1. 昼下りの決斗
《ネタバレ》 自ら法と秩序と契約に縛られる不自由な男であるジャッド。 彼は見えない物に縛られる事で、西部劇の主人公たる権利も奪われ、その象徴である銃を使う事も許されない。(ライフルは整備が行き届かず発射出来ない) そんな彼の傍らで一人の女性を巡り、何に縛られるでもなく、自由奔放に動き回るハモンド兄弟を代表する若者たち。 自由な若者達と最後に束の間の自由(ラストシーンで始めてジャッドの手で銃が機能する)を手にする不自由な老兵達との対決。 その場面がとてつもなく美しいのは、それが若者達の恋路を老兵が命をかけて守り祝福する事でも、若者と老兵が融和する事でも、自由への渇望を表現しているのでもなく、ジャッドが不自由を受容し、現金を届けるという契約=不自由をウェストラムが受け継いだからこそではないか。 そしてあらゆる物に縛られ西部劇的な存在からは程遠い不自由なジャッドを西部劇の象徴たる牧場と聳え立つ崖、山が後ろから支え受け入れたからではないか。 [DVD(字幕)] 8点(2017-03-10 21:22:11) |
2. 絞殺魔
《ネタバレ》 鏡を見るという行為は鏡の中の自分に見られているという事。この映画では、自分でもまだ気付いていない自分自身に気付かされるという恐怖を鏡という否応なしに現実を突きつける残酷な物の中で表現していた。 またラストの尋問シーンでは、二人の対峙する男の視線を1カットで捉えることで見ることは見られることと同義であるという、考えれば考えるほど恐ろしい事実を感じた。 [DVD(字幕)] 8点(2014-12-28 20:19:40) |
3. 拝啓天皇陛下様
《ネタバレ》 悲劇の中で喜劇を見せる。チャップリンの映画に通じるものを感じた。他人が見れば辛い状況でも間違いなく山田は人生を楽しんでいた。それは性格や環境のおかげともとれるが、結果が全て。人生において何が大切かを改めて教えてもらった。 また戦後の山田と棟本の姿から天皇陛下への手紙で締めくくるラストは戦争への流れは戦いが終わっても続くという事を端的かつ痛烈にあらわす見事なシーケンスだった。 [DVD(邦画)] 7点(2014-03-01 02:27:51) |
4. ある戦慄
《ネタバレ》 人間誰しも他人に犯されたくない弱い部分、大切にしているものがある。それを土足で踏みにじられたとき、立ち上がる事はできるのか。それでも見てみぬふりを決め込めるのか、お前もこいつらと同じじゃないかと画面の向こうから、知的な狂人ジョーとアーティが問いかけてくる。 密室、無音、モノクロという下地の上で絶対領域に踏み込まれる恐怖と誰もが潜在的に抱いている日常に潜む不条理な恐怖が描かれていた。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-13 16:00:48) |
5. 太陽はひとりぼっち
ただそこに在る無機質なものに囲まれ、一分一秒に一喜一憂しながら人生をかけ、いつ終わるとも知れない恋に、戸惑いを感じながらも身を任せる。 どれだけ愛しあってもその愛が無くなればただの他人。その人にとってはいないものと同じ。それでも、ただ無機質のように存在する事が出来ない為に、また他の誰かに認識されることを求め、生きていくんだと思いました。 [DVD(字幕)] 6点(2009-11-09 18:53:41) |
6. シェルブールの雨傘
《ネタバレ》 美しい音楽に、美しい町並みや家、衣装。そして美しいカトリーヌ・ドヌーヴ。話の筋は何でもないものだと侮っていたら、ガソリンスタンドでのラストシーンでやられました。美しい別れでした。しかも、その別れを演出したのが醜い戦争というのが、なんともいえません。 [DVD(字幕)] 6点(2009-10-24 21:03:42) |
7. コレクター(1965)
意外な終わり方でした。セリフよりも表情で何かを語る映画でした。 [DVD(字幕)] 5点(2009-10-24 00:35:46)(良:1票) |
8. 地獄に堕ちた勇者ども
人間の欲望は炎のように燃え続けるということなのでしょうか。カメラワークと色の使い方が印象に残りました。いい意味で気味が悪かったです。 [DVD(字幕)] 4点(2009-01-29 23:22:51) |
9. 欲望(1966)
《ネタバレ》 何かが起こりそうで結局何も起こらない映画。公園での写真の真相の追求から話が広がるかと思ったら、いっこうに話が広がらない。その不条理さや若者のあさましさなどが作品の魅力的な部分なのでしょうが、自分は映像は素晴らしいとは思ったものの中身に魅力を見出す事ができませんでした。そもそも中身なんて最初から存在しなかったのか?とさえ思う有り様。考えれば考えるほど作品の魅力から自分から遠ざかって行っているような感覚です。 [DVD(字幕)] 4点(2008-03-12 20:01:22) |
10. 何がジェーンに起ったか?
