1. 椿三十郎(1962)
用心棒の事実上の続編だがダシール・ハメットの影響もある独特な手法のギャング映画要素のあった用心棒と比較すると、もっと単純な昭和のヒーローモノの装いのあるチャンバラ活劇となっている。独自の男の美学こそ受け継がれているが、ストーリーも演出もちょっとポップすぎるかな。 [DVD(邦画)] 7点(2012-04-24 00:46:17) |
2. 用心棒
世界を自戒に陥れた観念的傑作羅生門、ヒューマニズムの最高峰といわれる生きるから七人の侍、日本刑事サスペンスの金字塔天国と地獄までオールジャンルに傑作を世に出した黒澤明。対してこの作品は決して名作とか呼ばれる部類ではないただの娯楽時代活劇だが、斬新な視点とスリルのがある中にもコメディタッチでユーモアを交えて描かれたエンターテイメント作品。ハリウッドのオールジャンルのヒットメイカービリー・ワイルダーしかり、名監督にして名脚本家はこのようなセンスが問われる作品でこそ真価を発揮する。その視点で言うと黒澤の真骨頂はこの作品とも言えるだろう。 [DVD(邦画)] 9点(2012-04-17 17:15:32) |
3. 荒野の七人
七人の侍は207分もの長大な大作として有名だが、エッセンスを取り入れつつシンプルかつスピーディーな展開で西部劇に意訳リメイク。登場人物の背景やキャラクター性が薄まってしまっていて戦闘シーンも軽い映画に仕上がっているこれを見て感じることは、七人の侍はあれほどの長さだが無駄なシーンなど無かったのだなということ。しかし侍の精神もあればカウボーイの精神もあるわけで、アメリカ人に訴えかけるヒロイズム、そして西部劇としてはこれが正解なのかもしれない。 [DVD(字幕)] 6点(2012-04-11 07:30:14) |
4. 天国と地獄
《ネタバレ》 その捜査方法、刑事ドラマとしてのプロットは今ではどれも当たり前のもの。しかしそんなものが当たり前であるはずがなかった時代にそれを取り入れ、当たり前としてしまったのは他ならぬこの作品である。原作を独創的に発展させたプロットは今でも古臭く感じない素晴らしいもので、特に引渡しの場面の映像美と「音」は鳥肌モノ。皆さん口を揃えておられるように後半部の冗長な張り込みシーンや追跡がもっと綺麗に纏まっていれば文句なく満点だったであろうが、社会の暗部や日本の風俗を描く事を重視した監督だけに仕方ないところか。今となってはある意味映像資料でもあるのであえて減点はしない。それよりもその群像は役者やエキストラが演技をしているというのを忘れてしまいそうになるくらいに、実際そこに市民が居て、刑事が捜査しているように感じるようなリアリティに溢れている。その意味では60年代にしてモノクロ映画というのも、パートカラーの印象的なシーンという副産物も含め作品の完成度を高めるのに効果的に働いている。非常に強く印象に残るサスペンスドラマの傑作にして日本の全ての刑事ドラマの原点とも言うべき金字塔。 [DVD(邦画)] 10点(2012-04-09 08:06:12) |
5. あなただけ今晩は
この時代にここまでぶっ飛んだコメディがあったとは…社会派映画的要素もあったお熱いのが~やアパートの~と比較するとまとまりに欠けるが、それでもしっかりオシャレに落としてくるのは、どうしても下品になりがちな今のぶっ飛び系コメディには無い要素。ワイルダー作品の外れの無さには感服する [DVD(字幕)] 7点(2012-03-12 09:21:51) |
6. 鳥(1963)
どうもスリラー部分が断片的で連続的な緊張感がない人工的なホラーのように感じてならない筋書き通りのストーリーだが、ただの合成じゃなく動物を扱ったスリラーとわざわざ困難に困難が積み重なるようなことにあえて挑み、当時不可能であったことを可能にした技術は評価したい。ただしキングコングやゴジラみたいに今見てもそのデキが信じがたい特撮もあるし、ヒッチコック自身もサイコなど今でも十分通用する一流のサスペンスを残しているだけに相対的に評価は落とさざるを得ないのは仕方ないところか。 [DVD(字幕)] 6点(2011-06-15 22:31:33) |
