Cinecdockeさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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口コミ数 983
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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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1.  マトリックス
公開から30年に及ぶ年月が経っても古臭さを一切感じさせない。 本作から一気にハードルが上がった驚異の映像革命が取り沙汰されるも、 AIに使われる未来を予期した強固な世界観によって納得のあるものにさせている。  今思えば、冴えない男が実は"選ばれし者"だったというプロットは、 異世界転生なろう系でよく見かけるも、古今東西、オタクな中学生なら誰もが考える夢想であると再認識。 中二病な展開と誰もが知っている名シーンの数々が味わい深い。
[インターネット(字幕)] 8点(2025-05-05 23:44:45)《新規》
2.  ラスト・アクション・ヒーロー ネタバレ 
かつてTV放映されていたものが配信で見れるのもあって、懐かしさに再見した。 無駄に人が死ぬし、無駄に爆発するし、無駄にモノが壊されまくるし、なんて頭の悪い映画だろう(誉め言葉)。  確かに面白そうなアイデアを上手く活かし切ってない、設定の詰めの甘さや掘り下げ不足が目立つ。 ただ、王道なヒーロー映画のお約束に、有名映画のオマージュとパロディの数々、 現実と虚構のギャップを活かしたユーモアが心地良い。 1シーンのために大スターたちがわざわざカメオ出演と、当時のハリウッドは元気で明るい時代だったとしみじみ。 (コンプラ的に問題は山積みだったと思うけれど)。  映画では【最後は悪党が倒れて正義が勝つ】という流れだが、現実は厳しく、陰鬱で理不尽な出来事ばかり。 映画以上のリアルな悪に驚愕したベネディクトが魔法のチケットで世界を蹂躙しようと企むあたりなんて、 "悪党"には都合の良い、強大な力で意のままに動かしたい実在の権力者そのものだろう。 シュワルツェネッガーも映画と現実では別人で、その役のジャック・スレイターには彼なりの問題を抱えている。 架空の人物だったと受け入れざるを得ない自分自身の存在意義に悩みながらも、 台本に操られない自分の意思で生きていくことを掴み取る。 それはまさに、苦しい時期に映画に救われた、元気付けられた観客と重なるのではないか。  シュワルツェネッガーはあと数年で80歳を迎える。 いつかは彼だけでなく、全ての映画に携わった役者全員もこの世を去っていくだろう。 それでも当時のフィルムにあの時の姿のままでこれからも生き続け、映画を見る人を迎え入れてくれる。
[インターネット(字幕)] 6点(2025-04-13 23:13:46)
3.  アンドリューNDR114 ネタバレ 
ロボットして生を受け、人を知るために、人として生涯を終えた男の数奇な200年。  遠い昔にテレビ放映で見たきりなのだが、YouTubeで無料配信されていたため、これを機に再見した。 映画の完成度は決して高くはないし、感傷的でエピソードが駆け足の飛び飛びで、 ほぼロビン・ウィリアムズの演技に全てが掛かっていると言っても良い。 ただ、製作当時から25年も経ち、AIに関する論議が本格化しているのもあり、時代が映画に追いついた。  感情が豊かになり、人の外観を手に入れ、人工臓器によって痛覚を得て、食事も排泄もでき、最後は老いも手に入れる。 あまりに不完全な存在に憧れを抱く突然変異のロボットと、神の領域に手を伸ばす人の違いはどこにあるのか。 生殖はともかく、人工臓器に交換すれば若々しいまま150年も生きられるだろうし、 何なら食事の必要もなく、頭部だけで生き永らえることだってありえるだろう。 技術の進歩は大事だと思うも、そこに怖さを感じる。  死はネガティブに見えるが、時間が有限だからこそ、生きていることを実感できる。 晩年、重い病に苦しみ、自ら人生を終わらせたロビン・ウィリアムズを見るに、思う部分は多くあった。
