1. ばかのハコ船
《ネタバレ》 夢はある。しかしそれに向かって、努力はしない。商才もない。人望もない。運もない。 冒頭と最後の実演販売に象徴されるように、変化もせず成長もする事はない。 あぜ道を歩く二人の姿のように、二人の人生はただただ平行線を辿る。むしろマンホールに落ち、強盗を示唆させるラストは下降線を描く人生を表す。 二人と対比されるように、着実に人生が上昇していくヴェロニカ。 夢を叶える舞台が都会ではなく田舎である点も心強く、たくましい。 田舎は夢に破れた者が帰って、安泰に暮らせるほど甘くはないし、そこでこそ叶えられる夢もある事を堂々と体現する。 若者の描写はジム・ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」に近い感覚を感じた。 [DVD(邦画)] 7点(2016-07-19 17:46:57) |
2. ラッシュライフ
全てが意味ありげに投げっぱなしに終わる。 観客の裏をかく事に、終始徹している様に感じる。 作り手がやりたい事をやりたいだけやったという印象。 演技は脚本や演出次第で、生きも死にもするという事がよくわかってよかった。 [DVD(邦画)] 2点(2016-07-09 01:54:13) |
3. 花とアリス〈劇場版〉
《ネタバレ》 ラストのバレエシーンは細かくカットを割りすぎだと思う。映像のツギハギでは、真の感動は伝わってこない。広末涼子も、あの状況でありえない行動をとるし、アリスとの対比だとしても、あの場面では単なるノイズにしかならない。 後のシーンは、時折目を引く映像はあるものの、それ以外は細かく考えてもしょうがないのかと思うくらい、雰囲気を楽しむことが、正解な映画だと思った。 [DVD(邦画)] 3点(2016-06-03 18:22:01) |
4. 28週後...
《ネタバレ》 感染が拡大する原因を作った、当人達からは終始後悔の念すら感じられない。ピンチになると、善い大人が現れて無条件で助けてくれる。結局、自分達を守ってくれた人たちはみんな死んだけど、自分達は他の人達とは違って免疫があるので助かる。でも兄弟達が向かう場所で感染は拡大し、人間の世界は滅亡に向かっていく。 極端に言ってしまえば、一家族、もっといえば兄弟だけのあまりにも閉じた世界の物語が、世界を滅ぼす。 希望の象徴として描かれることが多い子供が、イギリスに戻ってくるところから最後まで徹底的に滅亡の象徴として描かれる。 オープニングの逃走劇、ヘリコプターによるゾンビ殲滅、監視カメラやスコープなどの画面を通して閉塞感を表すなどの表現も含めて、映画としてとてもよく出来ていて、ゾンビ映画としても画期的な作品だと思うが、個人的な好き嫌いで言えば、本当に嫌いな映画。 [DVD(字幕)] 5点(2016-04-09 19:21:59) |
5. 28日後...
《ネタバレ》 全体を通して目立つ斜めに構えられたカメラアングル。緊迫した場面での異常なまでのクローズアップ、ぶれる画面、細かいカット割り。それらは、緊迫感や閉塞感、疾走感を表す表現なのだろうけど、自分にとってはただただ見にくく、解りずらく手段と目的が噛みあっていない印象を受けてしまった。独特の表現方法が合うか、合わないかで評価が大きく分かれると思った。 誰もいない町を彷徨う前半からは、絶望、終末感を感じたが、軍と接触してからの後半は、「死霊のえじき」で観たようなテーマ性、展開を感じたし悪く言えば小さくまとまってしまった気がした。 ただそれまでずっと固定されたカメラの俯瞰ショットで捉えられていた、ただただ町を彷徨う姿が、マンチェスターに車で向かうシーンで始めて行動に目的が生まれ、その瞬間、車の移動とカメラの動きが噛み合い、程よい距離感で車が捉えられ、タイヤの回転と共に、主人公達の中で間違いなく何かが動き出したことを暗示させる場面では、絶望の中で生まれた一時の爽快感、希望を感じた。 [DVD(字幕)] 6点(2016-04-06 16:18:48)(良:1票) |
6. ハッシュ!
