が単なる恐怖以上の何かが宿っているような印象さえ感じます。 また“盲目のヒロインが出る映画にハズレなし”は、自分で考え出した法則なんですけど(笑)、この映画のヒロイン、ギイの健気にギンプレーンを愛する姿が丹念に描かれている一面も兼ね備えていたりと、恐怖ありメロドラマありの非常に特色のある作品だと思いました。 言うまでもなく、本作の見どころは主人公ギンプレーンを演じるコンラート・ファイトの作られた笑いの表情で、どのシーンのどの表情を見ても口角の位置に寸分の狂いも感じさせないほどの正確さを保っているのも凄いですし、映画の後半になるとギンプレーンが宮廷に呼ばれ、着ている服装もその場に沿ったものになるのですが、道化師の衣装の時よりもかえって表情に凄味が増したように見えてしまったりして、ここは独特な雰囲気を醸し出しているように思えます。 弁士の澤登翠さんも「ヴィクトル・ユゴーらしい」と仰っていたように、文芸作品らしい風格を随所に感じましたし、また狼のオモー君も割と控え目なポジションではありますが、最後も敵将の喉元に噛みついて海に沈め、しっかりと自力で泳いで船に戻ってきて船のクルーに引っ張り上げられていたり(ここのショットをしっかりと見せるのがポイント)といった名脇役振りを発揮しているのも楽しいですし、いろいろと見どころが多い映画だと思いました。
[映画館(吹替)] 7点(2014-02-01 01:14:51)
7.  四人の息子 《ネタバレ》 
それにしても、何とハートウォーミングな映画だろうと、観終わってからの充実感は比類ないほどで、序盤の家族5人揃っての食事のシーンや、極めつけのラストなんかはもう、どんな言葉を使って表現すれば良いのかと書きあぐねてしまいます。 まぁ、さすがに息子全員がハッピーという訳にはいかず、4人のうちの3人が戦死してしまうという暗い物語ではある中で、訃報の手紙を渡しに来た郵便屋の後に犬が足元を追いかけて来ていたり、受け取った母親も奥の部屋で悲しみに暮れるところでは窓から光が差し込んでいたりして、辛い場面でありながらも完全にはそうはならずに描いているところに暖かみを感じる事が出来ました。 終盤で、母が国を出てからが多少の中弛みが出てしまいましたが、これも当時のアメリカの社会を描いていたと捉えれば良いシークエンスであると言えるでしょう。 また、自分が今まで観てきたジョン・フォードの映画では感じることのなかったカメラワークのバリエーションの多さも本作の魅力の一つなのですが、オープニングで郵便屋の歩く姿を背後から捉えるショットや、アメリカ兵として出兵したヨゼフが最前線を進むシーンでも無駄にカメラが揺れることなく上手く撮られているところなんかも丁寧な移動撮影が見られますし、前半辺りで息子二人が乗った汽車が動き出すシーンでは汽車の方にカメラを据えた撮影で挑んでいたり、ブランコの回想シーンでも同様な事が行われていて(これはたぶん背景と人物の合成)工夫が感じられて面白いと思いました。 その一方で、徴兵された兵士たちがゾロゾロと出兵するシーンを母親が家先から見つめるシーンなどのいくつかの場面においては、家と母親を左側に据えての決まった位置からのフィックスで撮られており、“ホーム”である事を印象付けるような意図が感じられると思います。 そしてこのレビューの最初に述べましたが、ラスト、孫を抱く母親の神々しさがこの映画の最も美しく、格別であり、スペシャルな場面(言葉が見つからない…汗汗)でしょう。 あの、母親の顔を照らす光の当て方がもう超絶的に素晴らしいとしか言いようがなく、ここは本当にプロフェッショナルとしての力量をまざまざと見せつけられるようなワンシーンでした。
[映画館(字幕)] 7点(2014-01-25 22:35:03)
8.  キートンの隣同志 《ネタバレ》 
壁に空いた穴を通して手紙を渡しているから、てっきりお互いに会う事が許されないカップルなのかと思いきや、後ろにはちゃんと扉があったりするところで笑ってしまいました。 ロープにぶら下がって隣の家の中に入り込むっていうネタは、隣り合った空間を効果的にギャグに生かすという、これこそがまさにキートンのお家芸!キートンの本領発揮!と言える必殺技でしょう。 しかし、自分が言うまでもなく本作の最大の見どころは3人肩車じゃなかった、3人立車であります。 もはや、サーカス団員もビックリのウルトラ曲芸! 凄いのはキートンだけじゃなかった。脇役やキートンに担がれるヒロインまでもが超人級の活躍をしている事に驚かされます。 練習でヒロインが何度落ちただろうかと想像するだけで彼らの映画作りに対する熱意と並々ならぬ苦労が伺えるというものです。