[インターネット(字幕)] 7点(2025-04-12 12:38:00)
4.  グリーンフィッシュ ネタバレ 
イ・チャンドンの監督デビュー作が裏社会モノという、一見らしくないチョイスなのだが、 最後まで見続けると彼のテイストが根底からブレていないことが分かる。 確かに青臭く、粗削りな部分はあれど、次回作の完成度の高さを見るに、 巨匠に続くステップは既にできあがっていたのだ。  兵役が終わった青年・マクトンの、分裂気味の家族と一緒に小さな食堂を開きたいというささやかな夢。 それが冒頭のスカーフの娘・ミエとの出会いで運命が大きく変わっていく。  彼にとって裏社会で生きるにはあまりにも純粋すぎた。 だからこそ、ボスの情婦であるミエはDVから逃げたい思いをマクトンに投影する。 一方、マクトンが"兄貴"と呼ぶボスのペ・テゴンもまた、冷酷で暴力を振るいながらも敵対する組織には逆らえない。 仁義云々といったアウトローへの憧憬はとうになく、敵のトップを殺してしまったマクトンをぺ・テゴンは殺害する。  主人公のマクトンが死んだ後でも物語が続くのが本作の肝で、イ・チャンドンが伝えたいことがラストに集約されている。 彼の死が皮肉にも家族の結束を強め、地鶏料理の食堂がオープンすることになった。 食堂に現れたぺ・テゴンとその子を孕むミエは、経営する家族が被害者遺族とも知らずに食事を取る。 逃げる地鶏の屠殺とマクトンの兄たちがぺ・テゴンに媚を売るシーンに弱肉強食の非情さを決定づける。 ミエがマクトンから貰った写真で、食堂が彼の実家だと分かったことだけは唯一の救いか。  新しく建てられた無機質なマンションと、古い家屋の対比を捉えたロングショットに、 格差がこれからも続き、高度経済成長の社会から取り残された人たちがいた、その記録を残していく。 本作から30年近く経った今、イ・チャンドンは次にどのようにして分断していく韓国社会を切り取るのだろうか。
[インターネット(字幕)] 6点(2025-03-29 23:20:18)
5.  審判(1999) ネタバレ 
極限状態で利益が絡めば人間の本性はすぐ露わになる。  韓国で多くの犠牲者を出した聖水大橋崩壊事故(1994)と三豊百貨店崩壊事故(1995)をモチーフに、 損壊した若い女性の遺体を巡って、娘の両親を名乗る男女、霊安室の職員、役人、ジャーナリストの揉め事を、 不謹慎なブラックジョークで描いたパク・チャヌクの初期の短編作品。 当時の不安に満ちた世相に実際のニュース映像を挟みながら、 金のためなら人間の良心すら捨てることも厭わない醜悪な社会への怒りと皮肉が込められている。 同時に後の長編作品にも通じるカメラワークとダークなユーモアもこの時から光っていて、 棺に安置した首無し死体と一緒に冷えた缶ビールに、 自分に似ていることを証明するために男二人が遺体に顔を並べているショットはなかなか強烈だ。  だらしのない職員に、賠償金目当ての男女、事なかれ主義の役人、 状況をひたすら煽るジャーナリストの傍らには沈黙する遺体。 そんな彼らの前に一人のケバケバしい格好の娘が現われる。 この娘こそ賠償金目当ての夫婦の実子だった。 そこから場が混沌としていき、タイトルにもなっている『審判』を下すための強い地震が起きる。 洗面器の水漏れにスタンドライトが落ちたことで遺体を守ろうとした職員を除いて全員が感電する。 遺体の親はいったい誰だったのか……もうお分かりだろう。  このラストに人間というモノが集約されている気がした。 人間こんなものと思いながらも微かに残された良心に、 パク・チャヌクならではの冷笑と人間そう悪くないという達観した感情が残る。
[インターネット(字幕)] 6点(2025-03-03 22:52:32)
6.  サタンタンゴ ネタバレ 
