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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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【製作年 : 1930年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  怪人マブゼ博士(1933) 《ネタバレ》 
続・「ドクトル・マブゼ」。 ラングがドイツ時代に撮った最後の作品で、ラングのサスペンスフルな活劇とオカルティックな演出が凝縮された傑作だ。 ラングはアメリカ時代の方が完成された監督だと思うが、やはりドイツ時代のラングも超凄えぜ!  BGMを極力使わずとも保たれる緊張、無駄なセリフを使わずとも意図が手に取るように解るサイレントの呼吸、加えてラング特有のドロドロとした恐怖演出。 残留思念、亡霊、“魂”! 2時間の長さを感じさせない映像作り。  まずは何といっても、あのファースト・シーン。 工場の轟音が響く密室、拳銃を握り締めた怪しげな男、そして部屋に入ってくる男たち。 映像によって語られるこのサスペンスと緊張。 密室、脱出、襲撃と爆発。この完璧と言っていい7分。そして次のシーンにまで繋がる10分間!  一体男に何が起こったのかを探る警察たちの捜査、その裏で交錯する様々なドラマ、そして“ドクトル・マブゼ”の不気味な存在。 これはサイレント映画の傑作「ドクトル・マブゼ」を見た方がより楽しめるだろう。  刑事のオッチャンが時計まで使って情報を掴もうとするシーンはシュールだ。ラングがたまに見せてくれるこういうユーモアが大好きです。  そしてラングの十八番、終盤の畳み掛けもまた見事な事。 アパートでの攻防、密室からの脱出と取り調べの交差、煙突が1本ずつ倒れながら大炎上する工場、クライマックスの追走劇。 派手なチェイスではなく、猛スピードで通り過ぎる木によってその迫力を語る。良いねこういうの。  マブゼの残留思念に踊らされる幾多の登場人物たち。ラストはもう少しインパクトが欲しいという人もいると思うが、俺には“悪夢”から解放された男と亡霊同然になってしまった男の強烈な対比だけで充分すぎる。 扉が閉まると同時に幕を降ろすエンディングも素晴らしい。ラングが好きで良かった。こんな凄い映画にまた出会えたのだから!
[DVD(字幕)] 10点(2014-03-27 00:59:38)
2.  周遊する蒸気船 《ネタバレ》 
再見。 蒸気船が何隻も大河を走る光景は展開の速い活劇「侠骨カービー」でも描かれていたが、本作はその蒸気船をメインにして発展させた作品。 バスター・キートン「蒸気船」と唯一張り合える蒸気船映画の傑作だ。俺が一番好きなジョン・フォードの、最高傑作の一つ。  全編テンポ良く進みユーモア満載で退屈しない。冒頭のやり取りからして楽しませてくれる。 ミシシッピー川を走る一隻の蒸気船。水車のような外輪を勢いよく回し、煙を噴き上げながらのどかな自然の中を走っていく。 甲板の上でインチキ臭い神父が黒人に看板を担がせ説教を垂れ、酔いどれからリレー形式で酒を取り上げる。その裏で商人が「健康に良いぞ」と酒を売りさばいてんだから可笑しい。 この「ポカホンタス」が本当に助けてくれるんだからまた面白い。所々西部劇からアイデアを持ってきたかのようなアクションが楽しい。  汽笛を景気よく鳴らす挨拶、神父に誓った筈の男は昔馴染みに会った途端にまた酒をグビグビ飲みだす。  辿り着いた船はボロボロで中は鶏小屋状態。それが時と共に川を突っ走る蒸気船に、老いぼれは船長に、アバズレは美しい操舵手となって“蘇る”。  立証は叔父さんに任せろ、可愛い甥と惚れちまった女のためならゴロツキどもが押し寄せて来ようが守り抜いてやる。石を窓にぶん投げて起こした保安官も、鍵を投げつけて渡すようないい加減なデブかと思いきや、慰めに蝋人形館を案内したり、罪人だろうが関係なく結婚を祝ってやり、絞首台でギリギリまで粘ってくれる仕事人だった。  テーブルクロスのスカートと着のみ着のままで連れてこられ顔の強張ったワケ有り娘、フォークを突き立てるくらい気を強く張っていた理由が突如雪崩れ込み、平手打ちを浴びせ、左手で掴んだ包丁を受け渡し、さっきまでアバズレ呼ばわりしていた男が彼女を庇うようになっていく。靴なんぞ駄賃代わりに置いてけ!ついでにケツもブッ叩いてやる!あの靴はいつあそこに置かれたのだろうか。  事情を知ったら気前よく家族の形見のドレスをプレゼントしてくれる優しさ。伯父さんの心とベーコンを焦がすような頬への口づけ。 アン・シャーリーがどんどん可愛くなっていく姿がたまらない。帽子を被り船乗りの服とドレスを合わせたような衣装をまとったり、繋ぎのような恰好をしたり可愛らしい。  甥を助けるための資金源獲得、鯨の中から助けられるバンジョー奏者との出遭い。名前を与えるのは船員として歓迎するため。 ステピン・フェチットは本作と「プリースト判事」「太陽は光り輝く(コレも蒸気船と馬が登場)」でコメディリリーフとして、「世界は進む」では兵士として登場。黒人俳優の活躍の場を拡げた名優の一人だ。 