1. 絞死刑
《ネタバレ》 妻投稿■加害者の身勝手な妄想(自分が不幸であるのが強姦殺人の事由という論理)には全く賛同出来ず、ラストは「こいつ死ねよ」と思ってしまった。でもその「こいつ死ねよ」という感情が実行されてしまうのが死刑制度なわけであって・・・。■この映画は殺人被害者遺族の感情を持ち出してはいない。遺族だったら殺人者は残虐な方法でぶっ殺されてほしいと考えるのは至極当然だ。遺族の方の世界からは平常も正常も奪われてしまっているのだから・・・。だがそうではなくて、この映画は私みたいに「こいつ死ねよ」という感情を持っている一般市民自身に作られた映画なのだ。■私はある女性に対する誘拐殺人犯が友人の協力で作ったブログを見たことがあって、犯人の身勝手な論理に吐き気がした。死ねばいいと思った。でも、犯人に対して「死ね」というような私みたいな一般市民の何百のコメントを見ていると、その感情やコメントは正しいし当然だし、間違っていないのだが、少なくとも怖いと感じた。■映画ではそうした私たちの「死ね」という感情を滑稽に描ききっている。その形として「死刑執行後に記憶喪失になった人間を誰もが『死ね』というような人間に戻して死刑にする」というコンセプトはよく考えたなあと思う。このコンセプトは遺族の方からすればどうでもいい次元だが、私たちごときには考えさせられてしまう問題である。遺族の方の報復感情が当然だからといって、私たちが「死ね」というのは、死刑を運用するのは正しいのだろうか。被害者遺族と一緒に「殺せ」を連呼すること「だけ」が、「唯一」の被害者への殺人行為を憎む手段なら、人間は終わりだ。■この映画の問いが直ちに「死刑廃止すべき」に繋がるのなら、「遺族自身に報復を押し付けるべき」という考えになっちゃうから、一概には言えないんだけど、でも身内を殺されたこともない日本人が、自らの残虐性に無頓着なまま死刑を支持しているのではという一種の風刺が、この映画には確実にあると思う。 [レーザーディスク(邦画)] 9点(2011-07-09 16:29:46) |
2. 日本海大海戦
《ネタバレ》 妻投稿■大河ドラマの坂の上の雲の日本海海戦まで待ちきれなくなり本作を鑑賞。歴史の事はよくわからないけれど、海戦の様子はさすが円谷。そういえば円谷って戦前は戦闘機の特撮を撮っていて、戦争が終わった後そのために大勢の若者を死ぬよう仕向けた事を後悔し、SF特撮映画という分野で「人間の正義」を格好良く描きつつも、その傲慢さもしっかりと描く事に傾注したと「偉人漫画」に書いてあった。円谷が最期の最期に再び人間が実際に起こした戦争の特撮に加わったのは、「戦いに召され、戦いに勝って、真のものの怖れを知った者の姿でないであろうか。今この人からにじみ出ているものは、まさに戦いに勝ったことを怖れる心である。戦争は勝つことさえ恐ろしいことを知った人の心である。黙々として怖れ、黙々として歩み、歴史を通りすぎた人。その人の名は東郷平八郎」という台詞で自分の特撮人生を締めくくりたかったのかもしれない。ロシア艦長と東郷の会見は、ゴジラVS人類、人類VS宇宙人といった、円谷特撮で描かれた「戦争」の、和解だったのかもしれない。 [ビデオ(邦画)] 8点(2011-02-08 00:48:38) |
3. 007は二度死ぬ
《ネタバレ》 妻投稿■日本の東宝特撮とイギリスで当時はやったサンダーバードの特撮が一緒になったようなシーンが見られてうれしかった。だけどヒロイン一号の死亡と忍者がうようよ出てくる意味がわからない。■破天荒な映画だけど、丹波さんはまだ地上に存在している感じですね。「人間革命」に出ていた時にはすでに「大霊界」に繋がっていそうな雰囲気だったけど(^_^;)。 [レーザーディスク(字幕)] 6点(2010-11-18 00:25:53)(良:1票) |
4. 大巨獣ガッパ
