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スノーモンキーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 67
性別 男性
自己紹介 最近になり、やっと映画鑑賞に時間がさけるようになってきたので活動再開していきます。自分は記憶力が悪く、映画を観ても内容をすぐ忘れてしまうので、できるだけレビューを残していきたいと思います。基本書くことは苦手ですので、大したレビューは書けませんがよろしくお願いします。

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1.  カラフル(2010) 《ネタバレ》 
イジメや母親の不倫など、多くの問題に耐えきれず自殺した少年の再起をかけた修行の話。この映画はまさに人生の教科書だと思います。人が良すぎて残業をばかりさせられるのに、一向に昇進しない父。ストレスのはけ口として不倫をする母。医学部受験を理由に無関心を装う兄。一つのネジの緩みをきっかけに家族みんなが壊れていく負のスパイラル。真が命を取り留めたことをきっかけに、一からやり直そうと懸命な母。その思いとは裏腹に、母の不倫に嫌悪感を抱く真は辛く当たります。母親って家族の中の「華」だと思う。その「華」が枯れたり、汚れたりしたときの家族に与えるダメージの大きさをリアルに描いています。開きなおったような真の姿に秘かに思いを寄せていた唱子は、不信感をいだきます。この映画で唱子の存在って重要で、自身もいじめられていた唱子は、苦境に立たされても意思を曲げない強い真を尊敬し心の糧にしていました。それを知った真は初めて、自殺前の真も愛されていたことを知るのです。ここからだんだん変わっていきます。本音を言い合える友達もでき、生気が戻り人間らしくなっていきます。このような伏線があり、家族会議で友達と同じ高校に通いたいことを涙ながらに告げるのです。家族が初めて本音でぶつかったシーン。とても感動しました。兄がティッシュを取るとこが最高にいいですね。悩むひろかに対し、「全然普通。何もおかしくないよ。それでいいんだよ。」と優しく語りかけます。ただあくまで、「これからはお互い一生懸命生きていこうね」ということが前提の言葉だと思います。家族だってこれでずっと仲良くハッピーエンドのわけがなく、これからも就活、老後問題など困難な出来事が何度もやってきます。プラプラは真が復活の試験に合格した後、戸惑う真をしり目にたまには気に留めてやるという言葉を残し、あっさりと去っていきました。あくまでも、本番はこれからなわけで家族や友達と協力し合って生きていかなければなりません。原監督は、めでたし、めでたしで終わらせるような映画は作りません。オトナ帝国だって、「大人になって綺麗なお姉さんといっぱいお付き合いしてみたい。」という名セリフがあるが、ちゃんと大人になるかはしんのすけ次第で確約などされません。「厳しい内容の映画で、生きる希望を与える。」私はこれこそが最高の映画だと思います。
[DVD(邦画)] 10点(2015-01-04 23:46:49)(良:1票)
2.  黒蜥蜴(1968)
元々は、原作が江戸川乱歩の長編探偵小説を、三島由紀夫が戯曲化したものです。それを深作欣二監督が映画化しました。製作には主演の美輪明宏さんも関わっていたそうです。  映画を観て思ったのが、これが本当に1960年代の日本映画なのかということです。元々、戯曲ということもあり、とても言葉遊びの多い作品です。私は、言葉の多い映画はあまり好まず、映像で語る作品の方が好みなのですがこれは別です。詩的であり言葉の一言一句がとても美しいのです。日本語ってこんなにも美しかったのかと驚きました。まるでジャン・コクトーの映画を観ているかのようでした。舞台芸術を導入した装飾品もどれも綺麗で妖艶な雰囲気を醸し出しています。美しい背景に合わせるかのような会話劇は、全てが計算しつくされています。  本作をここまでの芸術作品に仕立てることができたのは、もちろん美輪さんの名演技があってのことです。何なのでしょうかあの甘美さは。男女の垣根を超え、まるで天人のようです。  仁義なき戦いや、バトル・ロワイアルといったギトギトした映画を撮る深作監督が、本作を撮ってしまうというのも驚きです。いやもう美しすぎて、ため息しか出ないですね。余韻がハンパありません。天才たちが集まると、こんな映画も作れるのですね。本作はホモセクシャルな描写があるためDVD化されないそうです。くだらないことを言ってないで早急にDVD化していただきたいものです。多くの人に観てもらいたい芸術映画です。
