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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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21.  タキシード(2002) 《ネタバレ》 
 映画の利点の一つとして「本当は凄くない人を、凄いように見せられる」という事が挙げられると思います。  それが本作の場合は、全くの逆というか……  「本当に凄いアクション俳優」の代名詞的存在であるジャッキーに「本当は凄くないのに、タキシードのお陰で超人になる主人公」を演じさせてる訳だから、トンデモない映画ですよね。  本末転倒というか「これならジャッキー主演でなくとも良いのでは?」と思える形になっており、褒めるのが難しいです。   そもそも「主人公は凡人であり、特殊なタキシードのお陰で超人になれた」っていう設定、ジャッキーとは相性が悪いと思うんですよね。  公開当時の米国人ならいざ知らず、日本に住んでる自分としては「ジャッキーが凄い奴」である事は分かり切ってる訳で、本作にて「ジャッキーは凄くないよ、凄いのは着てるタキシードなんだよ」ってストーリーを展開されても、全く説得力を感じない。  作り手側も流石にマズイと思ったのか「タキシードを着ると強くなる」ってだけでなく「声帯を変える事も出来る」「銃を組み立てるような精密動作も出来る」といった性能も付け足されてるんだけど、それが成功したとは言い難いかと。   こういう設定の映画である以上、観客には「このタキシードを着てみたい」って思わせる必要があるはずなんですが、本作に対しては全然そんな気持ちになれませんでしたからね。  色んなジャッキー映画を観て「ジャッキー・チェンになりたい」と思った事が何度もある身としては、これは如何にも寂しい。  もっと「タキシードを着て超人になる事の利点」「強くなる事の爽快感」「色んな事が出来るようになる快感」を、しっかり描くべきだったと思います。   一応、所々でジャッキーがアクションを披露してくれてるので、退屈まではしなかった事。  「九割は服でモテる(胸を指差して)あとの一割は、この中」「僕はファンを無視する有名人が嫌いだ」などの台詞は、中々オシャレで好みだった事。  最後はタキシードを着た者同士の対決になる事や、タキシードの特性(煙草を咥えられたら、自然に火を点けてしまう)を利用して勝つ脚本などは、王道の魅力があった事などを考えると「つまんない映画」「嫌いな映画」って程ではないんですが……  誉め言葉よりも、文句の方がスラスラ書けちゃう映画なのは確かだったりするので、困っちゃいますね。   最後の大袈裟な告白が失敗に終わるとか、ツンデレっぽいヒロインと結ばれるオチになるとか、その辺も「良かった箇所」と呼べそうではあるんだけど……  それらに対しても「告白の為とはいえ、自転車に乗ってた人が殴られたりして可哀想なので笑えない」「最終的に結ばれるのであれば、彼女の出番を増やしてヒロインとしての魅力を描いておくべきだった」なんて具合に、次々と不満やら文句やらが浮かんできちゃうんです。  この映画を褒めたい自分と、文句を言いたい自分とが戦った結果、後者が判定勝ちしちゃった感じ。   残念ながら、自分には合わない「タキシード」だったみたいです。
[DVD(吹替)] 4点(2023-09-12 16:37:59)(良:1票)
22.  ダブル・ミッション 《ネタバレ》 
 「アジアの鷹」シリーズの一本……という訳ではなさそうですね、残念ながら。  冒頭にて往年のジャッキー作品の映像が流れるし、中でも「プロジェクト・イーグル」(1991年)の映像が数多く引用されている為、つい続編かと考えたくなるんですが、主人公の性格が違い過ぎるし「ライジング・ドラゴン」(2012年)とも繋がらない。  じゃあ「タキシード」(2002年)の続編なのかといえば、これまた無理があるし、ちゃんと独立した作品なのだと思われます。   そんな訳で「前作では○○だったのに、今作では××になってる」なんて思う事も無く、純粋に一本の映画として評価出来る品なのですが……  「面白いかどうか」で言うと、ちょっと厳しいです。   まず、クライマックスの戦いを自宅の中で済ませてるのがスケール小さくて拍子抜けだし、長女のファレンが父親について「絶対戻ってくる」「このまま放っとくはずない」と言っていたのに、その父親が結局登場しないまま終わったりで、作り込みが甘いんですよね。  ヒロイン(?)のジリアンに関しても、芸術家設定が全然活かされていないし、主人公がスパイと知った後の態度が冷た過ぎて、最後にアッサリ復縁するのが不自然なんです。  「物語の中で必要じゃないのに、面白そうだと思った属性をアレもコレもと詰め込み過ぎてしまった」という形であり、悪い意味でアマチュアっぽい作風だったと思います。   でも「好きか嫌いか」で考えれば、間違いなく好きな映画だったりするので……  褒めようと思えば、いくらでも褒められちゃうんですよね、これ。  凄腕のスパイが、普通の主婦が毎日こなしてる「子育て」に翻弄されちゃうって基本軸も、ベタだけど王道な魅力がありますし。   それに何といっても、主人公と交流して懐いていく、三人の子供達が可愛らしい。  思春期で反抗しがちな長女のファレンに、やんちゃ少年なイアン、幼く純真無垢なノーラと、三人ともキャラが立ってるんですよね。  ファレンと「屋根友」になる場面、イアンがスパイに憧れて家出する場面、ノーラが砂糖を食べて暴れ回る場面といった具合に、それぞれに印象的な見せ場があるのも良い。  母親であるジリアンの影が薄い事も併せて考えると、本作は、あくまでも「主人公と三人の子供達の物語」って事なんだと思います。   梯子に自転車など、道具を駆使したアクションが随所で挟まれるのもジャッキー映画らしい魅力があったし「作中でプールが出てきたら、ちゃんとそこに人が落ちる」って作りなのも、安心感がありましたね。  ファッションに拘るラスボスに向かって、イアンが「だっさい服だな」と言い放ちムッとさせる場面とか、悪役にも程好い愛嬌が備わってるのも良い。  憎たらしい悪役を倒してスカッとする、勧善懲悪な魅力を目指すのではなく、悪役でも憎めないような、優しい世界を崩さないバランスに仕上げてあり、観ていて心地良かったです。   面白い映画っていうよりは、優しい映画という……  そんな言葉が似合いそうな一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2023-09-07 18:07:36)(良:1票)
23.  ウォーター・ホース 《ネタバレ》 