《ネタバレ》 妻投稿■熱海のシーンで怪獣目線で破壊シーンを撮影しているが、あれはミニチュアの出来や爆破破壊のレベルを考えるとあまりにも勿体ない。ここは人間目線中心にすべきだったと私は思う。熱海は狭い平地に高層ビルが密集しているような場所で、人間から見れば巨大な怪獣が迫っているのに、遮蔽物で妨害されて怪獣の全体像が見えず逃げられず、ただ単純に「怪獣の姿とは反対方向に逃げれば良い」という状況とは全く違う怪獣映画の破壊のシークエンスが出来たと思うのに凄く残念だ。■あとタコのシーンでも笑えたが(そういえば両津のアニメでタコばっか食べている熱海の人間を巨大タコが襲撃するというのがあったなあ。あと函館のイカール星人…(^_^;))、あの直立二足歩行で悪そうな眼をした怪獣が親子愛なんて私は認めない。どう考えてもあれは「オルカ」みたいな知的残虐行為をやらかしそうな不気味顔じゃん!!■あと、羽田空港のシーン。滑走路ってマット敷きだよね(笑)皺が入っているし(^_^;) [インターネット(字幕)] 6点(2010-11-06 18:58:55) |
5. アルジェの戦い
《ネタバレ》 妻投稿■第2次大戦後世界各国で植民地が独立しましたが、その中でももっとも大規模な独立戦争が起こったのが北アフリカアルジェリアです。(朝鮮半島やベトナムは冷戦の戦争です)。どれくらい凄いのかと言うと、植民地の戦闘が宗主国本土にまで波及して、宗主国の政府がつぶれてしまうくらい(しかも宗主国は国連常任理事国のフランス)凄かったんです。「植民地独立の責任を取って大統領が辞任します」というものではなく、政府そのものがつぶれてしまったんですよ(それがきっかけで第5共和国がフランスに出来ます)。日本ではアルジェリアと言えば某頭突きサッカー選手のルーツという認知度しかないですが、あそこの国は、今、アフリカではリビアと並ぶ長い平均寿命の国でありながら、北アフリカ有数の移民排出国であり、そしてタリバンが子犬くらいに思えるイスラム系山賊武装組織の民間人虐殺が問題になっている場所でもあります。■私は結構アルジェリアと言う国に興味があったのですが、週刊こどもニュースには絶対出てこないし、活字で理解するにも限界があるので、こういう映画に巡り合えた事は本当に幸運でした。■内容は詳しくは伏せておきますが、欧米列強の時代の「白人は有色人種より優秀である」という説の虚構を、もっとも「負」の形で証明した内容になっています。同じ知性とハートを持った人間を人間が無理やり支配する社会だとこーいうーことが起こるんだ…と言う事を、人道的にと言うよりは生物学的に表現しています(第2次大戦後の戦争映画の描き方としては大正解)。全ての人が見るべき映画とは言いませんが(フランス人には勧められない)、人間の生態を研究している宇宙人さんにはお勧めの一本です。 [ビデオ(字幕)] 9点(2010-10-10 22:14:17) |
6. 日本のいちばん長い日(1967)
《ネタバレ》 妻投稿■「目的が手段を正当化する」と言う言葉があるけれど、それよりももっと悲惨な事になる事が多いのが、「手段が目的を支配する」時。往々にして未来の事を考えるのが怖い人間はそういう状態になりやすい。■よく、戦争反対映画で「戦争の狂気」とか「戦争が人間を狂わせてしまった」という描き方で、「人間を免罪する」ような映画があるけど(私のなかではチャップリンの「独裁者」がその一例)、この岡本と言う監督は、そんな生易しいヒューマニズムは見せない。彼は映画のなかで徹底的に「手段が目的を支配している」状態の人間を描く事で、「悪いのは戦争ではなく人間」ときっぱり言い切ってしまっている。私はこの戦争を「大日本帝国が悪者で、連合国やアジアはイイモン」という風に単純にみる事は出来ないのだが、「悪いのは戦争ではなく人間」であるという事が本当ならば、改憲派も護憲派も右も左もとにかく日本国民なら共通する問題だと思う。■岡本監督アナドレン。ラストの皇居のシーンは本物の皇居を勝手に撮影したらしいが、どうしてそこに拘ったかと言うと、映画のなかの皇居と、1970年前後の当時の皇居と同じ映像にする事によって、それと同じ世界を生きている私たちに、映画のなかの狂気と言うものは私たち自身の心と隔絶されたものではない事を訴えているのだと思う。■映画とは関係ないけど、私は一度だけ国会図書館近くで(国会議事堂を見学しに東京に出ていたので)、半蔵門から出てきた天皇陛下の車に遭遇した事がある。見えたのは一瞬でお妃さまが手を振ってくれたのだけど、一体どうなったらここまで穏やか(すなわち意志が強い)人になれるんだろうというオーラがあった。この映画を見て何となくわかった気がした。 [レーザーディスク(邦画)] 9点(2010-09-28 00:23:06)(良:1票) |
