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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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221.  マンイーター 《ネタバレ》 
 地に足の付いた、王道のモンスターパニック映画って感じですね。   オーストラリアの奥地を舞台としており、適度な「旅気分」を満喫させてくれるし、始まって十分もしない内に皆を乗せた舟が「クロコ探し」に出発するのもスピーディーで、良い感じ。  川下りの際に「アフリカの女王みたいだ」って、自分が思った事を劇中人物が口にしてくれるのも、妙に嬉しかったです。   ワニに襲われる恐怖だけでなく「緊急避難先の小さな島も、やがて満潮になれば水没してしまう」っていう恐怖を付け足してる辺りも上手い。  救助を待つべきか、危険を承知で脱出を試みるべきかという二択問題に「制限時間」が設けられている形であり、緊迫感を高めていたと思います。  ・遭難者の中で最も頼りになりそうな人物が、真っ先に喰われてしまう。 ・嫌な奴が「実は良い奴だった」と判明した直後に喰われてしまう。 ・餌にされずに済んだかと思われた犬が、結局は喰われてしまう。 ・喰われたかと思われたヒロインのケイトが、実は生きていた。   って具合に「誰が生き残るのか」を読めなくする、適度な意外性を盛り込んでいる辺りも上手かったですね。  主人公についても、途中で手を喰い千切られる場面があるもんだから(もしや?)と思えて、最後まで油断せずに観ていられましたし。  「自らを囮にして、木の杭で串刺しにする」っていうワニの倒し方も、派手で良かったです。   翻って、短所を述べるなら……  やはり「島から脱出した後が、少し冗長」って辺りが挙げられるかな?  これを欠点と言うのは可哀想な気もしますが「小さな島に漂流してしまい、周りにはワニがいるので逃げられない」ってシチュエーションが魅力的だっただけに、島からの脱出に成功した後は、もっと手早く纏めて欲しかったんですよね。  漂流者グループの人数が多かった割に、島の脱出後は主人公以外が殆ど出てこなくなるってのも、流石にバランスが悪い。  お陰で、主人公とワニが戦ってる最中にも(他のメンバーはどうなったの? 無事に逃げ切れたの?)って事が気になって、折角のラストバトルに没頭出来なかったですし。  結局「途中で別れたメンバーは全員無事に助かった」ってオチになるので、ハッピーエンド色を強める効果はあるんですが、マイナスの方が大きかったんじゃないかと。   「中盤までは面白くて、終盤ちょっと退屈」って構成なので、鑑賞後の印象という点では不利になってしまうのが残念ですね。  呑気なエンディング曲も味わい深いし、憎めないというか、愛嬌のある映画ではあるんですが、傑作とは言い難い……そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2020-10-27 08:10:16)(良:1票)
222.  9か月 《ネタバレ》 
 94年のフランス映画「愛するための第9章」を95年にアメリカでリメイクしたという、風変わりな一本。   残念ながらフランス版は未見の為、詳しい比較などは出来ないのですが……  これ単品で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。   結婚前の優雅な「恋人時代」が冒頭に描かれている為、そんな幸せな日々を奪われてしまった男として、妊娠に戸惑う主人公にも自然と感情移入出来ちゃうんですよね。  「赤ん坊の健康の為、飼い猫は捨てた方が良い」「二人乗りのポルシェは、買い替えた方が良い」と言われてしまう場面などは、本当に主人公が可哀想になったし「父親になるのを嫌がる男」として、きちんと説得力があったと思います。   それと、本作は豪華なキャストが揃っている点も特長なのですが、中でもやはり、ロビン・ウィリアムスの存在感は凄かったですね。  もう画面に彼が出てきた途端「ヒュー・グランド主演のラブコメ」が「ロビン・ウィリアムスの映画」に変わっちゃうくらいのパワーがある。  本作の場合、主演のヒューも魅力たっぷりな俳優さんである為、ギリギリでバランスが取れていたけど……  もっと地味で華の無い主演俳優さんだったら、完全にロビン・ウィリアムスに圧倒されて、歪な映画になっていた気がしますね。  そのくらい、彼の存在は光っていたと思います。   子供を産むデメリットについて、ヒロインが色々と語った後「それでも欲しいの」「私の中で、命が生きてるのを感じるのよ」と訴える場面なんかも、女の強さというより、母の強さが感じられて、印象深い。  母親は生まれてくる子が「自分の子」だって分かるけど、父親にとってはそうじゃないという普遍的なテーマについても、さらりと触れていたりして、この辺も良かったですね。  我が子の為なら、たとえシングルマザーになっても生きていくと、早々に決意を固めたヒロインに対し、中々煮え切らない主人公の姿に、リアリティを与えていたんじゃないかと。   主人公が小児精神科医という設定に、あまり必然性を感じない事。  途中何度か出てくる「蟷螂」の姿が怖過ぎる事。  車に関しては「ファミリーカーに買い替えた」とあるけど、飼い猫はどうなったのか明かされず仕舞いな事など、欠点というか、気になる点も多いんだけど……  まぁ、決定的な短所とまでは思えなかったです。   それと、自分は男性である為、どうしてもこの主人公は優し過ぎるというか  (妻に対し、妥協し過ぎ。自らを犠牲にし過ぎ)  って思えたりもしたんですが、それも観終わる頃には、あまり気にならなくなっていましたね。  女性の「産む苦しむ」に比べたら、そのくらい軽いもんだろって、クライマックスの出産シーンで諭されたような感じです。   産まれたばかりの赤ん坊を抱きながら「僕らは家族だ」と言ってキスする場面も、二人が「恋人」から「夫婦」になった事を感じられて、凄く良かったですね。  「一人の男が、父親になる物語」として、しっかり楽しませて頂きました。
[DVD(吹替)] 6点(2020-10-24 19:41:26)(良:1票)
223.  裏窓(1954) 《ネタバレ》 
 これ、話の根幹となるサスペンス部分よりも「他人の生活を覗き見する」という枝葉の部分の方が、よっぽど面白い映画ですよね。   なんせ前者に関しては「隣人が殺人犯じゃないかと疑ったら、本当にそうだった」というだけなので、今観ると新鮮味が無いというか、予定調和過ぎて楽しめないってところがあるんです。  でも、後者に関しては今でも斬新だし、普遍的な魅力があると思います。   自分が特に好きなのは「ベランダに布団を敷いて、仲良く眠るカップル」の描写ですね。  このベランダがまた、本当に布団を敷くのにピッタリなサイズというか、絶妙な手狭さで(良いなぁ……このベランダで、布団敷いて眠れたら楽しいだろうな)って、そんな風に思えちゃうんです。   飼い犬を籠に乗せ、それをエレベータのように地面に下ろす描写も、凄くミニチュア的な魅力があって好き。  もし、自分に模型作りの腕前があったら、きっとこの「裏窓の世界」を再現していたんじゃないかって気がします。   第二のメインストーリーと呼べそうな「孤独な女性」の描写も、凄く良いですよね。  殺人犯に関しては(どうせ逮捕されて終わりだろうな)と達観して観ていられたけれど、彼女に関しては本当にどうなるか読めなくて、自殺エンドも有り得るのではと思えただけに、作曲家の男性と結ばれ、幸せな結末を迎えてくれたのが、本当に嬉しかったです。  ラストシーンに関しては、バレエダンサーのトルソ女史も恋人と再会出来て、全体的にハッピーエンド色が強めな中「夫を詰る妻」という、新たな波乱を予感させる一コマも挟んでいるのが、ヒッチコックらしいシニカルさで、クスッとさせられましたね。  