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プロフィール
コメント数 2474
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  ナポレオン(1927) 《ネタバレ》 
リドリー・スコットも同じ題材で撮ったけど、やっぱしナポレオンの映画と言えばこのアベル・ガンス版でしょ。私はコッポラが修復した81年の4時間版を観たわけだけど、オリジナルはなんと上映時間9時間!その他にも短いものは110分もありそして5時間30分、おまけにトーキー化されたものなど知られているだけでも10くらいの異バージョンが存在するというまさにディレクター・カット商売の先駆けみたいな感じです。ナポレオンの士官学校時代から始まり4時間かかってもやっとイタリア遠征に取り掛かるところまでしか描かれていません。いわばナポレオンの青春時代編といった趣きですが、時代背景としてのフランス革命の推移も割と丁寧に語っています。この作品の凄いところはその目くるめく様な映像のド迫力で、高速モンタージュ・多重露出・VFX特撮・手持ちカメラ撮影など、この当時には映画撮影に必須の技術がすでに完成していたというのは驚くしかありません。この映画は、士官学校時代・トゥーロン攻囲戦・フランス革命の推移・ジョセフィーヌとの結婚・イタリア遠征というのが大まかな構成ですが、どのシークエンスも大がかりなセットや大量のエキストラが使われていて引き付けられてしまいました。とくに国民公会議場や乱痴気騒ぎみたいな舞踏会のシーンでのモブ映像はまさに数の暴力といった感じで、カネが相当掛かってますよ。公会議場でナポレオンが恐怖政治で粛清された面々の亡霊と対峙するところも印象深いのですが、ここで「私は世界革命を起こして欧州共和国を創るのが目標だ!」と演説するのはまるでレーニンかトロツキーみたいな感じで、フランス革命は共産主義革命の雛形だったんだなという感が深まりました。 全長版ではナポレオンの生涯のどこら辺まで辿ったのかは興味あるところでもありますが、おそらくこのストーリーテリングのスピードではせいぜい皇帝戴冠あたりだろうなと思います。それにしてもこんなに尺が長いと、サイレント時代ですから劇場での劇伴演奏する楽団は大変だったでしょうね。感想としては満点つけたい誘惑はありましたが、実は半分しか観ていないのも同然なので、マイナス一点とさせていただきます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2025-01-04 22:14:36)
2.  裁かるゝジャンヌ 《ネタバレ》 
知って驚くしかないのは、この歴史的傑作のオリジナル・バージョンが80年代まで観ることが出来なかったということでしょう。28年製作のフランス映画ですけど試写の段階でカトリック教会の検閲で大幅にカットされ、劇場公開され世界に配給されたのはこの改変版だったわけです。サイレント映画ではよくある事例ですけどその改変版のフィルムも30年代には火事で焼失、80年代にオリジナル版のフィルムが奇跡的に発見されるまで、海賊版バージョンしか観ることが出来なかったんだそうです。 この映画の感想はもう“衝撃の映像体験”の一言ですね。ジャンヌが火刑されるまでの審問裁判のシークエンスでは、バストショットすら皆無のもう俳優たちの顔のどアップの連続、ジャンヌを含めてノーメイクの俳優たちが繰り広げる演技というか顔芸には圧倒されっぱなしです。デジタルの力もありますけど、サイレント映画とは思えないシャープな映像は圧巻です。ドライヤーは本来トーキー映画として製作したかったそうで、サイレントながら俳優たちにすべて脚本通りに演技させたそうですから、現代の眼でも違和感がない。ジャンヌ・ダルクを救国の英雄として描くのではなく、ルーズ・ルネ・ファルコネッティが演じるのはとても19歳には見えないくたびれた田舎の娘としか見えないのもリアル過ぎでしょ。後にはイングリッド・バーグマンやミラ・ジョヴォヴィッチまでもが演じるキャラですが、ファルコネッティは歴代ジャンヌの中ではもっともアレな女優だったんじゃないでしょうか。 ラストの火刑はほんと観ていて辛くなる、まさにトラウマものです、なんせジャンヌが焼けぼっくりになるまで見せるんですから。また刑場となるルーアン城の遠近法を無視したようなセットがまた印象に残ります。美術は『カリガリ博士』のヘルマン・ヴァルムの仕事ですから、納得です。でもこの美術構成は、ケン・ラッセルの『肉体の悪魔』でそっくり再現されており、美術担当デレク・ジャーマンの拘りが感じられます。
[DVD(字幕)] 8点(2022-06-06 22:08:33)(良:1票)
3.  メトロポリス(1926) 《ネタバレ》 
本作は、アヴェル・ガンスの『ナポレオン』エリッヒ・フォン・シュトロハイムの『グリード』と並んで20年代を代表する三大超大作と称されているそうですが、もちろん有名なのはこの『メトロポリス』でしょう。これぞまさに、『2001年宇宙の旅』に匹敵するSF映画史上に残るオーパーツ的な存在です。でもオリジナルでは三時間近かった上映時間のうち25%のフィルムが散逸してしまったというのは残念なことです。 サイレント映画はさほど観てきたわけではないけど、修復版の鮮やかな映像を観るとその映像の造りこみ方は感嘆するほかないですね。とくにアナログな手法ながらもその合成技術は凄いの一言です。またメトロポリスの都市デザインがとても20年代の発想とは思えないレベル、中でもチラッと映る屋上に五角形のヘリポート(?)がある高層ビルは、『ブレードランナー』に登場するポスターにも使われているビルと映されるアングルまでそっくり、これは明らかにオマージュですね。