 ネッシー映画って、何故かネッシーを「人を襲い、食い殺す化け物」として描いた品が多いんですよね。  「怒りの湖底怪獣/ネッシーの大逆襲」(1982年)然り「ジュラシック・レイク」(2007年)も、また然り。  にも拘わらず、本作ではネッシーを「人間の友達」として描いているんだから、それだけでもう、嬉しくなっちゃいます。  数少ないネッシー映画の中で、最も有名なのが本作だと思うし、自分としても一番好きなネッシー映画となりそう。   そんな訳で「これぞネッシー映画の決定版」と大いに褒めたいところなんですけど、ここで思わぬ落とし穴。  実は本作における「ネッシー」には「クルーソー」という独自の名前が付けられており、それがちょっとこう……微妙にピントずれちゃってる感じなんですよね。  観ている側としては「ネッシー」と思ってるのに、劇中人物達は「クルーソー」あるいは「モンスター」と呼んでいる。  これに関しては、多少不自然になってもアンガス少年が「ネッシー」と名付けて、それが何時の間にか世間にも流布してしまったとか、そういう流れにした方が良かったのでは? なんて、つい思っちゃいました。   元々あったウォーター・ホース伝説と組み合わせ「実はネッシーの正体とは、ウォーター・ホースなのである」って展開にしたのは悪くないんですけど、どうにも取っ散らかり過ぎなんですよね。  作中で色んな呼び名、色んな属性が当てはめられてるせいで、愛着が湧き難くなってしまった気がします。   あと、クルーソーと別れる場面にて、アンガス少年に「お前は一番の友達だよ」と言わせるなら、もっと事前に両者の交流を描いて欲しかったです。  クルーソーとの絆に関しては、贔屓目に見ても「可愛がってたペット」くらいにしか思えなかったし「場面単体で考えたら悪くないんだけど、伏線が足りないから感動出来ない」って形になってるのが、本当に残念。  戦死した父の存在をドラマに絡め「もう二度と会えない存在である父とクルーソーを、それでも愛し続ける主人公」「クルーソーとの別れによって、ようやく主人公は父とも本当のお別れが出来た」という描き方にしたのも、個人的には微妙というか……  ちゃんとクルーソー(ネッシー)との絆一本で映画にして欲しかったというのが、正直な気持ちです。   とはいえ、総合的に考えると好きな映画だし、良かったと思える部分の方が、ずっと多かったですね。  冒頭にて、色んなネッシー写真で目にした「湖畔の古城」が姿を見せる場面だけでもグッと来ちゃったし、クルーソーの頭には角があるしで、ネッシー好きとしては、それだけでも満足。  写真を偽造している連中の、すぐ傍で本物が泳いでる場面なんかも、皮肉なユーモアがあって良い。    「ネス湖に怪物なんていない」と主張する、世間の代表とも言うべき母親の前に、クルーソーが姿を現す場面をクライマックスに据えてるのも、もう大正解。  ネッシー好きにとっての悲願とは「ネッシーを否定する人物に、本物を見せてやる事」だと思うし、それを映画の中で叶えてくれるんだから、本当に嬉しかったです。   ネッシーに乗ってネス湖を泳ぐという、幻想的な場面も素晴らしいですね。  これまで自分が観てきた映画の中でも、最も活き活きとして美しいネッシーが、ネス湖を縦横無尽に泳ぎ回るという、その姿を拝ませてもらえただけでも(良いもん見たなぁ……)って、しみじみ感じられました。   2023年現在、自分の口から「ネッシーは実在する」と言えば、それは嘘になってしまうと思います。  それと同様に「この映画は面白い」って言ってしまうと、それも嘘になっちゃいそうなんですが……  夢の有る映画である事は、間違い無いと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2023-08-29 18:57:01)(良:1票)
24.  50回目のファースト・キス(2004) 《ネタバレ》 
 何が凄いって、ヒロインの記憶障害が治らないままハッピーエンドを迎えるのが凄い。  ファンタジーな設定ではありますが、一応は「難病もの」に分類される内容だったし、これは「無事に病気が治って二人が結ばれる」「病気が治らず、別れる」のどちらかだろうと予想していた身としては、完全に意表を突かれましたね。   こういう「病気は治らなかったけど、二人で頑張って生きていこう」なレアパターンエンドだと(でもさぁ……結局、その後が大変で別れちゃうんじゃない?)なんて疑念が浮かび、素直に楽しめなかったりもするんですが、本作に関しては心配無用。  「二人で頑張って生きていこう」と共に未来に向かって歩み出した後、時間が飛んで「頑張って生きて、幸せになった未来」まで見せてくれるんですよね。  ここの見せ方が、また上手くって、朝目覚め、いつものように記憶を失ってるヒロイン同様、観客にも(結婚したのか)(赤ちゃん産まれたのか)という衝撃と感動を与える演出になってるんです。  BGMも併せ、何度観ても涙が滲んでくるような、文句無しの名場面に仕上がってたと思います。   脇役陣も良い味出してるというか、良い人達ばかりで、ヒロインが戸惑わず「いつもの日常」を送れるよう、新聞やら果実やらを用意して「優しい嘘」の世界を作り上げてる描写にも、グッと来ちゃいましたね。  そこに主人公のヘンリーが現れて、そんな嘘の世界を壊してヒロインに真実を伝える訳だけど、そこで「嘘」を教えて彼女を守っていた側と、彼女に「真実」を伝えた側、どちらも正しいというか、どちらもそれぞれのやり方で彼女を愛してるんだと、しっかり分かる作りにしてるのも見事。  全く正反対の方針を取った両陣営に対し、どちらかを悪役に感じさせたりはせず、どちらも良い人達なんだと思わせるのって、本当に理想的。   (これだけ愛を交わせば、起きた後もヘンリーを憶えてくれているんじゃないか)と思っていたら、やっぱり駄目だったとか、コミカルだけど絶望感ある場面を見せてくれたりもして、その辺りのバランスも上手かったですね。  基本的には「明るく楽しいラブコメ」なんだけど、その空気を壊さない程度にシリアスな場面も挟む。  だから笑えるし泣けるっていう、絶妙な形。  中盤にて、ヘンリーが自作の曲を聴かせる場面もロマンティックだったし、作中で何度も交わされる「ファーストキス」の描き方も良かったです。   気になった点としては……  冒頭の場面からすると、ヘンリーは男(あるいは、性転換した女性?)にも手を出してたみたいなのに、中盤で「男とやる趣味は無い」と主張してるので、どっちなんだと戸惑った事が挙げられそう。  あと「シックス・センス」(1999年)のビデオに関しては、間違いで別の映画のビデオが入ってた事にすれば、皆で毎晩新しい映画を楽しめるのではって思えたんですが……まぁ、何度も「シックス・センス」を観せられヒロイン以外は飽き飽きしてるって方が話としては面白いし、これは重箱の隅レベルの不満点ですね。   もし自分が一日しか記憶が保てない身になったら、毎日この映画を観るだけで毎回感動出来るかも……なんて思えてくる。  そんな、素敵な贈り物のような一本でした。