[映画館(字幕)] 7点(2014-01-05 02:28:16)
9.  キートンの化物屋敷 《ネタバレ》 
確かに、前半の銀行ネタは面白くないのですが、お化け屋敷に入ってからが真骨頂。 階段が一瞬で滑り台に変化するネタをはじめ、椅子に座ったら肘掛けに抱きしめられたりする人間椅子ネタや、バラバラになった人間を足から組み立てていって頭をのせると人間となって動き出すシーン、二人のガイコツコンビが女の人からラリアットを食らうシーンなんてそれだけで十分笑えるし、彼女がどこから湧いてきたのかも意味不明で尚更面白いです。 ギャグの寄せ集めのような雰囲気もあって、ラストでどう落としてフィニッシュに持っていくかという所でちょっと苦労が垣間見れますが、一つ一つのギャグがどれも面白いものばかりでしたので自分にとっては好きな作品の一つです。
[映画館(字幕)] 7点(2014-01-05 02:01:25)
10.  キートンのゴルフ狂の夢(囚人13号) 《ネタバレ》 
前半のゴルフのシーンで、カップイン寸前のところで犬にボールをかっさらわれるシーンが本当にアッという間の出来事で笑ってしまって、しかもその犬がボールをコレクションしていたりして、ここでもクスッとなってしまいます。 敵をバッタバタと続けざまに倒していくシーンなど普通に面白いギャグが出ていた中で、必見はズバリ所長室で大男と戦うシーンでしょう。 キートンが後ろに吹っ飛ぶアクションは、出来るだけ飛ぶ距離が大きい方が当然笑いも大きくなるわけで、よく見ると殴られた瞬間に5,6歩後退りしてから自力で後ろにダイブ!という何とも滑稽極まりない姿・・・なんですが、平面のスクリーンに奥行きを感じさせようとする努力の跡が感じられるのはちょっとした注目ポイントで、キートンが殴られたことによる笑いと同時に「う~ん、流石キートン!」と唸ってしまうような要素とが入り混じっていて、非常に面白いシーンです。 「この時代にしては凄い」だとか、「ゥン十年も前の映画でナンタラカンタラ」とかいう表現でレビューするのって馬鹿げていると思っている自分としても、今回だけは言わせて頂きたい。 カメラを動かしてポジションやアングルを変えてみようとする発想がようやく根付いてきたこの時代に、画面に奥行きを出そうとする意識を持っていたのは、キートンが時代の先を行っていたということの表れでしょう。 3D映像で奥行きなんかエンジニアの腕ひとつでどうにでもなる現代の映像作家たちには、是非ともこういった工夫を凝らす姿勢を見習ってほしいところです。
[映画館(字幕)] 7点(2013-01-13 12:49:10)
11.  キートンのマイホーム(文化生活一週間) 《ネタバレ》 
これはキートン映画の中でも1,2番を争う面白さ。 後ろをチラ見する運転手から逃げようと、車を乗り移るシーンはキートン映画ではありがちなアクションなんですが、「おぉ~スゲェ!!」という驚きと「相変わらず馬鹿やってんなぁ~」というホッコリした笑いとが湧いてきて、やはり毎度のように楽しませてくれます。 驚きというのが大事なポイントで、笑いというのは多かれ少なかれ驚きを含んでいなければならないわけですので、そういう意味ではとても良く出来た笑いと言えるでしょう。 完成した家で繰り広げられるネタに関しても、コメディ映画の中だから許されるような常軌を逸したものばかりで、これまた良い。 キートンを追いかけていた男が2階のドアから外に吹っ飛ぶシーンの大ジャンプには大爆笑ですし、また細かいところですが、家の外に据え付けられていた洗面台の壁をクルッと回すとただの外壁になった所も、すき間が全く見えなくなるほどの完璧な設計だったのが妙に面白かったです。 家の構造も、風で回転したり樽を下に入れて移動出来たり・・・って、あの家の基礎はどうなってんだ?とか言うのも全部コメディだから許されちゃう(笑)。 やはり何と言っても、最後にホッと一安心させておいて油断した瞬間に大クラッシュ!っていうのが、超がつくほどの絶妙のタイミングなもんだからもう爆笑必至。 上映時間わずか20分の小品で最後に上手く笑わせてくれれば、どんな映画でも例外なく面白くなっちゃいます。 これがキートンの初期の作品だと知って、観終わってからも驚きを与えてくれるキートンには、改めてその凄さを再認識させられました。