7. 日本のいちばん長い日(1967)
2年後に大戦勝を扱った日本海大海戦で東郷と乃木という陸海の2大偉人を演じる三船と笠が、敗戦映画で阿南陸相と鈴木貫太郎首相を演じているのが皮肉に思えた。史実を扱った歴史物で高い構成力と迫真の映像で理解するだけではなく楽しめ、それもハリウッドにはないタイプのエンターテイメント大作と評価できるが、ただ唯一鼻につく点が、まるで反乱軍の連中を気が狂った狂乱者のように描いていることだ。彼らが罪を犯したのはもっと作戦行為に基づくものであったと思えるのだ。そもそも彼らは軍人であり、しかも洗脳的と言ってしまっていい教育を受けていたのだから、狂信と狂乱は違うことを区別しなければならない。まるで彼らが(気狂いかのような)異常なテンションで、逝ってしまっている目をしていたように描くのはやりすぎである。確かに陸軍の考えは今思えば完全な暴走であるが、彼らは本気で勝つつもりいたのだ。彼らを異常者だと非難するのは筋違いで、そもそもそのメンタリティが無ければ日清戦争にも日露戦争にも負けていただろう。 [DVD(邦画)] 7点(2009-07-03 18:33:05)(良:3票) |
8. 太平洋の嵐
1960年というと既に「もはや戦後ではない」戦時の空気も残しておらず、また撮影技術も発達前というこのような映画を撮るには中途半端な時期で戦時中のハワイ・マレー沖海戦や、のちのハリウッド資本のトラトラトラと比べると、迫力のある海戦やリアリティの面で劣りどっちつかずの映画となってしまっている。ハワイ・マレー沖海戦のリメイクのようなシーンも多々あるが、むしろ昔のほうが出来がよかったかもしれない。ハワイ・マレー沖海戦では「本物」だった海軍内部の描き方(甲板上での朝礼など)はただの怖い顔したおっさん達の軍隊ごっこに見えるし、海軍の重量感の無い模型や吊り糸が見える勢いのクオリティでしかない特撮は円谷としては最低の出来に近いだろう。太平洋戦争を追っていく小説としての内容は申し分ないのだが完成度は低いといわざるを得ない。 [DVD(邦画)] 6点(2006-05-16 17:33:16) |
9. 東京オリンピック
2001年宇宙の旅に影響を与えたのではとすら思わせる演出手法と映像美なのではあるが、日本の戦後国際復帰と高度成長を語る上での一イベントとして東京五輪を捉えた場合の映画としては良いのかもしれないが、記録映画としてはどうしても冗長さが気にかかる。後世の人間が見ると考えた時にも(当時の競技選手に関すること、当時の注目度など)説明的な物が少なすぎ、商業化前の五輪でブブカやカール・ルイスといったスーパースターが登場するわけでもなく、目玉はアベベと東洋の魔女くらいなもので、ある程度の予備知識がないと退屈してしまうかもしれない。スピードを競っている競技にも関わらずスローモーションを多用したりといった演出にも評価が分かれるところであろう。短距離や投擲競技なら選手の緊張感に満ち溢れた顔、競歩ならコミカルさ、競泳なら清々しさ、自転車なら日本の田舎風景の中を凄いスピードの自転車が列を成して通過していくミスマッチの滑稽さなど各競技の魅力を捉えた演出などには素晴らしいセンスがあるし、あくまでも記録映画を記録映画に終わらせなかったことは評価できるものの、単にスポーツ大会として東京五輪を見る場合、エンターテイメントとしてはNHKなどのスポーツドキュメンタリーのほうがよほど楽しめる。 [DVD(邦画)] 6点(2006-01-31 21:18:54) |
10. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