もしや、些細な口喧嘩から第二の殺人に発展する可能性もあるのでは……と思えるし、主人公が窓の外に興味を失くした後も、自分としては、もっともっと「裏窓の世界」を眺めていたくなっちゃいました。   それと、本作は細かい部分が丁寧に作られている点も、忘れちゃいけない魅力ですよね。  「窓を開けっ放しのままで犯行に及ぶ訳が無い」とヒロインや刑事に言わせて、主人公の話を中々信じてもらえない理由にしている辺りなんて、特に上手い。  この映画の仕組み上、どうしても「犯人は何故か窓を開けたままにしている」っていう不自然さを押し通さなきゃいけない訳で、それについて全く言及しないのではなく、むしろ率先してネタにして「だから主人公は信用してもらえないのだ」という形で活用してみせたのは、本当に見事だと思います。   裏窓からの視点に固定されている為、さながら舞台を眺めているような趣があるのも、特別な映画って感じがして楽しい。  女性が飼い犬の死を嘆き「ここで誰からも好かれてたのは、この子だけ」「だからなの? 妬ましいから殺したの?」と訴える様も、如何にも舞台劇といった感じでしたよね。  この辺りは、ヒッチコックも意図的に舞台っぽい物言いにさせたのかな、と思えました。   わざとらしいBGMを流さず「近所の作曲家の演奏が聴こえてくる」って演出にしているのも上品だし、視点が固定されているがゆえの「一方的に覗き続けていた相手と、目が合ってしまう」場面の衝撃も、実に良かったです。   そんな本作の短所はといえば……  肝心の主人公カップルには魅力を感じなかった事。  犯人と対決するクライマックスが、全然盛り上がらなかった事。  この二点が挙げられるでしょうか。   こうして書くと(いや、それって重大過ぎる欠点でしょ)(主人公達に魅力が無くて、クライマックスが盛り上がらない映画って、本当に面白いの?)って、我ながら不思議に思えてくるんですが、それでも間違いなく面白いし、傑作なんですよねコレ。  幹は細く頼りなかったとしても、枝葉が豊かに茂っていて、美しい樹木として成立している感じ。   鑑賞後も「裏窓から見える、小さな世界」が懐かしく思えて、何度でも再見したくなるような……  そんな、愛らしい映画でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2020-10-14 19:26:54)(良:2票)
224.  アフリカの女王 《ネタバレ》 
 呑気な川下り映画というイメージだったのですが、久々に再見してみて、序盤は意外と陰鬱な事に吃驚。   ヒロインの兄が精神を病んで死ぬ場面とか(あれ、こんな映画だったかな……)と戸惑っちゃうくらいでしたね。  この辺りは、やはり戦争を扱った映画なんだなと、しみじみ感じさせるものがありました。   とはいえ、川下りが始まってからはイメージ通りの「呑気さ」に溢れており、ホッと一安心。  一応、道中では色んな災難に見舞われて苦労するんだけど、それもお約束の範疇というか、安心して観ていられる感じなんですよね。  裏を返せば「緊迫感に欠ける」って事でもあるんですが、自分としては長所に思えました。   現地人の描写とか、蚊の大群が合成丸出し(ヒロインが「こんなに刺されて」と主人公を気遣うけど、刺された痕なんて全然分からない)とか、現在の観点からは気になる点も多いんだけど、まぁ御愛嬌。  舟を止めて水浴びしたり、雨が降ったら狭い屋根の下で男女同衾したりと「ラブコメ映画」としての魅力を備えている点も、良かったですね。  最初は兄にさえ「器量が悪い」なんて言われていたヒロインのローズが、どんどん綺麗に見えてくるし、ボガート演じる主人公も髭を剃ったら二枚目だしで、観ているこっちとしても、主人公カップルの好感度が徐々に上昇していく様が気持ち良い。  アフリカが舞台って点を活かし、色んな動物を拝ませてくれるし、急流の場面は迫力あるしで「旅映画」「アドベンチャー映画」としての魅力も、文句無しでした。   ただ、これは勿体無いなと思えたのは……  ちらちらワニの存在を匂わせておきながら、結局ワニとの戦いになる場面が無かった事ですね。  流石のジョン・ヒューストン監督も、後の「ワニ映画」需要までは予見出来なかったのでしょうか。  もしワニと戦う場面があったら「川下り映画の元祖」というだけなく「ワニ映画の元祖」としても語られたかも知れないし、つくづく惜しいです。   最後は目的通り「ルイザ号」の爆破に成功し、アッサリ終わるんだけど……  なまじ爆破後も長々と尺を取っていたら(ご都合主義過ぎる)って印象が強まっていたでしょうし、スパっと終わらせて正解だったんでしょうね。  死刑執行直前に主人公カップルの結婚を認めたりと、ルイザ号の船長も良い人だったので、船が爆破されても生きてる描写を挟んであるとか、そういった細かい配慮にも感心させられました。   昔の名作映画って、格調が高い代わりに「一度観たら充分」って気持ちになる事も多いんですが……  これは例外的に、また忘れた頃にでも観返したくなる。  そんな味わい深い一本です。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-14 19:12:49)(良:1票)
225.  ゾンビスクール! 《ネタバレ》 
 子供が大人を殺しまくる映画といえば「ザ・チャイルド」などの先例があります。  でも、子供がゾンビになるというパターンは初見の為、新鮮な気持ちで観賞する事が出来ましたね。   中盤以降は、お約束の籠城展開になる訳だけど、その場所が小学校というだけで、もう面白い。  「携帯電話の持ち込みは禁止」という校則+「ゾンビによる電話線の切断」という展開によって、入念に外部との連絡を遮断し、何とか脱出に成功したと思ったら、実は学校の外も地獄と化していた……というオチも、お約束だけど良かったと思います。   そんなベタな展開の一方で「主人公とヒロインが結ばれない」「序盤に腕を引っ掻かれたので、絶対に主人公もゾンビ化すると思っていたら、大丈夫だった」などのセオリー外しも、意図的に行っているのですよね。  主演のイライジャ・ウッドが「ホビット」と言われて意味深な反応をしたり、車にされた落書きの「しゃぶれ」というワードが伏線で、その犯人である子供を「しゃぶれ」と言ってから轢き殺すシーンがあったりと、脚本も色々と凝っています。  子供ゾンビが死体で遊ぶ残酷描写、そして彼らをピッチングマシンやカンフーを駆使して薙ぎ倒す大人達の描写なども、それぞれ「観客が見たいもの」を分かっているというか、サービス精神が感じられて、嫌いじゃないです。   ……っと、ここまで書いて気付いてしまったのですが、どうも本作って、ちょっと素直に褒め切れないような、微妙に感じる部分が多かったのも確かなんですね。  基本的にはゾンビ映画というだけで好みだし「主人公達は教師」「舞台は小学校」「ゾンビとなるのは子供達」というキーワードだけで(これは絶対に面白いはず!)と期待し過ぎたのかも知れませんが、それを差し引いても、観賞後の満足度は高くなかったです。   理由の一つとしては、根本的に敵が弱い事が挙げられそう。  序盤こそ(引っ掻かれるだけで感染するタイプか、こりゃあ子供ゾンビといえども油断出来ないな……)と緊張感も味わえたのですが、結局「大人は感染しない」という事実が中盤にて明らかになり、それ以降は死亡者すら出なくなりますからね。  これは流石に落差が激し過ぎるというか、何だか敵が勝手に弱体化したようにも感じられ、ノリ切れなかったです。  なんせ本当にゾンビ達が「凶暴な子供」というだけなので、一対一では「武装した大人」が圧倒的有利なんですよね。  じゃあ数の暴力で攻められるんだろうなと思ったら、一対多数でも結構余裕だったりして、全く危機感が無い。   その「敵が弱い」「主人公側が負けそうにない」という画面作りなせいで、ヒロインの彼氏による自己犠牲シーンでも(無理して残って戦わず、一緒に逃げれば良かったのでは?)と思えてしまうし、その後に「皆の為に犠牲になったアイツが、実は生きていた」展開をやられても、全然興奮しなかったです。  