[映画館(字幕)] 9点(2013-01-11 01:10:47)
12.  ラヴ・パレイド 《ネタバレ》 
全体的に間が悪い印象。 特にミュージカルシーンではそれが顕著で、室内のシーンが多いというのもあるかもしれませんが、唄い終わるまでカメラはほとんどフィックスの状態で、画面が切り替わるのも1度くらいしかないため、ややこじんまりとした感じを受けましたし、ルイーズ王女の歌声が喋る時の声とかけ離れていたりしたのも自分としては気になってしまい、どうもミュージカルを撮るのに慣れていないんじゃないかという気がして、後世に作られたミュージカル映画と比べるとどうしても見劣りしてしまいます。 むしろ、小間使いたちのミュージカルシーンの方が歌と同時にモーションが加わったということもあってか、彼らのシーンの方がより引き立っていたように感じられました。 ストーリーの中でも、カットを入れるタイミングが遅いことが何度かあったりしてテンポが悪く感じましたし、物語の中身においても、女王の婿になれば苦労するのは目に見えていたこともあって特にそれを裏切るような変化もないまま終わってしまい、観ている間は退屈に思えました。 また、結婚直後の女王夫婦の部屋を覗いて様子を実況したり、婿にあてた手紙の追伸の内容もルビッチらしからぬ品位のなさを感じました。
[映画館(字幕)] 5点(2012-08-22 22:34:27)
13.  港々に女あり 《ネタバレ》 
何となくっていうレベルの話ですが、船乗りを演じる男って何故か格好良く見えるんですよね。 この映画の主人公は見た目はワイルドで無骨な感じに見えるんだけど、出会った女の事を手帳にメモるなんてマメな奴だなぁとか、女に声を掛けに行く前に毎回キチッと身なりを整えたりする所なんかもどことなく滑稽じみていて見ていて笑っちゃう。 また、一度女に惚れるとのぼせ上がって人の話が耳に入ってこなくなったり、人に対して裏表がなさそうな性格や情にも厚い人柄もしっかりと描かれていたりして、まさにヴィクター・マクラグレンを見るための映画という風にも言えそうですね。 よく“○○を見るための映画”と美人女優が出ている映画に対してそのような事がよく言われることがありますが、この映画もその男版って感じ。 マクラグレンが話しをする時、相手の両肩を持って目を見て話すシーンが相手を問わず何度も出てきましたが、どんな内容であれその時その時の気持ちが表情に現れていたのが印象に残りました。 酒場での喧嘩のシーンも見るからにアドリブで迫力があって見応えがありましたし、そう言えば、船乗りを引退した後の生活についても試算を手帳に書いてましたね。
[映画館(字幕)] 7点(2012-08-19 22:01:31)(良:1票)
14.  キートンの恋愛三代記 《ネタバレ》 
オープニングが面白かったのは現代編。「時は現代。speed,need,and greedの時代。」と洒落た説明のすぐ後、キートンが乗った車が溝にハマって大クラッシュ!彼女の家に着くと、どちらの男が娘の婿に相応しいかは預金の額で決めるという。恋敵の出した通帳がFirst National Bankだったのに対しキートンはLast National Bankと、数字を出さず尚且つ笑いも取るというこちらもまたお洒落な表現だなぁと、ここはキートンのアイディアに一本取られました。ちなみに、男が強かった石器時代とは異なり、妻の権限が大きくなっているのもポイント。 3つの時代それぞれに面白いシーンが沢山出てきましたが、やはり何と言ってもローマ時代のあの大掛かりなセットと、その中で行われるベン・ハーばりの馬車レースが自分の中ではこの映画一番のハイライトです。 この他にも、落とし穴に落とされたキートンがライオンと出会うシーンがありますが、今までのキートンの映画では本物の動物しか出てこなかっただけに、ネイルケアをしてもらった後に握手をしたり、キートンが上に引っ張り上げられる時には手を振って挨拶をしていたりして、一瞬自分の目を疑ってしまいました。
[映画館(字幕)] 8点(2012-03-18 01:49:25)
15.  キートンの船出(漂流) 《ネタバレ》 