[DVD(吹替)] 9点(2023-08-25 02:23:12)(良:2票)
25.  チェイサー(2017) 《ネタバレ》 
 ノンストップな追跡劇が面白い……と言いたいとこなんだけど、ちょっと微妙でしたね。  奇を衒った作りではなく「誘拐犯を追いかけ、子供を取り戻す主人公」というシンプルなストーリーだし、時間も94分と短めに纏まっているし、主演はハリー・ベリーだしで、褒めたくなる要素は一杯なんだけど、肝心の「映画としての面白さ」が足りてない。   どうして楽しめなかったんだろうと考えてみたんですが、本作に関しては「骨太でシンプルな作り」という、本来なら長所となるべき部分が、仇となってしまったのかも知れません。  誘拐犯の正体は驚きのあの人とか、実は深い目的があったとか、そういう訳でもないし、本当に「主人公VS誘拐犯」ってだけの話ですからね。  序盤に主人公がウェイトレスとして働く場面を、結構な尺を取って描いており、これは伏線なのかな(揉めてた客が再登場して主人公を助けてくれるとか、あるいは誘拐犯の一味とか)と思っていたら、全然関係無かったっていうのも、観ていてズッコけちゃいましたし。  中盤にて、主人公の車が燃料切れを起こしちゃうのも、何だか象徴的。  「ネタが無いので、仕方無く燃料切れにして引き延ばしました」としか思えない展開であり、そこで車だけじゃなく、映画自体も息切れしちゃってた気がします。  尺稼ぎが露骨というか、この映画には、94分でも長過ぎたんじゃないかと。   とはいえ最初に述べた通り、自分としては「褒めたくなる」「好きなタイプ」の品だったので、以下は良かった点を。  まず、冒頭で「息子の成長を見守る母」の姿を描き、母子の絆をしっかり感じさせるのは嬉しかったですね。  こういう映画である以上、そういう描写は必要不可欠だし、やって当たり前だろって話ではあるんですが……  「当たり前の事を、ちゃんとやってくれてる安心感」が得られるっていうのは、立派な長所だと思います。   警察が全然活躍しないで、主人公が孤軍奮闘して息子を救うって展開に、しっかり説得力があったのも良い。  この場合の説得力っていうのは「警察に任せた方が息子が助かる確率は高いのに、自力で何とかしちゃうのは説得力に欠ける」とか、そういう現実的な代物ではなく、作劇として「主人公は警察に任せておけずに、自力で息子を救おうとする」っていう、主人公の心の描き方としての説得力ですね。  警察署にて、行方不明になったまま帰らない子供達のポスターを見つめ「我が子は決して、こんな風にはさせない」「何もせず待ってるだけなんて、耐えられない」と考える流れには、自然に感情移入出来ましたし。  正しい道じゃないかも知れないけど、観客として「それで良い」「そうするのが正解」「頑張って欲しい」と思える道を選ぶ主人公っていうのは、やっぱり魅力的です。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2023-08-24 12:12:55)(良:1票)
26.  噂のモーガン夫妻 《ネタバレ》 
 お気楽な夫婦再生のラブコメ映画だとばかり思っていたもので、序盤で人が殺される展開に吃驚。   とはいえ「殺人事件を目撃してしまう」「殺し屋に命を狙われる事になる」などの緊迫した要素が揃っているわりには、ゆる~い空気で話が進むんですよね。  主人公夫妻も、発砲されて逃げ惑う破目になった割には、全くもって危機感が無い。  この辺り、ちょっとチグハグというか(殺し屋に襲われる場面では、もうちょっとシリアスな空気にして、緩急を付けても良いんじゃない?)なんて思っちゃいましたね。  あるいは、徹底的にコメディ調にして「射撃や乗馬を習い、熊とも遭遇した経験ゆえに、主人公夫妻が逞しく成長して、殺し屋を返り討ちにしてみせる」って展開にしても良かったんじゃないでしょうか。  本作は、シリアスな魅力とコメディな魅力、どちらにも振り切れず、中途半端に終わってしまった気がします。    そんな具合に、話の本筋には不満もあるんですが「田舎に住む事になった夫婦が、絆を再生させていく物語」として考えれば、そちらの方は無難に纏まっており、良かったと思います。  当初は「田舎者」ならぬ「都会者」って感じで、静か過ぎるからサイレンが恋しいだの何だの言い出す主人公夫妻に、全く感情移入出来なかったんですが、徐々に二人を温かく見守るような気持ちになってくるんですよね。  仕事人間らしく、不動産業や弁護士としての腕を活かして、田舎の人々と仲良くなっていく流れも「そう来たか」という感じだし……  ビンゴで盛り上がったり、星空に見惚れたりする姿も「初々しい恋人時代の二人に戻れたんだ」って思えて、微笑ましい。   彼らを家に住まわせる事になる保安官夫妻も、良い味を出してましたね。  自分としては、気が付けばモーガン夫妻よりも、保安官夫妻の視点になって映画を楽しんでいたくらいです。  ずっと無口だった保安官が、黙って見ていられなくなり、重い口を開いてモーガン夫妻に助言するシーンは、本作の白眉かと。   「秘書役の二人が喧嘩しつつも結ばれる」というサイドストーリーも良かったですし、ナース兼ウェイトレス兼消防署員なケリーに、歌手を目指している少女のルーシーも、可愛かったですね。  そういった脇役陣が、しっかりと主人公夫妻を支えてたという印象です。   最終的には夫婦も和解して、妊娠もしたし、予定通り養子も迎えたという、実に欲張りなハッピーエンド。  赤子を抱いて笑う妻の姿に「素晴らしい眺めだ」と呟く夫と、冒頭に繋がる留守番電話のオチも、綺麗に決まっていたと思います。   正直、面白かったとは言い難いものがあるんですが……  ゆったりした気持ちに浸れるし、何時かまた観返したくなるような、不思議な魅力のある映画でした。
[DVD(吹替)] 6点(2023-08-12 07:48:52)(良:1票)
27.  ミザリー 《ネタバレ》 
