1. 細雪(1983)
市川崑のスタイリッシュな映像美の魅力がよくわかる作品。美しい日本の美意識・情緒が映像として表現されているだけでなく、会話のシーンの中に突如挿入されるワンカット(例えば石坂浩二の「えっ?」というような表情の変化だったり、きゅっときれあがる着物の帯の着付けの場面だったり)、または普通では思いつかないような構図などが、ぎょっとするような違和感を醸し出しており、それが非常にシャープなリズムを刻みだしている。いわゆる作家性という点では小津や成瀬、溝口といった巨匠のドラマツルギーには遠く及ばない、いわゆる職人監督である市川崑だが、映像の切れ味による物語の構築方法は素晴らしい。というかその点では邦画の最高峰ではないだろうか。市川作品においてはもはやストーリーがどうこうということではなく、この映像の積み重ねが織り成す映画鑑賞以外の何者でもない映像体験をこそ味わえばよいということがよく理解できる。「犬神家の一族」と並び、市川ワールドの入門編ともいえる傑作だと思う。芸達者な役者達によるまさに邦画的な会話がここちよく時間を忘れさせてくれる。何年かたったら是非又観てみよう。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-11-19 14:35:03) |