冒頭から、船に激しく揺られるキートン。 外に出てみると、子供二人に奥さんが。キートンもついに結婚して一家の主になったんだなぁとか思っていると、その主の手で自らのマイホームを全壊させてしまう。 このシーンをよく見ると、船体で壁を壊したところまでは家はそのままですが船が家から完全に出たところでガラガラドッシャーーン!!・・・と、何とも絶妙なタイミング(笑)で崩れ落ちる様はもはや職人芸。 船の作りも、橋をくぐるための工夫が施してあったりとなかなか面白く、また最初に橋をくぐるシーンなんかは橋脚が重なる角度でカメラが据えられているために、壁に激突するんじゃないかと思わせるように撮られていたりと、こちらも芸の細かさが見てとれます。 後半の荒波の場面では、ムルナウの某傑作には及ばないものの、荒波に揉まれながら奮闘するキートンは相変わらず面白いです。 最後、全く見知らぬ土地に上陸してしまい、「Where are we ?」と奥さんに聞かれ、「Damfino」と答えなかったのはエライ。一家の主としてそれはないか。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2011-12-31 11:40:51)
16.  嵐の孤児 《ネタバレ》 
グリフィスの映画はどの作品を観てもそうなのですが、カメラワークが良い意味で普通すぎていつもコメントするのに困る。 あまり斬新な撮り方をせずに、見る側である自分が、ここが見たいというところにスッとカメラが向いたりする親切さやカットバックのタイミングやテンポの絶妙さなどによって、作り手の思惑通りに素直に感情が伝わってきたりハラハラドキドキしてしまったりと、ごく自然にそういった感情が出てしまうものだから、その当たり前のことを違和感なくサラッとやってのけるテクニックをどうしても無意識のうちにスルーしてしまいがちになってしまいます。 例えばラストシーン。リリアン扮するアンリエットが今まさに処刑されようとしている時、アンリエットが処刑台にセットされるカットと放免状を手にしたダントンの馬群とがクロスカッティングで進行するのですが、ここの場面でハラハラドキドキ感を味わう事が出来るのは、まぁ普通として、実はそれよりもだいぶ前からクロスカッティングが始まっていたことに、家に帰ってレビューを書く時点になってから気がつきました。 また、ルイーズの歌声にアンリエットが耳を澄ませるシーンも、いよいよ再会か!などと思い、気が付いたら普通に胸の鼓動が高まってしまったりするシーンも、互いのカットを上手くクロスさせていて、やはりこのシーンもこの映画を語る上では外せない名シーンでしょう。 生き別れが物語の中に出てくる映画は、自分にとってはかなりの確率で感動を覚えてしまい、このサイトのジャンル区分の一つに付け加えて欲しいくらいなのですが、この映画でもやはりすれ違いでやきもきさせられた上での再会だったので、最後は余計に感動してしまいました。まぁ、いわゆる常套手段ではありますが、この場面でもまた難なくグリフィスにやられたという感じでした。
[映画館(字幕)] 7点(2011-09-19 15:34:43)(良:1票)
17.  ファウスト(1926) 《ネタバレ》 
ファウスト役のエスタ・エクマンという人は初めてお目にかかりましたが、自分が今まで観てきた映画の出演者の中でも、間違いなく一番のハマリ役というほどの風貌で、この映画に出るためだけに生まれてきたんじゃないかとまで思えてきます。 ストーリーは、悪魔に魂を売り若さを手に入れたファウストが多難の末に元の老人の姿に戻る展開ですが、悪魔に魂を売るきっかけというのが自己満足などではなく世を救いたいという理由からであり、また、若さを手に入れたことによって、ファウストではなく自分が愛した相手に不幸が訪れるというダブルの不条理劇が、一筋縄ではいかない面白さが出ていて良かったと思いました。 前半のあたりで、書物を燃やすシーンやメフィストとの絡みのシーンは非常に迫力に満ちていて見応えがありましたが、それ以降はややトーンが下り調子になってしまったのが今一つといった感じがありましたし、最後のシーンも、出てくる言葉が読めてしまい、ストレートで普遍性のあるストーリーが好きな自分でも、さすがにここだけはクサいなぁと思ってしまいました。〔柳下美恵さんの伴奏付きで鑑賞〕
[映画館(字幕)] 7点(2011-09-16 23:52:51)
