1. ブルース・ブラザース
《ネタバレ》 「午前十時の映画祭FINAL」のリバイバル上映で、再び若い世代に衝撃を与えているらしくSNS界隈が賑わっていますね。 今更ですが、世界中の映画評論家、ミュージシャン、芸能人から絶賛されているミュージカル・コメディー映画です。 また、アクション面でもギネス級のカークラッシュが有名。 何より登場する有名ミュージシャンと楽曲の数々、パフォーマンスの素晴しさは《奇跡》のレベルです。 監督はジョン・ランディス。同時期の監督作品は ・ブルース・ブラザーズ (1980) ・狼男アメリカン (1981) ・大逆転 (1983) この後、マイケル・ジャクソン “スリラー (‘83)”のMVに抜擢されるのも納得の流れです。 観た人も観てない人も、劇場で上映されるのは最後かも知れませんから、この機会に是非どうぞ! 上映劇場→ http://asa10.eiga.com/2019/theater/all/ この映画、テレビ放送の吹替えキャストも異色でした。 主役のブルース兄弟を担当したのが ・せんだみつお/小野ヤスシ(芸人) ・バブルガム・ブラザーズ(ミュージシャン) ・高木渉/青山穣(声優)※ブルーレイ と三者三様。 個人的なオススメは、せんだ&小野バージョン。 元々、ブルース兄弟(ジョン・ベルーシとダン・エイクロイド)は、SNL(サタデー・ナイト・ライブ)のコメディアン。 ブルース兄弟の何気ない会話だけで、常にクスクスさせられます。 その細かいクスクス笑いがジャブのように効いて、大ネタの超バカげたアクションと極上の歌とダンスが来る。 この奇跡のアンサンブルが THE BLUSE BROTHERSの魅力の核心です。 これを日本語に吹替える・・申し訳ないですが声優さんでも役不足。 バブルガムは、ある意味で貴重ですが 演技面では難がある。ジャブが効かない。 そこで、せんだみつお&小野ヤスシ。ベテランコメディアンのお二人、これが大正解。 何かにつけ〝適当な嘘と下手な言い訳〟をする兄ジェイク。その適当さを自然に日本語変換するせんだ節。 少ない言葉でジェイクを受け流す弟エルウッド。それを違和感無く再現する小野ヤスシ。しかもコンサートの前説の流暢さは本家さながら。 2人の息がピッタリで、脇の声優さん達もノリノリ。全編を通して楽しさのテンションが落ちません。 この吹替版は《ユニバーサル思い出の復刻版 ブルーレイ》に収録されています。 amazonページ→ http://u0u1.net/vKRK テレビ吹替には当然カット部分があり、そこは字幕なので興ざめですが、ブルーレイがテレビに勝る点も。 ラスト近くで税務署の職員(カメオ出演のS.スピルバーグ)が「はい、受け取りをどうぞ。」と言って以降は、元々セリフが一切ありません。 税務署シーンから“監獄ロック”へ、そしてミュージシャン総出演のエンド・クレジットへ、テンションそのままになだれ込みます。 テレビ放映は、ジェームズ・ブラウンが歌う前でフェードアウト。何ともったいない! おっと長く書きすぎた、 それも愛ゆえに。 [映画館(字幕)] 10点(2019-07-17 00:17:27) |
2. バック・トゥ・ザ・フューチャー
ティーンエイジャーにとって、共通体験として心に残る映画がある、今それは『君の名は。』だろうか、だとすると…かつてティーンだった僕たち私たちの共通体験映画が、この『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だろう。 共通点は、ティーンが主人公のドタバタコメディで、時空移動SFで、タイムリミットサスペンスでもあるところ。『君の名は。』は性の差、『バック・トゥ…』は年の差バディーが走り回り夢を叶えるドリームカムトゥルー物語。さらに『君の名は。』の魅力は美しい風景。それに匹敵するのが「どうせならカッコよくしよう!」というスピルバーグの一言で生まれた最高のガジェット、タイムマシン・デロリアンの魅力ではなかろうか! [映画館(字幕)] 10点(2017-07-21 00:15:42) |
3. 天空の城ラピュタ
日本映画最高の冒険活劇 まっすぐな少年と可憐で献身的な少女の大冒険を ハラハラ、ドキドキのアクション満載で描く。 地下から遥か天空まで、ファンタスティックでスケールの大きな舞台 善も悪も、個性的で人間味あふれる登場人物たち 夢と希望、勇気、そしてハッピーエンド・・・ まさに、まんが映画の最高峰!文句なし!! [映画館(邦画)] 10点(2017-04-11 14:31:26) |
4. この世界の片隅に(2016)