7. 史上最大の作戦
《ネタバレ》 妻投稿■戦争映画を見るときの私って、結構戦闘シーンをワクワクしながら見ていて、後でレビューに書くときは「戦争は悲惨」「一人一人に命があるんだよ」というふざけたメッセージを書く悪い癖があるんだけど、この映画でそういう私に気がついてしまった。■この映画でビックラこいたのはラストシーン。てっきり戦争賛美、アメリカ万歳で終わるのかと思いきや、唐突に迷った兵隊と負傷兵が意味もなくだべりだして終わる。このシーンを見たとき、私は「『戦争の悲惨さ』なんていちいち大げさに表現してもらわないと伝わらないのか」と言われた気がした。そう、私たちって、そういうシーンがないから「これは戦争を賛美する映画だ」と言い切ってしまう。考えてみれば銃弾に当たった痛みや死の恐怖なんて、その場にいた当事者にしかわからないんだよね。映画はそういうものを(傲慢に)描こうとしないで、ただ戦場における兵士同士の命のやり取りをひたすら描いたんだと思う。フランス軍の港のシーンで、空から部隊が動くシーンと、兵士一人一人が死に物狂いで命をやり取りするシーンが同時に描かれた場面があって、私はそのシーンを何度も見直した。このシーンが映画が書きたい事のスタンスを現わしていると思う。 [レーザーディスク(字幕)] 8点(2010-09-19 22:19:06) |
8. コレクター(1965)
《ネタバレ》 妻投稿■昨今のワイドショーみたいに主人公の異常さを際立たせるわけでも、「今の世の中はどうなっちゃったの?」という問題提起をするわけでもない。旦那に「ぶっちゃけた話、主人公を応援していたでしょ」と聞くと「あの男が『僕は君とわかりあいたいからあんなことやこんなことはしない』と上品ぶるまでは」と素直に言っていたあたり、「道端のかわいい女の子をクロロホルムで誘拐してあんなことやこんなこと」という「健全な」男性諸君の妄想を極めて忠実に映像化したものだと思う。■しかし、その後どんな下水な凌辱劇が待っているのかと思いきや、主人公は女の子に優しく接する。しかしその「優しさ」が怖い。私が知る限り「優しさ」と言うものをここまで怖く描いた映画はない。主人公の「異常さ」よりも「優しさ」といった通常は素晴らしいとされる感情をここまで怖く描いたこの映画の勝利だろう。■そういえば現実世界でも(私自身の経験値にすぎないが)女を強姦する上司って凄く優しい。自分が強姦している女の子をまるで運命共同体のような言い方で接してくる。女の子はその支配下において加害者の愛情(愛玩)を受け入れる義務がある。しかしそれでも加害者は満足出来ない。暴力で勝ち取った愛情など信用できないからだ。■さすがに監禁や強姦は極端だろうが、それでも相手をピンで止めるような「優しさ」は日常生活の至る所で見られる。気を付けないと。 [ビデオ(字幕)] 10点(2010-08-13 01:04:57)(良:1票) |
9. バンビ、ゴジラに会う
妻投稿■私は旦那と地下鉄に乗るとき、一番前の窓から線路を見るのが好きなんですよ。地下鉄の駅間はだいたい2分なんですけど、洞窟探検みたいでとても面白いですね。といっても東京ディズニーシーのアトラクションよりは面白くないと思いますし、千葉モノレールの一番前よりは普通かな(*^_^*)でも、電車の中でうさんくさい広告を見せつけられたりするよりは絶対面白い。九段下から飯田橋、飯田橋から永田町を移動するだけのことなのに、ちょっと凄いことをしたような気分になることは間違いありません。■あと、給料日前で電気も食料もないときなんかは、防空頭巾(関東だと小学校で貰いますよね)をかぶって蝋燭の火で友達の畑で採れたイモや小麦粉で作った水団を食べることにしています。これが結構勉強になるんですよね。食事時間は2分。2分なんだけどただカップめんをわけあうよりはよっぽど有意義な時間ですよ■2分以下を舐めてはいけません。東京ディズニーランドにいけば2分のスリルを味わうために90分並ぶ人も多いですし、イルカタッチも2分ですし、アイドルやジャニーズと20秒握手するために北海道まで行くファンもいますし、殴るけるを2分されていたら1週間は跡が残りますし、北朝鮮のミサイルが日本に到達するのや、地震情報、会社面接、人工呼吸は2分が勝負です。■で、この映画は私にとって有意義な2分だったか…そんな考察は野暮ですね・・・・■まあ、このレビューを皆さんが読むのにかかった時間(推定2分)よりは価値はあるでしょう。 [インターネット(字幕)] 7点(2009-09-27 02:47:22)(良:1票) |
