1. アダプテーション
私たちは社会に適応(アダプテーション)するべく、多くの選択を迫られる。例えば恋愛を取るか、仕事を取るか。どちらも有益であると判断しても時間という有限な流れの中ではどちらかに決めなければならない場合がある。それは合理化である一方で選ばれなかった可能性を切り取る作業でもある。しかも、それはそういった社会的な態度の限定だけに留まらず、内面的な部分にまで侵食する。自らの行動を納得させるべく「主義」へと姿を変えた選択は意識のカスタマイズ作業であると同時に制御可能な世界へと自らを隔離する。しかし、当人にその自覚はないだろう。それは処世術であり、オリジナリティとして解釈してしまうからだ。そして、ついにはこのように設定された世界「ワタシ」を主張する。 一度設定してしまった世界は容易に変更できない。それまでの自分を否定することでもあるからだ。無闇に刃向かおうものなら、その設定にそぐわないと敵意すら示すだろう。「ワタシ」という枷こそが限界をも設定し、他を拒むファクターとなる。即ち、世界は「ワタシ」によって整理され、限定されているのだ。 本作では他を知ることで広がる可能性とともに「世界をつまらなくしているのはお前だよ!」。そして、「世界は君のものだ!」と提起されているのではないだろうか。 [DVD(吹替)] 10点(2008-01-30 22:43:57) |
2. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 静かなヒューマンドラマでしかない内容なのかと思っていたら、サスペンスとしての見せ場満載な内容でうれしい驚きがありました。 そして、評価としては・・・ 既に指摘されている方が多いですが、ヴィースラーの変化(タイプライターを隠すに至る)に説得力を欠きますね。 もっとヴィースラーにスポットを当てた内容にして、彼は若かりし頃クリエイティブな職業に憧れ、挫折した過去(しかも、挫折のキッカケは失恋)があるなんてバックストーリーを加えただけで、そこら辺の不満は解消されると思う(芸術家として生きる二人への憧憬と敬意という向きが明確になる)。ましてや、その職業が作家であったなんて設定にすれば、彼に捧げるという献辞の記された本を手にした時の感慨はより深く複雑なものとなり、より一層良いシーンにもなったことでしょう。 [DVD(吹替)] 6点(2008-01-30 16:28:53) |
3. 恋に落ちる確率
《ネタバレ》 自分の解釈としては妻の浮気を疑うような出来事が実際にあって、それをネタに作家が創作した話、というもの。 まあ、この解釈がどうであろうが、他に全ての辻褄が合うような解釈があろうが、「だから何なんだよ?」に違いない内容。 奇をてらうことにしか興味がないんでしょうね。 [DVD(吹替)] 0点(2008-01-30 04:17:50) |
4. ドッグヴィル
どんな事柄も正当化できる。 故に誤解や争いは生まれ、絶えることはない。 自分が正しいと思っているのと同じように相手もそう思っているということを忘れなければ、対立が生じるとともにどこに過ちがあるか気付けるかもしれない。 ドッグヴィルの住民が不幸だったのは、対立さえも恐れたからか・・・。 [DVD(吹替)] 9点(2008-01-30 01:49:39) |
5. 明日、君がいない
《ネタバレ》 てっきり各々の秘密が連鎖して自殺の引き金を引くこととなる内容なのかと思い、そうだとすれば確かに結構な芸当だな、と興味津々で観ていると・・・ ある意味でそういった内容であったものの、蚊帳の外にいたというのが引き金では生徒達の諸々は何だってよかったわけですから、大した芸当ではない。 これでは、単なる自殺する人物探しの趣向しか持ち合わせていない。しかも、その方向で観ていても報われない内容ですし(ミステリーで本編に関わりなく、人物紹介さえされなかった人物が犯人でした、と言うようなもの)。 19歳が書いたというのがマイナスの意味で納得する結果になってしまい、残念。 しかし、テーマ(無関心への警鐘)は伝えられていると思います。こんなにも堂々と反則技を利用して表現している気になれるのは若さのおかげでしょうね。 とりあえず、脚本としては明らかな失敗作。若さに3点献上。 でも、自分がこの人はわかっていると一目置くような巨匠が同じ内容をやったならば、「敢えて」なのだろうと評価して、もう1、2点プラスしてしまうかもしれない・・・(恥)。 [DVD(吹替)] 3点(2008-01-28 17:19:15)(良:1票) |