彼等の活躍が同じフォードはウディ・ストロードの存在が輝る「リバティ・バランスを射った男」「バファロー大隊」へと繋がっていく。  酔っぱらいながらペンキを塗りまくり、鉄格子を挟んだノコギリの演奏、二人だけが分かち合う口づけ、操船訓練、“挨拶”に夢中で巨大な舵が勢いよくまわり、船で店を開いたら閉店させる勢いで武装して押し寄せるお客様方、それを黙らせる“ジェシー・ジェイムズ”たちの拳銃と銃声。押し寄せた人々まで蝋人形のように固まってしまう。精気の無い白人人形と不気味な笑みを浮かべる黒人人形のあからさまな完成度の差に爆笑。  そして刑務所だろうが船内だろうが黒人も白人も何処の誰だろうが関係ない、たった一人の人間を救うため一丸となり川を突き進む裁判の証人探しと蒸気船レースへ!  半ば巻き込まれる形で参加、船と命が賭かった勝負、大砲の発射を合図に一斉に汽笛を鳴らし走り始める船、船、船!ゆったりしているようでジリジリと追い続けるチェイス、何が何でも先頭に立たなきゃならない時間との、船との追っかけこ。 船を追って馬も駆け抜け、群衆の中に証人見つけりゃ投げ縄でとっ捕まえ搔っ攫い、燃料が無えなら家具も甲板も船もブッ壊してそれをくべ、蝋人形も酒も放り込んじまえ! 船はまた作ればいい。だが命はたった一つ、死んだら何にもならねえ。卑怯者と罵られようが知ったことか、それがどうした、信じて待ち続けてくれる者のためなら手段なんぞ選んでいる暇はねえぜ。  括りつけられるロープ、蝋人形とはいえナポレオンも女王もジョージ・ワシントン大統領もみんなヒャッハー!だがやめろー俺は人形じゃねえっー! 大量の「ポカホンタス」をリレーで投げ入れまくりヴォイラーは激しく揺れて火炎を、煙突から黒い爆炎を吹き出し、でも一本くらい取っといて、トロフィーなんぞいらん裁判所まで連れて行け、扉が開いた瞬間に“騎兵隊”さながらに駆けつける馬車馬!
[DVD(字幕)] 10点(2014-03-21 14:39:51)
3.  弥次喜多道中記(1938) 《ネタバレ》 
「鴛鴦歌合戦」に並ぶ・・・いやそれを凌駕するくらい面白いオペレッタ時代劇の傑作。 オペレッタ時代劇といっても、開始20分目にしてようやく歌が始まる。最初20分はユーモアを交えた普通の時代劇なのだ。  「鼠小僧」が追われる場面から始まるファーストシーン、説明乙な剣豪とワケ有り泥棒の邂逅が面白い。 追う者と追われる者とも知らず・・・そして捕り方に潜む「裏切り者」。 片岡千恵蔵の演技が上手い。上手すぎる。杉狂児とのコンビが面白い。 志村喬を「はげちゃびん」呼ばわりできるのは千恵蔵だけです。 旅までのシリアス気味な20分、残り1時間20分の歌あり騒ぎありの旅道中。 「大福喰いのマンジュウおじさん」シーンは最高だった。 名前の笠が呼ぶ幸運と不幸。結局お銀は今何処。中盤の天狗の「大立ち回り」も踊るように爽快だった。川面のシーンは「次郎長三国志」に繋がる演出。 三条橋から日本橋、困った時にぱwぴwぷwぺwぽwwww マキノ雅弘にハズレなし。
[DVD(邦画)] 10点(2014-03-11 02:17:22)(良:1票)
4.  大人の見る絵本 生れてはみたけれど 《ネタバレ》 
再見。やっぱり江戸っ子時代の小津は最高に面白い。活き活きしてるね。  初っ端から桃だか種だか分からないもんから“生まれた”赤ん坊の御挨拶(股間を抑える元気な男の子です)、泥にハマッた車輪の唸り、それを見つめるおとんと息子二人。 サボるな働け押し問答、上着を着こむのは作業が終わったから。  先に行って待っていた母と子の再会。どうやら引越して来る最中だったようだ。 子供と親と態度を変える酒屋、お近づきの印に知恵の輪と“御挨拶”を喰らわせガキを泣かせてスタコラさっさ。酷いもんだ。  父親はお得意先にペコペコ頭を下げ、それをつまんなそうに見上げる子供。友達の呼び掛けに喜んで走り寄る無邪気さ。  “変な奴”とのご対面、バイキン(黴菌)みたいな顔してやがらあ、背中に注意書き貼られてやがらあ、ガキ大将の拳骨vs下駄、パンを拭いて奪うのは思いやっているから。ここの連中は新入りに拳骨でしか挨拶できんのかww けん玉を止める兄弟の泣き声、報復する相手を見つけ歩みを止めるようなキャメラの動き、子供たちだけが知る“おまじない”、「倒れろよこの野郎」とばかりに突き合い取っ組み合い逃げるが勝ち。  喧嘩して学校サボッて怒られて、子供の視点で見つめる「大人の世界」。互いに撮った映像を披露し合う発表会、映写機が映すものを見てしまった衝撃と後悔。醜態(変顔)を晒しても愛想笑いを浮かべ、夜道をトボトボと歩く子供たちの背中が語る失望。 「その夜の妻」の時といい、背中で歩き去る場面が様になりすぎ(褒め言葉)。  昔は子供だった父親も、今では大人の目線でしか子供を見られなくなってしまったのかも知れない。子供に無くて大人に無いもの、大人になって得たものと失ったもの。  ただ、そこから「どう従うか」ではなく「どう付き合うか」という事をこの映画は教えてくれる。  庭先から見える電車の疾走、風が吹き荒ぶ中を椅子に座りつっぱね続ける意地、でも母ちゃんにはちゃんと返事する微笑ましさ。 草を食べズボンの紐で押さえつける空腹、椅子の上へ握り飯を置いて行き、遠くから見守る愛情。椅子を寄せ一緒につまみ、話し合うのは仲直りするために。 食器が置かれた食卓。食器をひっくり返すのは「いつもの通り」に戻ったことを表すため。  戦前は家族の団欒を表わしていた食卓が、戦争を経た「麦秋」「お早う」等では帰らぬ者への鎮魂を現わす場ともなっていく。 列車が通り過ぎた先で見たもの。兄弟は父を見送ることを選び、兄弟の友達もまた“おまじない”で地面に倒れ、起き上がり腕を背中にまわし共に歩いていくことを選ぶ。知恵の輪が結んだもの、知恵の輪が解けてもほころばないもの。挨拶をしに走り行く友達を待ち続けてくれるのだから。