《ネタバレ》 ほんの2、3世代前…こんな時代こんな日常があったという真実。 試写の評判をTwitterで知り、初日の午後 映画館へ。 テアトル梅田のロビーには人がいっぱい。上映中は立ち見の人までいて驚き。 舞台は戦時中。明るくふんわりと生きる主人公すずと一緒に、 私は、その時代の暮らしを体験した。 広島から軍港の呉へと嫁ぎ、新しい土地で新しい家族との生活が始まる。 物が無く食べる物にも苦労するが、失敗したり笑ったり。 それは今の私たちとさして違わない普通の暮らし。 私たちは、すずと一緒にくすくす笑い、家族とのふれ合いにホッコリし、時に涙する。 2時間の映画が、すずの生きる数年間にも感じられ…そして。 映画が終わった時、色々な感情があふれ、しばし言葉を失った。 片渕須直監督が現地で綿密に調査し再現した風景や暮らしは、全て当時の本当の姿だという。 祖父母から断片的に話を聴いたり、日本史の一部として知っていたその時代。 しかしこれは、どんな歴史書やドキュメンタリーよりもリアルな、VRのような時代体験だった。 すずさんの思いは、当時を生きた多くの普通の人たちの思いに相違ない。 ある意味、隠し、忘れてしまいたい過去。その良いところ悪いところ両方を 原作者の こうの史代さんも、片渕監督も知って欲しかったんだろうと思う。 これは、よく取材して丁寧に作られた、厳しくも優しい〝幸せのあり方〟を描いた最高の映画です。 [映画館(邦画)] 10点(2016-11-16 01:57:53)(良:1票) |
5. レイダース/失われたアーク《聖櫃》
《ネタバレ》 スター・ウォーズと並んで、過去のものとして忘れ去られていた冒険活劇ジャンルをVFXの効果的な活用で蘇らせた意義は絶大。以降数多い類似作品が製作され、ロマンシング・ストーンやハムナプトラなどが登場した。 それでも、インディアナ・ジョーンズ教授の冒険シリーズが数多の作品と一線を画すのは、稀代のクリエイター2人の奇跡のコラボレーションだからか。当初予定ていたトム・セレックが先約のTVシリーズのためキャンセルされ、ハリソン・フォードがキャスティングされたのも奇跡だが、 最大の魅力は、VFXマジックで観客の想像を完全に覆すクライマックスだ。 奪い合いの末、宝は悪の手に渡る。しかしその中身は風化して只の砂と化していた…皮肉なラスト。それまでの作品ならこれが落ち、これで終わり。だが、発電機が不気味な唸りをあげ…ここから真のクライマックスが始まる。観客は神秘の宝が持つ戦慄すべき神の力の目撃者となるのだ。その余韻が冷めぬ間にもう一つのVFX画面、無数の箱が並ぶ広大な倉庫に神器が消える二度目の皮肉なラストだ…もう呆然とするのみ。 観客が見たいものを〝これでもか〟と見せ、更にもう1回クライマックスを用意する。007シリーズがスタンダードとしたが時代を経て陳腐化したスタイルを視覚効果の力で復活させ再定着させたのが、レイダースだった。 観客はもちろんだが、当時の映画人こそ大きな衝撃を受けたはず。間違いなく歴史をつくった作品。今なお同じスタイルでシリーズが継続しているのも奇跡である。 [映画館(字幕)] 10点(2016-10-07 19:45:28)(良:1票) |
6. バンデットQ
《ネタバレ》 天才テリー・ギリアムによる奇想天外な冒険ファンタジー 1981年に公開されたこのファンタジー映画は、まだデジタルVFXのない時代に、それを逆手に取ったような超リアリズム映像とアナログSFX、ユーモアと風刺と不条理と遊び心で〝時間と空間の抜け穴を記した地図〟を巡る冒険を描いた物語。 イギリスのコメディ集団「モンティ・パイソン」唯一のアメリカ人で、「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」など独特のブラックユーモア的世界観の傑作を生んだテリー・ギリアム監督が、虚実入り混じった歴史の名場面、誰もが知っている童話、果ては神と悪魔の対決を、ごった煮スープのように詰め込んで料理したカルト映画です。約2時間の空想の旅を、少年・少女に戻ってご賞味して頂きたい。 アガメムノン王やロビンフッド、ナポレオンの話をしながら親子で楽しんで観るなら、日本語吹替版がオススメ。 余談だが、製作35周年Blu-rayの吹替え音声は、新たに吹替を追加しTV放映のカット部分を補完した完全吹替版となっている。デヴィッド・ワーナーの魔王はテレビ吹替えと同じ羽佐間道夫さんが再演。また、TV版で主人公ケビンを演じていた浪川大輔さんが再録ではケビンの父親役で出演している。 現在、映画における架空世界はすべてCGIで描かれいて、それはそれでCGならではの完璧な美しさがある。が、ほんの十数年前までは、本作のように実物大のセットとミニチュアを撮影し、光学的にアナロク合成していた。決して完璧ではないが、だからこそ実在感があり、温かさがあり、いびつな魅力を持ち、結果、シュールで味わい深い映像が生まれている。 テリー・ギリアム監督の作品は、非常にこだわった美術が特徴なので「バンデッドQ」に魅力を感じたら、「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」と「バロン」も是非、観て欲しい。 劇場で見た時から至高の映画なので10点。(客観的には…7点) [ブルーレイ(吹替)] 10点(2016-08-08 17:34:48) |
7. ジュラシック・パーク
