1. キートンの大列車追跡
《ネタバレ》 メカニックで言うとさすがに危うい。列車も大砲も、小道具一つに至るまで現代の感覚で見ると玩具のようだ。しかし、この発想とアクロバティックな動きは、この手作りの感覚でこそ驚きを増す。例えるなら戦前のプロ野球選手のバットやグローブの写真を雑誌で見たとき、(よく、このようなグローブで硬式球の弾丸ライナーをさばけるな・・・)と疑問に感じたことが、次々と、想像を遥かに超えた技術でもって、鮮やかに目の前で証明されるような感じがする。その卓越した技術と、それに裏付けされたこころざしの高さが、画面の中から煮えたぎっている。 [DVD(字幕)] 8点(2009-02-15 08:58:53) |
2. 戦艦ポチョムキン
《ネタバレ》 作られたというよりも、刻まれたというべきか。カメラにぶち込まれたのは、群衆がうごめく様を捉えた、数々の、そして圧巻のロング・ショット。そして嘆きや悲しみを、深い皺に刻み込んだかような人間の顔、顔、顔。何かが確実にほとばしっている。熱々だ。その上、この心理を揺さぶる技巧は充実し、更に女性や幼い子供や赤ん坊が犠牲になる様を強調しまくる。マグマのような、魂のサイレント。 [DVD(字幕)] 8点(2009-01-24 08:51:16) |
3. チャップリンの黄金狂時代
《ネタバレ》 約束をとりつけた歓喜の部屋ん中大暴れ、羽毛?舞い散る中、手袋を取りに戻ったジョージアと対面するシーンが最高ですね。すべてのギャグも笑えると言うよりも感動に近い。ずり落ちるズボンを必死に色んな方法で食い止めながらのダンスシーンなども、正直爆笑かと言えばそうではないのですが、とにか芸術性を感じまくると言うか、シーンの放つ光が全編・全然ハンパじゃない。 [DVD(字幕)] 8点(2007-04-01 00:00:54) |
4. キートンの探偵学入門
《ネタバレ》 ハイリスク、ハイリターンな上にハイセンス。自分の中のモノクロ、サイレントのイメージを根底から覆されたのがバスター・キートン!全部素晴らしいけど、特に暴走するバイクの疾走間、そして最初に映画内映画のアイデェアを発明した上にこんなラストで締めくくられては、後からやる人がとても太刀打ちできません。 [DVD(字幕)] 9点(2006-11-20 06:38:17) |
5. 肉体と悪魔
《ネタバレ》 映画がトーキーへの変換の中で今にも爆発寸前のエネルギーをブスブスと発しているとでも言うべきか、それ程もはやサイレントであって、そうでないかのような錯覚に陥る。ありきたりのコメントだけど、やはりあの序盤のガルボとジョン・ギルバートのラブシーン、芸術品とも言えるこのシーンに、僕はため息と興奮を覚えた。 [DVD(字幕)] 7点(2006-11-18 22:04:47) |
6. キートンのセブン・チャンス
《ネタバレ》 前半の細かなギャクを散りばめた展開も味わい深いですが、ギアが入った後半の圧倒的なこと!走って逃げて泳いで走る、そしてとにかく笑える。驚きと爆笑で満ち足りたこの鑑賞後の余韻。1920年代のこの作品を観ると、映画の進化とは一体何なのか?ということさえ考えてしまう。 [DVD(字幕)] 9点(2006-11-18 21:57:24) |
7. キートンの恋愛三代記
《ネタバレ》 正直爆笑と言うよりも圧倒と呼ぶに相応しいギャクの連打!ほとんどが後のアニメーションとも言えるアイデェアを実写でやり倒しているこの凄さ。映画に体をはっていることが恋愛に体をはっていることにオーバーラップし、もう様々な感情が揺さぶられっぱなしです!受身を取らずに地面に倒れる小さいカットに土俵際の攻防で顔面から落ちる若乃花を彷彿とさせる(逆か!)凄みを感じ、勝手な想像だけど些細なシーンで見せる気の遠くなるような訓練に裏づけされた超一級の芸の凄まじさ。キートン、カッコイイ! [DVD(字幕)] 8点(2006-11-18 21:56:17) |
8. ウィンダミア夫人の扇
《ネタバレ》 ルビッチ監督の本当に何と雄弁なサイレント。ゴシップ、ゴシップ、ゴシップ塗れの中で女が生き抜く術、それが凄い。アーリン夫人を演じるアイリーン・リッチさんの演技、 表情、まさに妖艶。それがラストのウィンダミア夫人との2ショットではまさに母の顔に。扇の使い方は流石で、これぞ映画製作の奥義ですか・・・。 [DVD(字幕)] 8点(2006-08-20 09:24:33) |
9. 巴里の女性
チャップリン凄い、このラストシーンは素晴らしい。いやぁ、このオープニングがあって、このラストがあって、音楽も含めた素晴らしい表現力があってこの映画の醍醐味がある。まさに本気汁出まくり、柱となるテーマの描き方と起承転結の模範でフィルムの保存状態もパーフェクト。 [ビデオ(字幕)] 8点(2006-08-06 23:51:36) |
10. 結婚哲学
《ネタバレ》 サイレントならではの魅せ方、そして現代の恋愛コメディの全ての要素が詰まった傑作ですね。とにかく俳優さんのサイレント演技がメチャメチャ巧い(時に愛らしい、時にふてぶてしいマリー・プレヴォーさんは、男からすると正に勘弁してくださいよぉ~!の真実味)ステキなシーンがいっぱいの愛すべき作品。旦那が一度はしらばっくれたものの、マンジューさんから克明に書かれたメモを見せられた後に、再度差し出された帽子を受け取るシーンなど、ニヤリどころじゃありません。う~ん、本当にこれぞ洗練の極み。 [DVD(字幕)] 9点(2006-07-29 21:44:54) |