1. KANO 1931海の向こうの甲子園
ちっくしょぉ~、ベッタベタの劇画なのに、すっかりやられちまった・・・。なんたって選手たちの体格のよさ! 雰囲気を盛り上げるたどたどしい日本語。そして熱い友情。永瀬正敏の監督もいいし、球場の場面になったらもう・・・涙腺崩壊。レフト平野君のパパイアの話は大好きになりました。 最後に一言付け加えておけば、台湾はこの広い宇宙の中で、たった一人の日本の友人です。そのことを忘れちゃダメです。 [映画館(字幕なし「原語」)] 10点(2015-02-07 05:45:11) |
2. チェブラーシカ(1969)
南の国からオレンジの箱に入って到着し、いきなりかわいいロシア語を話すチェブラーシカって、もしかして天才かな? チェブを肩に乗せ、すべてをよしとし、すべてを受け入れながら生きていくワニのゲーナ。寒々とした風景をバックに社会への風刺もそっと取り入れながら、二人の旅はいまようやく始まったばかりです。 [DVD(字幕)] 10点(2009-01-20 07:03:33) |
3. 過去のない男
《ネタバレ》 第二次大戦中、フィンランドは日本と同じ枢軸国側に立って戦った国です。映画の最後の方の列車の場面で、主人公は箸を使って寿司を食い、日本酒を飲み、バックには演歌が流れています。登場人物にステレオタイプの善人は皆無で、みんな笑うと損だと思っているかのような無表情。唯一善良なのは危険きわまりないとお墨付きの猛犬ハンニバルくらいでしょうか。風景は暗く、うそ寒く、救いようのないという点であまりにもリアルで、デズニー映画の対極にある傑作映画です。後半、救世軍のバンドが炸裂するシーンは今も目に焼き付いて離れません。 [DVD(字幕)] 10点(2009-01-17 06:59:22) |
4. エル・トポ
《ネタバレ》 オープニングを見て「しまった・・・」と思う人も多いでしょうが、そのあとも日本人の感覚を逆撫でするような映像が延々と続きます。外国の田舎町をたった一人でさまようときに感じる生理的寂寥感を、映画の画面を見るだけで体験できる希有な作品です。中でも大佐の最後の場面はあまりにも切なく、そして美しく、胸が押しつぶされるような感動に襲われます。映画史上永遠に語り継がれる傑作です。 [DVD(字幕)] 10点(2009-01-13 06:34:10) |
5. 虎の尾を踏む男達
《ネタバレ》 太平洋戦争末期にすべてをセットで撮影していますが、あの時代によくぞ作ったものです。なにより大河内傳次郎の弁慶の迫力がものすごいです。今の時代、これほど迫力のある男などどこを探してもいません。対する藤田進の富樫も涙が出てくるようないい男です。常に死を見つめながら生きていた男どもの生き様がとてもすがすがしく感じられます。「死に場所などどこにでもある」と言い捨てる弁慶に、そういう時代を生きることができた彼らの幸運を思わずにはいられません。バックを流れる男性コーラスも美しく、忘れがたい映画となりました。 [DVD(字幕)] 10点(2009-01-09 06:23:12) |
6. 不思議惑星キン・ザ・ザ
SF史上最もシュールな空前絶後の怪作です。いったいどんな人たちがどうやって作りあげたのか・・・。「では同志○○スキーは資本主義の悪の権化役です(ひそひそ声で「実はあんたの上司だよ!」)。このステテコを履いてクーって3回言って下さい。そうそう、スパシーバ!」「同志○○ビッチ、あなたは圧政の犠牲者です(ひそひそ声で「共産主義万歳!」)。このブリキのヘルメットをかぶって○○チェコフに深々とおじぎして下さいね。そうそう、スターリンに乾杯!」とかなんとかまじめ顔で作っていたのでしょうか。制作者たちがシベリア送りにならなかったことを祈らずにはいられません。 [DVD(字幕)] 10点(2009-01-01 06:30:15) |