[DVD(邦画)] 10点(2014-01-07 16:35:38)(良:1票)
5.  鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 
「弥次喜多道中記」に並ぶオペレッタ時代劇の傑作。前者が歌と股旅映画が融合した作品ならば、この作品はミュージカルとしてより洗練された楽しさ。歌いっぱなしの「鴛鴦歌合戦」、歌ありアクションあり何でもござれの「弥次喜多道中記」。どちらも大好きな映画だ。  正月特番で作られた1時間映画だが、みんな「演じている」という堅苦しさが無い。量産性・劇団のような俳優陣の共通は何百回と稽古を積み上げた迫力を味わえる。みんな活き活きとした表情で元気に歌いあっている。当たり前だがみんな歌が絶品。ディック峰、志村喬と歌も演技も最高の面々が揃っている。  ストーリーそのものは典型的な時代劇だが、殿様見物、微妙な三角関係、価値観の崩壊(骨董収集がガラクタの山と化す志村喬)、金か愛か、ラストの踊る様な立ち回りなど見所が多い。  特に終盤の殺陣は面白い。無駄なチャンバラはせず、身のこなしだけで刀を避け敵を投げ飛ばす。  死人が出ない喜劇タッチの面白さ。  でもちょっとは斬り込めよディックさん・・・(笑) その辺ひっくるめて誠に愛らしい存在です。  ラストの展開は多少強引かなと思ったが、エンディングのカーテンコールの見事さに唸りっぱなし。   俺にとって作品の面白さに時代は関係ないんだな・・・という事を痛感させられた映画の一つです。
[DVD(邦画)] 10点(2013-12-29 14:52:41)(良:2票)
6.  街の灯(1931) 《ネタバレ》 
“映画”とは何か?チャールズ・チャップリンである。 そう言い切ってしまいたいほどチャップリンの映画には子供の頃から惹かれ、引き込まれ、笑い、ワクワクし、泣かされてきた。それくらいチャップリンが大好きだ。 俺は「モダン・タイムス」の方が好きだが、この作品も二度見て、いや見れば見るほど新しい感動に包まれる最高の映画だ。 特に終盤、吹き矢の子供が二人の男女をめぐり合わせる“悪戯”なんてもう。あの瞬間ほど「ハッ」とする場面は無いと思う。 チャップリンは花売りの少女から希望という“灯”を貰うし、チャップリンも少女のために我武者羅に働いて彼女の心に瞳という“灯”を授ける。一輪の花と手の温もりが、見えない筈の闇を照らす。 自分のためでなく、誰かのために命を賭けて生をまっとうする・・・素敵じゃないか。 冒頭から街の銅像の式典、その銅像の上でいきなり爆睡するチャップリンの登場からして面白い。 路上で出会った花売りの少女。彼女の眼が見えないという事を身振りと「お拾いになった?」の一言で理解できる。サイレントなのに男がドアを閉じる音が聞こえてきそうな場面だ。 チャップリンは完璧な像よりも本物の人間に惹かれていく。放っておこうと思っても見捨てられない情は赤子を拾う「キッド」といった作品を思い出す。 誤って水を浴びせられても文句を言わないチャップリンは英国紳士の鑑です。 眼が見えなくても生きている人間もいれば、事情は知らんが人がいるにも関わらず自殺を図ろうとする人間もいる。それを見守るように輝く街の灯。以前のチャップリンの短編なら水に落ちたらそれまでという話も多かったが、この映画は底から這い上がり次に進む事を選択する。 少女と再会したチャップリンは少女に誓い働いて働きまくるが、どれも失敗続きで中々上手くいかない。 総てをかけたボクシングシーン。幻に見る女、惚れた女の未来が懸かるたった5分。 それまで積み上げられたドラマ、それがあっと言う間に弾けていく避け合い、殴り合い、ゴングに振り回されるファイターたち。レフェリーは彼らの踊るようなボクシングに振り回される。 最後までチャップリンに恩を仇で返してしまう男は或る意味一番不幸。
[DVD(字幕)] 10点(2013-12-29 14:19:19)(良:1票)
7.  丹下左膳餘話 百萬兩の壺 《ネタバレ》 