[ビデオ(邦画)] 9点(2017-03-18 01:10:10)
3.  ポセイドン・アドベンチャー(1972) 《ネタバレ》 
パニック映画の元祖ともいえる本作。映画で船の水難事故って結構あるが、本作が最も緊迫感がありました。船が転覆し、人が重力に逆らえずシャンデリアといっしょに落下してくるシーンが物凄く印象に残っています。多くの人が浸水してきた海水によって命を落とします。生きるためにはしごを登って行った数人のみがギリギリで命を繋ぎ止めました。一縷の望みを信じ脱出を試みます。恰幅の良いおばちゃんの演技が良かった。足手まといになり、これ以上迷惑をかけまいと唯一の特技である潜水で、溺れていたスコットを助け命がけで逃げ道を見つける姿は人生最後の輝きでした。しかし極限状態の中、行動を起こしたものから命を落としていくという非情さ。そしてリーダーシップを取ってきたスコット牧師も・・・ 結局生き残ったのは、スコット牧師に食ってかかっていた者や、ただ黙って付いてきた者でした。もうこうなると生死をわけたものなどなく、運命と言うほかない。地獄には、神も仏もヒーローもいないし、奇跡のストーリーなども存在しないのだ。タイタニックのようにお涙頂戴的な演出やラブストーリーを入れることなく、素直に絶望的な結末を見せたことで、水難事故の恐ろしさが一層引き立ったのだと思います。私はこの作品を超えるパニック映画を未だに観たことがありません。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-16 00:01:46)
4.  裏窓(1954) 《ネタバレ》 
初めてカラー映像のグレース・ケリーを拝見。あまりの美しさに悩殺されてしまいました。カラーの彼女を拝めただけでも、鑑賞した価値あり。片足を骨折しアパートの自宅で静養中のジェフリーズは、暇を持て余し裏窓から他人の生活を覗き見します。喧嘩をする夫婦、熱心にエアロビに没頭する若い女性など皆コミカルに動き回り、映画館のスクリーンにそれぞれの生活が映し出されているかのようでした。アパートのデザインも好きで、住んでみたくなります。突然、ある部屋の夫人の姿をパタリと見なくなります。旦那の不審な行動から、殺人事件が起きたことを確信し、独自に捜査を開始します。妻役のグレース・ケリーに犯人が襲かかる様子を見て慌ててカメラのシャッターを切り犯人の気を引くのである。盗撮されていたことに憤慨し、ジェフリーズの部屋にやってきます。動けないことによる恐怖感がよく出ていてハラハラドキドキ。カメラのストロボをたき、犯人の目を晦ませて時間を稼ぎます。ストロボをたいた瞬間の黄金色に浮かび上がる犯人の顔の不気味なこと。ヒッチコックの恐怖感を煽る発想力って本当にすごい。ギリギリのところでジェフリーズは助かります。しかし、他人の生活を覗き見した罰なのでしょう。犯人、警察ともつれ合い、窓から転落しもう片方の足も骨折してしまうというオチ。最高でした。こういった密室で起こるサスペンスもの(ガス燈、暗くなるまで待ってなど)が大好きで、今のところ、数あるヒッチコック作品の中で個人的に裏窓が最高傑作です。これだけ限られた空間の中だけで、ここまで見せてしまうヒッチコックは映画の神様だ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 21:18:08)
5.   《ネタバレ》 