作り手側としては「実は生きていた」展開に説得力を持たせる為、敵に囲まれた状況から脱出しても不自然ではないような設定したのかも知れませんが(そりゃあ、あのくらいの強さの相手なら死なずに済んでも不思議じゃないよな……)と思えてしまったし、本末転倒ですよね。   最後に火を点けてゾンビ達を燃やすクライマックスに関しても、劇中人物はグラサンで格好付けて決めているのに、観ているこっちはといえば、完全に白けモード。  (貴重な液体燃料を使わなくても、そのまま逃げれば良いじゃん……しかも、ついさっき車がガス欠になるって展開やった後にコレかよ)なんて、意地悪な考えが浮かんできたくらいです。   一番不満だったのは、主人公グループに付き従う二人の子供達。  本当にもう「子供は全員悪役ってのも気分が悪いので、一応味方側にも付けておきましたよ。しかも男女の黒人と白人でバランスが良いですよ」くらいの存在価値しか見出せなくて、終盤に至っては台詞すら皆無で、実に勿体無かったです。  黒人少年の方なんかは、授業の際に主人公の書いた小説を読み上げるシーンがあったんだから、その後に「先生の書いた御話、面白かったよ。続きが読みたい」くらい言わせても良かったじゃないか、と思えましたね。  そうすれば「主人公にとっての、初めての読者」という関係性が生まれ、両者に絆が育まれるし、彼が糖尿病で倒れた際に、危険を承知で主人公がキャンディー菓子を調達しに行くシーンも、更に劇的になったんじゃないかと。   何て言うか、個々のパーツは決して悪くないんだけど、それらを乱雑に繋いでしまった……という印象ですね。  もうちょっと丁寧に作ってくれていたら「好きな映画」と断言出来そうだっただけに、勿体無い映画でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2020-09-28 04:45:00)(良:2票)
226.  ジャスト・マリッジ 《ネタバレ》 
「愛し合ってるだけで充分幸せだったのに、なんで俺達、結婚なんてしちまったんだろう?」  という台詞が印象的。   実家の経済格差やら何やらが原因となり、愛し合っていた新婚夫婦が破局を迎えそうになる話……と書くと、何やらシリアスな恋愛映画のようにも思えますが、基本的には「トラブル続きの新婚旅行」を面白可笑しく描く事に終始しており、リラックスして楽しむ事が出来ましたね。   旅行パートが始まる前の「二人の出会い」終わった後の「二人の和解」も非常にシンプルな描き方で、手短に纏めている辺りも好印象。  そこを長々やられるとダレてしまいそうだし、変に凝った内容にしたりせず、ラブコメ映画の王道的な「良くある出会い方」「良くある和解の仕方」にして時間短縮してみせたのは、正解だったんじゃないかなと思います。   それと、元々自分は主演のアシュトン・カッチャーが好きなので、そういう意味でも満足度は高めでしたね。  セクシーな美男子なのに、不思議と親しみやすい雰囲気があって「等身大の、どこにでもいそうな兄ちゃん」に思わせてくれるという彼の魅力が、如何無く発揮されており、自然と感情移入する事が出来ました。  妻が他の男とキスした現場を目撃し「落ち付け、俺に怒る権利は無い……」と自分に言い聞かせていたのに、いざ妻と会ったら「このアバズレ!」と我を忘れて怒鳴っちゃう場面なんかは、特に可笑しくって、お気に入り。  相方となるブリタニー・マーフィも、お嬢様ヒロインなサラを嫌味なく演じており、もし女性が観たら、自分がアシュトン・カッチャーに抱くのと同じような親近感を彼女に対して抱くのではないかな、と思えました。  ・主人公のトムがラジオ局で働いているって設定を活かし切れていない。 ・妻の「酔った勢いで一度だけ浮気した」という秘密に対し、夫の秘密が「飼い犬の死に責任がある」ってのは後者の方が酷くて、バランスが悪い。 ・英語を「アメリカ語」と言っちゃうとか「本場中国のカラテをマスターしてる」発言とかの国際的なギャグは、ちょっと微妙。   等々、不満点も多い映画なのですが……  それが然程気にならなかったのは「散々な新婚旅行だったけど、それでもやっぱり彼(彼女)が好き」という主人公達の気持ちと、映画を観ている自分との気持ちが、上手くシンクロしてくれたのが大きいんでしょうね。   観ている間は、物凄く面白かったという訳じゃないのに、今思い出すと「雪に埋もれた車から抜け出せた場面の爽快感が良かった」とか「飛行機の中で二人が痴話喧嘩を終えると同時に、機内の客が揃って拍手する場面が良かった」とか、そんな「良い思い出」ばかりが鮮明に蘇ってくるんだから、不思議なものです。  「サラを幸せにする為には、分厚い財布なんか必要無いんだ」と我が子を諭すトムの父親に、最初は「負け犬」呼ばわりしていたトムの事を何だかんだで認めてくれるサラの父親の存在なども、良い味出していましたね。  彼らを「夫側の家族の代表」「妻側の家族の代表」として分かり易く描き、二人の仲が家族からも認められ、祝福される事になるハッピーエンドに、最短距離で繋げてみせた辺りも、お見事でした。    そんな「分かり易さ」と「手短さ」を重視した結果なのか、ラストシーンは少しアッサリ気味に感じられ(もうちょっと長く「寄り添う二人の姿」を見たかったな)と思ったりもした訳だけど……  そんな風に思う時点で、自分はこの映画と、この映画の主人公達に魅了されちゃったって事なんでしょうね。   色んな不満もあったりするけれど、なんだかんだで好きな映画です。
[DVD(吹替)] 7点(2020-09-27 07:11:22)
227.  キス&キル 《ネタバレ》 
 アシュトン・カッチャーが好きな自分としては、それなりに楽しく観られたけれど……  そうでない人には、結構キツそうな一本でしたね。   まず、序盤は良い感じというか、中々面白いんです。  旅先で主人公とヒロインが出会い、結ばれるまでを描いており、ラブコメ要素が濃い目で、楽しい雰囲気。  空撮の映像が美しいし、海辺のプールなんて本当に素敵だしで、良質な「旅映画」だったと思います。   にも拘わらず、二人が結ばれ「三年後」に時間が飛んだ辺りから、一気に失速しちゃうんですよね。  主人公のスペンサーが莫大な懸賞金を掛けられ、友人達から命を狙われるブラックコメディと化すんだけど、どうも緊迫感が無くて、アクション映画としても魅力に欠ける感じ。   例えば、友人のヘンリーが突然ナイフで斬り付けてくる場面なんて(本気で殺そうとしてるの? それともふざけてるだけ?)と戸惑っちゃうくらいヌルい描写でしたし、彼の退場シーンもアッサリし過ぎてて、本当に死んだかどうか気になっちゃうんです。  この辺の作り込みが甘いせいで「平和な日常から、殺し合いの日々に戻ってしまう」というギャップの魅力が伝わってこないんですよね。  せっかく映画の前半と後半で違う「色」を打ち出しているのに、これは如何にも勿体無い。   あと、序盤から何度か「バンジージャンプ」ってワードが出ていたので、これはヒロインのジェーンが高所から飛ぶ場面が絶対あるだろうなと思ってたのに、それが無かったっていうのも、拍子抜けでしたね。  「(貴女と友達の振りをしていて)楽しい事もあった」と、友情を示した途端に撃ち殺されちゃうジェーンの女友達って場面も、凄く後味悪いし……  黒幕であったジェーンの父と、スペンサーの和解もアッサリし過ぎてて(えっ、それで終わりなの?)って感じなんですよね。  「スペンサーに莫大な懸賞金を掛けたのはジェーンの父だけど、誤解だったので取り下げました。めでたしめでたし」ってオチにも(結果的に人が死にまくってるんだけど、それで良いのか)ってツッコむしか無かったです。   カメラワークや演出などは平均以上だと思うし「観客を退屈させないサービス精神」は伝わってきただけに、つくづく惜しいですね。  少し手を加えるだけで、絶対もっと面白くなったはずだと、観ていて悔しくなっちゃう感じ。   個人的には「人殺し稼業にウンザリしていたスペンサーが、結婚後の『普通の生活』を噛み締め、幸せそうにしている場面」が凄く良かったので……  その後の展開にて『普通の生活』を奪われた事に対する主人公の怒りや切なさを描いてくれていたら、もっと好きになれたかも知れません。