 作品を完成させた際の「煙草とシャンペン」の儀式を冒頭で描いてる事や「ペンギンの人形を逆向きで置いた場面」を、しっかり見せてる事が印象的。  とても伏線が丁寧で、誠実に作られた一品だったと思います。  これなら劇中で「ロケットマン」に対し「インチキ」とお怒りだったアニーも、きっと満足してくれるんじゃないでしょうか。   とにかく原作小説が印象深いもので、どうしても「原作とココが違う、アレも違う」という比較論で語りたくなっちゃうんですが……  そういうのって、ちょっと映画に対してアンフェアな気もするし、純粋に映画そのものを楽しめてない気がするから、及び腰になっちゃいますね。  それでも、やっぱり語らずにはいられないので始めちゃいますが、劇中で「ミザリーの生還」の原稿を本当に焼いてしまう展開だった事には、もう吃驚です。   確かに、その方がインパクトは高まるし「主人公のポールも、犠牲を払った上でアニーに勝利した」という劇的な流れになるのは分かりますが……  原作では原稿を摩り替えており、本当に焼くような真似はしていないし「ミザリーの生還」の結末がどうなるか、ちゃんと読者に教えてくれる作りだったんですよね。  この辺り、原作未読の人は「イアンとウィンドソン、どちらと結ばれるのか」などの答えが分からないまま映画が終わるので、もどかしく思えるかも……  いや、原作と違って「ミザリーの生還」を劇中作として読ませるという手法じゃないから、案外そんなに気にならないかも?  などと、アレコレ考えられて楽しかったです。   それと「包丁を取り出す練習をするポールが恰好良い」とか「アニーが優しい言葉を掛けつつライターオイルを振り掛けて『穢らわしい原稿を焼かなかったら、貴方を焼いてしまうわよ?』と暗に脅してるような場面が素晴らしい」とか、文字媒体の小説では中々描けないような、映像で魅せる映画ならではの良さが、しっかり感じられた辺りも嬉しいですね。  いかにも最後まで生き残り、ポールを救ってくれそうな老保安官が殺される場面もショッキングだったし、原作を読了済みの自分でも楽しめたのは「映画版独自の魅力」が、しっかり備わっていたからだと思います。   これは演者さんの力なんでしょうけど、投げキッスをする場面なんかでは、あの恐ろしい「女神」であるアニーが可愛らしく思えたし、男女のロマンス要素が色濃く感じられた辺りも、興味深い。  ファン心理の暴走というよりは「アニーはポールに歪んだ愛情を抱いてる」「殺すのはアニーにとっての愛情表現でもある」っていう面が強かった気がするんですよね。  だからこそ、過去の死亡記事を見つけて、自分がアニーにとっての「初めての男」ではないと悟るポールの場面も二重にショッキングに感じられたし、この辺りは「狂った女の愛憎物語」として、とても良く出来ていると思います。   ただ、最後に関しては……  原作から大きく逸脱してる訳じゃないし、エンディング曲の歌詞を併せて考えると「これからも、アニーはポールから逃られない」「二人は、ずっと一緒」という余韻を残す終わり方にしたかったんでしょうが、ちょっと微妙に思えましたね。  原作はハッピーエンド色が強く、とうとうアニーの幻影を振り切って新しい小説を書き出せた感動と共に終わっていますし、まるで趣が違うんです。  「自らが生み出したミザリーを憎んで殺したはずなのに、生き返らせる事になった」からこそ「ミザリーと同じように、アニーも墓から甦ってくるかも知れない」と怯えるポールという、ミザリーとアニーを重ね合わせる描写が感じられなかったのも、不満点と言えそう。   それに、どうせ独自の展開にするなら、いっそ原作でも示唆された「チェーンソーを振り上げ、襲ってくるアニー」を映像で見せて欲しかったなぁ……なんて、つい思っちゃいましたね。  こんな願望を抱いてしまう辺り、自分も充分に「怖いファン」と言えるかも知れません。
[DVD(吹替)] 7点(2023-08-09 23:19:47)(良:2票)
28.  MEG ザ・モンスター 《ネタバレ》 
 毎年恒例、夏のサメ映画鑑賞。   ジェイソン・ステイサム主演という看板に偽り無しであり、冒頭から最後まで彼が出てくるし、サメの出番も多いしで、勿体ぶった感じが無いのが良いですね。  予算に恵まれた大作に相応しいクオリティだなって、嬉しくなっちゃいます。   この辺り、普通の映画好きなら(何故、そんな当たり前の事が加点対象に?)と戸惑うかも知れませんが……  色んなサメ映画を観てきた身としては「大物俳優の名前で釣ってるけど、実はメインじゃなくゲスト出演程度」「拙い造形なのを誤魔化す為、サメの出番は極力減らしてる」って例に当てはまらないだけでも、凄い事だって思えちゃうんです。  特に終盤、サメがビーチを襲撃する場面は圧巻であり、ここまでエキストラの多いサメ映画って、本当に珍しい。  カラフルな浮き輪の群れが、巨大ザメから逃げ惑うのを上空から捉えたカットなど、ちゃんと「予算が有るからこそ撮れる場面」を見せてくれてるんですよね。  サメ映画といえば低予算な品が多いですし、本作は「きちんと金を掛けて、面白いサメ映画を撮ってる」という、それだけでも評価に値すると思います。   勿論、欠点も多いというか……  前半と後半で、まるで違った趣の映画である事には、正直(んっ?)と戸惑いましたね。  「深海に取り残された人々を救出するという、真面目でシリアスな映画」から「お馬鹿なサメ映画」に変わったという形であり、自分としては後者が好きだから受け入れられたけど、前者が好きで観ていた人は「何だコレ」と、茫然としちゃうかも。  中盤、嫌味な金持ちキャラが間一髪助かったと思いきや、やっぱり食べられちゃう場面なんて「これぞサメ映画」って感じだし、あそこをキッカケに映画の雰囲気が一変するので、その変化を受け入れられるかどうかで、評価も変わってくると思います。  映画の完成度、作風の統一感という意味では、決して褒められない出来なのは確かです。   でもまぁ、自分としては「サメ映画っぽくないと思ってたら、ちゃんとサメ映画だった」という形なので、全然OKでしたね。  ヒロインの「少しだけ」を示すジェスチャーは真似したくなる魅力があったし、慎重派の味方キャラが「今日は海釣り日和だ」という言い方で協力を申し出る場面もグッと来たしで、主人公以外の人物が、ちゃんと魅力的だった点も良い。  ヒロインの娘であるメイインも可愛らしく、主人公との交流には、大いに和むものがありました。  ラストシーンにて「ママも誘っちゃう?」とメイインに言われた際に、主人公が目を見開いて笑う場面なんてもう、愛嬌たっぷり。  強面なステイサムだからこそ出せる、ギャップの魅力が素晴らしかったです。   黄色い潜水艇も恰好良かったので、それに乗って巨大ザメと一騎打ちするってクライマックスにも、大いに興奮。  最後は、その潜水艇も乗り捨て「主人公が単身、巨大ザメと戦う」というデタラメな展開になるんだけど(ステイサムなら、それも有り)って思えるんだから、本当に凄いですよね。  主演俳優の偉大さというか、役者としてのパワーを感じます。   そういった諸々を踏まえて考えると、本作は「サメ映画」ではなく「ステイサム映画」に分類すべきなのかも知れませんが……  いずれにせよ、しっかり楽しめる映画であった事は、間違い無いです。  サメ映画好きにも、ジェイソン・ステイサム好きにも、安心してオススメ出来る一本だと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2023-08-03 14:55:57)(良:2票)
29.  ケインとアベル/権力と復讐にかけた男の情熱<TVM> 《ネタバレ》 