7時間半かけて描かれる、ある寒村の死。 建物は朽ち、壁が剥げかけ、あぜ道には止まない雨が降り続け泥土に覆われる。 酒に溺れる年寄り、歳を食った売女くらいしかおらず、互いに足を引っ張っているだけ。 閉塞感に満ちた村に死んだと思われる青年の帰還と孤独な少女の顛末が物語を大きく動かす。  ただ、そこに至るまでの一日を各登場人物の視点でゆったりと進むため、 一枚の地図ができあがるまでに4時間強を要する。 一瞬が永遠に感じられるほどに引き延ばされた緩慢な長回し、虚構が現実の時間と同一化する。 秩序の中に当て嵌められた支配者と被支配者の狭間に、自分はどこに属するのか? 行きつく先にあるのは"搾取"である。  搾取する相手を失った者には絶望しかない。 自らを強者と思い込み猫を殺し、自ら命を絶った少女もそうだろう。  一方で、不安を煽り、信頼を獲得しようと村人の心に付け込む青年は救世主の顔をした詐欺師だった。 金を巻き上げ、いったん疑心に陥らせた後で脅しに近い言葉で信頼を強固にさせる念の入れよう。 ただ、そんな彼も警察のスパイ網を作らせるために釈放されていることから、 真に搾取している存在とは……言うまでもないだろう。 外敵から虐げられるままのハンガリーの被支配者側の歴史が本作に反映されている。 希望をチラつかせては絶望に叩き落される不条理は世界中どこでも普遍的だ。  配信ではなく、ストップボタンを押せない映画館で"体験"する映画。 どこに向かうか分からないあやふやさを含めて、わずか150カットの画の吸引力にしても、 ダラダラ撮っただけの映画ではないことをタル・ベーラは証明してみせる。
[インターネット(字幕)] 6点(2025-01-17 23:26:42)
7.  黒猫・白猫 ネタバレ 
一度見たら忘れないアクの強いキャラクターに、逆立ちしても撮れない唯一無二のシーンの数々、 ブレーキの壊れたハイテンションで臭いも生活感もあふれるエネルギッシュな世界観。 クストリッツァならではの強烈なパワーが感じられるが、 前作の『アンダーグラウンド』から"悲苦"と"政治"を抜いたら物語の緩急がなくなって、 一本調子で終わってしまったのが本作。  列車から石油強奪をするわけでもなく、大物のワルを出し抜くコン・ムービー的な要素もないので盛り上がりに欠ける。 クライマックスの望まない結婚からの延々と続くどんちゃん騒ぎがあれど、必要以上に長くダレてしまう。 クセの強さがはっきり分かるものの、前作が奇跡的なバランスで成り立っていたからこそ、本作には乗れなかった。  タイトル通り、幸せも不幸も、吉も不吉も同一で、切っても切れない関係。 それをひっくるめて人生はなるようにしかならず、全身全霊で人生を楽しんでいくしかないじゃないか。 故国の苦難の歴史を味わってきたクストリッツァの人生観が垣間見えた。
[インターネット(字幕)] 4点(2024-11-30 18:47:10)
8.  エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス
ネットで検索すると時折、魑魅魍魎な映画が存在していることを知る。 噂には聞いていた特級呪物がアマプラをはじめサブスクで配信されているという狂気。 確かに軽い気持ちで、気の知れた家族や恋人や友人と見るものではない。 エロ・グロ・バイオレンス全開の傍ら、アバウトすぎる設定にナンセンスでコントのようなやり取りが同居し、 不愉快・不潔・不謹慎も合わさって闇鍋のようなカオスな様相が強烈なパワーとなって怒涛の如く押し寄せる。 全編シリアスなら見るに堪えない(これでも監督・主演コンビの『八仙飯店之人肉饅頭』よりはマシらしい)。 今の時代なら絶対に作れないし、案外しっかりとしたエンタメで最後まで目を離せなかった。  いろんな意味で記憶に残る映画で、鬼畜っぷりもここまで来ると清々しいレベル。 私はこの手の映画、一か月先はお腹いっぱいです。
[インターネット(字幕)] 6点(2024-09-21 00:26:01)
9.  風が吹くまま ネタバレ 