[DVD(吹替)] 5点(2020-09-08 21:13:10)(良:2票)
228.  アナコンダ2 《ネタバレ》 
 前作とは異なり「如何にも胡散臭いが頼りになりそうな男」が、一貫して味方側だったのが嬉しいですね。  ワニをナイフ一本で倒すシーンなんかもう、恰好良くて惚れ惚れしちゃうくらい。  終わってみれば、そんな彼=ビルこそが主役であり、当初主役格かと思われたジャックが悪役に転じるという構成なのですが、その辺りの「転換」描写も巧みでした。  始まってから大体四十分くらいでビルは「金よりも人の命が大事」ジャックは「人の命よりも研究(と、それによって齎される金)が大事」という考えだと分かる為、観客も自然と善悪が判別出来るという形。  そんな「主役交代」の仕掛けを用意する一方で、作中全体を通してのヒロインとしてサムも用意している為、視点が散漫に感じられる事も無く、素直に楽しめたように思えます。   序盤では「川下り映画」としての魅力を堪能出来たし、巨大な滝に落ちて船が壊れ、徒歩となった後も「吸血ヒル」「毒蜘蛛」など、様々な障害を用意して、飽きさせない作りになっている辺りも良い。  本命の「アナコンダ」は要所要所で襲い掛かる程度に留め、最終的には人類にとって最も恐ろしい動物である「人間」との戦いになる構成も、王道な魅力があったかと。   その他「JAWS/ジョーズ」や「サバイバー」をパロった場面ではニヤリとさせられるし、ビルのペットの子猿は可愛いしで、全体的に愛嬌がある作りなんですよね。  アナコンダの恐怖だとか、人間同士の争いで剥き出しになる醜さだとか、そういった面は薄味なんだけど、それゆえ気軽に、肩の力を抜いて楽しめる。  繁殖期の為、沢山の大蛇が集まっているという設定なのに、実際は単体の蛇に襲われるシーンばかりな点など、物足りなさを感じる部分もありますが「まぁ、面白いし良いか」と納得出来る範囲内でした。   最後は爆発オチで倒すというお約束も守ってくれたし、四人という結構な人数が生き残る事が出来て、妙に明るいノリで終わる辺りも好みでしたね。  総合的な面白さという意味では前作と甲乙付け難いですが、どちらが好きかと問われたら、本作の方を挙げちゃいそうです。
[DVD(吹替)] 7点(2020-09-05 17:12:49)(良:1票)
229.  ノウイング 《ネタバレ》 
 「お前と」「パパは」「ずっと一緒」「何時までも」という手話は、絶対伏線だろうなと思っていたので、それが当たっていて嬉しかったですね。  永遠の別れとなるはずの場面にて「ずっと一緒」と父子が伝え合う姿には、グッと来るものがありました。   飛行機事故や電車事故の映像なども迫力があったし、ちゃんと「終末映画」としての娯楽的要素も満たしているんですよね。  とても宗教的な内容でありながら、さほど胡散臭さを感じさせなかったのは、作り手に「観客を退屈させない、楽しませる」という意識があったからこそだと思います。   「預言を知った主人公が惨事を警告したら、予告テロかと疑われる」という、この手の映画のお約束ネタを盛り込んでくれる辺りも嬉しい。  実はこれ、劇中でそれほど重要とは思えなくて「別にやらなくても話としては成立したよな」という部分だったりするんです。  でも「やっぱり、こういう映画なら、このネタはやっておかないと!」とばかりに実行してくれたんだから、観ているこちらとしては、ニヤリとさせられました。   不満点としては、上述の息子と別れるシーンでの「最後の手話」が良かっただけに、その後の「主人公が父母と妹と抱き合って迎える、地球消滅の瞬間」が、ちょっと蛇足に思えてしまった事でしょうか。  作中の描き方としても、主人公は明らかに父や妹よりも息子の存在を重視していた訳だから、如何にもオマケ的な付け足しというか「ついでに和解してみた」感があったんですよね。  そもそも父親との長年の確執についても「今となっては、理由も忘れた」と作中で言っているくらいなんだし、映画のラストに「父との和解」を用意するにしては、ちょっとフリが弱かったように思えます。  ヒロイン格かと思われた女性が、交通事故でアッサリ死んでしまうというのも、何だか拍子抜け。   新たな星でアダムとイムになった幼い二人を映し出して終わるのは、中々幻想的で良かったですし「世界の終わり」と「主人公の死」の中にも救いを見出そうとするような「前向きなバッドエンド」とも言うべき作風は、決して嫌いじゃないんですけどね。  丁寧に作られた、良質なSF宗教映画なんだろうな、とは思います。  でも、根本的に信仰心が薄い自分には、あんまり向いていなかったみたいです。
[DVD(吹替)] 5点(2020-09-05 17:07:37)(良:2票)
230.  風雲児たち 蘭学革命(れぼりゅうし)篇<TVM> 《ネタバレ》 
 まず最初に書いておきますが、原作の「風雲児たち」は紛れも無い傑作です。  「明治維新を描くのであれば、関ヶ原の合戦から描く必要がある」という壮大な歴史観に基づいた品であり、大河ドラマならぬ大河漫画として、自分も愛読させてもらっています。  本作の鑑賞前、原作コミックスを本棚から取り出し「蘭学革命篇」だけを読み返すつもりが、ついそのまま最新の「幕末編」に至るまで読み切っちゃったくらい……と言えば、多少はその面白さも伝わってくれるんじゃないかと。   そんな訳で、本作には大いに期待していたし、映像化にあたり「蘭学革命篇」をチョイスしたと知った時には、小躍りしてしまったくらいなのですが……  出来上がった品を観終えた後は、暫く無言になって、落ち込んじゃいましたね。   勿論、最低限のハードルはクリアしているというか、映像化した意義はあったと思んです。  例えば、主人公の前野良沢の屋敷内の描写、庭で舞い散る桜が美しかったというだけでも、漫画ではない動画ならではの魅力があったし、音楽やナレーションも良い味を出している。  役者さんも実力のある方ばかりで、安心して鑑賞する事が出来ました。   じゃあ、何が不満かっていうと……それはクライマックスの描き方についてなんです。  本作って、冒頭にて「何故、前野良沢と杉田玄白は仲違いしてしまったのか?」という謎を提示しているのですが、その起承転結の「起」の部分が上手い代わりに「結」の部分が余りにも拙いんですよね。  そもそも原作ではアッサリ短期間で和解した良沢と玄白を、数十年に亘って険悪な仲という設定に変えた挙句、仲直りの仕方は原作と同じアッサリ風味にしているんだから、こんなの違和感あるに決まってるだろと言いたくなっちゃいます。   脚本家としては「最初に劇的な要素を提示して、観る者を惹き付ける必要がある」と考えたのであろう事は、良く分かるんです。  でも原作には無かった要素を付け足し、ハードルを上げてみせた以上は、それを飛び越える必要があると思うんですよね。  本作の和解シーンに関しては(だって原作でもアッサリ仲直りしたでしょ?)という言い訳というか、自分で勝手に上げたハードルを飛ばずに潜り抜けたような恰好悪さを感じてしまい、全然心に迫るものが無くって、非常に残念でした。   「フルヘッヘンド」の件についても原作と違うというか、本当に杉田玄白が昔を忘れてボケちゃったか、あるいは自らの手柄を捏造したかのような描写になっており、大いに不満。  原作では「読者に分かり易いように、聡明な玄白はあえてそう書き残した」という描写が為されており、受ける印象が全く違っているんですよね。  他にも、チョイ役に格下げされた高山彦九郎や林子平はともかく、結構な尺を取ってる平賀源内からも原作のような魅力が伝わってこないんだから、本当にガッカリしちゃいました。   世の中には「原作と違うけど、これは面白い」と思える映画やドラマも沢山ありますが、本作に関しては「原作と違うし、その違う部分が面白くない」と感じてしまい、観ていて辛かったですね。  平賀源内の部屋に「本日土用」の看板があるとか、原作好きならニヤリとする小ネタが散りばめられてるし、作ってる方々の原作愛は本物で、面白い作品にしようと努力されたのだとは思いますが……  正直、出来上がった品を評価する限りでは「凡作」か、贔屓目に見ても「それなりの良作」くらいになっちゃうと思います。   それでも一応、本作独自の良さがある部分を挙げるとしたら「鼓膜」「十二指腸」「神経」という言葉が生まれた瞬間を描いてる辺りが該当しそうですね。  ここは感心させられたというか、解体新書の存在が「後の世を変えた」事が分かり易く伝わってくるし、歴史物ならではの醍醐味があって、良かったです。   んで、その他の良かった点を挙げようとすると…… 「私の名前が泥に塗れようが、そんな事はどうでも良い」 「私の名前など、歴史に残らんでも良い」  という玄白と良沢の台詞が交差する演出とか「原作の名場面を再現した箇所」ばかりになっちゃいますね、どうしても。  まぁ、これに関しては天邪鬼にならず「押さえるべきところは押さえた作り」として、褒めるべきなのかも。   冒頭にて述べた通り、原作は文句無しで傑作なのだから、奇を衒わず素直に作って欲しかったなぁと思わされた……そんな一品でありました。