久々に再見したがやっぱりムチャクチャ面白い。前回は字幕付きで見たが、一度内容が頭に入っていたからか二度目は字幕なしでも超楽しんでしまった。今回は2004年に出された「幻のシーン」が収録されたソフト。   物語は百萬両もする一つの壺を巡って展開される。 出だしは淡々とした語りで始まるが、壺が次から次へと持ち主を変えていく様子がミソ。 道場主とその妻、貧しくも強く生きる町人の親子、そして我らが丹下左膳とその相棒お藤の二人。それぞれに掛け替えのないパートナーがおり、尚且つ壺が彼らを巡り合わせるこのドラマ。 偶然か必然か、運命のイタズラをユニークかつテンポよく描いていく。何といっても面白いのが夫婦揃ってツンデレという所。  左膳「誰があんなガキ!」→もうしょうがねえな~(照れ) お藤「あたしは子供が嫌いなのよ!!」→暖かいご飯をたらふく食わせる 仕舞いには子供を寺子屋に行かせるか道場に行かせるかで夫婦喧嘩に発展する始末(ある意味終盤の道場への殴り込みよりもハードなバトル)。 幼いながら気丈に振る舞うちょび安が可愛い。   用心棒(居候)はいつの時代も立場があるんだか無いんだかハッキリしませんね。 怖い形相だけど本当は優しい左膳、口は冷たいけど体は腹の減った子供にご飯を食べさせたり物欲しそうな竹馬を買ってあげちゃったりうなじがちょいと色っポイお藤姉さん。   本作は終盤までほとんど戦闘がないが、一瞬で決まる戦闘の鮮やかさも素晴らしい。 懐に手を入れる侠客、顔は横を向いても目線は常に相手を捉える左膳、子供が数を数える瞬間の緊迫・・・一瞬の抜刀!    何?金がいるって?そんな時は道場破りよおっ!!     また2004年に日活から出されたDVDに収録された幻の場面。 クライマックスで左膳がちょび安を止めるべく家から出た矢先、左膳に恨みを抱くヤクザ連中が左膳に絡んでくる場面。 戦後に公開されたver.はGHQによって一部の殺陣がカットされてしまったそうだ(「人情紙風船」や「河内山宗俊」も同様に一部の殺陣がカットされてしまっているという)。   だが2004年にクライマックスの殺陣の一部を収めた数十秒のフィルムが発見され、見事にdvdで蘇った。 残念ながら音声トラックは行方不明の無声、画質も余り良くない。それでも一瞬の斬り合いが光る音が聞こえんばかりの迫力。ヤクザ連中をあしらう様に肩を突き離し、それでも「野郎ッ!」とばかりに斬りかかるヤクザたちを叩き伏せる!   本作で左膳を演じた大河内傅次郎。 伊藤大輔監督の元でも左膳を演じましたが、今作では喜劇役者としての才能も活かした演技が特徴。その独特の野暮ったさとセリフの聞き取れなさが左膳のエネルギー溢れるキャラにピッタリですね。山中貞雄監督の演出、傅次郎のパワー漲る演技が合わさった名演です。   お藤を演じた新橋喜代三(今村嘉子・後に結婚して中山嘉子)も好演。愉快なやり取りが忘れられません。 「野良犬」で貫禄ある演技を見せた山本礼三郎も出ていたりと、俳優陣も曲者揃いで楽しませてくれる。   字幕で楽しむも、字幕なしで味わうも絶品の1本です。
[DVD(邦画)] 10点(2013-12-24 12:57:34)(良:1票)
8.  暗黒街の顔役(1932) 《ネタバレ》 
ハワード・ホークス最高傑作の一つ。一体このハワード・ホークスという男は何処まで人を楽しませてくれるのだろう。 純粋な娯楽の中に現代にも通じるテーマをねじ込むその心意気。劇中で粉々になる夥しい窓ガラスの雨。 この一枚一枚が現代社会の「ルール」なのかも知れない。それを破壊していったある男の生き様を描く! 女性陣のメイクはサイレント時代の名残か少々濃いが、この妖艶なアイシャドウは暗黒街を照ら“瞳”となり、は本作を彩る最高の華となる。 無駄な音楽と血の描写を徹底的に廃したこだわり。 “滅びの美学”を血の雨で語らないのがこの時代の映画だ。 冒頭の“暗殺”までの張り詰めた5分間、“星”で火をつけるマフィアと警察の対立、抗争の裏で回転する“コイン”の一時の安息・・・最初25分の丁寧な展開はまったく飽きない。 だが「早く何か起こらないかな」と否応なしにワクワクしてしまうのも確かだ。 溢れかえるビールは女の初潮か、流される血の噴水を現すのか・・・。嵐の前の静かな25分間。そして次々と銃声が飛び交う凄まじい抗争の幕開けだ。 マシンガンのようにめくれるカレンダー、凄まじい銃撃戦、ぐしゃぐしゃになる車、疑心暗鬼、騙し合いと殺し合い・・・たった1時間30分の中でこれほどの密度、これほどの余裕。 終始撃ちまくっている映画なのだが、その合間合間で光る人間ドラマの魅力もこの映画を更に盛り上げてくれる。 組織社会での成り上がり、コインのような日常と犯罪の表裏一体の生活、生と死、光と闇。 際限の無い復讐戦は何も産まない。 あるのは果てしない「暴力の愚かさ」がこの映画の根底には存在している。 権力、裏切り、妹にまで欲情する色欲・・・あらゆる欲望に染まっていったトニー。 「THE WORLD IS ROURS!」 「世界は俺の物だ!全ては俺の物だ!!!」 ラスト6分の最後の銃撃まで息を抜けない、ギャング映画の傑作。
[DVD(字幕)] 10点(2013-12-19 14:17:36)(良:1票)
9.  怪盗白頭巾 前篇 《ネタバレ》 
・「河内山宗俊」の特典として収録されていたものを見た。  何やら怪しい算段をしてそうなオッサンと老人。 そこに障子を開き刀を上にかざしながら突入する怪盗白頭巾の一味!!  刃が空を斬り、その直後に捕り手たちが群をなして迫り来る。  白頭巾は仲間を逃がして殿を買って出る。 障子に隠れ、敵が来た瞬間に浴びせる一撃。 複数の捕り手と切り結び、斬られた敵が障子とともに倒れたりして、フィルムは終わる。
[DVD(邦画)] 9点(2017-04-24 18:42:26)