 てっきりダブル主人公制かと思ったのですが、完全にアベルが主人公ですね。  ケインは副主人公、もしくは主人公のライバルといったポジションに思えました。   で、自分としては当然、出番の多いアベル側に肩入れしつつ、楽しく鑑賞出来たのですが……  物語の一番のオチと言うべき「苦境のアベルを匿名で救った人の正体は、宿敵ケインであった」って事が、観ていてバレバレだったのが残念です。  これに関しては、古典的名作ゆえの弱点というか、原作が書かれた1970年代なら意外性のあるオチだったものが、現代では「王道」「ありきたりな展開」になってしまったがゆえの悲劇なんでしょうね。  観客の自分としても(これ、絶対ケインが助けてるオチじゃん)と思えたし、それと同時に(救い主はケインって展開が一番面白い、そうじゃなかったらガッカリする)と思えたりもしたんだから、何とも判断が難しい。  もうちょっと見せ方を工夫して「観客にはケインが救い主である事を示しておき、アベルがそれに気付くまでの流れを俯瞰的描写で楽しませる」という作りであったなら、印象も違ってたかも知れません。   そんな本作は、300分越えという長尺の品であり、色んな要素が内包された大河ドラマのような作りなのですが、自分としては「収容所から脱走するアベル」の件が、一番お気に入りでしたね。  列車の中で、たまたま相席となった貴婦人がアベルを庇ってくれたお陰で難を逃れる辺りとか、特に好き。  これに関しては、上述のオチと同様「この後どうなるか分かってる」「もし予想通りの展開にならなかったら、逆にガッカリする」という例の最たるものであり「古典的名作の良さ」を存分に味わえた場面として、印象深いです。   後は、終盤にアベルの娘とケインの息子が惹かれ合うという「ロミオとジュリエット」的な展開になるのも、また面白い。  こういうストーリーの場合、普通は惹かれ合う男女が主人公となるので「偏屈な親どものせいで結ばれない二人が可哀想」としか思えないのに、この話では、その偏屈な親の方が主人公になってる訳ですからね。 (実際に、原作の続編である「ロスノフスキ家の娘」では、娘視点の物語として描かれていたりする)  「憎いアイツの息子に娘を奪われるだなんて、冗談じゃない」っていう親側の気持ちに寄り添った作りなのは新鮮であり、三十年以上経った今観ても、目新しい魅力を感じました。   アベルだけが生き残り、ケインは死んでしまう後味の悪さとか、手放しには褒められないし、あまり再見しようという気にはなれないんですが……  間違いなく「観て良かった」と言える、骨太な一本だと思います。
[地上波(吹替)] 6点(2023-08-02 20:43:51)
30.  アローン・イン・ザ・ダーク 《ネタバレ》 
 この手の「モンスターと戦うアクション映画」って好きです。  そして主演がクリスチャン・スレーターとくれば、否応なくテンションは高まるのですが……  冒頭のナレーションで「長いよ!」とツッコみ、その後「モノローグで自己紹介やったのに、何で台詞でも自己紹介するの?」とツッコみ、以降はもう何かを諦めた境地で、ただただ画面を眺めるだけでしたね。   物凄く退屈だとか、観ていて不愉快になったとか、そういう訳じゃないんだけど……  とにかく盛り上がりに欠けており、気が付けばエンディングを迎えてしまったという形。  自分は主演の俳優さんが好きなので、彼が主人公というだけでもある程度は楽しめたんですが、もし魅力を感じない人が主演だったらと考えると、空恐ろしくなりますね。   一応(おっ)と思わされる場面もあって、拳銃から発射された弾丸を追いかけるスローモーション演出なんかは悪くないし、無人と化した都市の風景も「現実では中々体験出来ない、映画ならではの味わい」があって、良かったです。  ラストシーンに関しても「あぁ、サム・ライミの『死霊のはらわた』をオマージュしているんだなぁ……」と分かって、微笑ましい。   ウーヴェ・ボル監督の作品って、観賞済みの中では「ザ・テロリスト」(2009年)と「ウォールストリート・ダウン」( 2013年)が例外的に面白く、それ以外は全滅だったりするんですが……  それでも何か愛嬌があって、憎めないから不思議ですね。  聞くところによれば、映画を酷評した評論家と、ボル監督とがボクシングで戦うドキュメンタリーもあるそうなので、機会があれば観賞してみたいものです。
[DVD(吹替)] 4点(2023-07-25 15:22:53)
31.  パワーレンジャー(2017) 《ネタバレ》 
 「パワーレンジャー」(1995年)「パワーレンジャーターボ/誕生! ターボパワー」(1997年)と併せて、三作連続で鑑賞したのですが……  前二作はテレビシリーズの劇場版という趣が強い為、予備知識無しで楽しめたのは本作のみでしたね。  単純に出来栄えとしても、三作品の中では一番良かったんじゃないかと思います。   ただ、それは「シリーズの中では一番面白い」というだけであり、純粋にコレ単品で評価するとなると……結構厳しいです。  学園物なテイストを盛り込んだのは悪くないと思うし、ちゃんと巨大ロボットも登場して「戦隊物に必要な事」は最低限やってくれているんですが、どうも物足りない。  映像のクオリティも高くて「本気でリブートする」「続編を何本も作れるような、人気シリーズにしてみせる」という心意気は伝わってきたんですが……残念ながら、その熱意が面白さに繋がっていないんですよね。  ちょっと酷な言い方をするなら「熱意は感じるけど、センスは感じない映画」って事になっちゃうと思います。   いや本当、悪い映画って訳じゃないんですけどね。  元々自分が特撮ヒーロー物を好きってのを差し引いても、一定のクオリティは有って、娯楽映画として及第点に達してると思いますし。  超人的な力を手に入れて喜ぶ姿とか、皆で焚火を囲んで絆を深める場面とか、若者達が主役ならではの「青春映画」としての魅力も描けてたと思います。   でもやっぱり、作り手にセンスが欠けてるというか……  例えば、絶体絶命の場面でブルー(元いじめられっ子)が主人公のレッドに「友達になってくれて、ありがとう」と伝える場面とか、演出次第で、もっと感動的に出来たはずなんです。  なのに本作は(えっ、何で?)と戸惑うくらい、そういうオイシイ場面をアッサリ流してしまう。  それはレッドが父親を助ける場面も然りであり「父親がレッドの正体に気付く」とか「喧嘩しがちだった二人が和解する」とか、いくらでも面白い展開に出来たはずなのに、ただ助けるだけで終わっちゃうんですよね。  本当に勿体無くて、観ていて焦れったい。   エピローグにて「新たな戦士」の登場を示唆する一方で、倒しそびれた敵などが存在しない辺りは「観客にモヤモヤを残さない、誠実な作り」と褒める事も出来そうなんですけど……  何か、さっきから「作り手の誠意」ばかり褒める形になっていて「映画の面白さ」を褒められないのが、寂しい限りです。   「好きな映画」とも「面白い映画」とも言えそうにない。  でも、絶妙に嫌いになれないという、不思議な感じ。   粗が有るのは分かってるけど、何とか肯定してあげたくなる。  「ヒロインや女怪人が可愛いってだけでも充分じゃん」とか、そういう軽いノリでフォローしたくなる。  まだ半人前だけど、頑張って戦ってるヒーローを応援したくなるような……  そういう「応援したくなる映画」っていうのが、一番的確な評かも知れません。