[DVD(邦画)] 5点(2020-08-18 01:35:39)
231.  トリプルヘッド・ジョーズ<OV> 《ネタバレ》 
 前作と同様、冒頭から出し惜しみせず鮫の姿を見せてくれるサービス精神がありがたい。   ただ、作風としてはかなり違う方向性というか、緊迫感と悲壮感を重視した作りになっていた気がしますね。  スローモーション演出や音楽に、自己犠牲展開が多い点などからしても、あたかも観客を感動させようとしているかのよう。  それが完全に失敗していたという訳では無いのですが……正直「三つ首の鮫が人を襲いまくる」という馬鹿々々しい設定とは、食い合わせが悪かったように思います。  もっと真面目な、普通の巨大鮫が出てくる映画でやった方が自然だったんじゃないかな、と。   海上にある研究施設という設定。  そして、救世主の如く颯爽と現れ、鮫を殺すのに成功したかと思われたダニー・トレホが、アッサリ食い殺されるシーンなどは「ディープ・ブルー」(1999年)を彷彿とさせてくれるし、所謂「馬鹿映画」としての愛嬌も有るには有るんですが、上述の通り「真面目さ」の比重が大きいので、ちょっと歪なんですよね。  下品な物言いになりますが、水着姿の巨乳お姉さん達が全然画面に映らない辺りも、前作に比べると如何にも寂しい。   「大量の餌を与えれば、首同士で共食いを始めるはず」という作戦にも無理があったと思いますし、それがアッサリ成功しちゃうオチに関しては、唖然茫然。  男女二人が何とか生き残るハッピーエンドという意味では前作と同じなのですが、本作では(倒し方に無理があるんじゃないかなぁ)と思えてしまい、素直に彼らの生還を喜べなかったです。   鮫の首を斬り落とすと、そこから新たな首が三つも生えてくるという設定やビジュアルなんかは、中々グロテスクで良かったと思いますし「沈みゆく観光船の中で、人々が襲われていくシーン」なんかは、手に汗握るものがあったのですけどね。  自分の場合「前作と同じ、明るくお馬鹿な鮫映画」を予想していたから、それが外れちゃった形だし「わりと真面目な鮫映画」を期待して観た人がいたとしても、終盤の強引な展開には落胆しちゃいそうだしで、どっちつかずな映画という印象が強いです。   観ていて退屈もしなかったし、ある程度の満足感は得られたのですが……  ちょっと期待していた内容とは違った一品でした。
[DVD(吹替)] 5点(2020-08-12 22:39:10)(良:1票)
232.  塔の上のラプンツェル 《ネタバレ》 
 基本的には女性向けのストーリーなのですが、所謂「王子様」役のフリンを語り部に配し、男性でも抵抗無く観られるバランスとしている事に感心。   名作童話が原作である為、どうしても「古き良きテイスト」を重視しそうなものなのに、演出から若々しい感性が伝わってくるのも良かったですね。  序盤にラプンツェルが唄う場面はスタイリッシュな魅力があったし、とうとう外に出た後に「はしゃぐ」→「落ち込む」を繰り返すギャグも分かり易く、好印象。   ラプンツェルの長髪をアクションの道具として活用している辺りも上手かったし、動きだけでなく「四十五回勝負」「三回勝負」という形で言葉の笑いも取り入れているし、感動的な自己犠牲もあるしで、本当に色んな面白さが詰め込まれているのですよね。  「女性客」「男性客」「恋愛が見たい人」「アクションが見たい人」「笑いたい人」「泣きたい人」と、幅広い観客層を意識して作られた、丁寧な品であると感じました。   中でも自分のお気に入りは、酒場で盗賊達が唄い出すシーン。 「命奪うより心奪いたい」 「こんな暮らししていても、夢見る心は未だ無くしてない」  といった具合に、歌詞も素敵でしたし、何より一見すると悪人にしか思えない盗賊が、実は良い人というか「悪人でも夢を持っている」という意外性を秘めていたのが、本当に好みでしたね。  劇中でも一番の名場面じゃないかな、と思います。   その一方で、終盤の展開は少し不満というか、予定調和過ぎるように感じたので、そこは残念。  上述の盗賊達が、それぞれ夢を叶えてくれるハッピーエンドだったのは、文句無しで素晴らしいと思うのですが、その直前の「フリンの自己犠牲がラプンツェルの涙によって覆される」「結局、ゴーデルは単なる悪人であり、育ての親としての情など無かった」という展開のせいで、興醒めしてしまったんですよね。  ここら辺を、もうちょっと自然に仕上げてくれたら、皆笑顔でハッピーエンドを迎える結末を、更に楽しむ事が出来たかも。   そんな具合に「本質的には女性向け」「終盤の展開が好みではない」などの要因があるにも拘らず、しっかり面白かったのだから、やはり質の高い作品なのでしょうね。  世の中には、色んな客層を意識し過ぎて、色々と盛り込み過ぎて、破綻してしまう映画もありますが……  本作は、そういった類の中でも成功例としてカウントされそうです。
[DVD(吹替)] 6点(2020-08-11 02:32:55)(良:3票)
233.  パーティー・ナイトはダンステリア 《ネタバレ》 
 「青春映画」って言うと、高校生や大学生くらいの主人公を連想するものですが、こういうのも立派な「青春映画」じゃないかって思えますね。   一流の大学を出たのに「本当にやりたい仕事が見つからない」とボヤいて、実家暮らしでバイトを続けてる主人公。  そんな彼がパーティーの一夜を経て、未来に向けて前進するまでが描かれていますし、年齢など関係無く「青春」を感じさせてくれる内容だったと思います。  ラストシーンにて、鬱屈とした日々を共有していた主人公達三人が再び揃って、笑顔を見せ、朝食の為に車を走らせる場面で終わるというのも、凄く爽やか。  全編に亘って懐かしいテイストの80年代音楽が流れているし、基本的には「楽しい映画」「後味の良い映画」だったと思います。   ただ、色々と欠点も目立っちゃって……  脚本の粗とか、稚拙な演出とか、そういう部分なら「愛嬌の内」と笑って受け流す事も出来るんだけど、本作の場合「主人公の魅力が薄い、感情移入出来ない」っていう根本的な部分にも不満があるもんだから、困っちゃいましたね。  序盤の段階で職業を詐称したり、車泥棒したりといった展開になるのもどうかと思うし、もうちょっと「こいつは良い奴だな」と感じさせる場面が欲しかったです。  車泥棒の結果として、当然のように捕まる訳だけど、そこで警官の父親に揉み消してもらって助かるっていうのも、凄く恰好悪い。  ここの場面、親友のバリーは「俺一人で盗んだ」と主人公を庇っているのに、主人公はバリーを庇う素振りを全然見せないもんだから、そこにもガッカリしちゃったんですよね。 「お前は未だ負けてないぞ。本気でチャレンジしてないからな」 「負け犬と名乗る資格すらない」  という父親の台詞は良かったけど、上述のアレコレが引っ掛かってしまい、イマイチ感動出来なかったのも残念。  この後、主人公は同級生の前で演説したり、度胸試しに挑んだりで「男を見せる」感じになるんだけど、それまでのマイナスが大き過ぎて挽回しきれなかった気がします。   個人的には、車椅子暮らしのカルロスの方が主人公より魅力的に思えたくらいでしたね。  プロ野球選手を目指していたのに、事故で歩けなくなったとか、それでも金融業界で立派に働いてるとか、凄くドラマティックな人生を送っていますし。  見栄を張って自分もカルロスの同僚と言い張る主人公に呆れつつも、仕方無く同調してあげる場面とか、どう考えてもカルロスの方が主人公より「良い奴」に思えたし、出番が僅かなのが勿体無かったです。   そんな訳で、総評としては「そんなに悪くない、ちょっと良い感じの青春映画」くらいに落ち着くんですが……  劇中曲の数々が凄く良いもんで、また何時か観返したくなっちゃいそうですね。  そうしたら、初見では欠点に思えた部分も違った見方が出来るかも知れないし、今からその時が楽しみです。