《ネタバレ》 姉の事故の真実を知りやっと素直になれ野次馬という名の観衆に囲まれ今までの念願だった注目を浴びながら、踊る事ができたのにあんな結果になってしまったのには皮肉を感じました。思えばジェーンは姉の事故を自分のせいだと思い悔やんで、その出来事から逃げるために幼児回帰をしていたのかもとも思いました。ずっと事故の真実を言えず悔やんでいた姉も然り、お互いのほんの少しのすれ違いが起こした悲劇であったのかもしれませんね。ずっと一緒にいて距離感が近すぎた為に異常なまで憎しみ合い、愛し合い、妬み合ってこの結果に至ったのかもしれないと思うと、何ともやるせない気持ちになりました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-21 19:36:37)(良:3票) |
11. ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生
《ネタバレ》 人類の破滅への始まりが描かれているロメロのゾンビ映画の一作目。ゾンビという認識も対処法も発生の仕方も分からない所から始まる話は、これから起こり来る恐怖への幕開けを感じました。ゾンビと一緒に焼かれるベンの姿の救いのなさがとても印象的でした。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-16 23:45:32) |
12. サイコ(1960)
《ネタバレ》 マリオンの横領から始まり幽霊屋敷の真相に至るまでの話の広がり具合や展開、構成は素晴らしいとしか言えません。前半は観客の意識をマリオンの視点に持っていき彼女の気持ちになって4万ドルを持って逃走するスリルを味あわせ、彼女の突然の死後からはその事件の謎解きや幽霊屋敷の真相に意識を集中させる。モノクロの画面や音楽の効果で恐怖感を増大させ、楽しみを種明かしのみにとどめずノーマン・ベイツの異常性を見せることによって彼の今までの人生や行動を観る人に想像させ、さらにそこで怖さやおどろおどろしさを感じさせる。全てが計算し尽くされているような映画で、その凄さに愕然としました。この作品を予備知識一切なしで観ることができた自分の無知さと運の良さに感謝します。 [ビデオ(字幕)] 9点(2008-02-16 10:44:02) |
13. 甘い生活
《ネタバレ》 どうでもいい人達のどうでもいい内容の話で全ての言動は、最後のポニーテールの少女の美しさや尊さを引き立たせるためだけの役目でしかありませんでした。入り江を隔てた隙間がマルチェロ達と少女の住んでいる世界の差。向こう側に行こうと思えば行けた距離と水位であったにもかかわらずマルチェロは行こうとしなかった。それによって、彼が友人の死や日頃の退廃的な生活によって人と向き合い会話をしようという、記者にとって大切なものを失ってしまったという事が表れていた気がします。また、死してもなお何かを見続けようとする魚と友の死から目をそらしドンチャン騒ぎをして現実を見ようとしなかったマルチェロの対比。悲惨な描写ばかりでしたが、ラストの少女の満面の笑みからはそれらの憂鬱さを全て吹き飛ばすほどの力強い美しさ、希望を感じ、それが唯一無二の救いになっていました。今作が初めて観たフェリーニの作品でしたが彼が「映像の魔術師」と呼ばれている理由が少し分かりました。 [DVD(字幕)] 5点(2008-02-12 11:03:16) |
14. 華氏451