家の近くでの激しい空爆、川に浮かぶ多くの死体。いままで観た戦争映画の中で、一番痛烈でした。最初のリブ・ウルマンが胸丸出しなのを全く気にしないあたりや、旦那の無関心な様子でこの夫婦の倦怠感みたいなものを感じました。それにしても、旦那さんが情けない・・・ 普段は威張っていて、奥さんがいるのに浮気を重ねても全く悪びれません。口から出るのは、自己中な言い訳ばかり。そのくせ、敵軍に囲まれるとパニックになり命乞いをし、持病の心臓発作を起こし奥さんに背負われ運ばれる始末。また、自分の保身のためなら、お世話になっていた市長を簡単に裏切り、軍の言われるままにピストルで撃ってしまう。映画でこんなサイテーなキャラを見たのは久しぶり。まあ、こんな極限状態に置かれれば人間そんなもんか?その点、やっぱ女性は肝が据わってるねー。人間の弱さ、脆さをここまで見せてしまうベルイマン監督ってやっぱ凄いですね。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-02 13:33:08)
6.  流れる 《ネタバレ》 
まだ映画鑑賞歴の浅い私であっても、この映画が大変豪華であることは分かります。これだけの女優が共演しているにもかかわらず、役者同士で潰しあうこともなく、それぞれがとても自然な演技をしていて驚きます。これ絶対に今、活躍されてる俳優さんも見習うべきだと思います。控えめな田中絹代の正座やお辞儀など動作一つ一つがとても美しい。忘れかけられている日本の女性像がそこにはありました。この女優陣の中で異彩を放っていたのは、やはり杉村春子でした。人を食ったような演技は本当に見事。酔っ払って大立ち回りをし、しばらくしてひょっこりと帰ってきたシーンは何故か憎めなく、微笑ましかった。これだけのキャスト陣にもかかわらず、自然で流れるようなストーリーを作ってしまう成瀬監督は天才だと思います。ラスト、新しく開店予定の小料理屋で働くことを促された梨花の複雑な表情が脳裏から離れません。店を閉じることなど知る由もないつた奴は、歌いながら三味線を弾きます。その音がとても切なく聞こえました。最後、2カットほど外の景色が映されますが、木造の建物の奥にコンクリートのビルが見えるあたり、時代の流れ行くさまを感じてしまいました。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-31 01:19:55)
7.  ももへの手紙 《ネタバレ》 
元来、妖怪といえば人間にとって恐ろしい存在であり、決して相容れあう関係ではありませんでした。最近になって夏目友人帳をはじめ、人と妖怪との共存を模索するアニメ作品が出始めました。本作の妖怪は死んだ人間が天に召されるまでの間、死者とその家族を見守る役割で登場します。人との関係性からみれば従来の妖怪像であり、普通ならばどこか畏怖の念を持って作品を観てしまいます。しかし、本作では妖怪の性格が、ズボラで情けなくどこか憎めない。反対にヒロインのももは元気いっぱいな多感な小学校6年生の女の子。妖怪に恐れをなすどころか逆に弱みを握り顎で使う始末。この関係がこの作品をとても観やすくしています。ももと母親のいく子は、父親を水難事故で亡くしてしまいます。住むところがなくなり、叔母の住む汐島に引っ越します。ももは父親と最後に喧嘩別れをしてしまったことを後悔していました。父親が船に乗る前に残した手紙をももは見つけるが、「ももへ」と書かれた宛名以外は空白でした。人一倍、気を使い不器用な父は謝罪の言葉が見つからなかったのだ。空白の手紙一枚で父と娘のこそばゆい親子関係を想像させてしまう沖浦監督は上手いですね。いく子も普段は明るく振舞っていたが、旦那のいない寂しさを紛らわすため知らないうちに無理をしてしまい、持病の呼吸器系の病気が悪化し倒れてしまいます。ここからクライマックスへと繋がるわけだが、普通の作品だとここまで辛く厳しいストーリーをみせられると途中で疲れてしまいます。しかも、妖怪の映画となれば余計に陰湿な感じを受けてしまいます。ももと妖怪の絶妙な関係。ももといく子の明るい性格。近所の人たちの温かさ。この3点で沖浦監督は暗く厳しい物語を明るい日常物語にしてしまいました。凄いですね。後は、怒涛のクライマックス!マメの言葉で吹っ切れたイワとカワは、仲間の力を借りて台風の中ももを今治まで運びます。妖怪達のトンネルを「こうなったらヤケクソでござるー」と叫びながら滑走するイワ!かっこよかったぞー!ももが父親に宛てた手紙を持って消えていくイワ、カワ、マメにうるっときちゃいました。こんな愛すべき妖怪いないぞ。最後、小舟で父親からの手紙が届くシーンは素晴らしいですね。こんなにも不器用で優さの詰まった短い言葉・・・号泣しました。人間は一人では生きていけない。そんな沖浦監督の気持ちが伝わってくる素晴らしい映画でした。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-29 20:41:16)(良:1票)