10.  ザ・ウィメン 《ネタバレ》 
ジョージ・キューカー最高傑作。  とにかくこの映画、女性しか出ません。赤ん坊から婆さんまでみーんな女、女、女。幼い子供だって立派な“女”。宝塚みたいに誰かが男性役で出るとかもしません。   脚本も女性だし監督のキューカーだって筋金入りのゲイというより魂は乙女みたいなもんです。出てくる犬も全部メスだったかオスも1ッ匹くらいいたかな。  男の声すら出ないし、存在が確認できるのは受話器の向こう側だけ。劇中フィルムすら男は出てこない。  とにかく女達の怖さ、言葉による殴り合いや女の強さをこれでもかと堪能できる素晴らしい映画。  「イヴの総て」みたいに男の存在が女達を際立たせる事もあるが、これほど見えない男達の存在が女性を引き立てる映画もない。  メンツもジョーン・クロフォードをはじめノーマ・シアラーやロザリンド・ラッセル、ポーレット・ゴダード、端役にジョーン・フォンテインなど豪華だ。  超高級エステ・パーラーのマニキュリストが流した噂が、流れに流れてやがて一大スキャンダルに発展していく狂騒。   動物に例えられる女性陣のオープニング、犬の喧嘩がやがて女性陣のバトルに発展してく。 エステに励む女性たち、乗馬といったスポーツに精を出す親娘。あの馬もメスかしらん。 エステは女性の身体をかたどったボトルキャップも売る。  例の黒人女性は「風と共に去りぬ」にも出ていた。そういえば「風と共に去りぬ」も最初はキューカーが監督していたんだっけか。   悪態つきまくっていた女性がカーゴに躓いてまっ逆さまになるシーンは爆笑。アナウンスまでシュールだころ。   中盤のファッションショーは美しいパートカラーも楽しめる。当時の流行を覗く事ができる。 もっとも、ファッションショー後に黒服を脱ぐシーンが一番ドキドキしてエロティックなのだけれど。 ドアから出たらドアごとそのまま付き返すシーンもクスッとくる。  ミニスカでやるエクササイズはエロいが、女性としてはどんな心境なのだろうか。  今の時代は短パンやスパッツが普及しているけどさ。   後半に出てくるポーレット・ゴダードとクロフォードのキャットファイトも笑いが止まらなかった。  噛み付きまで繰り出すクロフォード。 つうかポーレットが可愛すぎて辛い。ショートパンツ姿が良い。  「モダン・タイムス」のポーレットもスンゲー可愛かったよ・・・。   泡風呂におけるクロフォードと女たちのやり取りも良い。  下の透明な水槽からクロフォードの脚がチラり。  香水の音ワロス。  クライマックスまで扉の中に閉じ込められたりと散々なクロフォード。  髪が乱れた感じもまた良いっす。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2016-11-19 01:44:10)
11.  淑女は何を忘れたか 《ネタバレ》 
小津のトーキー初期のほのぼのとしたコメディ映画。コメディと言ってもほんのちょっと「クスッ」としてしまう感覚。ルビッチ風味のやり取りを積み重ねていくのが面白い。 車、大きなタイヤを覆うカバー、車から降りてきた毛皮をまとう成金女。ボールで壁当てして遊んでいる子供と会話。  囲炉裏を囲んで主婦の談笑、「ちっ」、「ちぇっ」、「ほっほっほっほっ」。冒頭8分の軽快さが素晴らしい。  小腹がすいたからうなぎを頂戴、ご飯と別々にねって贅沢だなオイ。  大学の先生、講義 居眠り男への扱いが面白い、関西弁を喋る娘、嫁入り前でも吸いたい煙草、強制的に家庭教師を頼まれる。  「地球の面積」の話をしていたらデッカい地球儀を持ってくる子供にクスッとなる。大学の兄さんよりも子供の方が賢いのが面白い。ジェネレーションギャップ、子供たちなりの励ましソング、「こんがらがっちゃダメよ♪」。  歌を歌いながら地球儀を回して国の名前を当てっこ、北極は国じゃねえwwえ?国じゃなくて地名当て?   フェンシングの剣でのやり取り、ドクトル呼び、並べられたコーヒーカップ。 歌舞伎の見物は「麦秋」のように徹底的に見せないパターン。歌舞伎を見る客の表情や後姿のみが映される。  それを待つ女たち、芸者を見に行く人々の表情、芸者の舞いは映るのに歌舞伎は何故に映されないのだろうか。延々と舞いを映すのは「鏡獅子(菊五郎の鏡獅子)」を思い出す退屈さ。  観客「もういいよ」   芸者たちと酒を飲みかわす、財布の交換、頭痛い→額に手をやって「風邪かな?」、単に酔っぱらったとちゃうんか、姪のワガママに付き合う叔父さんが優しすぎて泣いた。  叔母さんもカンカン、後を追いかけて問い詰める、雨の降る朝食、酔ってて叔母さんの声も覚えていない。この後のやり取りが特に面白い。叔母さんが来たら説教のフリ、腹を小突く姪にワロタ。嫁に頭が上がらない夫が可愛い。  手紙でバレる嘘、説教を受ける叔父、叔父をたちを助ける姪の嘘、叔母さんも話友達との気晴らしの会話でストレス発散、叔母さんを騙して脱出する叔父さんたち。コイツら・・・w 叔父さん?ドクトル?オッサン?叔父公!姪に押されて叔父さんもアタック(物理)。叔母さんは「何でアタシがぶたれないけんの」という驚きの顔、「ちょっとやりすぎたかなー」という後悔の顔をする叔父さん。優しすぎるぜ叔父さん。 二人の女の間で板挟みの叔父さん、一応謝る姪、叔父さんも謝る、巻き込まれる岡田涙目。むしろ殴ってくれる方がが良いらしい、静かに笑うお父さんの姿、時計の音とともに夜が訪れ、コーヒーの支度をする妻の姿をロングショットで捉えて物語は終わる。