[インターネット(吹替)] 5点(2023-07-20 23:42:30)
32.  ELI イーライ 《ネタバレ》 
 「おかしいのは周りじゃなく、主人公の方だった」という、実にありがちな御話なのですが……  意外や意外、中々面白かったです。   この手の「実は主人公が異常者だった」オチの場合、大抵は「超常現象かと思わせて、実は精神の病だった」ってなりがちなんですが、本作は逆なんですよね。  「現実的な病気かと思わせて、実は悪魔の子だった」という形であり、これには吃驚。  息子に対し、盲目的な愛情を注ぐ母親と、どこか距離がある父親という対比が、程好い伏線となっているのも良かったです。   後は、やっぱり主人公が幼い子供っていうのも大きいんでしょうね。  多分、これが高校生くらいの年頃だったとしても「ありがち」って印象になってたと思うし、自分にとって「子供は純真無垢」「子供は善」「子供は被害者」っていうイメージは、やっぱり根強いんだなと、再確認させられた形。  「オーメン」(1976年)を父親ではなく、子供側の目線で描いた物語と解釈する事も出来そうです。   「人々が逆さ十字のまま宙に浮かび、回転する場面」とか「イーライの足跡が炎になる場面」とか、視覚的に「この子は悪魔だ」と納得させるだけの描写が、しっかり備わっていた辺りも嬉しい。  悪魔の手先となって主人公を惑わす存在が、可愛らしい少女っていうのも(そう来たか!)っていう意外性と(美少年のイーライの姉妹なんだから、良く考えたら当たり前か)って思える説得力があって、良かったですね。  自分の場合(多分、この子が幽霊で、イーライは超能力者か何かだろうな)とボンヤリ予想していただけに「二人とも悪魔でした」ってオチには、素直に脱帽させられました。   ただ、二人の正体が明かされた後の終わり方に関しては……ちょっと微妙でしたね。  母親生存エンドとなったのは「観客が感情移入出来る存在を、最後まで生かしておく」という配慮があったんでしょうけど、どうも中途半端になってしまった気がします。  コレは、自分が男だからそう思うのかも知れませんが、母親だけ生き延びて父親はアッサリ殺されて終わりっていうのが、何かスッキリしないんですよね。  せめて父親は傷を負いながらも生き延びるとか、イーライはイーライで「パパはパパなりにボクを愛してくれてたから、どうしても殺せない」って、命だけは奪えずに見逃すとか、そういう展開でも良かった気がします。  それなら「人間は我が子が悪魔というだけで殺そうとするが、悪魔は父親が人間でも殺したりはしない」という対比が際立って、より自分好みな映画になってたかも知れません。
[インターネット(吹替)] 6点(2023-07-13 02:36:21)
33.  スペイン一家監禁事件 《ネタバレ》 
 「助かると思った? やっぱり殺すよ」というオチありきというか、それがやりたかっただけとしか思えない映画。   原題の「Secuestrados」は「誘拐された」という意味らしく、邦題ともども「殺人」という要素は含まれていないのもポイントですね。  だから観客としても「監禁」されるだけと思い込んでしまうし、まさかの被害者全滅エンドとは予測出来ない。  こういう陰鬱な終わり方は好きじゃないので、あまり褒める気持ちにはなれませんが、やり方としては上手かったと思います。   それは冒頭、顔に袋を被せられてた男が電話する場面も然りであり、この件って本筋とは直接関係無いんですが「人質に袋を被せる」「父親と妻や娘を引き離す」という手法からすると、冒頭の事件と本筋の事件って同一犯な可能性が高いんですよね。  つまり、その冒頭場面によって「ママが撃たれた」「でも父親と娘は助かってる」という情報を提示している為「人質は撃たれて殺される事もある」という緊張感を与える事に成功しているし、その一方で「全員殺される事は無い」というミスリードを誘う効果もあったんだから、これまた上手い。  冒頭、被害者家族が喧嘩している描写も「悲劇を乗り越え、家族の絆が強まるオチ」を連想させるし、この手の犯罪映画を色々と研究した上で、それを逆手に取った作りにしてるのが伝わってきました。   犯人の正体が引っ越し業者とか、序盤に出てきた卵の置物が武器になるとか、諸々の伏線も丁寧でしたし……  後は何と言っても、分割画面(スプリットスクリーン)の使い方が見事。  離れ離れになってる人質二組を同時に映し、それぞれが犯人に反撃して、窮地を脱した二組が合流すると同時に、二つの画面が一つになる。  「再会の喜び」を示す上で、とても効果的な手法ですし、本作のクライマックスは間違い無く、この「二つが一つに戻る場面」だったと思います。   「三人組の犯人グループの内、凶悪だった二人は反撃を受けて殺され、唯一良心が残ってた男は金を持ち逃げする事に成功する」っていうのも、良い決着の付け方だったんですが……  そこで終わっておけば良いのに、余計な付け足しというか「実は生きていた犯人の一人に、家族皆殺しにされる」ってオチに雪崩れ込んでしまうのが、本当に残念。  所謂「最後で台無し」系の映画って事になるんですけど、それでも「最後の手前までは凄く良かった」って事も確かな訳で、こういうのって、評価が難しいですね。   自分の心の中にある、映画の本棚。  その端っこにある「どうしても好きになれないけど、これは凄いと認めざるをえない映画」って枠の中に、本作も加わる事になりそうです。
[DVD(吹替)] 6点(2023-07-11 23:50:04)(良:1票)
34.  ファニーゲーム 《ネタバレ》 
 これは観客を不愉快にさせる為の映画なのでしょうか。  不愉快になる理由としては、劇中で行われた暴力や理不尽さに対する怒りが必要になってくると思います。  でも正直、不愉快というよりは退屈に感じましたし、怒るというよりは呆れるという感情に近い。   それが決定的になるのは「仲間を殺されてしまった犯人が、リモコンの巻き戻しボタンで時間を逆行させて、仲間の死を回避してしまう」という場面。  これはもう、完全に興醒めです。  不幸を回避する為に時間を逆行させる展開は珍しくもないけど、これほど唐突なパターンは記憶にありません。 (現実に行われている暴力の理不尽さを描こうとしているのかな?) (暴力を娯楽として描く映画に対するアンチテーゼなのかな?)  などと、色々考えながら観賞していたのですが、この映画に匹敵するほどの理不尽さは現実世界や他の映画では見受けられないと思います。  よって、現実世界に対する警鐘とも他の映画に対するパロディとも感じられません。  