4. 第三の男
《ネタバレ》 どう考えても傑作。っていうか考えなくても傑作か。 このスピード感、60年前だもんなぁ、なんつう技術力。100分間をめいっぱい、全力で詰め込んだプロットに大満足。白黒の映画は実はあまり好きではない。ほんとに小さいころにみた第三の男があまりに難しくてゼッテェ観ねぇと、堅く心に誓ったからだ。以来中学生になって少しだけ観るようなるまでは全く観ていない。戦時中でさえフルカラー映画をボーンと作る国なのに、なんで戦後の映画が白黒なんだとことさら拒絶した。 が、大昔テレビの映画解説番組(いつ、何チャンでやってたか思い出せない)でこの映画がいかにすばらしいかを力説し始めたので、番組を中断。とうとう観るに至った。 それにしても、白黒フォーマットを使い倒して、これだけ速い脚本をボンボン追うカメラとカッコいい俳優が事件に巻き込まれればつまらないわけがない。終盤の追跡劇だけではない、講演につれてかれるシーンのあの緊迫とオチにはもう驚いて驚いて。なんていうか、この映画と同等の密度を持つ映画はあるかもしれない。けど、現代の同等の映画はこの映画の背を追っているわけで、この映画を追い越すことと言うのは本当に困難なことではないかと思う。 あまりに硬質な演出が、アホな幼稚園児に分かるはずもなく。アホな中学生が狂喜乱舞するにはあまりにもちょうど良く。昔を懐かしむアホがもう一度驚くに十分すぎる。これ以上ない完成品である。 しかし、ラストシーンのとらえ方が結構変わっていてそこに一番驚いた。オイオイオイオイなんで行っちゃうの!から、そう、それしかないでしょ。絶対それしかない。予感すらない。に変わっていた。あの後味がたまらん。 [DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2009-11-24 20:51:50) |