圧倒的な力同士が対峙した冷戦構造でさえ、ただ一人の正気を失った人間の暴走で無残に崩れ去るという結末を痛烈な皮肉をこめて描いた。命令する側、される側の誰もが不審に思いながら止める事ができない権力の誤作用。あまりに正直なオチが付いていることはともかくとしてこの手の警鐘映画は事件が去ってしまうと虚無なプロパガンダ映画となりがちだがこの作品は警鐘映画には留まっていない独特のオカシサがある。一番の皮肉はB52が今もなお現役で飛んでることか… [DVD(字幕)] 7点(2005-12-16 19:42:10) |
11. 招かれざる客(1967)
父親は娘が黒人と結婚するからというより、リベラルだと信じてきた自分も結局内にはステロタイプ化された見方が潜在していて、このような状況に意図せずとも拒否感を感じることにこそショックを受けているように思える。単に白人黒人の人種差別ではなく、現在も過去も普遍的に社会に存在するそれこそこの作品の本当のテーマではないかと感じた。黒人であるメイドが誰よりも結婚に拒絶を示していることが彼女が育つ過程で取り巻かれてきた環境を表しているようで象徴的。 [DVD(字幕)] 9点(2005-12-07 16:18:41) |
12. アパートの鍵貸します
個々のエゴが絡み合う社会派映画をさらりとしたコメディタッチに仕上げるワイルダーはさすがだ。ゴマすり、権力、不倫、かなわぬ三角関係など現在のテレビドラマの基本が既に多く盛り込まれていて、退屈するはずがなかった。馬鹿コメディだった「お熱いのがお好き」とは違い笑いを狙うジョークもウィットに富みすぎていて逆に関心してしまった。例えば皮肉も感傷も決別も全て「毎年フルーツケーキを送るわ」というセリフひとつで表してしまうセンスに脱帽。 [DVD(字幕)] 9点(2005-12-05 14:09:41) |
13. 女王陛下の007
シリーズ第6作。今回はとにかくスタントとカメラマンが良い仕事をしたとしか言いようが無い。凍結した道の上でのカーチェイス、車相撲やスキーチェイス、ボブスレーチェイス、ロープウェイでの綱渡りとアクションがバラエティに富すぎ。印象的なラストシーンまで含めて第2作と並ぶシリーズ最高傑作のうちの一つでしょう。第2作よりも機知に欠けていたので2作目よりは点数を低くしてありますが並ぶほど面白い作品です。ボンドが単発代打になったが特に問題なし。スキー場で感じるあの白々広々とした清涼的な開放感に溢れる作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2005-11-29 19:23:40)(良:1票) |
14. 大通りの店
ナチスの政策に関して、アウシュビッツをケバケバしく描いた映画などよりもある意味ではリアルに感じられる。作中のセリフにも出てきた諸悪の根源は恐怖にあるというのを地でゆく映画で、それを強調するかのようなラストは少しやりすぎではと思ったが。ラストシーンでまず天井を映したり、後に手のひらを返すのを予期させるかのように冒頭からしつこいくらいに冷えた夫婦関係を描いたり、そして迫ってくる「その時」を諷示するかのように着々と完成へ向かう塔など、最初から最後まで常に先を暗示させるようなシーンを先行させており、製作者がこの作品で語りたいことの意図はよくわかる作りとなっていてその点は、先が読めるからつまらないというよりも逆に作品に引き込まれた。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-27 04:21:10) |
15. 007は二度死ぬ
シリーズ第5作。まさかの日本が舞台なのですが、コネリーらもジャパラッチに追い回されるなど苦労したようですね。無駄に相撲が出てきたり、使用目的不明の漢字が建物に貼ってあって謎の自己主張をしていたり、わけのわからない障子らしきものが立てかけてあったりとバカバカしい雰囲気の上、戦隊モノやヤクザモノによく使われる倉庫の屋上での格闘シーン(空撮)やゴジラのような地底基地などB級SF臭すら漂っているが、最近の007は他の作品も全体的に投げやりなので、アクションの迫力が「ロシアより愛をこめて」以来の出来になっていた分結構楽しめました。撮影も日本ということを差し引いてもこれまでで最も苦労したようで映像に迫力があります。作品のテーマは和洋折衷か?決して粗を探してはいけません。 [DVD(字幕)] 7点(2005-11-25 07:20:51) |
