1. 修道女
《ネタバレ》 はっきり言ってあまり映画的に面白いとは思わなかった。序盤のシュザンヌと母親が会話するシーンでの鐘を有効的に用いた演出は中々良かったものの、それ以降目を引くような演出が見られず、ただ映像を撮っているだけのような味気ない印象で、同じ修道女を描いた映画ならロベール・ブレッソンの罪なき天使やイェジー・カヴァレロヴィッチの尼僧ヨアンナ、アラン・カヴァリエのテレーズの方がそういう点では上回っていたと思う。加えて修道院自体の描写の少なさにも物足りなさを覚え、ただシュザンヌと周りの人間の交流を描くだけならディドロの原作だけでも十分なのではと感じた。しかしながら主役のアンナ・カリーナの演技力は目を見張るものがあり、その点だけは良かった。 [ビデオ(字幕)] 3点(2010-09-01 11:59:16) |
2. アルフィー(1966)
初々しいマイケル・ケインがいろんな意味で魅力的で、カメラに話しかけるスタイルも当時としては斬新だったし、ラストを飾るテーマソングも映画史に残る名曲だと思う。しかし元が女たらしのどうしようもない日々を綴る、言ってしまえばどうでもいいストーリーで、最後まで見終わった後も「だから何?」という感想しか浮かばなかった。 [DVD(字幕)] 4点(2010-08-26 23:11:44) |
3. 狼の時刻
《ネタバレ》 惑星ソラリスやノスタルジアで知られるアンドレイ・タルコフスキー監督は、この映画の監督であるイングマル・ベルイマンを尊敬していたことで知られ、遺作のサクリファイスではベルイマン作品常連のスタッフやキャストを多く起用した。そんなタルコフスキー監督が最も影響を受けたのではないかと思えるくらい、幻想的で芸術的な作品である。マックス・フォン・シドーが演じる画家が一分の長さを測るシーンでの長回しやその画家が海辺で少年を殺すシーン、屋敷で裸の元恋人と逢引きするシーン、そして終盤の画家が殺害されるシーンはその最たるもので、見入るあまりに体が硬直したかのような感覚に襲われた。他にも超現実的で美しいシーンが数多くあり、この映画で表されたベルイマン監督の芸術性が、タルコフスキー監督に影響を与えたのではないか、そう思わざるを得ない。 [DVD(字幕)] 10点(2010-08-21 18:13:57) |
4. 恥
イングマル・ベルイマン監督の作品で最もスケールの大きい映画のひとつかと思われる今作(この映画以上のスケールを持ったベルイマン映画は第七の封印くらいだろう)。その感じたのは戦争を描いた映画だから、というのもあるだろうがそれ以上に他者との関係を主に描いているからであろう。代表作である「野いちご」や「鏡の中にある如く」、同じ年に撮られた「狼の時刻」のような内省的な作品の多いベルイマン映画の中で、この映画は異質な作品と言えるだろう。 そしてこの映画は爆音が鳴り響き生命が次々死んでいくおぞましい戦場と化した村、そしてその状況下における一組の夫婦の人間性と人間関係の崩壊を描いており、見ていて非常に気分が沈んでしまう。これほど残酷で冷たく、そして哀しい戦争映画はこの映画くらいだと思うくらいに重苦しい内容の映画だが、ベルイマンの描くおぞましい人間描写はやはり見ごたえのあるものだった。 [DVD(字幕)] 9点(2010-08-21 17:37:19)(良:1票) |
5. 怪談(1964)
小林正樹監督の作品としてはもちろんのこと、日本映画全体としても最も芸術的で美しい映画であるように思われる。武満徹の幽玄な音楽、日本絵画のように色鮮やかな映像、美しい衣装、そして静謐ながらも芯のある役者陣の演技、それらすべてがホントに素晴らしく、思わずため息が出てしまう。とても小泉八雲の怪談が原作とは思えないほどに芸術性のあるこの作品は、まさしく日本の宝である。 [ビデオ(邦画)] 10点(2010-08-13 11:29:11) |
6. 未知への飛行
博士の異常な愛情でキューブリックがブラックユーモアたっぷりにコミカルに表現したものを、この映画ではクソ真面目にやっており、その様に乾いた笑いが出てしまった。しかし大統領役のヘンリー・フォンダの切迫した演技は素晴らしかったので彼に3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2010-08-13 10:22:55) |