18.  アッシャー家の末裔 《ネタバレ》 
この映画、もう何から何まで凄い。 自分が観たサイレントの中でダントツの怖さです。 まず、アッシャー家の当主ロデリックと妻マデリンの妖しさは何とも言えない。特に、ロデリックの方は、映し方によっては至って普通の紳士のようにも見えるのだけど、独特のカメラワーク故のものなのか、ストーリー上の背景がそう見せるからなのかわからないですが、目つきがヤバかったり頬がこけていたりというような“いかにも”という風貌ではなく、内側から滲み出てくるような不穏な雰囲気があり、取り憑かれたような感じになりました。 序盤で、馬車に乗っている付き添いの人がアッシャー邸を指差すワンショットからインパクト絶大で、更に、ロングで捉えた館の恐怖感たるや、本作か「サイコ」かと言える程の様相です。 また、至るところに空や水辺や木々など、自然を撮ったショットがふんだんに使われており、雲の動き、水のざわめく感じ、枝の揺れ方などでただならぬ雰囲気を表現していたり、妻の棺桶を馬車に載せて墓まで運ぶシーンのカメラの揺らし方なんかも抜群で、どのショットを切り取っても凡百の映画とは一線を画す印象です。 妻の絵が完成に近づくにつれて本物の方から生気が失われていくというのもストレートで良い感じに恐怖感が出ているし、岩の間から白い布が見え隠れするのも冗談みたいに怖い。最後に館が燃えてしまうのも古典的なラストで良い。 レア物なので、機会があるかはわかりませんが、是非また観てみたいです。
[映画館(吹替)] 8点(2011-09-13 23:54:51)(良:2票)
19.  素晴しい哉人生 《ネタバレ》 
どこかで似たようなタイトルの映画を観たと思ったら、原題まで本当にソックリで面白い。 直訳すると、「人生は素晴らしいんでないかい?」といったところでしょうか。 映画の舞台となっているのが、戦後間もない貧しい時代の最中で、家族全員食べるものもままならない程の生活。手に入るものといえば、カブの葉の部分くらいなもんで、飼っている鶏がたまに卵を落としたり芋が食卓に出ようものならもう大宴会。 そんな世の中だから、盗みをしないと生きていけない人も沢山いる。そんな困難にもめげず、それでも笑顔を絶やさず生き抜こうとする人々それぞれの人物像とそれに呼応するかのようなコメディタッチの映像が本当に元気にさせてくれます。 それだけでなく、レバーソーセージを分けてくれた客の心遣いなど心暖まるシーンもあって、ネオリアリズモで見られるような暗さが微塵もないのがすごく良いです。 ひとつの家族を描いたとても小さな物語だけど、人々の逞しさや優しさが描かれ、些細な喜びも大きく感じられるような映画でした。
[映画館(字幕)] 7点(2011-08-04 00:28:53)(良:1票)
20.  山の王者 《ネタバレ》 
まぁ、何と言うか、非の打ち所がないんじゃないかってくらいの、もう本当に良く出来た映画だと思います。 中でも特に凄いのが仮面舞踏会の後に起こった出来事が翌日に明かされるシーンなのですが、マーカスが家に帰った時に部屋の中で起きていた状況と翌日に交わされた会話を基に、観ている我々は真相を推理していくのですが、全ての台詞が伝わるわけではないというサイレント特有のディスアドバンテージを逆手に取って、凄くスリリングなシーンに仕上げているところがまずひとつ、そして、裏の部屋で話を聞いていたシリアに画面が移ったとき、カメラがズームアウトしてシリアの見つめるベッドが大きく映し出されたショットで推理の回答を提示するという、とってもニクい演出に痺れました。 誰に勧められる訳でもなく、自ら杯を重ねていったマーカスは自業自得と言えるでしょうけども、観ている我々としては、ここは広い心でもって彼の悔いる気持ちを受け入れたいところ。 また、スリリングと言えば、最後の二人が追い詰められるシーンも緊迫感があって食い入るように見てしまいましたし、神に祈りを捧げ雪崩に向かって歩を進める二人の後ろ姿はもう涙が出てしまう程です。 “人は誰でも過ちを犯すもの”このように言えるくらいの寛大さがあれば、やはり傑作と言える作品だと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2011-08-02 00:05:21)
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