16. 007/サンダーボール作戦
シリーズ第4作。今回は水中格闘が全てのキモだがスピード感に欠ける上、みんな水中メガネをしてるので表情が読み取れず緊張感も伝わってこない。敵と味方も見分けにくくどうにもダラダラした印象。別に減点対象ではないが、ここ2作でボンドはただの情けない好色おっさんに成り下がってしまった。いや、それがウリなのか [DVD(字幕)] 4点(2005-11-22 02:18:24) |
17. 007/ゴールドフィンガー
《ネタバレ》 シリーズ第3作。ボンドカー登場。その辺のスパイグッズは相変わらず面白いがアクションに前作のような迫力もなく、そしてボンドが激しく弱い。いや、逆転グッズが出てきてピンチを作れる状況になったのはわかるけど、いくらなんでも弱すぎ。ボンドカーの秘密兵器も結局姑息な解決にしかなっておらず、無駄骨折っただけで最後は軽く大破してボンド拉致られとるし。まあ映画としては固まってきたので次回からに期待。 [DVD(字幕)] 6点(2005-11-18 18:59:38) |
18. 007/ロシアより愛をこめて
シリーズ第2作。ボンドカーの登場こそないが、いよいよ「Q」とスパイグッズが登場した。単なる冒険活劇だった第1作と作風が変わり、今回はヒッチコックの影響を強く受けたと思われるスリラー。列車の中での今の映画でも中々お目にかかれないほどのかなり迫力があるリアルな格闘が凄い。そしてどのように作用するのかと客の興味を引き付けていたスパイグッズでの一発逆転。ボンド映画独特の楽しさの一つがここで確立した。それだけに留まらずカーチェイス、ボートチェイスと盛りだくさん。第1作は「こんなものか」という感想だったがなるほど007は面白い。そしてこの作品はアクション映画の経典です。 [DVD(字幕)] 9点(2005-11-17 04:49:05) |
19. 007/ドクター・ノオ
記念すべき007第一作。まだ映画としての定型が定まっておらず、小説原作の映画にありがちな地味さを色濃く残す。007といえば「スパイグッズ」だがそれもまだ登場しておらず、絶体絶命の大逆転というのが無いので、銃撃に格闘にボンドはスーパーマンとして描かれている。のちの007の評価を知っていると「こんなものか」という程度の感想になるが、ボンドのキャラ自体は既にほとんど固まっており、非常に魅力あるキャラに仕上がっているため、続編を見ようという気にはさせられた。評価6レベルの映画ではあるがのちのアクション映画、スパイ映画に与えた影響や功績は大きいため+1しておく。 [DVD(字幕)] 7点(2005-11-17 04:32:23) |
20. マイ・フェア・レディ
元は名作舞台ミュージカル。ミュージカル映画の欠点と言えば、ここは早くストーリーが進んでほしいというところでミュージカルが始まり話が止まってしまうこと。この映画も歌曲自体は名曲揃いなのだが、ストーリー自体も傑作なので出来ればもう少しサクサク進めて欲しかったかもしれない。この手のストーリーはリアルタイムにこれを見なかった人間としては、もう後の作品で何度も見ているので、むしろミュージカルな所が新鮮で評価アップポイントなのだが、やはり2,3曲、ここで止めるかよというシーンがあった。そこはカットしたらメリハリがある流れの良い話になると思うのだが、500万ドルで権利を取得したワーナーの命運を賭けた超大作なだけにやりたいことをすべてやるのはしょうがないか。ちなみに個人的には下層階級の言葉を吐くオードリーのほうが好きだ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-08-31 17:05:46) |