《ネタバレ》 既にレビューが出し尽くされた傑作なので、個人的な考察を1つだけ。 パークの創設者ジョン・ハモンドを演じるリチャード・アッテンボローは、1967年の映画『ドリトル先生不思議な旅』でサーカスの団長を演じている。ノミのサーカスじゃないが(笑) 動物と会話できるドリトル先生が連れてきた(架空の動物)双頭の珍獣 “ブッシュプル” をサーカスにスカウトした団長は、“こんなの見たことないぞ!”と歌って踊って喜び、サーカスは押すな押すなの大盛況になる。 私には、その嬉々とした姿がハモンドと重なって見えて、『ドリトル先生』のアッテンボロー知った上でのオマージュ配役じゃないかと思った。 皮肉なことに、サーカスが大成功する映画『ドリトル先生』は興行的に失敗している。その逆に、恐竜パークが崩壊し失敗に終わる『ジュラッシク・パーク』は世界的な大ヒット映画となった。 アッテンボローにとっては『ドリトル先生』の失敗を26年後の『ジュラシック・パーク』でリベンジした訳だ。 完成した映画を観て思ったでしょうね“こんなの見たことないそ!”と。 [映画館(字幕)] 9点(2023-04-13 11:20:01)(良:1票) |
8. ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
《ネタバレ》 映画の終わり「イアン・マルコムは帰ってくる。」のテロップ 驚いて椅子から転げ落ちた・・・そんな自分を妄想。 フェイクのネタバレはさて置き、予告編も一切見ずに本編を鑑賞。 『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』初見のざっくりネタバレなし感想です。 セリフを正確に理解するため吹替版で。 今回は、これまでのシリーズと印象がちょっと違った。 極端に言うなら、ジュラシックパーク60%、それに30%の007とインディジョーンズを少し足した感じ。 好きな映画のミックス状態で、私は凄く楽しめました。 後半に集合写真みたいなカットが多いのはファイナル故のご愛嬌ですね。 事態が複雑になって、恐竜の存在感が薄くなるのも、長いシリーズの難しさかな・・・などと 理屈っぽく考えてしまう、映画ドランカーの自分を反省。 アトラクション映画は楽しんだ者勝ち、早々に童心モードにチェンジ! 理論シールドを解除、映画の流れに上手く乗るとマイナス要素なんてどーでもよく、料金以上にドキドキわくわく。 あ〜、この楽しさも今回でラスト。いよいよ最後!皆様さようなら!さようなら!🗼🦖 これまで魚を、いや恐竜をありがとう🐬🐬🐬 いやいや、イアン・マルコムは帰ってくるぞ!きっと(笑) [映画館(吹替)] 9点(2022-08-02 10:33:41) |
9. スター・ウォーズ/帝国の逆襲
《ネタバレ》 レジェンド過ぎて、今さら何を語る・・・ですが(笑) 脚本執筆直後に亡くなった リイ・ブラケット(夫は「キャプテン・フューチャー」 で有名なSF作家エドモンド・ハミルトン)は、どのように作品に貢献したのだろうか? おそらく、空前の大ヒットで完全に製作の自由を勝ち取ったルーカスは、スター・ウォーズの世界を拡張するにあたり、SW銀河をより強固でリアリティあるものに補強したかったのでしょう。 そこでSF界の中から、SWの世界観に適した作家としてブラケットを選んだのではないでしょうか。 結果として、多彩な惑星が登場し、ガス鉱山と通商で成り立つベスピンや、地図にない辺境の原始惑星ダコバ、アステロイド帯や氷の惑星ホスにおける独特の生態系などが生まれ、SWの宇宙が奥深いものになったのではないかと想像できる。 一方、ローレンス・カスダンの加入は、クリフハンガー要素とスリリングな恋愛模様で物語を引っ張り、感情移入しやすいアクティブなキャラクター造形に大きく貢献していると思う。 さらに、ベテラン監督のアービン・カーシュナーが、ホスの白兵戦で見られる戦場のリアリズムやシリアスで悲劇的な要素の演出で、SFでありながら観客の心に訴えるドラマを作り上げたと。 そしてルーカスは、自身のトラウマとも言える親子の確執テーマを壮大なスペースアドベンチャーと融合させ、『帝国の逆襲』で (完結編でないにも関わらず) 全世界に衝撃を与え、永遠に続くインディーズな宇宙神話の基盤を創りあげた・・・ まぁ、実際どうだったかは別にしても、『帝国の逆襲』がその後に与えた影響は非常に大きい。 a long time ago in a galaxy far far away.... 作り手はメジャーに変わっても、スター・ウォーズの宇宙は広がり続けている。 [映画館(字幕)] 9点(2019-11-01 13:09:51)(良:1票) |
10. 天気の子
『天気の子』私は好きです。 猫が妙に漫画チックに描写されてて “これは青春の夢物語だよ” という寓話宣言だと思った。 だから、この映画には現実との不整合や歪曲 非常識やご都合主義、ゆらぎ、曖昧さ、雑味がある。 寓話的な映画で思い出すのは 『ストリート・オブ・ファイヤー』 『ブルース・ブラザーズ』 『ブレードランナー』 『ベイビー・ドライバー』 どれも、ロックンロールやR&B、アンドロイドの夢物語で ボーイ・ミーツ・ガール と逃亡の映画。 強力な絵力 (えぢから) と音楽で、グイグイ持って行く。 主人公は、気恥ずかしいまでに子供っぽく一途で無鉄砲。 『天気の子』も思春期少年のデタラメな夢物語。 方程式に則った前作より、自由で人間らしく素敵だった。 ネット上のレビューは共感できる出来ないが極端に分かれている。 常識や構造にこだわる大人には聴こえない (響かない) 《モスキート音》みたいな映画だなぁと(笑) 今もどこか夢見て生きている人にだけ伝わる映画だと感じた。 宮崎駿監督も初期の頃は 「アニメーションは子供のものだ」と言っていた。 新海監督には、思春期の若者たちに向けて作り続けて欲しい。 あの光り輝く世界は、大人にはもったいないから... 明日も“雨ときどき晴れ”でよろしく。 [映画館(邦画)] 9点(2019-07-31 19:24:48) |