[DVD(吹替)] 6点(2020-08-07 12:48:58)(良:1票)
234.  LOST ISLAND ロストアイランド 《ネタバレ》 
 こういう家族旅行を題材とした映画、好きですね。   一応、無人島でのサバイバル生活が主となっているのですが、緊迫感なんて欠片も無し。  終始のんびりとしたムードが漂っており、誰かが死んだりする事も無く、安心して楽しめる作りになっています。   子連れの女性と同棲中で、この旅行の間にプロポーズしようと考えている主人公。  そして、彼女の連れ子である年頃の娘と、幼い息子という四人組構成なのも、非常にバランスが良い。   子供達は「肉体派の姉であるインザ」と「頭脳派の弟であるマックス」という形でキャラ分けされているのですが、このマックスの方がとにかく優秀で「水源を見付ける」「火を起こす」「発電機を作って、無線で救助を求める」と大活躍しちゃうのも、如何にもファミリー映画って感じがして、良かったですね。  姉の方も思春期の娘らしく「いずれ父親になるかも知れない他人」である主人公に対し「最初は冷たい態度を取っていたが、徐々に心を開いていく」という、お約束の展開を繰り広げてくれるのだから、嬉しい限り。  「ファミリー映画なら、こういう要素が欲しい」と思える部分が、しっかり備わっている訳だから、それだけでも満足度は高くなるというものです。   予算の関係なのか「トカゲを仕留める場面」や「蛇に噛まれる場面」を直接映像として見せてくれないのは寂しいし「何故か皆して同じ島に流れ着く」「毒蛇に噛まれてもアッサリ解毒出来ちゃう」など、脚本にも粗が目立ちます。  でも、そういった諸々の欠点よりも……  ・フリン船長に子供達が懐いてしまい、主人公がヤキモチを妬いて空回りする。 ・ラストシーンにて、主人公がマックスを「私の息子です」と誇らしげに紹介してみせる。   という、好きな場面の方に注目したくなるような、独特の愛嬌があるんですよね。   優れた映画、完成度の高い映画、という訳では決してありません。  正直、面白い映画だったと言うのさえ躊躇われます。  でも、好きな映画であるという一点に関しては、疑う余地が無いですね。   「無人島での冒険を通じて、仮初めの家族が本当の家族になれた」と感じられるハッピーエンドまで、楽しい時間を過ごせました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-07-31 13:04:40)
235.  10日間で男を上手にフル方法 《ネタバレ》 
 ドナルド・ペトリ監督作のラブコメって「女性が観ても、男性が観ても楽しめる内容」な事が多い気がしますが、これもまたそんな一本。   男の自分としては「住んでる部屋が煉瓦の壁でオシャレ」「職場にビリヤード台があるなんて羨ましい」と思えて、主人公のベンの描写は観ていて気持ち良かったですし、恐らく女性が観ても、ヒロインであるアンディの「仕事が出来る、自立した女性」って描き方には好感が持てるんじゃないかな、って気がしました。  それと、ベンには「料理が得意」アンディには「スポーツ観戦が趣味」って属性が付与されており「女性にとっても魅力的な男性像」「男性にとっても魅力的な女性像」が、自然に描かれている辺りも上手い。  これらの属性を「せっかく料理を作ったのに、菜食主義者の振りしたアンディに突っぱねられてしまう」などのコメディタッチな場面で、自然に描いているもんだから、全く嫌味に感じられないんですよね。  これって、一歩間違えれば「ラブコメらしい、男に都合の良いヒロイン像だ」「女に都合の良い主人公像だ」なんて印象に繋がってしまいますし、それを感じさせずに仕上げてみせた手腕は、本当に見事だと思います。   主人公のベンが「バイク乗り」という伏線が、序盤から張り巡らされている事。  相手の嘘を見破るゲーム「馬鹿こけ」が効果的に活用されている事など、脚本も丁寧で良かったですね。  ラブコメではお約束の、ハッピーエンド前の喧嘩についても「互いの文句を、替え歌で熱唱する」って形にしており、重苦しい印象を与えず、笑って観られるような感じに仕上げてある。  その一方で「やっと目論見通りに別れられるとなった際に、寂しそうな顔になるヒロイン」の場面ではグッと来るものがあったし、そういった「決めるべきところは決める」作りなのも心地良かったです。  クライマックスにて、アンディを追っかけバイクで街を疾走する場面も良かったし、予定調和なハッピーエンドに着地してくれるしで、終わり方も文句無し。   よくよく考えてみたら「こんな相手の心を弄ぶような賭けするのって、どうなの?」という疑問も湧いてきたりするんですが、観ている間はスピーディーで楽しい作りゆえに、全く気にならなかったんですよね。  中には上司の悪口を言ったりする場面もあるんだけど、そこも陰湿な印象は受けなかったし、やはり監督の魅せ方、役者の演じ方が上手かった、って事なんだと思います。   それでもあえて不満点を述べるなら……ヒロインのアンディが職場でハンバーガーに齧り付いてる時に見せる「髪を後ろに結んだ姿」が非常にキュートだったので、出来ればアレをメインの髪型にして撮ってもらいたかったとか、そのくらいかな?   ラブコメ好きには安心してオススメ出来る、良質な一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2020-07-31 05:35:19)(良:2票)
236.  タッチ CROSS ROAD 風のゆくえ<TVM> 《ネタバレ》 
 これ、結構好きです。  少なくとも「タッチ」のアニメとしては、劇場版三部作&テレビスぺシャル二本の中でも最も綺麗に纏まっているし、面白かったんじゃないかと。  冒頭に流れる歌も哀愁があって、異国の地で一人ぼっち夢を追いかける主人公に合ってるし、この度久し振りに鑑賞して(良い曲だなぁ……)と、しみじみ浸っちゃったくらい。   それと、本作のストーリーラインについては人気野球ゲーム「パワプロ10」でもオマージュされているんですよね。  「日本の若者が一人渡米し、金髪そばかす娘とロマンスを繰り広げつつ、マイナーリーグからメジャーへの昇格を狙う」って話の流れは、文句無しで魅力的だし、これを殆どそのままゲーム中に流用したスタッフの気持ちも、良く分かります。   ただ、そんな「パワプロ10」に取り入れられなかった部分「主人公達也と、ヒロイン南との遠距離恋愛」については……正直、蛇足に思えちゃいましたね。  原作が「タッチ」である以上、この二人のロマンスは外せない訳なんだけど、今回はそれが枷になってた気がします。  そもそも南が新体操を辞めてカメラマン目指してるって設定自体、劇中の人物同様に「なんで?」と戸惑っちゃうし……  南に「自立した女性」的な魅力を与えようとした結果、空回りしてるように思えました。   他にも「ライバル打者のブライアンが凡退する場面が多過ぎて、凄みが薄れてる」「達也とホセが終盤に和解する流れが唐突」などの作り込みの甘さに「バンクシーンや曲の使い回しが多い」という、アニメとしての根本的なクオリティの低さも見逃せないし……酷評しようと思えば、いくらでも出来ちゃう品なんですよね、これ。  ただ、それでもなお自分は好きというか……粗削りだけど、光る部分も多いんです。   