1. 風立ちぬ(2013)
《ネタバレ》 中盤は、ほぼ飛行機作りの話。 しかし後半にまわした恋愛の話がメインになると単なる少女漫画のようになってしまうし、逆に仕事の話が長すぎても偉人伝みたいな映画になってしまう。 この辺りのバランスの取り方が絶妙で、引き立てあっている。 見終わって、清々しい喪失感のようなものを感じた。 この感覚は、ナウシカを初めて見たときにもそう思った。 これは何なのだろう。 例えば、現実に身近で好きな人を亡くしたら、喪失感はあっても清々しさはない。 菜穂子もナウシカも、あまりにも美しく献身的に死んだ。 死によって与えられたものが、失ったものを上回るのだ。 こんな死は、普通ない。 宮崎駿監督だから描くことができたと思う。 [映画館(邦画)] 10点(2013-08-31 10:22:05) |
2. ノルウェイの森
《ネタバレ》 なんかなあ・・・見ているときも、見終わった後もそんな気分。これじゃあ、異様にモテる男と面倒くさすぎる女の物語じゃないか。そこに動機が見出せない。 どうしてワタナベはあんなにヤリまくりモテるのか?原作では、ワタナベの不思議な魅力を淡々と描いてみせる。ワタナベの見方を通して、あるいは関わる人々から言われる「ワタナベ評」を通して、人物像を形成していく。例えば、緑の父親にキュウリを食べさせるエピソード(映画では省かれてる)。自分はこういうワタナベに対して人間としての魅力を感じる。 ところが、映画ではこの“理由付け”の部分が上手く描けてないから、結果的に「なんかなあ」と思ってしまう。これは、ストーリーテリングの問題が大きい。脚本家としてのトラン・アン・ユン。 “理由付け”の非力さという意味では直子も同様で、どうも映画中の彼女には惹きつけられるものがなかった。なんだ、あの媚びたような口調は。こっちは、役者にも問題がある。 ただ救いというか、個人的に新たな発見もあった。ラストで緑の名前を呼び続ける場面。原作にもある。これは、緑のセリフ「私をとるときは私だけをとってね。私を抱くときは私のことだけを考えてね。」と繋がっていたのか。映画のシンプルな構成だからこそ、浮かび上がった。 さて、国民的小説ともいえる「ノルウェイの森」。 もし自分ならこう撮る、直子役には○○を起用する等の居酒屋談議も当然出てくる。 大変僭越ながら、私の妄想をここに発表すると、ラストのシーンはレイコがギターを弾きワタナベと2人だけでやる直子のお葬式にする。レイコのギターをバックにエンディングロールを迎えて。 まあ、それはさておき。かつて、映画化されそうでされなかった「ノルウェイの森」。いや、できないだろうとも言われていた。情けないな、外国人に先を越されてしまったね。本作はトラン監督の感受性に敬意を表すると共に、色々な解釈があっていい、忘れた頃にでも他の人による第二、第三の「ノルウェイの森」を期待したりして。 [映画館(邦画)] 6点(2010-12-25 14:52:47)(良:1票) |
3. 魔法にかけられて
《ネタバレ》 テレビでやっていたのを何気なく見ていたら引き込まれました。 普段はディズニーものとはほぼ無縁だし、むしろファンタスティックすぎてそれほど得意ではないのですが、前半のすっとんきょう(とってもシュール)なお姫様を見て大いに笑いました。かわいい。 そして、舞踏会。ナンシー(ロバートの彼女)が王子にかけた言葉「あなたのストレートな表現が素敵だわ」。この一言の説得力・・・後の布石として効いてきます。 歌もよくて、時間を忘れて楽しめる映画でした。 [地上波(吹替)] 8点(2010-12-03 23:15:26) |
4. オーバー・ザ・トップ
《ネタバレ》 子供の頃、兄がスタローンの大ファンで、よく家の中で「オーバーザトップ」のサントラが流れていた。 「オーバーザトップ・・・」と言いながら小指から順に手を握り締めていくさま、よく真似をした(笑)。 当時を懐かしむ気持ちで鑑賞。 スタローン扮するリンカーン・ホークは父親として最悪ですな。 祖父の家にトラックで突っ込むわ、釈放の示談で交わした約束をあっさり反故にするわ、ギャンブルに全財産をかけるわ(結果成功するが)、 家は無いわ金は無いわで、絵に描いたようなDQN親。 あげくに10年間行方をくらませた上で、母親が死に間際に突如現れて親権を主張する。 育ての親である祖父から見たら、とんでもない話だ。 こんなのに子供を任せたら不幸になるに決まってる・・・というのが、大人になった自分の嫌味な感想。 逆に考えるのは、子供の頃、この映画の何にそれほど惹かれたのか?という点である。 マイケル君が、リンカーンと暮らすことを決めた理由がそれと同じかもしれない。 大人になって見えるようになったものと、見えなくなってしまったもの。 時を経て鑑賞した「オーバーザトップ」にそれを示された気がする。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-29 08:30:06)(良:4票) |