6. 34丁目の奇跡(1994)
《ネタバレ》 嫌いなディズニー作品のような印象(極端で強引)を受けますが、内容は悪くない。 もっと現実的なディテールが与えられていれば満点を投じても良いと思うだけに残念。 オリジナルが変にアレンジされちゃったのかな。 現実的なだけでは人生はわびしいものとなる、という意見は激しく同意。 希望を持てなければ、夢を持つ向上心も芽生えないだろうし、きっと恋をすることも出来なければ、家族を持とうなんて発想も生まれないでしょう。 不確かであろうと希望を信じることは人生に彩りを与えるんだな~(勿論希望だけではどうしようもないですけど)。 [DVD(吹替)] 7点(2008-01-27 16:19:15) |
7. センセイの鞄<TVM>
川上弘美さんは唯一カッコいい文章書く人だなという印象で大好きなのですが、話の展開だけ追って面白い作品はないと思う。よって、映像化なんて向いていない。今のところ映像化されたのが、この作品だけというのも頷けます。 とりわけ本作の原作はほのぼのエピソードの短編集という形態で、歳の離れた男性に魅せられるものの、それが異性としてなのか、父性としてなのかという狭間でゆらゆらするだけの内容。映像化は難しい・・・。 [DVD(邦画)] 3点(2008-01-27 15:55:00) |
8. ハムナプトラ/失われた砂漠の都
随分とざっくりしたアトラクション・ムービーですね。用意された材料からするとちゃんと構成されたものを作れそうなだけに残念な出来。 [地上波(吹替)] 3点(2008-01-27 15:30:18) |
9. イン・アメリカ 三つの小さな願いごと
《ネタバレ》 この内容を評価していいものなのだろうか。 息子を失った悲しみを新しい命によって埋めるような、この内容を。 第一あの程度の生活力しかない両親が目の前にいる二人の娘の幸せを考えず、孕ませてしまう無責任ぶりも責められるようなことではないのでしょうか。生活は厳しいけど家族みんなで助け合ってます、なんて内容で家族愛を謳ってる大家族もののテレビ特番がよくありますけど、自分には無責任な親の醜態にしかうつらないのと同じで、なんとも腹立たしい内容だった。 [DVD(吹替)] 0点(2008-01-26 22:54:00) |
10. アンナとロッテ
《ネタバレ》 敵対することとなる両国へ姉妹を分けたことで時代の激動はよく理解できましたし、その中でのすれ違いエピソードや要所要所に挟まれる現在の彼女たちの描写は興味を惹かせる意味で効果的。 ただ、作りたいシチュエーションに急ぎ過ぎて、彼女たちの感情についていけない箇所が多少ありましたけど。 それにアンナを殺す必要はなかったと思います。 それにしても、自分ならこんなにも信じていたものがコロコロと覆されては気が狂ってしまうでしょうね。 [DVD(吹替)] 8点(2008-01-26 20:38:28) |
11. きいてほしいの、あたしのこと ウィン・ディキシーのいた夏
《ネタバレ》 犬のおかげで交流を持つこととなった人たちの孤独を知ることで誰もが寂しいんだと覚った彼女はパーティを主催する。 ドラマ構成は至極分かり易いものの、その内容を伝えるのには設定が甘い。 ドラマに於ける変化は振り幅があった方が良いですから、女の子の初期設定はもっと母親との別れにふさぎ、引っ越し間もない土地を嫌って表に出ようともしない、ぐらいにした方が栄えると思う。 [DVD(吹替)] 6点(2008-01-26 17:45:45) |
12. 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
《ネタバレ》 面白いと思うことはやめられない。 素直になった次女は家族を捨てる。 ああ、家族なんて幻想さ。 舞台版も観てますが、何故映画化したのかはピンとこないまま。 [映画館(邦画)] 6点(2008-01-25 23:26:15) |
13. 陰日向に咲く