《ネタバレ》 消防士の仕事が火を消すことではなく、本を燃やすこと。人や家が燃えていても消火活動はなし。そんなゆがんだ世界で、人はテレビでの情報のみを受け取りそれが正しい事だと思い込んで行動している。家にアンテナがなければ変人扱いをされ、読書は反社会的行動とされ自らで想像することすら許されない画一的で弾圧的な世界は、個人の自由や権利が無視された、全体主義社会への批判のように感じました。想像することの尊さや、自分自身の考えをもって行動することの大切さも伝わってきました。絵的にも家の中の数々の道具や消防車の出動シーン、一枚一枚燃えていく本には見事に魅せらました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-02-10 10:02:03) |
15. 2001年宇宙の旅
映画の最初に、画面は真っ暗なのに音楽(序曲)だけ流れ始めた時に「テレビかDVDデッキが壊れた!」と思ったのは、自分だけではないはず。てゆうかそうであって欲しいです。そんな事はおいといて、とにかくこの映画には色んな意味で衝撃を受けました。しかも作られたのが40年以上も前だということを知ってさらに衝撃。そして、今まで自分が持っていた映画や宇宙、地球外生命体に対する概念は見事に覆させられました。見終わった後に「宇宙やモノリス」について調べてみたくもなりました。たとえ映画自体の宇宙に対する見解が間違ったものだったとしても、そんな知的好奇心をくすぐってくれたというだけで、この映画の自分に対する影響は大きいものだし、久しぶりに、子供の頃に見たことのない物に出会ったときに感じていた、わくわく感を体験することも出来たし、十分満足です。 [DVD(字幕)] 9点(2008-01-28 04:21:39) |
16. 俺たちに明日はない
軽い感じの音楽と、徐々に破滅に向かっていくシリアスな内容とのアンバランスさが面白おかしかったです。 [DVD(字幕)] 5点(2007-12-29 18:46:25)(良:1票) |
17. ワイルドバンチ
《ネタバレ》 主人公を美化したり神格化せずに、一人の人間として描いている所にリアリティ-を感じました。パイクは死んだものの、世界の何が変わるわけでもなく、生き残った者の物語の始まりを感じさせるラストは、この話が長い歴史や広い世界においてほんの些細な出来事、でも彼等に関わった人間の心の中のどこかに生き続ける昔話なんだなと思いました。全体的にあくまでも客観的で、どこか突き放してはいるものの、とても丁寧に作られていて、製作に関わった人たちの作品に対する愛が伝わってきました。 [DVD(字幕)] 6点(2007-12-26 16:28:39) |
18. 招かれざる客(1967)
日本人の僕にはあまり身近ではない題材を取り扱った作品でした。現実にも人種の壁を越えたカップルがたくさんいて、中には結ばれることのなかった人達もきっといるんでしょうね。そういう意味で、決してこれは特別な家庭の問題ではなく、自分にも起こりうるかもしれない話。と言えるのでしょうか。普段は「人種差別反対」と言っていても実際にそれが自分に関わる身近な問題となったら...?これは、人種差別に限ったことではなく、すべての話に当てはまることで、自分の発言全てに責任が持てるのか?当事者になったときに第三者として発言していた時と同じことが言えて、かつその行動をとることができるのか?難しいことですね...。地味で目立たないけれど、なんかいろいろと考えさせられる、いい映画でした。また俳優陣の演技も、すばらしかったです。 [DVD(字幕)] 6点(2007-03-06 00:15:08) |