11. アベンジャーズ/エンドゲーム
《ネタバレ》 鑑賞後、少し時間がたち咀嚼できたので、レビューを更新しました。 【4月30日更新】 まずは、『インフィニティ・ウォー』の終り方。 これまで《力(ちから)》で地球を守って来たアベンジャーズが、サノスの《力》に敗れる。 そして5年が経過・・・敗北を経験したことで、彼らにどんな変化があったか。 ・アイアンマン:初めて 負けた側の気持ちを知り、同時に“負ける恐怖”から解放された。 (ネビュラとのゲームであっさり負けてみせる) ・ハルク:バナーはハルクをコントロールすること=“支配”を止め、融和を選んだ。 ・ソー:王位=“権力への執着”を止め、自由に生きる道を選んだ。 (ただ、これは逃避行動で 問題は悪化している。彼の旅も物語もまだまだ続く) ・ウォーマシン:典型的軍人タイプだったが、“敗者の傷みに共感”する一面を見せる。 ・ブラック・ウィドウ:過去の罪で“自責の闇”に囚われ、今もまだ苦しんでいる。 (『エンドゲーム』の行動で、その闇から解放される) ・ホークアイ:家族という支えを失い、悪への“復讐心”に目覚める。 (新たな“孤独と葛藤”の始まりか?家族が戻っても彼の葛藤はまだ続くのだろうか?) ・ネビュラ:自身の不幸を“妬み嫉み”に転化するのを止め、有りのままの自分を認める。 ・キャプテン・アメリカ:アベンジャーズの頭脳(スターク)との分裂、リーダーとしての責任放棄。その結果の重大を痛感している。 『エンドゲーム』 このタイトルに込められたメッセージは何か? 私はこう思う。 サノスもアベンジャーズも《力》による勝利、《力》による正義という面では何も違わない。 終わり無き『パワーゲーム』を続けているに過ぎないのだ。 自己中心的な正義を掲げ争う時代は、もう『終わり』にしなければいけない。 《逆境にある今の世界》だからこそ、お互いに認め合い、共に未来を切り拓こう!と。 それが、マーベルから地球人への提言だと思う。 【4月27日メモ】 アイアンマン:トニー・スタークの運命について。個人的に解釈です。 初めて登場した時のトニー・スタークは合法的武器商人ともいえる男で、 まさに、大勢の血の犠牲によって頂点を極めたスーパーセレブだった。 だから『アイアンマン』第1作の冒頭でテロリストに襲撃された時 もし死んだとしても、それは自業自得。当然の運命だったように思う。 だが彼は・・・奇跡的に生き残った。 もし、神がいるならば、その《神の采配》はおそらくこうだろう。 「トニー・スターク、今まで人を犠牲にしてきた罪を償え!その頭脳で、人を救って生きろ!」と。 彼は死から蘇ると同時に、その啓示=《贖罪の使命》から逃れられない存在となった。 彼はアイアンマンとなり、ペッパーを救い、アメリカを救い、地球を救った。 そして遂に『エンドゲーム』で、全宇宙の半数の生命を救った・・・与えられた命で総てを救ったのだ。 それは、贖罪から解放される時、永遠の安らぎを得る時。 あの中東の荒野で倒れた時と同じように、焼け焦げた姿で・・・しかし 贖罪を終えた彼はもう孤独ではない。 真の友!愛する家族!そして、彼の後に続くヒーロー達に囲まれ、栄光を得て旅立ったのだ。 それは、ナターシャも、そして罪深き信念に生きたサノスさえも同じ・・・ え?、スティーブ? 彼は戦時中の過去から来た罪なき一兵士。戦争が終わって、故郷に帰って暮らす時が来ただけさ。 [映画館(吹替)] 9点(2019-04-27 17:30:13)(良:1票) |
12. 2001年宇宙の旅
《ネタバレ》 109-OSAKA-EXPO-IMAXにて 日本最大級のスクリーンは圧倒的。特に惑星が縦に並ぶ構図は“ツァラトゥストラはかく語りき”の響きと相まって圧巻でした。 これまで何度かDVD、BDで見てはいたが真剣に、しかも劇場で観たのは初めてだった。 ほぼ中央、G-19席エグゼクティブシートにて鑑賞。 PANAMのシャトルが軌道?ステーションとランデブーするシーンは本当に素晴らしい。ただシネラマと言うより巨大なワイドTVを見ている感覚。 平面スクリーンの両端が視野に入っている為で、左手からフレームインしてくるステーションが仮に視界を完全にカバーする湾曲スクリーンでの上映であれば、左から視界を圧して現れる筈で、やはりシネラマが この作品のベストな上映環境だと思った。 この際、オムニマックス(全天周映像)化して再公開してはどうだろうか! 難点も少々。 ・ディスカバリー内でのジョギングシーン(移動撮影時)の画面のブレ ・宇宙船の窓(の合成)が時々細かくズレる それらが、スクリーンが巨大であるが故に目立ってしまった。 移動撮影のブレは、後の『シャイニング』でキューブリック自身がステディカムを使用して克服している。 窓のズレは、レストア修正時に補正しても誰も文句言わないだろうが・・ また、字幕スーパーが美しいレイアウトを邪魔しているシーンもあった。 先行して行われたノンレストア版70mm上映で、字幕を別スクリーンに投影した理由がわかる。(私は観てませんが) 《映画全体の構成とテーマ》 3幕構成の1幕目と3幕目は、典型的なドキュメンタリー(今で言うナショナルジオグラフィック的な)映像による宇宙体験。2幕目はキューブリック流のサスペンス。リアルとエンターテイメント性を両立させている。 テーマは、岡本太郎の“太陽の塔”にも通じる “人類の創生〜生存競争〜帰結” それを福音的円環構造で描いた映像絵巻だと思う。 《トリビア》 『エイリアン2』の冒頭。脱出艇ナルキッソスでコールドスリープしたリプリーが漂流してくる。その時の曲と2001年のコールドスリープカプセルが映る時の曲が同じ・・キャメロンのオマージュでしょうね。 キューブリックが『2001年』に込めた映像の流儀みたいなもの・・ それは後に続くリドリー・スコット、スピルバーグ、ルーカス、キャメロン、ノーラン等々に・・更に その後輩達へと確実に伝播している。 いや、実に貴重な164分間(映画尺+α)でした。 [映画館(字幕)] 9点(2018-10-22 16:44:27)(良:1票) |
13. マイマイ新子と千年の魔法
《ネタバレ》 『この世界の片隅に』の片渕須直作品と知ってDVDでの鑑賞。 同じ片渕須直監督が戦中~終戦までの日本を描いた『この世界の片隅に』と同様に、終戦から10年ほど経った地方の町(村)の空気感を非常にリアルに描いている映画です。 牛車が進む奈良時代的な過去と新子たちの現実が交錯する世界観は 一見すると時間ファンタジーだが、そうではないと感じた。 現代と違って、与えられる娯楽が無い子供たちが、自分の空想力で遊んでいた時代だから、想像と現実をレイヤーのように重ね、幻景と実景を綯い交ぜ(ないまぜ)にした世界で遊ぶ姿を描いている【ごっこ遊び】想像力豊かな少女の物語で、『君の名は。』的な過去とのシンクロファンタジーではない。 子供の想像だから、矛盾だらけで断片的だし、ジブリ作品のような派手で爽快なクライマックスが展開するわけがない。 つまり、これはフィクションとは正反対の現実的な〝妄想で現実をより楽しむ少女たち〟の・・・〝自由で豊かで純粋な心〟を描いた映画なのだ。 終盤、戦後のリアルな大人世界〝現実〟を新子は垣間(かいま)見る。〝子供の想像世界〟を〝現実〟が否応(いやおう)無く侵食してくるのだ。 しかし、どんな時代であっても、空想の翼を広げて夢を追って駆け回る子供たちの輝きが衰えることはない。そうこの映画は言っている。そして、優しく映画の幕は下りる。 できれば、この作品の前に『この世界の片隅に』を見ておくことを薦めしたい。その方が、片渕監督の描く世界を感じとり易いと思うし、【すずさんの生きた世界の、その後の世界】を垣間見ることが出来るからです。 [DVD(邦画)] 9点(2016-12-09 04:09:35) |
14. シン・ゴジラ
《ネタバレ》 【初見の感想】「爽快」 1954年の第一作を原型に庵野秀明監督得意の様々なカッコイイオマージュカットの連続。(エヴァ的と批評されるのは、氏に厳選された過去の特撮作品のカッコイイ場面の再構築こそが映像面での庵野スタイルであって氏の各作品の表現がルックス的に酷似するのは当然なのです。特に今回は本家東宝作品だけに、より堂々といつもの10倍増しの大サービスとなっています!) 私にとって衝撃だったのは・・・シン・ゴジラが見ためはゴジラだけれど、ヘドラ的だということ。第一形態は巨大オタマジャクシ(という設定があったらしい)。怨念を持った破壊神を〝進化する化学物質〟のように設定している点もそう。 映画自体の後味が爽快なのは〝如何にも日本人らしい日本人たち〟が不器用だろうが何だろうが最善の方法を考え、寝食さえ忘れて黙々と実行し、闘いに泥臭く勝利する映画だったから。 そして・・・、ギレルモ・デルトロの「PACIFIC RIM」やギャレス・エドワーズの「GODZILLA」が世界的に大ヒットし、あぁ怪獣もゴジラも海外の大資本映画の独壇場になってしまった・・・と伝統の終わりを感じていたのを、庵野監督と特撮の職人達が最後に生み出した、魂の咆哮『シン・ゴジラ』の熱線が見事に焼き払ってくれたからです。 【最終的感想】「映画監督」 ※以下の感想は【それを言ったらオシマイ】的な話です。ネタバレとは違いますが『シン・ゴジラ』について「内容の考察」で盛り上がりたい人に水をさす可能性があります。ご注意ください。 私は、庵野監督のことを「特撮好きのアニメ職人ビジュアリスト」だと解釈しています。 しかも常人と違って、視覚・聴覚的に経験した「傑出した事象」を完璧に記憶し、純度を高めて新たな表現として構成する「再現力」が突出していて、同時にその脳内映像を1/30秒単位で描きだす(=絵にできる)技能を有した、超・映像職人だと。 