5. スラムドッグ$ミリオネア
謎解き系の映画だと思ったら純愛映画じゃないですか。それも、とびっきりストレートな。 賞金は逃したけど彼女は手に入れる「愛があればいいんだよ」的な筋書きもあったかもしれない。むしろ映画的にはそちらのほうが王道か。 なぜそうしなかったのか。その答えはラストのダンスにあると思う。 最後の口付けからダンスへの流れが抜群に良かった。 ダンスでは、配役から一転して俳優さんたちの素の表情が見てとれる。全ては虚構であったのだ。どう、この映画を楽しんでもらえたかい?そう言ってるようにも見えた。だったら賞金も手に入れて、彼女も手に入れて、さあ皆で踊ろう―――これでいいのだ。 それにしても、もしアメリカが舞台だったらえらく陳腐な出来だったろうなあ。 インドの風情はカラフルだし、映画の音楽も素晴らしい。飽きさせない。 途上国で人々が経済の発展をものすごいスピードで追い求める中で、少年は愛を追い続けた。この逆行感が、シンプルな愛を浮かび上がらせる。 私はドキドキしっぱなしであった。「幼馴染との再会」設定に弱いというのもある(笑)。 危ういインドの世情、賞金の跳ね上がるクイズ番組、終始緊張感のある展開。 よく吊り橋で愛の告白をすると(高所によるドキドキ感が相まって)成功しやすいと言うが、この映画のもたらす高揚感はそれに近いものがあるかもしれない。 もしかして主人公は吊り橋効果を意図的に利用したのか? だとしたら相当なやり手だが・・・いやいや、この映画に言わせれば運命がそれをさせたということだろう。 [DVD(字幕)] 10点(2010-04-26 22:24:01) |
6. グラン・トリノ
《ネタバレ》 孤独で偏屈な老人が最期に命を捧げて友人を守った、単にそういうお話ではない。タオのためでもない、スーのためでもない、こういう形でしか自分を赦せなかったのだろう。なんてやるせないんだ。 老人はかつての戦場のようにやるべくしてやった。その結果返り討ちに合い、スーに無残なことが起こってしまう。 ―――このスーを演じた女性、素人役者に近いかもしれないが、小粋で魅力的であった。(失礼ながら)特段に器量が良いわけでもないが・・・これも、イーストウッド・マジックか。 だからこそ、変わり果てた姿で帰宅したシーンには非常にショックを覚えた。なんてことをしてくれたのか!この瞬間、映画にドップリと感情移入していた。 イーストウッドは古き良き保守的な人間に愛着を示す一方で、勧善懲悪ならぬ“勧悪懲悪”のような構図を好む。本作は佳作にして集大成だと思うが、オスカーにノミネートすら無かったのは、これまでのイーストウッド作品で繰り返し扱われてきたテーマだからだろう。これについては「許されざる者」でオスカーとってるからねと、審査員はそんな気持ちかもしれない。ただ一味違うのは、最期に「許される者」になったという点である。 磨いた愛車グラン・トリノを眺めながらビールを飲むシーン、自分も好きだ。 [DVD(字幕)] 9点(2010-04-24 08:59:52)(良:1票) |
7. ラブ・アクチュアリー
映画を見てハッピーな気分になる。こんな素晴らしいことは無いじゃないですか。 この映画の何がそんなにハッピーなのか?そんなことは決まっている。きれいな女の人がいるから、会えるから。そういう意味で、僕はめちゃくちゃハッピーになった。 人生を好意的に見る。人に対するオプティミズムを可能にするものはこの世で一つしかない。それが Love actually(愛の実情)。愛することは最もハッピーなのだ。 映画はオムニバス形式で、9組のカップルの物語。ドラマはクリスマスの日を中心にして起こる。中でも僕が気に入ったのは、結婚をしてしまう女性に”片想い”をする男の話。恋愛で最強なのはやっぱり”片想い”だ! これは間違いない。 [DVD(字幕)] 8点(2008-07-28 22:25:07) |