8.  チート 《ネタバレ》 
セシル・B・デミル監督、初期の傑作。早川雪洲見たさに鑑賞しました。富豪の妻の弱みを握り、思いのまま、我がものにしようとする雪洲。サイレント映画ならではのオーバー気味な奇抜な演技は見事!イケメンなのによくやりますよね。キ○タクではできないでしょう(笑)女性の背中に焼き鏝を当てるなんてことは、当時はかなりセンセーショナルだったのではないでしょうか。おかげで雪洲さん、しばらく日本に帰れなくなっちゃったし・・・可哀想に。その他、判決後の裁判所の混乱の様子も凄くて、サイレントなのに怒号が聞こえてきたような感じがしました。セシル・B・デミル監督って当時からエンターテイナーだったのですね
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-04 23:44:51)
9.  赤い風船 《ネタバレ》 
パスカル少年と赤い風船の友情を描いたファンタジー映画。劇中、会話はほとんどありません。赤い風船を生き物に見立ててしまうフランス感覚が素晴らしい!「風船が重力に逆らって飛んでいく訳ないだろう」などという野暮なみかたをしてはもったいない。クライマックスのパスカル少年とたくさんの風船(ともだち)が空高く飛んでいくシーンには、ほろりとしてしまいました。映画は本来、絵で語るものだということを再認識させてくれた名作です。この作品に短編パルム・ドールを与えたカンヌにも拍手!
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-02 19:57:07)
10.  奇人たちの晩餐会
いやー面白かった!フランスの笑いの感覚がとても日本的なことに驚きました。友人のルブランが登場してから、ブロシャンの滑稽さが際立ってきましたね。いい引き立て役になっていたと思います。ブロシャンが単なる悪趣味な嫌な奴になっていたらここまでの良作にはなっていなかったと思います。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-01 22:37:04)
11.  長屋紳士録 《ネタバレ》 
結構残酷な内容のはずなのに、何故か笑ってしまう不思議な映画でした。幸平は戦争孤児という設定なのに、体型がふっくらしているというのが可愛らしいんですよね。飯田蝶子演じるおたねも、どこか憎めません。怒りっぽいが情に弱い一面も持ち合わせていて下町のおっかさんと言った感じでしょうか。茅ケ崎の海岸に幸平を置き去りにしようとするシーンなんか、下手な監督が撮ればただの鬼婆ですよ。そこを、子供が追いかけてきてだんだん距離が縮まっていくショットを観せ、最終的に一緒に家に戻ってしまうことでほっこりさせてしまう。このあたりの演出が上手いなあと思います。  クジではめられるシーンやぶかぶかの帽子など可笑しい場面はいくつもありましたが、一番笑ったのが、あれだけたくさん芋を買ったのに、幸平の父親がお礼に芋を持ってきたところ。あれは爆笑でした。  今回改めて小津監督は喜劇作家であることを実感しました。本作が公開されたのが昭和22年。この時代にこんなにも明るい戦争映画が日本で制作されていたことにも驚きました。
[DVD(邦画)] 8点(2017-03-18 01:40:23)
12.  ハタリ! 《ネタバレ》 