恐らくは「ある戦慄」(1967年)が元ネタなのだろうな、と思えますが、あちらに存在したラストシーンのカタルシスや、背筋が寒くなるほどの恐怖や嫌悪感すらも無し。   致命的なのは、やはり「巻き戻し」によって、一度映画で描かれたものを自ら否定する形になってしまった事ではないでしょうか。  この映画はラストにて、新たな獲物を見つけた悪党二人組が再びゲームを始めようとする場面で終わるのですが、それに対しても恐怖とか、次なる展開への興味とかいったものを抱けないのです。  極端な話、ゲームに飽きた二人が巻き戻しボタンを押してしまえば、犠牲者も全て元の状態に戻る事になる。  犯した罪も全て「無かった」事に出来るじゃないか、と考えれば、彼らが何をやっても、映画の中で何が起ころうと、興味を持てなくなってしまいます。  この映画に対する不快感だって、劇中で巻き戻しボタンを押されたら否定されてしまう、意味の無い物としか思えません。   監督さんは才能のある人なのだろうし、波長が合えば楽しめる映画なのだろうな、とも感じました。  けれど「劇中で描かれた全てを無価値にしてしまった映画」という意味において、これほど「0点」が相応しい品は他に無いように思えます。
[DVD(字幕)] 0点(2023-07-11 10:55:53)(良:1票)
35.  11ミリオン・ジョブ 《ネタバレ》 
 劇中、一番気になったのは警備員の主人公クリスが「俺は、ちゃんと応戦しましたよ」と上司に話す場面。  実際には、強盗に襲われた際に応戦したのは同僚のトニーであり、クリスは怯えて蹲ってただけなんだと、映画本編にて描かれているんですよね。  つい見栄を張ってしまったという事なのかも知れませんが、何だか「この映画自体、クリスの証言を元に作ってるんだから、当てにならないよ」という、作り手からのメッセージにも思えました。   そもそも本作では「真面目な青年だったクリスが、犯罪に手を染めてしまい悲劇的な末路を辿る」ってストーリーが描かれてる訳だけど、映画本編が終わった後に流れるクリス・ポタミティス本人へのインタビュー映像は、それまでと丸っきり毛色が違っているんです。  明るく笑って犯罪を後悔してる様子なんて無いし、それどころか盗んだ金を隠し持ったままである事を示唆してインタビューが終わるんだから、もう吃驚。  今まで観てきた映画は、あの涙ながらに逮捕された主人公の姿は何だったんだと、映画の終わりに「現実」から冷や水を浴びせられた気分です。   死んだと思われた犬が生きててホッとしてたら「同じように撃たれて死んだと思われたジミーも、実は生きてた」という展開になったりとか、脚本は上手かったし、演者さん達の力量も確かだったんですけどね。  実際は稚拙極まる犯行だったのに、刑事達が勝手に「犯人は頭が良い」「巨大組織の犯行」なんて過大評価しちゃう流れも面白いし、クリス達が逮捕される場面では、金を隠した石像が目の前にあるのに警官達は全く気付かないっていうのも、皮肉なユーモアがあって良い。  刑事目線ではない、犯人目線の映画ならではの魅力が、しっかり描けてたと思います。   だからこそ、もっと堂々とした悪党の主人公として、開き直って描くべきだったというか……  「主人公を悲劇のヒーローみたいに描くのに無理があった」という、前提を間違えたせいで全てが台無しになっちゃったパターンなんでしょうね。   実話を映画にする難しさを感じた一本でした。
[DVD(吹替)] 5点(2023-07-11 10:42:50)
36.  リバー・ランズ・スルー・イット 《ネタバレ》 
 自分は「レジェンド・オブ・フォール」(1994年)を「ブラッド・ピットの俳優人生で、最も美しい瞬間を収めたフィルム」と評しましたが……  その場合、対抗馬として真っ先に思い浮かぶのが本作ですね。  もしかしたら、彼の美しさという意味では本作の方が優れてるかも知れません。   何せ劇中でも「ポールは美しかった」と評されてるし、その言葉が大袈裟でも何でもなく、本当に「美しい」としか思えないんだから凄い。  そんな彼に負けず劣らず、モンタナの川景色も素晴らしいし、水の流れる音やリールが巻かれる音にも癒されるんですよね。  自然の美しさを描く際には、ついつい視覚的な方面にばかり偏ってしまうものですが、本作は「音の美しさ」にも拘りを感じます。   主人公兄弟の父が牧師という事もあり、意外と宗教色が強い内容なんだけど、あまり説教臭さを感じない作りになってるのも嬉しい。  「真面目な兄」のノーマンですら、家業を継いで牧師になったりはしなかったし「破天荒な弟」であるポールの方はといえば、牧師とは真逆のアウトローとして描かれていますからね。  あるいは映画の冒頭にて「宗教と釣りの間に、はっきりとした境が無かった」と語られている通り、釣りという行いそのものが、主人公一家にとっての宗教だったのかも知れませんが……  自分としては、教会で説教を聞いたり祈ったりする必要がある宗派よりも、川で釣りするだけの宗派の方が、ずっと素敵じゃないかと思えて仕方無いです。   そんな本作は終盤にて「自由奔放に生きていたポールの、突然の死」が描かれる訳だけど、そこに大きな驚きは伴わず、観客としても自然と受け入れられるような作りだったのも、凄い事ですよね。  中盤、留置場に迎えに行く場面などで「ポールの危うさ」を描いておいた脚本も上手いと思うし、それより何より「この弟は、いずれ取り返しのつかない事をやらかしてしまう」「ある日ふっと何処かに、いなくなってしまう」と感じさせる人物を演じ切った、ブラッド・ピットが素晴らしい。  これはもう演技力とか、そういうテクニック的な次元の話ではなく、この時代、この映画の中だけに収められた「儚さと眩しさが交ざりあったような、不思議な存在感」があってこその、奇跡のような配役だったと思います。   釣り以外にも「人生で一度だけの兄弟喧嘩」とか「列車用のトンネルを車で通る」とか、忘れ難い場面が色々と備わっているのも、映画としての奥深さ、味わい深さを感じますね。  悲劇が起こる前日、兄のノーマンが「一緒にシカゴに行かないか?」と弟を誘うのも、弟を救いたい兄なりの精一杯の優しさ、そして「俺にはお前は理解出来ないし、お前を変える事も出来ないけど、せめて傍にいてやりたい」という、切ない願いが伝わってくるかのようで、好きな場面。   兄弟の少年時代から、青年時代、そして弟を失った兄が老人になった姿まで、丁寧に描かれた本作品。  子供の頃に観ても、大人になった今観返しても、充分に楽しめたのですが……  いずれ老人になった時に観返したら、どんな感覚を味わえるだろうかと、今から楽しみです。
[DVD(吹替)] 8点(2023-06-27 16:52:15)(良:2票)
37.  耳をすませば(1995) 《ネタバレ》 