7. ピロスマニ
フランスやスペインの光から遠く離れ、寒く重苦しいロシアの片田舎で、黙々と看板を描き続けて死んでいったニコラ。絵のうまいへたは確かにあります。けれども描かれた絵が人の心に触れるかどうかはまた別の話です。多くの人々にとって、この映画は生涯忘れることのできない宝物となることでしょう。 [DVD(字幕)] 10点(2008-12-31 06:36:20) |
8. デルス・ウザーラ
デルスを「自然と共生する心の美しい人」と簡単にまとめあげて賛美することはたやすいことです。けれどもいま都会に暮らす人々でさえ、あの森の中で育てば誰もがデルスのようになれるに違いありません。この映画の主題はあくまでも友情ではないでしょうか。人口密度の低さはかえって人々の間に強い結びつきを生みだし、相互の価値観の違いをも尊敬させ、そこに強い友情が生まれることができたのかもしれません。デルスの「カピタン(隊長)!」という声がいまも遠くから聞こえてくるようです。ラストのアルセーニエフの悄然とした姿に、彼の失ったもののいかに大きかったかを思わずにはいられません。 [DVD(字幕)] 10点(2008-12-30 15:15:09) |
9. 迷子の警察音楽隊
日本人が見ればあまりにも殺風景なイスラエルの小さな町。バスを乗り間違えてこの町へ迷い込んでしまったアレキサンドリア音楽隊(エジプト人)の一行。画面の中からイスラエルの風景が持つ乾いた暖かさが伝わってきます。どこにでもあるようなとまどいとためらいの中で、かつて敵対していた人々の心が通い合い、そしてとうとう、大きな苦悩を背負うエジプト人の隊長がほんの少しだけほんとうのことを言います。それはほんの少しだけだけれども見る人に大きな感動を与えずにはいられません。エジプト人の若者によるイスラエル人の若者への恋の手ほどきの情景もほほえましく、そしてやさしく、たった一晩のできごとながら、見る者に多くの余韻を残す佳品です。 [DVD(字幕)] 10点(2008-12-29 20:40:56) |
10. グラン・トリノ
《ネタバレ》 死ぬことが禁じられ、死ぬことが不自然なことであるとまで考えられ、死に場所さえ取り上げられてしまった中で、現代日本人は老いていかなくてはなりません。でも、自分の死を最後の大舞台の演出に使うことだってできるんです。それこそ人生最後の晴れの舞台なんじゃないでしょうか。よーく考えてみるだけの価値はあると思いますね。 [映画館(邦画)] 9点(2009-08-25 06:00:04) |
11. バグダッド・カフェ
アメリカのやたら乾燥したほこりっぽい小さな場所でいらいらしながら固まって暮らす人々。彼らの面倒を見ながらいつも核爆発を起こしている奥さんの前に現れた迷子の太ったドイツ婦人。目が点になるような異質な出合いからこの物語は始まります。人々の友情と愛情を描き、映画史上忘れられない名作の一つとなりました。 [DVD(字幕)] 9点(2009-02-23 05:24:00)(良:1票) |
12. ガタカ
SFやファンタジーといっても内容は様々で、ただひたすらおとぎ話のような映像を見せつけて「どうです! すばらしいでしょ!」っていうものが多いのですが、ごくまれに、人間をより深く描くためにSFという設定を利用する映画があります。本作はそうした映画のひとつで、その硬質な画面とあいまって人間が持つ運命の苦しみと悲しみが見る人の心に深く染み入っていきます。おとぎ話的映像を期待すると当てが外れますが、数あるSF映画の中の傑作のひとつです。 [DVD(字幕)] 9点(2009-02-21 05:38:25)(良:1票) |
13. やわらかい手