野生動物を、生きたまま捕獲する様子を映し出した珍しい映画です。  逃走する動物を車で追いかける様子は、まるでジョン・フォード監督の駅馬車を観ているかのような臨場感でした。特にサイとのせめぎあいは、見応えがありました。よくもまあ、これだけ迫力のある映像が撮れたものです。昨今のCG映像では、この迫力は出せません。生け捕りの方法がワイルドで、ロープを首にかけ引っ張り動きを止めてからトラックの荷台に押し込みます。これが素人の俳優がやってのけるのだから、映画に対する熱意が尋常でないことが想像できます。西部劇のように銃が登場する映画で、死者を出さない映画は本作以外に記憶がありません。そのことからも本作は、大変貴重な映画だと思います。  捕獲シーン以外のストーリーもよくできています。捕獲チーム内での恋愛事情をコメディータッチで描いており、それだけでも十分満足できてしまいます。さすがハワード・ホークス監督、演出が上手い!特にダラスと小象の絡みが微笑ましく見入ってしまいました。ラスト、彼女を追いかけていく3頭の小象の行進が可愛くて、私も飼ってみたくなってしまいました。  生け捕りにされた動物は、動物園などに引き渡されます。本作の明るい作風には、一生かけて動物を愛してほしいというメッセージも含まれているのではないかと思います。出来れば映画館の大スクリーンで鑑賞したい映画です。
[DVD(字幕)] 8点(2017-03-18 01:21:28)
13.  何がジェーンに起ったか? 《ネタバレ》 
大女優同士の壮絶な演技の応酬は迫力満点。ベティ・デイビスの狂気に満ちた演技も怖いが、ジョン・クロフォードの内に秘めた怒りを抑える演技もかなりの怖さである。幼少期、活躍する妹を尻目に不遇の扱いを受けるブランチ。「この悔しさは絶対忘れてやらない。」この一言が終始、重苦しい余韻を残す。ジェーンにどんな仕打ちを受けても反発もせず黙って耐えるのです。窓から助けを呼ぶことだってできたはずである。どこか、壊れていく妹を観察するのを楽しんでいるようにさえ感じました。海辺でブランチが、美しい妹が自分のものまねをするのを見て怒り、ジェーンが車で自分を轢き殺そうとしたように画策したことを告白します。その瞬間、ジェーンの鬼のような顔が穏やかな表情に変わりました。お互いライバルとして意識しすぎていたのである。アイスクリームを手に持ち、群衆の中で楽しげに踊る姿は子供返りしたかのようでした。スターになってしまったゆえに生じた、二人の間の軋轢からようやく解き放たれました。今後、厳しい残りの人生が待っているのだが、死ぬ前に人間味を取り戻しただけでも幸せなのではないでしょうか。
[DVD(字幕)] 8点(2015-01-26 23:44:01)
14.  アウトレイジ ビヨンド 《ネタバレ》 
冒頭の服役中の大友の格好に笑ってしまった。帽子を被り、胸には名札。まるで幼稚園児ではないか。ここに哀れな男の姿がありました。前作のアウトレイジでは、奇抜な殺し方に注目が集まりすぎてそれを北野監督は快く思わなかったようだ。本作はそのような表現が抑えられている一方、言葉の暴力で魅せてくれました。花菱会の若頭の西野との怒鳴り合い、「殺すぞー!」「やれるもんならやってみろー!」これは完全に子供の喧嘩である。そんなやり取りすら、漫才にしてしまう北野監督はさすが。裏切っては裏切られ、あるものは頂点から奈落の底へ突き落され、無残に殺されます。哀れで大バカな男たちの悲劇的な喜劇。北野監督のバイオレンス映画は、最も残酷な形で暴力社会を否定しているのである。暴力を否定するには笑いとばしてやればよい。幸せを肯定するなら残酷な悲劇を見せつけてやればいいんだ。そうすることが一番効果的であることを北野監督は知っている。絶対的な感性で社会に疑問を投げかける北野監督は天才であり、彼の作品を愛してしまうのは当然であろう。最近の作品は、なんだかんだ言っても客が入らなければ意味がないというスタンスで映画を製作しているので、今まで北野作品に縁がなかった人も鑑賞するようになり嬉しく思います。
[映画館(邦画)] 8点(2015-01-15 00:15:33)(良:1票)
15.  髪結いの亭主 《ネタバレ》 