おそらくですが、氏が創作の喜びを感じるのは「映像を表現すること」それ自体であって、大衆へ向けて「社会的メッセージや思想を伝えることでは無い」と考えます。 只ただ「自分の好きな映像を徹底的に創りたい人」だと思うのです。 さて、シン・ゴジラの膨大な台詞や表現、意匠、ゴジラの造形に「何かの意図やメッセージ性を感じる」のは何故でしょうか? 観客に何かを伝えたいのであれば、劇中で明確に主張するべきではないでしょうか? 普通の映画ならそうします。過去のゴジラ映画もそうでした。その点、シン・ゴジラには何かの意図を感じさせる演出=「不完全に書き込まれた情報」が多すぎます。 これは、明らかに意図した「不完全な情報の提供」です。 私たちは、SNSなどに流れている大量の情報に対して、怒り悲しみ、考え、共有し、自己主張することが日常化しています。国民総批評家のような時代に生きています。 シン・ゴジラの膨大な台詞や意匠、ゴジラの造形の中に、社会的な課題、学術的&オタク的知識、重層的意味を持つ台詞や音楽、過剰な文字情報などなどを「大量の断片情報」として監督は散布しています。 だから映画の鑑賞後・・・まるで試験問題を前にした学生のように、その意図を模索せずにいられなくなるのです。 庵野監督は「持てる限りの手法を駆使した映像」で、観客が映画館で楽しめる作品を創りました。同時に、「埋設した断片情報によるパズルゲーム=思考による考察と議論」で、観客が映画館から現実に帰った後も永く楽しめる作品にしたのです。 しかし、知識量の多い現在の観客が相手ですから、現実的かつ、容易に解決できない問題を準備する必要があり、その為に大変な努力を費やしたに違いありません。そんな過剰サービスを普通の監督はしません。監督業を越えた信念か、オタク魂の成せる技です。(ハリウッドの大資本が作る映像と競うには『知恵と努力と根性で奇跡を起こすしか手が無い』のです) 創ることに全力投球。ですから「正解」まで用意したとは思えません。 そもそも、哲学者でも科学者でも評論家でもない、一(いち)映画監督が大衆に向けて専門外のメッセージなど発信できません。「監督はただ、考えるに足る物語を見せるだけ」なのです。 それは、宮崎駿然り。スタンリー・キューブリック然り。議論される自作について監督たちが多くを語らないのはその為です。「問題を考える材料は映画として語った。後は皆さんが各自で自分なりの結論を模索して欲しい。」それがメッセージです。 これは・・・映画の冒頭で、牧悟郎が残したメッセージ「 私は好きにした。君らも好きにしろ。」と同じことです。 [映画館(邦画)] 9点(2016-08-07 11:26:12)(良:3票) |
15. ゼロ・グラビティ
この映画で、3Dとはストーリーがシンプル(というか起きている事の展開のみで物語りは不要)で、上映時間が短く、特異な状況を疑似体験させるものがベストだという事(つまり3Dはライド向けの映像技術であって劇映画には向いていない)と証明してしまったように思う。 この映画の製作陣は志が高く映像の出来も素晴らい。アカデミー賞でも高く評価された。が、それ故に、大ヒットの表層だけをとらえた製作会社が中身のない3Dイベント映画を粗製乱造しないよう願うばかりだ。 [映画館(吹替)] 9点(2014-04-10 18:08:13) |
16. 抱きしめたい(1978)
《ネタバレ》 ロバート・ゼメキスの監督デビュー作にして、後の作品の原点的な要素がつまった青春コメディーです。 製作総指揮スティーブン・スピルバーグ、脚本ロバート・ゼメキス&ボブ・ゲイルのトリオは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と同じ。 印象的なのは豆タンクみたいなウェンディ・ジョー・スパーバー演じるローズィーの猪突猛進ぶりと、 最初はあまり乗り気でないのにTVのエド・サリバン・ショーに生出演するビートルズを見に行くぞツアーに参加させられ 図らずもビートルズの部屋でトリップしてしまうナンシー・アレンの可愛らしさ。 全編に渡って流れるビートルズの初期ヒットナンバーとテンポよく展開する明るいドタバタ。 そして様々なトラブルの後の全員がハッピーになる大団円です。 ゼメキス作品の中で楽しさではBTTFに次ぐNo.2だと思うので、是非ともBD化して欲しい映画です。 [映画館(字幕)] 9点(2014-04-07 23:08:02) |
17. 未知との遭遇