[DVD(邦画)] 9点(2015-07-28 16:58:47)
12.  彼奴(きやつ)は顔役だ! 《ネタバレ》 
「白熱」ほどの凄まじさとパワーは無いが、ラオール・ウォルシュ特有のスピーディーな展開とドラマで一気に引き込まれる。 中盤における倉庫襲撃シーンは豪快だし、レストランにおける流れるようなアクションも見事。 極悪人の筈のキャグニーが持つ銃はあくまで「脅し」であり、この頃冷酷な殺し屋だったボガートの持つ銃は「殺人の道具」だ。 この映画のキャグニーは正に「汚れた顔の天使」なんだよな。表向きは極悪人だけど、本当は誰よりも優しさを持っている。  そんな彼が倒れるラストシーンは、とても切なく哀しい。  マイケル・カーティス&ベン・ヘクトの「汚れた顔の天使」もメッチャ良いです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-21 21:48:40)
13.  鶴八鶴次郎(1938) 《ネタバレ》 
芸道に生きる男女を鋭く描いた成瀬巳喜男の作品。  歌い手の「鶴次郎」と三味線女房「鶴八」。 二人は喧嘩するほど仲の良い鴛鴦夫婦、本当の夫婦のように幸せそうだが、あくまで二人は「芸人」としてのコンビ。 幼い頃から兄弟のように過ごしてきた二人。 鈍い鶴次郎、女として答えを待ち望む鶴八。  冒頭からサイレント映画さながらに見せる映像。 幸せそうなふたりの姿から物語は始まるが、紆余曲折を経て二人は亀裂が入り別れてしまう。  結婚して本当に女房になった鶴八、一人やせ我慢して芸道に生きる鶴次郎。  二羽あっての「鶴八鶴次郎」、一羽欠ければ魅力も半減してしまう。 打ちひしがれる鶴次郎、いつも隣にいたからこそ気付けなかった「かけがえの無い存在」・・・。  そんな鶴次郎を見かねて鶴八は戻ってくる。 喧嘩別れした二人だが、お互いに謝りすぐ打ち解けられるふたりの仲睦まじさを物語る。  だが鶴次郎も男だ。 本当の女房になって幸せそうにしている鶴八を観て、鶴次郎は辛い決意をする。  家庭での幸せを願った鶴次郎だが、果たして鶴八も同じ気持ちだったのだろうか?  何も語らない鶴八、涙を酒とともに飲み干す鶴次郎・・・切ない幕切れだが、とても良い映画だったと思う。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-20 21:19:35)
14.  キング・コング(1933) 《ネタバレ》 
世界恐慌直後のアメリカ。 職にあぶれた人間でごった返す当時の情勢は、その後の第二次大戦の暗い影も見えてきそうだ。 冒頭こそ淡々としすぎる映像だが、島に入ってからその面白さは加速する。 怪しげな原住民の儀式、 巨大な砦、 そしてそこに君臨する巨獣キング・コング! ねんどや人形のコマ撮りで動かしているとは思えないほどの動きと迫力! コングに掴まれたり身ぐるみ剥がされたりで叫びまくる女優の演技もリアルで凄い。 子供の頃は「何でゴリラと恐竜が戦ってんだよ」と理解に苦しんでいたが、今見るとその細かい戦闘描写に見入ってしまう。 コングからヒロインを奪還すべく追う主人公たち、ヒロインを守るコング。 そして事もあろうに、何とコングは人間の手で島からニューヨークに連れていかれるのだ! 安易な思い込みが命取りとなる。 何と愚かな事だろう。 ヒロインを見つけて拘束具を安々と外し逃げ出すコング。 コングはヒロインに惚れてしまったのだ。 セルズニックの演出には常に「愛」が存在している。 後年の「レベッカ」、「風と共に去りぬ」、「白昼の決闘」、「第三の男」における三角関係・・・心が怪獣にはあった。 人間のような感情がコングにはあった。 人間と同じように、コングも赤い血の流れた生き物なのだ。 ただ、コングの純粋な恋心も、人間には恐ろしい化物が叫ぶようにしか見えないのだろう。 コングは戦った。たった一匹で勇敢に戦い、壮絶に散って行ったのだ。 コングの遺体の傍で、コングを捕らえた男が一言漏らす。 いつの時代も、一番の原因となった悪党が生き残るのが世の常だ。 本当に恐ろしいのは、こういう人間なのである。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 20:06:44)(良:2票)
15.  フランケンシュタイン(1931) 《ネタバレ》 