現地娘のアリスは可愛らしくて、南より魅力的に思えたくらいだし、オーナー夫妻も良い人達なもんだから、主人公チームの「エメラルズ」を、自然と応援したくなるんですよね。  「かつては名門チームだったが、今は没落している」「球団の解散が決まった事を知った選手達が奮起し、快進撃の末に優勝する」などのお約束展開も、王道な魅力があって良い。  町から町へ、オンボロバスで移動しながら野球するという、マイナーリーグらしい描写もしっかり挟まれていたし、開幕戦ではガラガラだった客席が、最終戦では満員になっていたのも、凄く気持ち良かったです。   「弟の代わりに投げた」発言からすると、本作は「背番号のないエース」から続く時間軸なのでしょうが、原作漫画しか読んでない人でも、そこまで混乱しないよう配慮した台詞回しになっている事にも感心。  キャッスルロックという地名が飛び出す小ネタなんかも、ニヤリとしちゃいましたね。  「頑張って夢を叶えようとしたら、その過程で他の選手の夢を奪ってしまった」場面を挟み「優し過ぎる兄貴」だった達也に相応しい苦難を用意しているのも、原作漫画が大好きな身としては、妙に嬉しかったです。   そして何といっても、ラストシーン。  達也が最後の一球を投じる直前に「和也……見てるか!」と胸中で叫ぶ場面には、本当にグッと来ちゃったんですよね。  思えば原作においても「好きなんでしょ、野球」「和也くんと、ずっと同じ環境に育ってきたんだもの」という台詞がありましたが、そんな達也の「野球を好きな気持ち」を、とうとう素直に表せる場所に辿り着いたんだという充足感、そしてそんな自分の姿を「和也に見せてやりたい」と思った達也の心意気に、もう観ていて心を鷲掴みにされちゃったんです。  そんな独白の後、幼い和也と達也とがキャッチボールしてる場面が回想で流れるもんだから、もうたまらない。  ここのワンシーンだけでも、本作は観る価値があったと思います。   欲を言えば「和也の力を借りない、達也と新田の真剣勝負」も見せてくれたら文句無しだったんだけど……  まぁ、それは本作から数年後、メジャーリーグの舞台で実現したんだと、妄想で補いたいところですね。   それと、恐らく本作のアリスは新田の妹である由加ちゃんが原型なのでしょうが「達也が好き」「そばかす属性」「一人称オレ」「ピッチャー」って共通点がある事を考えると、吉田君もモデルの一人だったのかなって、そんな事が気になりました。  他にも、あだち漫画で見た事ある顔が、色々と登場していたりするので……  その「元ネタ探し」をしてみるだけでも、それなりに楽しめちゃう一品だと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2020-07-28 07:14:21)
237.  シモーヌ 《ネタバレ》 
 こんな映画、シモーヌを演じる女優さん次第では観ていられない代物になりそうなのに、ちゃんと「世界中が熱狂するほどの美女」としての説得力があって、立派に作品として成立しているんだから凄いですよね。   シモーヌ役のレイチェル・ロバーツは、現在アンドリュー・ニコル監督の妻となっているそうで、結果的に親馬鹿ならぬ「旦那馬鹿」的な映画となっているのも、何だか面白い。  撮影当時から恋仲だったかどうかは分かりませんが、そんな関係性の二人だからこそ、監督側は「シモーヌ」を魅力的に描き、女優側は艶やかに「シモーヌ」を演じる事が出来たんじゃないかな、と思いました。    勿論、主演のアル・パチーノも良い味を出しており、実在しない女優に振り回される映画監督の役を、見事に演じ切っていましたね。  特に終盤、シモーヌ殺害容疑で警察の尋問を受ける件なんて、演技一つで作品のカラーをがらりと変えてしまったかのような迫力があり、流石だなと感心。  個人的には、ここの主人公が追い詰められる件は無理矢理過ぎるというか(ハッピーエンドの前振りとはいえ、悲壮感を出し過ぎたんじゃない?)と、少々気持ちが冷めてしまったりもしたんですが……  それでも決定的な違和感を抱くに至らなかったのは、やはりアル・パチーノの演技力あってこそ、なのだと思います。   あとは、ラストの「政治家を目指す」オチが微妙に思えた事。  シモーヌに黒子(?)を付け足す場面が伏線かと思ったら、そうでもなかった事。  日本の新聞記事だと「シモン」になってたのが気になる事とか、難点はそのくらいでしょうか。   ニコル監督の作品らしく、ビジュアルセンスも光っていたし、脚本についても御洒落な笑いが散りばめられていて、面白かったですね。  シモーヌを消去する場面での「主人公が泣いているからこそ、シモーヌも泣いている」場面にはグッと来るものがあったし「たった一人より、十万人を騙す方が簡単だ」という台詞や、シモーヌが唄う曲の歌詞なんかも、皮肉が効いていて素敵。   また、このストーリーの場合「シモーヌの元々の開発者はハンクなのに、主人公は手柄を一人占めにした」という印象を抱いてしまいそうなのですが、ちゃんと随所に「ハンクに感謝する場面」が挟まれており、反発を抱かずに済むよう配慮されているのも嬉しかったです。  こういう「主人公を嫌な奴にしない」バランス感覚って、映画作りではとても大切だと思いますからね。   自らが生み出した存在に、段々と恐怖を抱いていく「フランケンシュタイン・コンプレックス」も丁寧に描かれていて説得力があったし、皆がシモーヌに夢中になる中「シモーヌよりもパパの方が好き」というスタンスだった娘が、最後の最後で主人公を救ってくれる展開なんかも、実に気持ち良い。   (ラストシーンの後は、シモーヌの可愛い「坊や」が成長し、子役や男優になって世界を虜にするのかな?)  (父親がシモーヌを演じたように、娘が彼を演じてみせるのかな?)  なんて妄想まで出来ちゃう、楽しい映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-07-28 07:02:14)(良:1票)
238.  タッチ(2005) 《ネタバレ》 
 冒頭のモノローグからして、ヒロインの南目線で進むのかと思いきや、何だかんだで達也が主役でしたね。  原作でも主人公は達也なのだから、当然と言えば当然なんですけど、それなら無理して南の比重を増すような真似しなくても……と、つい思っちゃいました。   この映画、それ以外にも「無理してる」部分が多々あって、ちょっと褒めるのが難しいんですよね。  ラストの告白台詞に関してもそうなんだけど「無理して名場面を挟んでる」「無理して名台詞を言わせてる」感が強くって、観ていて気恥ずかしかったです。   そもそも原作コミックス26巻分を116分に収めるって時点でキツい訳だけど、それに関する原作エピソードの取捨選択も、あまり上手くなかった気がします。  南が新体操やらないとか、その辺は納得なんだけど……やはり、柏葉英二郎の不在が痛い。  「タッチ」で一番魅力的なキャラクターといえば彼だと思うし、せめて明青の監督は彼にして欲しかったですね。  グラサン掛けた強面の監督で、達也に厳しく接しつつも最後は彼の実力を認めるとか、その程度の描写でも充分嬉しかったと思うし……完全にいなかった事にされちゃうのは寂しいです。   そんな柏葉監督だけでなく、西村に吉田といった魅力的な脇役陣も出てこないっていうのに、映画オリジナルキャラである小百合ちゃんを出して、彼女に尺を取ってるというのも悲しい。  序盤から達也に好意を示し、デートしたりもするんだけど、終盤になってからは全く出てこないというチグハグっぷりだったし……  彼女に関しては、あまり存在意義を感じられませんでしたね。  同じオリキャラでも、原田くんと良い雰囲気になるソノコちゃんは画面の賑やかし役に徹していたし、小百合ちゃんもあんな感じで、主筋には絡ませない方が良かったと思います。  決勝戦前日に和也が草野球で投げてるとか(ちょっと無理があるのでは?)と思える描写が散見されるのも辛いところです。   でも、本作にはそんなアレコレも霞むほどの大きな欠点があって……  原作漫画が大好きな身としては、こんな事を書くのも辛くなっちゃうんだけど、この映画って「和也が死んでも悲しくない」んですよね。  