《ネタバレ》 劇場で観なければ、評価してはいけない映画 エンドロールを見ながら、なぜか涙が… 中3のとき劇場公開された作品。監督はスティーブン・スピルバーグ。前作「ジョーズ」で世界興行を塗り替えて注目された。その、ジョーズにつぐ新作は映画の内容を極秘にして公開された。 なぜなら、異星人とのリアルなファーストコンタクトを初めて描いた=観客に体験させる映画だったからだ。 衝撃音とともに暗闇から明転する冒頭から、超常現象的な恐怖さえ感じる前半、ドキュメンタリータッチでサスペンスフルな中盤、そして光と音、SFとファンタジーが一体となった壮大なファーストコンタクト。 まさに、ビデオ以前の時代だからこそ誕生した、巨大スクリーンと70mmフィルムの超大作シネラマ映画だった。 同じSFで、ほぼ同時期に公開された「スター・ウォーズ」も劇場で鑑賞したが、当時の私の評価は断然「未知との遭遇」が上だった。「スター・ウォーズ」は大ヒットしていて劇場は満員立ち見で印象が悪かったのかも知れないが。笑 さて、「未知との遭遇」の主人公のロイは勤勉な電気技師だがアニメや模型が好きだったりと子供のような一面がある。濃くはないがライトなオタク系だ。 アメリカの青年の中では立場の低いオタク系男子の成人した姿。それは監督自身の姿でもある筈。 映画が公開された1977年の日本は、まだアニメブームの夜明け前。とは言え、オタク文化の基礎は作られつつあって音楽やアート、マンガやアニメ、SFなどは急速にハイレベル化し専門の雑誌も創刊され、高校生、大学生に与える影響も大きくなっていた時期。 だが、高度成長期を生きてきた当時の親世代は財産を蓄え家族の安定を人生の目標としていたので、当然、ジェネレーションギャップが生じ「親たちの普通」へ子供を矯正しようとした。 ロイに起こった遭遇事件はスクリーンのこちら側の観客だけが知っている事実で、彼の言動は安定志向の妻や子供には理解されない。自分の夢を身近な家族に理解してもらえず孤立してしまう。 漠然と映画やアート系の仕事を目指していたけれど親の猛烈な抵抗にあった当時の私にとって、ロイ・ニアリーは心情的に共感できる人物だったんだと思う。 映画オタクだったスピルバーグ青年がスタジオシステムの中で「ジョーズ」を成功させるまでにも多くの抵抗勢力があったに違いない。 「障害を振り払い平穏を捨ててでも進まない限り、夢には到達できない。」と、映画を通してスピルバーグは叫んでいたのだと思う。それが、中3の私にも何となく伝わって涙がでたのかも知れない。 今の私の仕事はこの映画に遭遇した結果なので、個人的に貴重な作品。そういう意味でこの評価です。 [映画館(字幕)] 9点(2014-04-07 18:34:31)(良:3票) |
18. シン・ウルトラマン
《ネタバレ》 公開初日に鑑賞。 わたしは「帰ってきた」で小学生になった世代。でも駄菓子屋で初代とゼブンのブロマイドを買い、再放送をテレビにかじりついて(死語)見ていた子供。 庵野×樋口のドリームプロジェクト『シン・ウルトラマン』に関しては、ほぼ満点と評価します。 それはあくまで《テレビ番組としての初代ウルトラマン》を彼らなりの理想形として100%描いていると思うから。 不可思議なミステリーを追うチームがドラマを推進し、その先に怪獣が現れ、人の手に負えない状況を巨大な星人が格闘と光線技で始末する・・・そのシンプルな30分で見る者を満足させる。 SFミステリードラマと短い怪獣プロレスだけ。その黄金パターンのカタルシスを再現して積み重ねる113分。 リニューアルの要素は、ウルトラマン・怪獣・外星人の造形。オリジナルを尊重しつつ設定に準じた質感を与えた。 侵略テーマはセブン要素による補強。人類以外の原住地球人のことにも触れていた。 あまりに子供だましな設定は、ある程度是正して《オトナだまし》程度にアップデート。 とは言えテレビ準拠なので、ドラマ部分は深く掘り下げず、禍特対は狂言回しに徹した(設定されていても観客の想像に任せる)とこともウルトラマンのまま。2時間をワンテーマで描く『シン・ゴジラ』と同じフォーマットは使わなかった。出来たとしても、それでは原点回帰にならない。 『シン・ゴジラ』を基準に観てしまう人は、中途半端と感じるかも知れません。 それと長澤まさみのお尻パンパンは、和装の女性が気合を入れる仕草ですよね。 古いCMで、大原麗子がやってたと思います。あれをエロじゃない?と思うのはアンテナがエロに敏感過ぎる人じゃないかと。ただ、どアップで撮るより、引きの方が良いと思う。可愛く見せなきゃね。 風呂に入ってなくて臭い・・・の一連は、庵野さんがジブリの仕事で風呂にも入らず没頭して臭かったというエピソードの置き換え。庵野さんにしてみれば《仕事の出来る職人》の特徴。長澤演じる浅見をそういう生真面目なキャラとして表現しているのでしょう。 ハラスメントは許されませんが、何でもハラスメントだと安易に解釈して批判・封殺しようとする風潮に抵抗してるかも知れない。特撮芸術を衰退させかねない極端なホワイト化への異議申し立てかも。 ルーカスも禁欲的なジェダイが「人のあるべき道」とは、全然いってないですしねぇ。 『シン・ウルトラマン』に違うものを求めていた人、残念でしたね。 庵野、樋口コンビの特撮記憶細胞がベストだとして作ったこの作品。 私の特撮記憶細胞も両氏に酷似していたのでしょう、至福の113分を過ごさせて頂きました。 [映画館(邦画)] 8点(2022-05-15 01:57:25)(笑:1票) (良:4票) |
19. 夢みるように眠りたい