少年の初恋は、美容室に勤める太った大人の女性でした。汗ばむ女性の匂いや、どこかエロティックな雰囲気は、少年にとって性的な魅力に溢れていたのです。時がたち、少年は初老の男性となりました。ふと立ち寄った美容院で昔の記憶が甦ったのか、そこで働く若い女性に恋をしたのである。フランス人らしい語り口で口説き、結婚することになります。男は店で何をするわけでもありません。妻の働く姿をただ見つめるだけである。でも妻は夫がそこにいてくれるだけで幸せなのだ。日本でこんなことをすれば、どやされるのがオチである。一週間でいいので、こんな夫婦生活を体験してみたい。閉店後は二人だけの時間。毎晩激しく愛し合います。ある嵐の夜、いつものようにセックスに耽っていたが妻はふとこの愛が終わるときのことが頭をよぎります。恐ろしくなったのか、家を飛び出しそのまま命を絶ってしまいました。悲しい思いをするくらいなら死んでしまった方がまし。これは日本人には到底理解できない、究極の愛の形である。ラストも重い雰囲気になることなく、爽やかに終わらせるところはさすがフランス映画。日本の周りの迷惑を考えず、二人でセックスしながら毒を飲んで心中を図る某不倫映画とは大違いですね。
[DVD(字幕)] 8点(2015-01-14 23:37:16)
16.  異人たちとの夏 《ネタバレ》 
シナリオライターの英雄は、幼い時に両親を事故で亡くします。多感な時期に愛情を受けずに育ってきた英雄は、人当たりも冷たくあまり人間味を感じない。奥さんとも離婚することになり、ますます生きる気力を失っていきます。そんな彼はある夏、桂という女性と亡くなった両親に再開します。桂とは恋愛関係となり、忘れていた愛を取り戻していきます。また、失われていた記憶を取り戻すかのように両親との会話や食事を楽しみ、親の愛情を久しぶりに感じるのである。しかし、自分の生命力が弱っていることを桂の言葉で悟り、両親と会うのをやめると誓うのです。最後、親子ですき焼き鍋を囲みます。英雄の感謝の言葉を聞いた両親は、これからも彼が生きていく意思があることを感じ食事に手をつけることなく夕日と共に消えていきました。「ありがとう。お父さん、お母さん。俺頑張るよ。」ここで終われば感動のハッピーエンド。「生きる希望を取り戻した男の愛情物語」ということになるのだが、大林監督はそんなに甘くなかった。恋愛関係にまで発展していた桂も、自ら命を絶ち幽霊になっていたというオチ。しかも寂しさを紛らわすため、英雄を自分だけのものにしようするホラーさながらの超展開。これは大林監督の「どんなに希望を持って生きようとしても、必ず理不尽や恐怖、絶望が襲ってくる。それらを乗り越えなくてはならない。生きるって大変なんだ。」というメッセージだと勝手に解釈しました。また、ここまでの不思議体験の中の愛はあくまで英雄が相手からもらったものであり、自分が愛してやった訳ではありません。英雄は悪魔のような顔になり、桂の血飛沫で体中が赤く染まります。この状況下でも命乞い(自己防衛)をするようなことはありませんでした。桂の寂しさに気付けなかった己を悔い、一人で寂しい思いをしないよう自分を連れて行くよう必死で呼びかけます。桂は本当に愛されていたことを知り、生きてほしいとの言葉を残し去っていきました。英雄は初めて人(幽霊だけど・・・)を本気で愛したのである。現実に戻った後、息子に花札を教えてやると言ったシーンは印象的でした。男四十路、独身。これから厳しい第二の人生が始まるのだ。大林監督は面白い視点から、生きることの難しさを表現しました。
[DVD(邦画)] 8点(2015-01-13 00:06:02)
17.  豚と軍艦 《ネタバレ》 
とてもエネルギッシュな映画でした。まさにバカヤローな男どものドタバタ喜劇。とにかく、この映画の中の「男」に何一つ魅力を感じません。弱いものから金をせしめる。妊娠した彼女を簡単に中絶させる。引っ掛けた女を米兵に受け渡す。親分と慕われている銀次でさえ、胃潰瘍を末期がんと勘違いしノイローゼになる始末。これまでの日本映画のヤクザ像とは一線を画しており、高倉健の任侠映画の真逆を行っています。この男どもの末路も哀れで、自分の育てた豚に踏み殺され、ある者は便所の汚水に顔をうずめて死んでいきました。オーバーアクト気味な演技もなかなか面白かった。加藤武のいかれた演技、言動は異彩を放っていました。また、若干17歳の吉村実子の体を張った演技も凄い。吉高由里子の蛇にピアスの演技なんてまだまだ。若者の有り余るエネルギーが、全てマイナスの方向に放出してしまいました。普通なら陰湿な映画になってしまうところを、喜劇にしてしまう今村監督は凄い。まさに日本版ヌーヴェルヴァーグ!