映画の中盤、始まって一時間くらいで退場しちゃうし、それまでの尺も達也と南のキスシーンとかに費やしているもんだから、根本的に和也を応援したり、感情移入したりする気持ちになれないんです。  達也と和也の性格の対比も中途半端で、達也は毒舌属性がやたら強化されて「嫌な奴」としか思えない一方、和也の「良い奴」っぷりは全然伝わってこないというんだから、困っちゃいます。  南とのキスシーンや、オリキャラ女性の出番よりも、もっと和也の魅力を表現する事に尽力して欲しかったですね。  「タッチ」という物語の構成上、和也の死が悲劇でなければ面白さの根底が崩れちゃいますし、そこだけはキチンと押さえておくべきだったと思います。   ……以上、色々と不満を述べる形になりましたが、それだけじゃあ寂しいし、何やら申し訳無い気分になるので、以下は良かった点を。   まず、主人公達三人が子供の頃から野球をやってたって設定にしたのは上手かったですね。  ちゃんと幼い南が背番号2を付けてて、その後に捕手となって達也の球を受ける場面にも自然に繋がってますし、南の見せ場って意味ではここの「捕手」の場面が一番良かったと思います。  原田くんに孝太郎など、男っぽい脇役陣が気を吐いて、画面をビシッと引き締めてくれたのも嬉しい。  高校一年で140キロのスライダーが投げられる和也とか、打率が七割五分以上で甲子園七本塁打の新田とか、具体的な数字が出てくるのも、野球好きとしてはテンション上がるものがありましたね。   それと、先程自分は「映画オリジナルの女性キャラ」に尺を取るのを否定しましたけど、映画オリジナルの展開そのものについては、結構良かったと思うんです。  達也が秋季大会で滅多打ちされてコールド負けするのも、その後の躍進が「ドン底から這い上がった」感が出て好みですし、雨の中で原田くんに殴られ、再び野球を始める流れも「泥臭い青春物」って感じがして良い。  和也に命を救われた子供と、その母が命日に上杉家を訪れる場面も、何だか救われるものがありましたね。  新田の最終打席にて、和也と同じスライダーを投げた後、達也らしいストレートを投げて勝利するというのも「和也の幻影を振り切った」「達也として甲子園出場を決めた」感があって、良かったんじゃないかと。   そんなこんなで、原作と比較しちゃうと不満も多々ありますが……  青春映画として一定のクオリティはあったんじゃないかな、と思います。
[DVD(邦画)] 5点(2020-07-16 18:30:19)(良:3票)
239.  バウンティー・ハンター(2010) 《ネタバレ》 
 愉快な雰囲気の映画でしたね。  追う者と追われる者、賞金稼ぎと賞金首が元夫婦であり、二人が追いかけっこを通して、徐々に復縁していくというストーリーラインも良かったと思います。   ただ、自分としては今一つ楽しめなくて……その理由は、主人公の性格。  野性味があって、毒舌で、所謂ツンデレ気質でと、女性目線なら魅力的なキャラクターに思えたかも知れませんが、単なる「嫌な奴」としか思えない場面も多く、感情移入するのが難しかったです。  演じているジェラルド・バトラーは嫌いじゃないし、なんだかんだで一途な男なんだろうなぁ、って事は伝わってくるんですが、あまり応援出来ないタイプ。  元妻の家に忍び込んで、トイレの便器に歯ブラシを落としたり、録画されていた番組を消したり、ベッドの上でスナック菓子を貪り枕で口元を拭うシーンなんかは、流石に呆れちゃいましたね。  しかも、そこをさも痛快な復讐劇みたいなタッチで描いているもんだから、どうにもノリ切れない。   監督さんは傑作映画「最後の恋のはじめ方」なども手掛けられているし、全体的な演出や音楽の使い方なんかは、結構好みだったんですけどね。  カジノのシーンにおける「最初は乗り気じゃなかったヒロインも、勝ち続けるにつれ段々ヒートアップしていく」という流れや「軍資金片手にエレベーターに乗り込んだ主人公が、次の瞬間には酒のグラス片手に出てきて、ボロ負けした事を示す」という表現なんかも、良かったと思います。  「主人公とヒロインは元夫婦である」という設定も活かされており、互いを知り尽くしている夫婦ならではの会話が劇中に散りばめられている点も、好感触。   で、そんな主人公カップルを囲む脇役陣はというと……ヒロインの母親は結構良い味出していたけど、精々それくらいで、他は微妙に思えちゃいましたね。  中でも、ヒロインに片想いしている男のエピソードなんかは、本筋に全然関係無いし、人違いで骨を折られたりして悲惨な目に遭うだけなので、全然笑えない。  主人公目線なら「俺の元妻に言い寄るから悪いんだ、ざまぁみろ」と思えたかも知れませんが、ちょっとキツかったです。   「結婚記念日を一緒に過ごす為、嫌味な警官を殴って主人公もヒロイン共々逮捕され、檻の中でキスをして終わり」というハッピーエンドに関しては、中々オシャレだし、綺麗に纏まっていたと思います。  終わり良ければ全て良し……という程ではありませんが、この結末のお蔭で、そんなに後味は悪くない。  まずまずの満足感を味わえた一品でした。
[DVD(吹替)] 5点(2020-07-03 06:39:26)(良:2票)
240.  21ジャンプストリート 《ネタバレ》 
 ジョニー・デップ主演で、彼の出世作となったドラマを映画化した一品。  作中にて、ドラマ版主人公の未来の姿と思しき役どころで、ジョニー・デップ本人が出演しており、彼のファンには嬉しい驚きを提供してくれていますね。  残念ながら自分はドラマの方は未見なのですが、それでも情報として「元々はジョニー・デップが主演していた作品」という事は承知だった為、登場シーンでは大いにテンションが上がりました。   ただ、理由は何故か分からないのですが、彼の登場以降やたらと血が流れたり、目を背けたくなるような描写が続いたりして、せっかく盛り上がった気持ちに水を差されるような思いもありましたね。  撃ち合いのシーンなのだから、血が出るのは当たり前といえば当たり前なのですが、それまでは全くそんな素振りが無かったもので、少し戸惑いました。  今となっては、あの「急に血生臭い銃撃戦になる」という切り替えも一種のギャグなのかな、と思えてきますが、真相や如何に。   そんな訳で、クライマックスにて「あれ?」と違和感を覚えたりもしたのですが、全体的には楽しめる時間の方が、ずっと長かったですね。  何といっても「もう一度高校生に戻って、やり直したい」という願望を、疑似的に満たしてくれる作りとなっているのが心憎い。  例えば、両親が旅行に出掛けた隙に、家でパーティーを行うシーン。  二人が笑いながらアレコレと準備している様が、本当に楽しそうで、観ているこちらまでテンションが上がって来るのですよね。  「酒はどうする?」「偽のID無いよな……」と、惚けた会話を交わす辺りなんかも、お気に入り。  「子供の振りをしているけど、本当は大人」というズルい立場だからこその喜びを、上手く表現していたように思えます。  その一方で、過去に囚われる事を良しとする作風ではなく、きちんと作中で前向きな答えを出して終わる辺りも、好みのバランスでした。   他にも「スーパーマンII/冒険篇」に登場したゾッド将軍が、作中で妙にリスペクトされているのも可笑しかったし、やたらと扇情的な言動の女教師なんかも、魅惑的なアクセントになっていましたね。  特に後者に関しては、もっと出番を増やして欲しいと思ったくらい。  「俺は麻薬捜査官だ」「お前の盾になっても良い」などの台詞が、伏線として機能している辺りも心地良かったです。   人気の高さゆえに続編も制作されて、三作目では「メン・イン・ブラック」とのコラボも決定したという本シリーズ。  この一作目の終り方も、続編に直接繋がるような形となっており、観賞後もテンションの高さを持続させてくれたのが嬉しかったですね。  楽しい映画でした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2020-06-29 09:13:16)
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