「フランケンシュタイン」以前にも活躍してきたカーロフだが、少なくとも「フランケンシュタイン」でトップスターの仲間入りをした事は決定的だ。 吸血鬼と言えばベラ・ルゴシ、そしてフランケンシュタイン博士のモンスターと言えばボリス・カーロフ。 そんなカーロフの凶暴さと哀愁を帯びた演技、フランケンシュタイン博士のモンスターのイメージを決定づけたジェイムズ・ホエールの傑作。 メアリー・シェリーの原作小説をベースに、ヴィクター・フランケンシュタインを大学生から完全な博士に変え、モンスターも原作には無かった「ツギハギの肉体」と「知能の低い化物」というイメージを作り上げた。 原作では知性を持ち、人間と同じように物を考えられるのに人間になれないという葛藤が主軸だった。 本作の「怪物」は言葉も知性も無い。いや本当は言葉を発せられないだけで知性があったのかも知れない。 冒頭の遺体と脳の収集。丁寧に組み立てていくストーリー、そして実験所における人造人間の「誕生」。電流をバチバチ鳴らし怪物を創造していく場面。 博士の「息子」そのものは29分してようやく登場するのだが、セリフもシーンも中々テンポが良いので飽きない。 だが誕生した人造人間は「息子」であり同時に「殺人兵器」となっていく。 息子の脳を支配するのは殺人鬼の記憶。 殺しの記憶と凶暴な肉体が結びつく時。息子は「化物」になってしまう。 そんな手の付けられなくなった息子を医者に押し付ける様子は育児放棄した父親にしか見えない。フランケンシュタインと妻の間に本当の子はまだいない。彼は実験の成果よりも子供が欲しかったのだろう。妻のため?自分のため?それは解らない。 そんな息子は少女と出会う。 少女は息子を「化物」ではなく同じ「人間」?として接しようとする。 少女の無垢な心、それに応えてしまった「息子」の純粋な「記憶」。「息子」に葛藤は無かった。それは心が無いからなのか。 「息子」は街を彷徨う、人々は「殺人鬼」を殺すために群れとなって殺人鬼を追う。 そこに父親の姿もあった。一応産みの親としての責任はあるようだ。 父親と「息子」の対面。二人は最後まで相容れない水と油として別れていった。 つうか頑丈すぎるだろフランケンシュタイン博士。 燃え盛る風車と息子・・・博士は何を思ったのだろうか。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-19 20:02:48)
16.  赤ちゃん教育 《ネタバレ》 
元祖?人類には早すぎる映画。 いつか誰かが言った。 「ホークスのコメディで笑える奴は、宇宙人だよ」と。  アメリカではホークスのコメディは大人気だそうだ。 何て事だ、我々にとっての宇宙人(アメリカ)はホークスの面白さを理解し、日本人は当時この作品の面白さを理解出来なかった人間以下とでも言いたげではないか!!  アメリカと日本は違う。  俺としても、ホークスのコメディは「教授と美女」や「ヒズ・ガール・フライデー」「コンドル」のような作品の方が好きだ・・・・・が・・・やはりこの作品も抱腹絶倒で呼吸困難を起こしてしまった。一体俺はどうすれば良いのだ。  インテリジェンスに溢れ教養豊かなキャサリン・ヘップバーンが、この作品では男勝りで男を頭から丸呑みしてしまいそうなほどパワフルな女性だ。やる事なす事すべて破壊に結びつく。ゴジラかおのれは。気品は相変わらずだが。 オマケに赤ん坊が猛獣だぜ?もうやだホークスのコメディ(褒めてる)。  ケイリー・グラントがネグリジェときやがる。  笑うしかねえだろ!!
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 17:54:55)
17.  浪華悲歌 《ネタバレ》 
確かに溝口らしくない部分もあったけど、女が好き勝手やって自滅するという図式は溝口作品屈指の出来だと思うんだ。 ネオンが光る夜、朝には光が消えて静まり返るファースト・シーン、家族の食卓で始まるところ。漬物をポリポリ噛む音を楽しめるのはトーキーだからこそできるね。 時折ギラリと輝く父ちゃんのメガネで吹くわ。 ヒロインの綾子が夜遊びに進む過程。 良い歳した中年おやじが若い娘の胸元に名刺を差し込む辺り・・・溝口はこういうのが本当上手い。 ガラス越しの電信での会話、綾子の手紙の文字、戸をガラッ開けて“男”を見せつける場面と。 クローズアップも結構多く、要所要所の挿入は印象に残る。 山田五十鈴が若くてキレイだなー。 暗闇で家に入る人影、妹さんそんなところに「ぬうっ」といたらホラーだよ(演出が完全に怪談じみてた)。 遊び好きの活発な女性が男二人引っ掛けて、どちらとも「おまえはそんな女だったのか!」と失望されて家に帰ったら「そなアホな女家族や無い!出て行けや」と勘当。 あんなに笑った溝口映画は初めてだ。兄貴、妹の素っ気ない返事のワンツー・パンチがまたツボ。この殺伐とした空気が最高だぜ。オマケにあれだけ高慢なヒロインも流石に落ち込むだろ・・・と思ったらまったくヘコたれてない(爆)もう何なんだよこの女wwwwwwww「不良少女」どころじゃないよもう。 山田五十鈴の演技が最高すぎる。 梅村蓉子夫人とのやり取りも最高だった。人形浄瑠璃の劇場に不倫相手の男と一緒。 そこに嗅ぎつけた奥さんがズンズン乗り込んできて「何してんやアンタ!」と問い詰める。奥さんの剣幕に逃げ出す男どもがまた面白い。 そして地味に志村喬が出ていたり。この頃から刑事やってたんだなー志村さん。後ろ姿だけでもカッコ良いのは何故だ。  またラストシーンが良いねー。 例の名刺を川面に向って投げ捨てる。暗闇ながら水面の美しいこと。 過去との決別だね、ハッキリした女だ。 それで通りかかった男に「あたい“不良”ちゅうビョーキなんや。ねえ“お医者さん”、どないしたら治るやろか?」と聞く場面。 ただの通りがかりの男を医者と呼ぶこのセリフの面白さ、解ったもん勝ちだね。  「祇園の姉妹」は丁寧だったけど、パンチが足りなかった。この作品は少々荒いけど、パンチが効いてるからコッチの方が好み。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-17 07:34:43)