物語の行く末を左右する100歳越えの老婆は最後まで姿を見せることなく、 独自の風習が残る村の葬儀目当ての都会人であるテレビマンが振り回される。 携帯電話で会話するにも電波が届く、くねくね曲がる道の先の丘まで車で走らなければならず、 他方で村の人々はのんびりマイペースな分、滑稽に映る。 とは言え、一見美しい黄金の麦畑が広がる長閑な村でも、 家族への忠誠のため、面子のために辛い因習に従わざるを得ない現実がある。  死を待っていてもやって来ることなく、苛立ちを隠せないテレビマンが、 村人の生き埋め事故を切っ掛けに人命を救う側に回っていく。 このまま放っておけば珍しい葬儀を取材できるのにである。 撮影して放送して、ただエンタメとして消費されるだけ。 裏側を見ない我々は普段提供されているものに対して、それを期待しているのではないか? そこに人間の矛盾と不可思議さが感じられる。  キアロスタミの芳醇な会話劇は今作も健在で、医者の詩の引用にハッとさせられる。 「天国は美しい所だと人は言う、だが私にはブドウ酒の方が美しい」。 "風が吹くままに"生きられたらどれだけ素晴らしいのだろうか。 仕事に雁字搦めのテレビマンは執着を手放し、現実に折り合いをつけてこれからの人生を生きていく。
[インターネット(字幕)] 6点(2024-09-20 23:59:02)
10.  CURE キュア ネタバレ 
CUREとは"解放"。  『羊たちの沈黙』『セブン』の影響は受けているだろうが、遜色のないクオリティ。 二作品と比べるとひたすら静かに長回しで進んでいくのに、どうなっていくのかという吸引力がある。 質問を質問で返す、コミュニケーションが成り立たない間宮との会話から次第に彼に取り込まれていく恐ろしさ。 日常の延長線上に突発的な殺人が起こるワンショットの破壊力。 そして精神を病んだ妻との関係で追い詰められている高部の本心もまた、 間宮に付け込まれていくきっかけを生んでしまった。  ただ、今までの加害者と違い、高部には"伝道師"としての素質があった。 間宮は後継者を探していたのだろう。 オンとオフ、どちらが本当の自分なのか? それどころか自分は誰なのか? 自分が守ってきたものは何だったのか? その自我が崩れたとき、高部は全てを放り投げ出したように"空っぽ"になった。  二度描かれるファミレスのシーン。 一度は残した料理を、二度目はきれいに平らげ清々しい表情になっている。 タバコの火を合図にウェイトレスが惨劇を引き起こすことを予見して映画は終わる。  一見、良い顔をした優しい善人だとしても心の中に常にわだかまりを抱えている。 その親切が誰にも伝わらない、見返りが感じられないものだと分かったら… 人はどこまでも孤独で、利己的で、誰かと関わる社会が存在する以上、そこから逃れられない。 エンドロールのピアノがその世界への諦観のように思えた。
[インターネット(邦画)] 8点(2024-08-17 02:17:54)
11.  オリーブの林をぬけて ネタバレ 
フィクションとして撮られた『友だちのうちはどこ?』、 大地震を背景にドキュメンタリーとフィクションが同時進行する『そして人生はつづく』、 そして3部作の最後を飾る本作は前作の映画撮影を描いた、メタフィクションに近い構成になっている。 本作は同じシーンが何度も繰り返されるので次第に興味が薄れてしまった。  『そして人生はつづく』で若い夫婦役だった二人だが、実際は夫役の青年は妻役の娘にフラれており、 そのエピソードを一本の映画にしたとのこと。 青年はウザったいくらい必死に彼女を口説くも、そっけない態度で一切無視、 撮影中、何度テイクしても彼女は映画監督の要求にも応えないのであった。 たとえ嘘だとしても好きでもない男に希望を持たせたくないんだろうね。 だったら、どうして映画に出演したのか?になるけど、本心が全く分かることはない。 あのラストのロングショットだってそうだろう。 ただ、自分は結局フラれたと思う。  地震から数年が経ち、ほとんどが都会に引っ越し、取り残された村々。 家を失い今もテント暮らしの者、労働力優先で教育を受けられず識字率の低いイランの現状が色濃く残る。 それでもこの村で生きていくことを決めた人々がいて、 『友だちのうちはどこ?』で主役だった子役の兄弟が再登場したこと、 そしてジグザグ道が出てきたシーンに3部作全て見たからこその感慨深さがあった。
[インターネット(字幕)] 5点(2024-08-13 08:04:24)
12.  そして人生はつづく ネタバレ 
