1. ダンサー・イン・ザ・ダーク
基本的にビョーグの演技力・歌唱力に圧倒されたと言うのが第一印象です。息子のことを他人から見ると異常ではないかと思えるくらいの愛で包み込もうとする母親の自己犠牲的な姿、それと同時に身の回りの出来事をミュージカルという手段を通して空想することで受けとめようとする少女のような特性。人間の深層心理というのは単純でなく、様々な要素が複雑に絡み合ってパーソナリティを形成していくものだから、これはこれで一人の女性の生き方としては十分肯定しうるものだと思います。信頼・裏切り・理不尽な刑罰、一見不条理のように思える展開だけれども、これらに類似する出来事というのは、私たちが生活している日常でも十分起こり得るもので、何もすべてがすべて理屈で割り切れるほど単純なものでもないはずです。その点を考慮すると、この映画は十分現実的でリアリティーに溢れるものだと思います。他人のことを考えず、自分自身さえよければよいと言う「私」が氾濫する世の中、このように自己犠牲をしてまで愛するものに尽くすという生き方、考え方もあるというのは一考に値するものだと思いますし、それは否定も肯定もできないと思います。いろいろな角度から、考えさせられるテーマを与えてくれたこの映画はそれだけで賞賛する価値があるのではないでしょうか。 9点(2001-08-23 11:42:59) |