《ネタバレ》 人間が生きていく上で、逃れられないもの。生殖機能としての性、出自。それは自分では選ぶ事が出来ず、否応なしに与えられるもの。 自分で選んだものではないにも関わらず、それらを受け入れて生きていく事が当たり前とされていて、そこからはみ出そうとするものが非難され、マイノリティとされる社会。 そんな変えられない事実と必死に戦いながら、そして折り合いをつけようとしながら生きる3人。彼らを取り巻く社会は、何の悪意も悪気もなく“常識”、“普通”という残酷なまでの盲目的な正義を持って接してくる。 それでもそんな社会の中で生きていかなければならないし、自分も変わりながら順応していかなければならない。 スポイトを使って受精させるという一見滑稽で非現実的な発想こそが、社会に順応して生きていこうとする3人の、社会に対する命がけの小さなカウンターに思えた。 [DVD(邦画)] 7点(2016-02-19 14:30:01) |
7. ほえる犬は噛まない
この監督は、コメディータッチの乾いた空気の中で社会風刺を撮ることが出来る凄さは言うまでもなく、地下やアパートの廊下を代表とされる空間の使い方やアクションシーンの躍動感、魅せ方が凄くうまいと思う。また切り干し大根や消毒薬、トイレットペーパーなどの舞台装置の使い方も上手いと思った。 [DVD(字幕)] 6点(2015-07-20 16:49:54) |
8. アカルイミライ
僕はいつも映画を観るとき、自分の人生を変えてくれる映画、そして自分の今までの人生、これからの人生に寄り添ってくれる映画をいつも探しています。 まちがいなくこの映画は自分の中でそういった存在になる一本です。これから先どんな人生であろうとも、いつでもクラゲは生きているのだと、どこでもクラゲは生きていけるのだと信じたい。 [DVD(邦画)] 10点(2015-02-16 03:14:55) |
9. トゥモロー・ワールド
ゼログラビティにも通じる、長回し。そして物語を一人称で語り、伝えたい事を映像で見せることで感じさせる映画。堪能しました。 [DVD(字幕)] 7点(2015-02-13 16:50:34)(良:1票) |
10. パンチドランク・ラブ
《ネタバレ》 唐突な事故とそこに残ったオルガンから物語は始まる。自分は事故=恋、オルガン=他者と捉えた。内気で癇癪持ちの青年はオルガンを持ち帰えるが上手く弾く事ができない。机の上にオルガンを置くという本来のオルガンがあるべき姿とは違う形をとらせることで、オルガンとの距離をとり向き合う事ができない。 またプリンを買い、マイレージを貯めるという行為も彼にとっては貯める事が目的となり、マイレージが意味を持たず本来のそれの目的とも向き合う事ができない。 バリーは恋に落ちる。それは、事故のように唐突に瞬間的に。 彼は貯めたマイレージを使おうとし(実際には使えなかったが)リナに会いに行こうとする。マイレージが目的を持ち、彼の人生にも目的が生まれた瞬間。そして今まで、行き場を失い物にしか向かう事が無かった怒りが、始めて暴力という形になってゆすり屋に向かう事で怒りが意味、目的を持つ。 そしてラストの床に置かれたあるべき姿のオルガンと向き合いそれを弾くバリー。人生に意味と目的を持った彼が、彼なりに他者と向きあう事を決意した瞬間なのだと感じた。 [DVD(字幕)] 8点(2015-02-10 16:39:58)(良:1票) |
11. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 生と死、明と暗を切り取った構図が素晴らしい。宇宙人が始めて襲来する場面では、車の中と外。暴徒と化した民衆に車を奪われるシーンでは店の中と車の中の対比。レイチェルが始めて死を目の当たりする川の場面。船に乗れなかった者と乗れた者。 生と死は常に隣り合わせにあり、それは紙一重である。また危機的状況では、日常生活以上に選択と結果が不可分であり、それは不条理であるという事を、映像を通して、明確に説得力を持って表現している。 それまで、徹底的に生の側にいて、死から逃れ続けようとしていたトム・クルーズ一家の息子が始めて意を決して、船から落ちそうな者を死から生へと救おうとする。その息子を見上げる父親。 そして、草原でついに息子は父親を振り切り、逃れる民衆(生)から軍隊(死)の中に自ら進んでいく。 若さゆえの行動ともとれるが、息子が父親をある側面では越えた瞬間をあらわしていたと思う。 父親にとって大切なものは人類でも英雄的な最期でもなく家族。どちらの行動が正しい、優れているとはいえない。しかし、最後の最後でトム・クルーズはレイチェルを助けに宇宙人に立ち向かい死に向かう。 圧倒的で理不尽な暴力の前で宇宙人(外から来たもの)によって人間の本質が問われていた。 [DVD(字幕)] 8点(2014-12-25 14:45:13) |
12. ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
《ネタバレ》 1作目のヘルボーイ自身の自己葛藤という内界の物語から他種族との共存はできるのかという外界との葛藤の物語になっていた。人間を守る価値はあるのかという問題に対する明確な答えは最後まで提示されない。そして人間から蔑まれた英雄達は人間の世界を去る。答えは人間自身に任されたのだと自分は感じた。 前作からも感じたが、多くの言葉を交わさずとも分かり合える男同士の友情の描き方がとてもよかった。 そしてあらゆる映画への愛も感じられる独特の世界観とビジュアルの構築は素晴らしかった。 [DVD(字幕)] 7点(2014-03-08 05:35:11) |
13. ヘルボーイ
《ネタバレ》 ヘルボーイは地獄で生まれた悪魔の子であり、性格からも人間にとって善悪どちらでもなり得る危うい存在。生まれの境遇やヒーローにはあるまじき他者からの不遇な扱いを考えれば、いつグレたっておかしくない。それでもヘルボーイは悪魔の象徴である角を折り、人間として人を守る事を選んだ。 人間は心の中に悪魔と天使がいて、様々な境遇の中で日々悪魔と戦っている。この物語はヒーローと呼ぶにはあまりに泥臭い一人の男の生き様を見せることで、自分のような一市民を勇気付け応援してくれているような気がした。 [DVD(字幕)] 6点(2014-03-05 12:08:28) |
14. ホステル2
《ネタバレ》 前作と比べ組織の裏側や殺す側の人物像を見せることで未知なものへの恐怖や面白さが減った。全世界を股に掛ける組織という設定には、前作にあったいい意味での閉塞性や陰険さが失われ、開放的でライトな印象を受けてしまった。 [DVD(字幕)] 5点(2014-03-03 19:28:21) |
15. ホステル
外観は綺麗でも、ぎっしりと詰まった建物が閉鎖された空間である村をうまく表現していた。 [DVD(字幕)] 5点(2014-02-26 03:54:10) |
16. マーダー・ライド・ショー
一瞬で殺される事が幸せとすら錯覚してしまうほどの恐怖。精神的な恐怖をどこまで与える事ができるのかを追求していた。 [DVD(字幕)] 5点(2014-02-18 03:33:12) |
17. 松ヶ根乱射事件
《ネタバレ》 突然思い出したように申し訳程度に銃を撃たれても…。つかみどころのない不思議な映画でした。 [DVD(邦画)] 6点(2012-02-27 17:59:35) |
18. ゆれる
小さい時はあんなに仲が良かったのにいつの間にかプライドや劣等感、不平不満が邪魔をしてどんどん距離が離れていく。でも心のそこではこのままでは終われないと思っている。そんな関係である二人兄弟の兄として、冒頭の弟と父の喧嘩の仲裁に入る兄の姿には共感を覚えました。 [DVD(邦画)] 6点(2011-11-05 01:36:54) |
19. ディア・ドクター
《ネタバレ》 伊野は間違いなく悪徳なニセ医師であり、やったことは許される事ではない。 しかし、自分の足で診療所にこれない人達のもとに自ら出向き診療を行っていたことも、彼に影響されて再び村に戻ると相馬が決意したことも、伊野のことを神の様に村人たちが崇めることでその地域の医療が成り立っていたのも事実である。そして、ニセ医者だと分かった途端、「そういえば…」と言い、手のひらを返したように彼を貶める村人がいたことも事実である。 綺麗事だけでは語ることの出来ない僻地医療の現状や村社会の暗部、善悪が曖昧で不確定な存在である人間を絶妙な距離感を保ちながら表現出来ていたような気がします。 [DVD(邦画)] 7点(2011-10-22 00:11:09) |
20. ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!
《ネタバレ》 ビデオ屋によって置かれている棚のジャンルが違いそうな作品でした。 それぐらい色んなジャンルの要素(作品の土台になっているコメディ、中盤のミステリー、後半のアクション)、社会風刺、グロさを持っていて、それぞれが邪魔をすることなく絶妙な分量でうまい具合に混ざり合っているので、どの分野でも十分に満足させてくれ、くどすぎず飽きることなく文字通りワクワクドキドキハラハラさせてくれます。 一見すると大味に見えますが、内情は綿密に作りこまれています。それでいて村民が殺人を犯す理由を稚拙で馬鹿馬鹿しく留めているので、変な高尚さを感じさせず作り手の計算が鼻につきません。 子どもの時に楽しい映画を観ていたときに感じた感情を思い出させてくれるすばらしい映画でした。 [DVD(字幕)] 9点(2011-03-20 21:23:43)(良:1票) |