10. モスラ対ゴジラ
《ネタバレ》 ゴジラは一作目は別格で、あとは子供向けと評価されているが、それのどこが悪いんだろう。確かに目も当てられない作品もあるが、この作品は僕は一作目と同じくらい好きだ。卵からイモムシが生まれ、さなぎになって羽化してチョウチョになって死んでいく虫。この神秘を僕らガキどもはゲージに保管して観察するものだが、円谷は逆に人間を踏み潰しかけない化け物としてこの身近な神秘を表現したんだと思う。それはゲージに入れられるようで、でもゲージに入れるのはかわいそうだと感じる小美人の存在からもうかがえる。そして今作品も日本国を蹂躙し、戦争の化身として暴れまわるゴジラを少年がゲージに保管した神秘の化身モスラがやっつけるというストーリーは、間違いなく円谷から子供たちへのメッセージであり、この映画は立派な「子供向き映画」なんだと言える。・・・・・以下妻投稿・・・・嘘です。旦那トイザラスで私にモスラの幼虫指差して「あれ、ゴジラのウンチが放射能浴びて怪獣になったんだよ」とか言っていました。 [レーザーディスク(邦画)] 10点(2008-12-03 19:47:00)(良:2票) |
11. サンダーバード(1967)
《ネタバレ》 サンダードは何が面白いのか、それはこれを見れば一発で分かる。それは映画スタッフの自分の世界にとことん命を吹き込む志の高さだ。ゼロエックスの凝った発射シーン、ペネロープとヘリコプターの乱舞からはじけ飛ぶアランの妄想、ニョッキリ出てくる火星人には大喜びし、最後の墜落シーンには度肝を抜いた。ミニチュア世界で、玩具の世界で繰り広げられるスペクタクルは最早芸術の域まで昇華され、そこに新たな世界を創造した功績は大きい。「男の子の夢がこうした形で映画になった」・・・この映画に対してこれが僕の言える最大の賛辞だ。 [地上波(邦画)] 10点(2008-04-27 01:21:09)(良:1票) |
12. 怪獣島の決戦 ゴジラの息子
《ネタバレ》 蜘蛛怪獣とカマキリ怪獣を見たくて見ました。見れて良かったです。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2008-03-06 22:06:25) |
13. 死霊の盆踊り
《ネタバレ》 ズバリ言おう。これは当時始まったベトナム戦争を強烈に皮肉った風刺映画である。冒頭の夜の帝王のやる気のなさそうな恐怖の演説は、戦争の必要性を説くジョンソンの姿であり、夜から昼に変わるカットは、政治家の煽動にひょいひょい乗る大衆を、夜の墓場でホラーを考えるという端から見れば馬鹿らしい行動を彼女の静止を振り切ってまでやったばっかりに、拷問に近い裸踊りを延々と見せられる主人公(と観客)は、当事者故にその理由の不合理さに気づかないまま戦争の泥沼に足を突っ込むアメリカ国民そのものを予見しているのだ。そう考えると夜の帝王の台詞「男の踊りなど誰も望まん」という台詞は、「人間なんていうのはチンチンばかり考えている変態なんだ!それが正義や大義や愛国心なんか言うから、悲惨な虐殺が起こるんだよ」というエド・ウッドの痛烈なメッセージに聞こえてくる。ピッピーなどのカウンターカルチャーが声を上げる前からこうしたメッセージを配信したこの映画は貴重だ。「これをつまらないと笑う者たちよ。あなた方のやっている事は本当に僕の映画よりマシなのかな?」強烈すぎるメッセージ(冷や汗)。この映画は今のイラク戦争における「テロとの戦い」や社会不適応者へのバッシングを正義の仮面を被って遂行する連中に捧げる、エド・ウッドからの痛烈なメッセージなのである……のかな?・・・点数はまよったが減るもんじゃねえし持って行きやがれ! ただしこのレビューを見た方は、このレビュワー「はち-ご」の頭がおかしいという事を忘れないように。以下妻■ 旦那の感想「A〇Bをモチーフにした女性出演でリメイクしてくれないかなー」。いろんな意味で「こいつの頭やばい」と思った。 [ビデオ(字幕)] 10点(2008-02-19 22:48:48)(笑:5票) (良:2票) |