1990年にイラン北西部で起こった大地震。 前作『友だちのうちはどこ?』の舞台になったコケールとポシュテの村も例外ではなく壊滅的な被害を受けた。 主人公役の少年の安否を確かめるべく、キアロスタミ監督とその息子が訪れた実体験を再現したのが本作。  震災から6か月後に撮影されたのもあり、 復興で瓦礫を片付けるシーンや幹線道路の渋滞シーンがセットやCG合成にはない生々しさを映し出し、 劇映画とドキュメンタリーの垣根が曖昧になっていく構成に唸る。 前作にも登場したジグザグ道への郷愁といい、再会した村人との会話が印象に残った。 「地震とは腹をすかせた狼で神の仕業ではない」 「映画は年寄りをもっと年寄りに見せるのが芸術なのかね」 「死んだ人が生き返れば人生を大切に生きるようになるでしょ?」  地震で家族を喪いながらもそれでも家事をこなさないといけないし、いつ死ぬか分からないから結婚を決めたり、 ワールドカップを観るためにテレビのアンテナを立てる。 ドキュメンタリー(現実)ならではの被災者が持つ生命力と、フィクション(虚構)ならではの魔法が詰まっている。 遠方に主人公役の少年を見つけたことを匂わせながら、タンクの男と協力し合って、 ジグザグな急坂をオンボロの自家用車で登っていくロングショットの長回しはまさに「そして人生はつづく」だった。
[インターネット(字幕)] 7点(2024-07-23 21:45:17)
13.  蛇の道(1998) ネタバレ 
セルフリメイク公開記念でYouTubeで期間限定配信されていた。  劇場公開されたもののすぐにVHS化して、Vシネマ(=低予算の極道もの主体)のイメージが強いようだが、 黒沢清の無機質で不条理あふれる世界によって異色の作品になっている。 何せ主要登場人物の背景が台詞でぼんやり明らかになるくらいで、 幾何学的な数式を教える新島の元には何故か幼い少女から高齢者まで集まっている不可解さ。 何度も繰り返され反復される、殺された娘の死因を述べる死亡報告書はただのルーティンに変わり、 静かに不安を煽る演出は杞憂に、行方知れずの男の居場所を淀みなく突き止める破綻した展開も、 まるでストーリーを何度も繰り返して知っているかのように。  娘を殺された宮下は被害者遺族であるのだが言動にどこか違和感があり、 裏社会と繋がりがあること、そして新島の教え子である少女への眼差しに、宮下もそういう"嗜好"だったのだろう。 新島にとってスナッフビデオに関わっていた宮下も、自身の娘の敵討ちの一人。 実の娘のスナッフビデオを見せられる地獄は彼にとって奥底に否定しがたい性的対象だったはずだ。  そこから場面が一転して、新島と宮下の出会いが再度描かれて映画は終わる(微妙に台詞が違う)。 もしかしたらそれぞれの理想のシナリオを求めて、ループしているのではないかと言わんばかりに。 '90年代後半はセカイ系やメタ要素が幾分流行っており、捻りに捻ってモヤっとした感がある。 26年経った現在の価値観で如何にリメイクとして調理していくか、黒沢清の手腕を見届けたい。
[インターネット(邦画)] 6点(2024-06-05 22:41:25)
14.  双生児 ネタバレ 
眉毛なしの登場人物だらけ。 塚本晋也による美術と撮影の抜かりの無さが乱歩の不気味でアングラな世界観と絶妙にマッチ。 邦画によく見られる、悪い意味での過剰演出が本作ではプラスに働き、どこかポップな趣がある。  あのラスト、貧民街に診察に行く雪雄は本当に"雪雄"なんだろうか… 人格を乗っ取られたようで最後まで安心できない雰囲気が良い。
[DVD(邦画)] 7点(2023-07-29 19:58:00)
15.  ファウスト(1994) ネタバレ 
人間の顔をした"悪魔"に気を付けろ。 そこには奇跡も魔法もないんだよ。  怪しげなビラに記された地図に導かれ、満たされない日々を送る男が体験する悪夢。 欲しいものと引き換えに悪魔に魂を売り渡す契約をしたが最後、 台本通り動く操り人形の如く、地獄へと一直線。  現実と虚構が曖昧になっていく中、道化師の呪文に右往左往される悪魔が笑いのツボに入った。 どこか既視感があると思ったら、過去作の『ドン・ファン』の要素も多少入っているのだろう。  もう一度言うが、人間の顔をした"悪魔"に気を付けろ。 心の隙間に入り込み、魂を食い物にする。 序盤に主人公とすれ違って逃げた男、新聞紙に包めた身体の欠片を見るに、 奈落への入り口に我々は立っている。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-05-24 21:39:57)