[DVD(邦画)] 8点(2015-01-07 22:27:14)(良:1票)
18.  奥様は魔女(1942) 《ネタバレ》 
17世紀末、ジョナサン・ウーリーの告発で魔女のジェニファーと父ダニエルは火あぶりとなり、その灰が木の根元に埋められる。復讐のため結婚が失敗する魔法をかけられたウーリー家では、何代にもわたりヒステリーな女と結婚する羽目になります。前半は、コメディータッチでテンポもよく観ていて楽しかった。親子揃って煙の姿でモコモコと漂います。ラム酒の中に隠れたりしてウーリーを観察する様子が、コミカルでとても面白い。人間の姿を手に入れた後のジェニファーが可愛い。ウーリーにつきまとい小悪魔的なキャラを演じる姿や、階段の手すりを滑り降りるシーンはキュンとしてしまう。惚れ薬をジェニファーが飲んでしまい、ウーリーに恋心を寄せるようになってからは空気が一変します。陽気なキャラだったダニエルは、怒り狂って娘のジェニファーをも再び木の根元に封印しようとします。運転手に扮したダニエルの顔が、稲光に照らされ浮かび上がるシーンは完全にホラー。ものすごく怖かった。最後は、ダニエルをラム酒に閉じ込めて二人は結婚します。魔女を真似る子供、ラム酒の中から不敵に笑い家族を見つめるダニエル。このままハッピーエンドという感じはなく、不穏な未来を予兆するかのようだ。同じ映画の中で、これだけ空気を変えてしまうルネ・クレール監督の手腕はさすが。
[DVD(字幕)] 8点(2015-01-05 23:57:34)
19.  キリクと魔女 《ネタバレ》 
いやー大変綺麗な映像でした。アフリカの美しさに見惚れてしまった。冒頭のキリクが自力で生まれてくるシーンで、既に人類発祥の地であるアフリカの神秘的感じが滲み出ています。小さいキリク故の視点が面白い。大人に見下ろされたときの不気味なまでの威圧感。地下で繰り広げられる冒険譚。どんどん独特な映像の世界にのめりこんでしまいました。アドベンチャー、謎解き、異形なものに対する畏怖、神秘的な世界観。私はこの作品に、ゼルダの伝説に似た空気を感じました。これゲーム化されたら面白いだろうなあ。アニメーションとしては満点だと思います。ただキリクは、何故カラバと結婚したくなっちゃったんだろう?唐突だったので呆気にとられました。また男たちは喰われていなかったものの、カラバは村人に対して結構迷惑かけたと思うんですよ。一言くらい謝罪の言葉があってもよかったのではと思ってしまった。野暮かな・・・ 最後の超展開を除けば完璧に近いアニメ映画だと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2015-01-02 01:59:43)
20.  大人の見る絵本 生れてはみたけれど 《ネタバレ》 
サイレント映画なのに声が今にも聴こえてきそうなほどに見事な演出でした。小津監督作品のいわゆる「小津調」に比べ、本作はテンポが速く感じました。子供たちは皆、自分の父親が一番偉いのだとアピールします。それほど当時、父親という存在は大きかったのでしょう。私の時代でさえ、友達から自分の悪口を言われる分には平気だったが、父親の悪口を言われるとついカッとなったものです。そんな自慢の父親が職場の上司の機嫌をとるため滑稽な動きをしたり、変な顔をしている映像が写し出されます。これは子供にとってはキツイ。小津監督の作品ってほのぼのしたイメージが強いけど、結構強烈な描写が多いんですよね。この作品もコメディータッチだが内容は厳しい。このような経験から次第に父親や大人社会に対し、嫌悪感や失望感を抱くようになりギクシャクしてきます。これは今も昔も変わらないですね。私自身もこのような体験をし、反発をしていた時期はやはりあったと思います。社会に出て仕事をするようになって、大人の世界の厳しさや理不尽さを知り、父親の苦労を知ることになります。「生活」を撮らせれば、小津監督の右に出るものはいないです
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-25 00:16:03)
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