《ネタバレ》 退屈で安全でそれでいて気を遣う良識的な生活を捨てざるを得なくなった主人公のおばあちゃん。骨の髄まで冷えてきそうな寒くて暗い街角を舞台に、孤立無援のおばあちゃんのハラハラドキドキの新しい旅立ちを描いて、「ああああ、いったいこれからどうなるんだろう。アンハッピーエンドだったらどうしよう・・・」などと思うと心配で心配でたまらなくなってきます。けれども大丈夫! 最後にほっとして、そして「ああああああ、な、なんていい映画なんだ・・・」と心の底から思うことができるすばらしい映画です。彼女の雇い主である風俗店のオーナーのまなざしがとても暖かいです。 [DVD(字幕)] 9点(2009-02-11 04:58:58)(良:1票) |
14. イレイザーヘッド
間違って夜中にかみさんと二人で見てしまいました。アイタタタタ・・・。なんかもう無防備な心のままで買い物に出かけ、取り返しのつかない不幸な事故に巻き込まれたような感じです。クリスマスの夜に見た人は何人? 日教組や政治家や江原啓之や日野原重明先生のご感想は? 映画史に残る作品ではありますが、恐ろしくてもう二度と見れません・・・。 [DVD(字幕)] 9点(2009-01-19 06:09:00) |
15. 黄色い大地(1984)
黄色と赤色を使って描きあげたあまりにも美しい映像詩。動と静の対比がすばらしく、背景として登場する中国の風景もスケールが大きく圧倒されます。人々の澄み切った歌声が今も聞こえてくるようです。 [DVD(字幕)] 9点(2009-01-12 07:04:06) |
16. 悲情城市
二・二八事件は台湾の人たちに中国本土への拭いがたい不信感を植えつけることになりました。台湾の田舎を旅したときに「また中国人が入ってきたらいやだなあ」という若い夫婦の会話を聞きました。日本への郷愁のただよう映像の中に、台湾の人たちの思いを感じないではいられません。 [DVD(字幕)] 9点(2009-01-11 06:51:25) |
17. サイダーハウス・ルール
自らの手は汚さずに理想を理想として掲げているだけでは、私たちはいつまでも幼いままで生き続けることになります。そしてその理想も、結局は人を傷つけるだけの凶器にしかなりえません。私たちは恐れながらも現実をまっすぐ見つめ、受け止めていくことによって初めて、幼い理想を捨て、より高い段階へと進むことができるのでしょう。これまで何回も見ているのに、ホーマーの帰郷の場面にはいつも涙があふれてきてしかたがありません。 [DVD(字幕)] 9点(2009-01-06 06:34:37) |
18. ホルテンさんのはじめての冒険
いまが昼なのか夜なのかも分からない北欧の冬。青空一つ出てこないぼんやりとした氷点下の闇の世界で、67歳の定年を迎えた超真面目な鉄道員ホルテンさんは右往左往しながら新しい人生を模索し始めます。決まり切った自分の生活に思い切って終止符を打ち、新しい人生を始めるのに遅すぎるということはありません。ホルテンさんがようやく制服を脱いだとき、うすぼんやりとした春の日の光が画面に降り注ぎ始めます。 [DVD(字幕)] 8点(2009-09-14 05:56:00) |
19. 未来世紀ブラジル
薄っぺらいセルロイドの膜を通して世界を見ているようなギリアムの世界。あるいは現実に向けて立ち上がらなくてはならないけれどもどうしても立てない明け方の悪夢の世界。 [DVD(字幕)] 8点(2009-08-31 05:41:12) |
20. ナビィの恋
平良とみと登川誠仁の名演が炸裂する爆笑ムービーです。もちろん沖縄がいつも幸せに溢れているわけではありませんが、暖かい南の海はそれだけでも温帯の人びとの心を惹きつけてやみません。沖縄というとひめゆり部隊に代表される映画が多かったのですが、内地とのしがらみを(あまり)描かないこうした映画が多くなってきたのは、沖縄が自信をつけてきた証拠でしょう。 [DVD(邦画)] 8点(2009-08-12 05:23:32)(良:1票) |