16.  ペパーミント・キャンディー ネタバレ 
「あの頃に戻りたい」。 もう時は戻らないのに。 消えることのない後悔の中、数日前でも、数週間前でも、数年前でも同じことを言っているのだろう。  初恋の娘がくれたハッカ飴と決まったレールを走り続ける列車をキーワードに、 自殺するまでの男の20年を、アルバムを最後から捲るように遡っていく。  彼の人生には初恋の女性の幻影を常に追い求めていたように感じる。 だったら、除隊後に彼女への想いを打ち明け、成就すべきなのに。 もし、罪のない女子高生を誤って撃たなかったら… 「その手で幸せにする権利は自分にはあるのか?」と己を偽り、彼女を遠ざけ、 それでも空疎さを埋めるために他の女と寝ても、金と名誉を追い求めても一向に満たされなかった。  最終章(20年前)の幸福な時間が冒頭(現代)の悲壮さをより際立たせる。 兵役時、踏みつけにされたハッカ飴が、 当時の軍事国家によって矯正された優しい男の人格とリンクする。  後の『オアシス』で知的障害者を演じたソル・ギョングの振れ幅の大きい演技力の高さに感嘆する。 ハッピーでもバッドでもない独特の余韻に、イ・チャンドンの他の作品をもっと見てみたくなった。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-03-18 00:38:27)
17.  ホーム・アローン2 ネタバレ 
前作同様、やってることは変わらないのでインパクトはそれほどでもない。  ただ、前作を覚えていると楽しめる要素はあるので、それなりに暇潰しにはなる。  そもそも色んな悪戯を仕掛けられるケビンの賢さなら行き違いで迷子になっても、 空港に留まって連絡すれば家族と再会する手もあっただろうに。 そんなことしたら映画として成立しないし、無理矢理作らされた感は否めないかな。 タイトル詐欺も良いところ(工事中の空き家を使っているからセーフ?)。  多くの人が指摘しているように泥棒コンビが前作以上にこれでもかと痛めつけられ、 笑えるかどうかというあたりレビュアーの時代の変化を感じさせる。 フィクションと言えばそれまでだけど、普通は死にます。
[地上波(字幕)] 6点(2022-12-23 23:35:17)
18.  天使にラブ・ソングを2
前作に比べたら明らかに質は落ちるが、それでも面白さは一定に保たれている。  やはり歌のパワーは凄いと改めて実感できる反面、ラストを描きたいがための強引でご都合主義な展開が鼻につく。 それでも描きたいなら生徒の個性や心の揺れ動きにもっとフォーカスして欲しかったと。 前作みたいに正体がバレたら生命の危機というサスペンスもなく、 デロリスことウーピーでなくてはならないというストーリーではないのが一番痛い。
[地上波(字幕)] 6点(2022-12-23 23:16:24)
19.  バンディッツ(1997)
脱獄囚の女性バンドという設定に惹かれて。 確かにプロモーションビデオそのものでストーリーは二の次。 終盤のある展開から冗長で退屈(それ以前に枝葉も少なくなかったが)。 まあ、エンディングは爽やかで良かったので許そう。
[ビデオ(字幕)] 5点(2022-10-22 21:23:46)
20.  シザーハンズ ネタバレ 
カラフルな田舎町に、ティム・バートンのゴシックで奇怪な要素が持ち込まれ、見事に融合した逸品。 人間と人造人間の違い、外見と内面のアンビバレントさ、複雑さを切なさへと昇華してみせる。 手が人を傷つけることもできるハサミでなかったら、もう少し違った結末になったのか。 違う世界のヒロインと出会わなければお互いに幸せだったのか。 それでも出会わなければ、雪を降ることも短いながらも一緒にいられた温もりもなかったかもしれない。 ジョニー・デップの個性なくして、この映画は成り立たなかった。
[地上波(字幕)] 7点(2022-10-19 12:28:34)
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