祝・デジタルリマスター版Blu-ray発売! 昭和初期の東京。 私立探偵:魚塚甚(佐野史郎)は「誘拐された娘“桔梗”(佳村萠)を探し出して欲しい」と依頼される。 依頼者は月島桜という女性。調査を始めた魚塚は“Mパテー商会”なる怪しげな一団に行き当たる。 さらに、事件と深く繋がる無声時代劇『永遠の謎』とは一体何か? 魚塚は謎の向こうに何を見るのか? そして桔梗は何処に・・・・・・ - 初めて観たのは、三越劇場だったかな?ミニシアターでの上映でした。 不鮮明な白黒画面、無声映画に活弁という古風なスタイルを〝あえて〟とった、邦画には珍しいカルト作品と言えます。 その狙って作ったスタイルが見事に〝映画への愛〟を美しくピュアに描き切っていて素晴らしい。 原案・脚本・監督は、これがデビュー作の林海象。後の『帝都物語』の脚本や『探偵 濱マイク』シリーズなども素晴らしい仕事。 1986年製作なので30年以上前のインディーズ作品ですが、変則的な劇中劇は今で言う【メタ構造】で林監督の才能が感じられます。 あがた森魚の音楽も映像にぴたりと符合し、独特の世界観を構築しています。 今回、国内版Blu-rayと米国ARROW VIDEO版Blu-rayの両方を購入しましたので、好き過ぎで書けなかったレビューをやっと書きました。 ARROW VIDEO版で確認したデジタルリマスター映像の鮮明さは、DVDとは雲泥の差です。 ただ、劇中映画『永遠の謎』は元々あったグレイン(画面の粒子感)までパキッと鮮明になり、古い活動写真の表現として逆効果に感じました。まあ「見ようによっては」ですが。 総合的には素晴らしいリマスター。いや、劇場鑑賞の印象さえ遥かに越えて鮮烈で作品に惚れ直しました。 - 映像特典(ARROW VIDEO版) ・本編オーディオコメンタリー1:林海象監督と主演佐野史郎さん(※DVDのコメンタリーと同じ音源を使用) ・本編オーディオコメンタリー2:日本映画専門家トム・メスとジャスパー・シャープ(※字幕なし) ・佐野史郎さんインタビュー「卵はいくつ?」(28分49秒) ・活弁士 澤登翠さんインタビュー(18分13秒) ・澤登翠さんによる劇中映画「永遠の謎」の活弁パフォーマンス(6分47秒) ・「夢見るように眠りたい」修復メイキング(4分01秒) ・サイレント時代劇のシーン(2分40秒)※京都おもちゃ博物館アーカイブより ・オリジナル劇場予告編(2分38秒) ・英語版予告編(2分38秒) ・静止画ギャラリー 映像特典(国内:ドリームキッド版) ・本編オーディオコメンタリー:林海象監督と主演佐野史郎さん ・予告編(2分39秒) ・英語版予告編(2分39秒) ・修復メイキング(4分17秒) ・林海象監督メッセージ(43秒) ・対談映像:林海象監督と主演佐野史郎さん(4分23秒) 舞台活動から映画へと脱皮する林監督の、気恥ずかしい程の“その時”がフィルムに焼き着いて、同じく“その時”の私に共鳴したのだと思います。 [ブルーレイ(邦画)] 8点(2022-04-08 19:15:24) |
20. THE BATMAN-ザ・バットマン-
《ネタバレ》 『ザ・バットマン』いきものクイズ! 鳥は、高い所から俯瞰し、弱い獣を喰イモノにする。 利口な獣は鳥を監視し、密かに鳥を襲う。 それは、生きるため? 優劣の逆転を狙って? それとも、ただの戯れ? コウモリは鳥? それとも獣? 答えは、映画館で。 【レビュー】 不穏な空気が漂う大都市ゴッサムは、現代とも1950-60年代とも感じられる。 スマホを使う場面があるのに雰囲気は完璧なノワール映画。あははっもうたまらん! 若き資産家ながら、心に秘めた憎しみを黒いマスクで覆い 犯罪への「復讐者」バットマンとして夜な夜な徘徊する青年ブルース・ウェイン。 一方、権力者たちの「嘘」を憎み、猟奇殺人を犯す謎の男リドラー。 追う側も追われる側も闇を背負っている。 マトモデナイ世界・・・ 乱歩マニアな私には、短くかんじる176分だった。 この映画は、バットマンが挑むサイコミステリー仕立て。 デビッド・フィンチャー『セブン』を彷彿させる半端ない緊迫感がある。 同時に、若きブルース・ウェインの苦悩と運命の物語。 ただし、最終盤はいかにもヒーロー映画らしくバットマンが派手に活躍する。 そこだけが、この映画の個性に反しているようで(私には)蛇足に思えた。 ここは好き嫌いある所かも知れない。 (何度目かの)バットマン映画のリブートだが、過去のどれとも違っていて楽しめ 1本の映画作品としても優れている。 どのキャラクターにも、それぞれの「生き様」を感じる。 生まれた環境や普遍的な社会の矛盾。そこから何とか脱して懸命に生き続けようとする一人一人の姿 それは、私たちのリアルな人生そのものである。 混沌を力ある者がルールで縛って秩序を築く。 縛られる側にとって秩序は窮屈なものだ。 縛る側の悦楽、縛られる側の窮屈さを指摘し、自由と正義を求めて闇に隠れて闘う革命者が2人。 2人のサイコパスによってルールの檻は、遂に破壊される。 では、その先に待っているのは何か・・・? 自由の楽園か? 無秩序を愛するサイコパス達が踊り狂う、狂乱のパーティーか? そこで笑うのは誰か? ジョークだよジョーク!フヒヒヒヒヒヒヒヒッ!! [映画館(吹替)] 8点(2022-03-18 14:38:17) |