サイレント映画ですから当然セリフはなし、でも字幕は必要最小限しか使われてなく当たり前ですが映像と俳優の動きだけで十分に伝わるその情報量、一から十までセリフで説明しようとする最近の日本映画界は爪の垢でも煎じて飲みなさい。あの有名なロボット・マリアの登場シーン自体はわずかですけど、ブリギッテ・ヘルムのコピーされた邪悪なマリアの演技が鬼気迫ってます。彼女はスタントでも良いのにラングの指令でロボット・マリアのスーツ・アクターまでさせられおまけに火刑のシーンでは実際に目前で火がつけられ、「二度とラングとは仕事をしたくない」とインタビューに答えたそうです。メトロポリスの歓楽街がヨシワラと呼ばれているのは笑ってしまいますけどね。マリアというかこの映画の根底にはキリスト教的な思想が色濃く感じますけど、フリッツ・ラングと違ってナチスに心棒してドイツに残ったテア・フォン・ハルボウの脚本とは思えない、人って不思議なものですね。 ロボット・マリアはもちろんのこと、うなだれてゾンビの様に隊列を組む労働者やメトロポリスの都市デザインなど、この映画が後世に与えた影響は計り知れないものがあります。やっぱ死ぬまでに観ておくべき映画のひとつでしょうね。
[DVD(字幕)] 9点(2021-12-24 23:31:32)
4.  吸血鬼ノスフェラトゥ(1922) 《ネタバレ》 
『ノスフェラトゥ』といってもストーリー・ラインは『ドラキュラ』とほぼ同一。これは『ドラキュラ』の原作者であるブラム・ストーカーの未亡人がムルナウの映画化プランにOKを与えなかったからで、登場人物の名前を変えてストーリーも少し改変したら大丈夫だろうと強引に映画化しちゃったので案のじょう著作権侵害で裁判になり当然のごとく敗訴してフィルムは差し押さえ、その後40年近くお蔵入りだったそうです。『ドラキュラ』は19世紀の小説だというイメージですから、1920年代にブラム・ストーカーの未亡人が存命だったとは驚きです。 2011年にNHKで放映された復元版での鑑賞でしたが、これが驚くほど鮮明な映像です。いくらデジタル技術が進歩しても残存するフィルムの状態に左右されるのが復元版の宿命ですが、欠落だらけで悲惨な状態だった『メトロポリス』の復元版に比べると雲泥の差です。サイレント映画ながら俳優の演技にサイレント特有のわざとらしさがあまり感じられず、編集も現代的なテンポに通じるところがありました。マックス・シュレックのノスフェラトゥは歴代ドラキュラの中でも群を抜いて不細工、そして群を抜いて不気味です。初登場のシーンや棺桶を担いで街をさまようところ、そしてエレンの住んでいる向かいの屋敷に姿を現わすカット、これは子供の時に観たら生涯残るトラウマになったことは間違いなしです。顔は禿げたネズミ男みたいでよく考えると滑稽でさえあるけど、そのふらふらした挙動と狂気をはらんだ目つきがなんかヤバいものを見てしまったという恐怖に襲われてしまうんです。でもラストは強引かつあっけない幕切れで、そこまでのテンションが一気に下がってしまうところは残念ですが、まあそこはサイレント映画なのでしょうがないでしょうね。 確かにこれは、死ぬまでに観ておくべき映画の一本ですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-07-22 23:42:42)(良:1票)
5.  ゆすり(1929) 《ネタバレ》 
これがヒッチコック初のトーキー作品なんですか。あとから音入れをした(というか最初はサイレント映画として撮った)ということですが、確かに冒頭のシークエンス辺りは、これはサイレント映画なのかなといった画面展開のような感じがします。でもトーキー映画としてはまだ未熟な部分があるかもしれませんが、サイレント映画としてはこのジャンルとしては最高点に到達したといえる超絶的な技巧で、そのままトーキー移行できたのも当然という仕上がりだと思います。ストーリーテリングも完全にヒッチコック印で、単なるハッピーエンドで終わらないところも、後年の甘いロマンチックな作風のサスペンスよりシビアなところがあって興味深いです。ラストでまた出てくるちょっと不気味な道化の絵が、原罪を犯してしまったヒロインをあざ笑っているみたいです。 どうも今まで撮られたことはなかったみたいですが、現代の視点でリメイクして欲しいかなと思う次第です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-10-31 23:41:26)
6.  下宿人(1926) 《ネタバレ》 
主人公が初めて下宿屋を訪れてくるシーンは、その不気味さではけっこう有名なカットで今ではいろんなホラーもの記事で使われているの見覚えがある方も多いはず。それだけでも初期のヒッチコックがけっこう映像派だったことが理解できますが、サスペンスの盛り上げ方もなかなかのものかなと思います。“復讐者”と名乗る切り裂きジャックを彷彿させる殺人犯については単なる狂言回しだったというわけですが、そこが早めにわかってしまえばこの映画のサスペンスが台無しになってしまうわけで、そこはさすがヒッチコックだけあってよく判っておいでです。私の眼には、主人公の容貌が内村光良にしか見えなかったのがちょっと難点でしたが(笑)。 あと気が付いたのは主人公が群衆に追いかけられるところなんかはフリッツ・ラングの『M』にかなり似ているなということです。もちろん本作の方が先ですが、ヒッチコックはあのラングにも影響を与えていたのかと思うと、彼の偉大さを改めて認識する次第です。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-10-30 23:57:35)
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