18.  麦秋(むぎのあき) 《ネタバレ》 
地味な題材をダイナミックに描いたら右に出る者はいないキング・ヴィダーの力作。  畑を耕す事に全てを賭けた男たちの生き様をひたすら描く。 大事な楽器よりも一時のターキーチキン、三度の飯より地面を掘って掘って掘りまくる開拓。  ラストの畑に水を引く場面の盛り上がりようは何なのだろうか。 こんなに胸が踊った伝水シーンは見たことがない。まるでダム一つ作る勢いだ。  ヴィダーの「麦秋」に対抗して内田吐夢も「土」という最強に地味な映画を撮っている。 内田吐夢は日本のキング・ヴィダーです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-16 21:48:53)
19.  河内山宗俊 《ネタバレ》 
実在の茶坊主、河内山宗春を扱った時代劇。 実在の宗春の死はハッキリしない部分も多く、逆に言えばそのミステリアスな最期が後年の多様な脚色を生んだのだろう。 「丹下左膳」や「人情紙風船」に比べると余り演出の冴えを感じられない。 それでも無関係だった河内山と用心棒が徐々に関係を深めていく様子や、丁寧な掘り下げ、一触即発な抜刀の場面、数分ながらラストの殺陣など流石の演出だ。 でも雪を背にしたカットはちょっと懲りすぎな気が・・・と思ったら、雪夜を背に哀しげな表情を見せる原節子の美しさは何ともいえない。  それに、本作の最大の見所はやはり人間ドラマだろう。 油断できないキャラの河内山、ユニークな用心棒の先生、河内山を気遣う女房代わりの女性、「丹下左膳 百萬両の壺」に出ていた例のコンビも忘れがたい。この作品のキーパーソンだ。 加藤清正は違うだろうけど。  それに超初々しかった節子。 喧嘩が止まるほどカワイイ節子。かわゆいっす。こんな初々しかったのか・・・。  クライマックスとなる路地裏での斬り合いは見づらい部分もあるが、閉所における息詰まる攻防が見所。 ストーリーは「人情紙風船」ほど暗い部分も覗かせたが、ラストの希望を抱かせる走りっ振り。  姉の愛情に気づいた弟は、光の中に向って走り続けるだろう。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-15 23:25:41)
20.  祇園の姉妹(1936) 《ネタバレ》 
溝口健二にしてはちょっと押しが弱いかなと思った。 ちょっと押しが弱い気がする。 他の作品に比べると(同時期なら「浪華悲歌」とか)キャラの印象を薄く感じる。 ただ、溝口健二の最盛期だった1920年代~1930年代(淀川長治いわく)の名に恥じない作品であるのは確か。 登場人物もそんな感じに抑圧されている印象が良かった。 人物のクローズアップが滅多に無いので、ロングショットの迫力と美しさはスクリーンで楽しみたいものだ。 特に本作は「唐人お吉」の梅村蓉子、山田五十鈴の若く美しい事だけでも楽しめるし、クローズアップされた山田五十鈴の笑みが良い。 若い二人の姉妹は芸妓と一見すると性を自由に謳歌するようなイメージがあるが、実情は幼い頃から芸妓として生きてきた抑圧された面を覗かせる。 普段は着物で“縛られ”、時折の洋服姿は解放された女性像を感じさせる。 この和服/洋服が最も共存し、女性が自由になろうと背伸びしていた戦前の日本。 貧しく辛い身の上、更には女性軽視(嫁が男を尻に敷いている家庭も結構あったけど)が当たり前の時代。女性は慎ましくも自由になろうと抗う強さと美しさを持っていた。 和服と洋服が共存するという映画は、日本じゃなきゃ撮れない独特の美意識を感じさせる。 そんな抑圧された女性ほど魅力的で怖い者は無い・・・! 本作は姉妹でそれぞれの男を取り合い決裂、男を振り回した女は仕返しを受けるし、男の方も手を出してタダでは済まない。 時代に押さえつけられた女の主張、男として何でも強く生きなきゃならない男の主張、どちらも意地の張り合い。 気持ちは解るがどっちもどっち、男も女も勝手だよと、そんな感じがよく出ている映画だねえ。本当溝口はこういうの描くのが上手い。 溝口独特の飽きそうで飽きさせない絶妙な“間”、 映像の切り替えが結構あるし、印象的な長屋のロングショット、美人二人に酌を受ける先生の満更でもない表情、酒に酔った先生が今で言う“逆ナン”的に誘拐されたり、終盤の車の窓越しの夜街のロケーション、直接的な描写を見せずとも伝わる袋叩きにされた娘の悲痛。 悲惨でもあるけど、「そうなってもしゃあないわ」と何処かユーモアすら感じてしまう。  仲違いしていた姉妹が結局仲直りする様子は微笑ましくもあり、「負けてたまるか」と叫ぶ妹の姿は痛々しくもあるし力強さも感じられる。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-15 23:07:11)
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