原作本の出来はあんなに売れるほどの内容じゃないと思うものの、短編の教科書的な出来で好印象でしたが、映画化には全く向いていないだろうと思っていただけに、そのアレンジを案じるとともにどう調理されるのか楽しみでした。 そして、その結果としては・・・ 果たしてこの構成が正しかったのか微妙ですが、短編的内容で終わるのではなく、分かり易くドラマをみせるために追加・変更された設定は効果的で、心温まる余韻を残してくれます(何の繋がりもなく、毛色の違いからムードを壊すアイドルオタクのエピソードは捨てた方が良いと思いますが)。 個人的にはドラクエ4みたいにオムニバスとして章立てして、最終章で全てのキャラをフォローするようなみせ方がよかったと思ったりします(それでもアイドルオタクのエピソードは捨てたほうがいいと思いますが)。 それに、分かり易い人情噺をやたらに煽る演出故に冗長な印象となって、白けてしまう人も出てくるんじゃないかな。 [試写会(邦画)] 7点(2008-01-25 22:37:58) |
14. テラビシアにかける橋
《ネタバレ》 友人が死んじゃっただけの話になっている。 せめて空想で遊ぶのに批判的だったり違和感のあった少年が、彼女の死を経て、彼女のために空想世界へ、という内容にでもしなければドラマは見当たらない(「ビッグ・フィッシュ」ぐらいのドラマ構成は欲しかった)。 人が死んだだけで泣けて満足、という人でなければ厳しい内容だと思う。 [試写会(字幕)] 2点(2008-01-25 22:29:04)(良:1票) |
15. 眉山
阿波踊りを撮りたかっただけじゃないのか、と思わされるほど中身のない代物。 余命僅かの母を前にした娘の「反応」程度しかない内容でドラマ構成は皆無。 ありきたりのシチュエーションをこうもダラダラ撮るなんて・・・そもそも2時間使う展開すら見当たらない。 [DVD(邦画)] 0点(2008-01-25 18:27:32) |
16. アンダーワールド(2003)
《ネタバレ》 話の筋がマイケルをめぐる攻防から家族を殺した相手との対決へとすり替わってしまう摩訶不思議な内容。 構成なんて考えず、思いついたアイデアを詰め込んだだけで作ったのかな。 クレイブンの裏切りもビクターがマイケル獲得のために仕組んだことだったという内容であれば、本作のビジュアル的展開を踏襲しつつ、ひとつの筋としてまとめられると思うのですが。 [地上波(吹替)] 0点(2008-01-25 16:20:48) |
17. ポビーとディンガン
《ネタバレ》 この救いようのないシチュエーション(空想の友達の失踪)をどこへ持っていくのかと案じていると、思わぬ展開でうれしい驚きがありました。 しかし、驚きはあったものの、漠然とした美談で終わっているのが残念。 迫害した住民との和解、虐めた同級生との和解といった部分を掘り下げれば、ドラマ然としたものをみせることが出来たと思うのですが・・・。 [DVD(字幕)] 4点(2008-01-25 02:32:25) |
18. ディープ・ブルー(2003)
《ネタバレ》 単純に映像や演出は楽しめたのですが、やはりラストが頂けない。 自分の知る限りでは捕鯨反対を主張する方がおかしいという認識。それを鵜呑みにするのも危険なのでしょうが、散々地球讃歌を謳うような内容をみせられた後に、何の説明もない情報ひとつで捕鯨を糾弾されてはプロパガンダととられてもしょうがないのではないだろうか。 あと、演出上やむないのかもしれないが敵味方の構図を作ってしまうのにも違和感が・・・。ナレーションで完全にクジラ寄りなものも入ってたし。 [DVD(吹替)] 3点(2008-01-24 21:37:56) |
19. 最後の恋のはじめ方
《ネタバレ》 事が生じる前のヒッチとサラの関係性はもっと掘り下げておかなければ説得力を欠く。 この程度では商売柄のノウハウで引っかけた男とまんまと引っかけられた女でしかない。 その部分だけ補強されればよくまとまった作品だと思う。 ただ、ラストのドア越しに話させてくれなんて、これまたノウハウ臭い手段を出すのは理解不能。 [地上波(吹替)] 6点(2008-01-24 21:17:53)(良:1票) |
20. 潜水服は蝶の夢を見る
基本的に主人公の主観映像が占めるのですが、冒頭の30分はその映像(ほぼ)オンリーで展開され、彼の立場を追体験させるような作りで効果的。 とりわけ、瞬きによるコミュニケーションの歯痒さは苦しいほどに伝わった。 ドラマ構成が施されていないのは残念なものの、不自由ながら意思の疎通を手助けする「言葉」の力に感動させられる良作。 語弊が生じるかもしれませんが、彼よりも自由な体を持ち、口頭でのやり取りが出来る自分にはとてつもない可能性が開いているんだ、と勇気が湧いた。 今すぐ気まずい関係にあったあの人と話し合いたくなることでしょう。 [試写会(字幕)] 6点(2008-01-24 11:18:39) |