 何といっても印象深いのは、図書カードの件。  自分と全く同じ好みをした異性がいるだなんて、正に運命。  天沢くんに惹かれる主人公の気持ちも分かるなぁ……と思っていたら、それは運命でも偶然でも何でもなく、単に「好きになった女の子が読みそうな本を、男が片っ端から借りていただけ」だったと判明して、もう吃驚です。  主人公もコレには引いちゃうんじゃないかなと思っていたら、頬を染めて、ときめいている様子だった事には、更に驚かされましたね。  昔の恋愛映画って、現代の観点からすると「これってストーカーでは?」とツッコミたくなる展開が多いんですが、本作もその一例として挙げる事が出来そう。   監督は近藤喜文ですが、脚本や絵コンテなどは宮崎駿が担当している為か(相変わらずのロリコン映画だなぁ……)と思わせてくれる事にも、何だかほのぼの。  本当に、拘りを持って「如何に主人公の少女を可愛く描くか」を突き詰めたのが伝わってきて、恐らくは性癖的に近しい要素を持っている自分としても「あざとい」「不道徳」と思いつつも、惹かれるものがありました。   そして、これが大事なポイントなのだと思うのですが、本作って少女だけでなく、相手役となる少年も、凄く魅力的に描かれているんですよね。  美男子で、優等生で、特別な才能を持っていて、夢に向かって一直線でと、同性の自分からすると嘘臭く感じるくらいなのですが、そもそも劇中の主人公カップルって「女性から見ると嘘みたいな少女」と「男性から見ると嘘みたいな少年」という組み合わせで成立しているのであり、そこが男女問わず観客の心を掴む要因になっている気がします。   男友達に対し「本当に鈍いわね」と怒っていた主人公が、実は自分の方がずっと鈍感だったと分かる流れも面白かったし「人と違う生き方は、それなりにしんどいぞ。何が起きても誰のせいにも出来ないからね」という父親の台詞も、胸に沁みるものがありました。   もう一つ印象深いのは「自分よりずっと頑張っている奴に、頑張れなんて言えないもん」という台詞。  主人公が天沢君に対して引け目を感じていた理由が、この一言に集約されている感じがして、とても秀逸だと思いましたね。   そもそも本作って、天沢君は典型的な「王子様」キャラだし、そんな彼と、ごく普通の女の子が結ばれるという、極めて少女漫画的なストーリーなんです。  にも拘らず、男である自分が観ても共感を持てるのは、具体的に「彼に見合うような人間になる為に、主人公も頑張る」という姿が描かれてるからなんですね。  だからこそ応援したくなるし、そんな「頑張り」が暴走して、勉強の方が疎かになってしまい、しっかり者な姉との口喧嘩にて、つい強がって「高校なんて行かないから」と言っちゃう辺りも、痛々しいくらいにリアルに感じました。  この辺り(ちゃんと彼の事を家族にも話した方が良いのでは?)と、大人になった今では思ってしまうのですが、子供の頃って、こういう不思議な意固地さがありましたからね。  何だか懐かしい気持ちと、恥ずかしい気持ちを、同時に味わう事が出来ました。   クライマックスの、まだ薄暗い夜明け前。  自転車に二人乗りして「オレだけの秘密の場所」に向かうシークエンスなんか、本当に素晴らしく、それと同時に面映ゆくて、観ていられないくらい。  「それじゃ寒いぞ」と彼女に上着を渡す仕草。  「私も会いたかった」と彼の背中に頭を添えて呟く主人公の姿など、青少年が憧れてしまうシチュエーションが「これでもか!」と詰め込まれているのだから、もう圧倒されちゃいます。  上述の「彼に一方的に幸せにしてもらうだけの女の子ではありたくない」という想いが、坂道での「共同作業」にも表れており、これには(良いカップルだなぁ……)と、素直に祝福したい気持ちになれましたね。  最後には、結婚の約束までしちゃう事すらも、この二人ならば、自然に思えます。  万が一結ばれなかったとしても、一連の出来事の数々は、素敵な初恋の思い出として、いつまでも心の中に残りそう。   脇役であった杉村君と夕子ちゃんの恋の顛末を、エンドロールの中でサラリと描いてみせるのも、御洒落でしたね。  天邪鬼な自分からすると、主人公カップルが眩し過ぎて、まるで幻みたいで、どうにも感情移入しきれない部分もあったりしたのですが……  それを差し引いても、良い映画だったと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2023-06-26 14:06:39)(良:1票)
38.  私がクマにキレた理由 《ネタバレ》 
 クマ映画……ではなく、ラブコメ色の強い「子育て映画」って感じですね。   である以上、自分としては好みなジャンルのはずなのですが……  正直、かなりキツかったです。   まず、主人公のアニーに全く共感出来ないというか「嫌な女」としか思えない作りだったのが痛い。  自分に懐いてるグレイヤーを含めたⅩ家を「研究対象」扱いしてるのとか、流石に引いちゃったし「アニーが正しい、彼女は正論を言っている」っていう話の展開に、説得力が無いんですよね。  理不尽なクビを宣告された後、給料を渡された際には大人しく受け取るのも恰好悪かったし……  「僕を置いてかないで」と、追っかけてくるグレイヤーの姿を見たら、車を止めさせ抱き締めてあげるべきじゃないかって思えるんですが、彼女の場合は、ただ泣いて悲劇のヒロイン気分に浸ってるだけなんです。  本当に(どうして、こんなキャラが主人公なの?)と戸惑うくらい、魅力を感じない。  X家に対し決定的な怒りを抱くキッカケが、上述の「グレイヤーと離れ離れにされた事」ではなく「最後に受け取った給料が少なかった事」って描き方だったのにも、幻滅しちゃいましたね。  序盤にて提示された「アニー・ブラドックとは、どんな人物なのか?」という命題に対し、この映画は明確な結論を出さず「私はアニーを知った」「本当の自分を発見出来た」とか、もっともらしい事を言って誤魔化して終わるんだけど、自分としては「懐いてる子供よりも、給料を大切にしてる人物」としか思えなかったです。   こういう場合、主人公のアンチテーゼとなる人物が準主役のように描かれていれば、そちらに感情移入して楽しむ事も出来るんですけど……  本作は、それも許してくれないんですよね。  唯一それに近いポジションだったミスXは「本当にありがとう」「ごめんなさい」「何もかも貴女の御蔭よ」と手紙で伝え、主人公が全面的に正しいと認めて終わっちゃうんです。  たとえ主人公が良い人だとしても、こんな展開になったら「贔屓の引き倒し」って感じがして引いちゃうもんなのに、本作に至っては主人公が全然良い人に思えなかったんだから、違和感しかありません。    というか、最後にアニーがグレイヤーと会おうとしないのも、納得出来ないんですよね。  「いつかグレイヤーとは別れなきゃいけない」って事は示唆されていましたし「これ以上グレイヤーと会ったら、更に別れが辛くなるから」って事かも知れませんが、それって要するに「アニーは本当は子守りなんてやりたくない、大学院に行きたい」という前提ありきな訳で、結局はアニー側の都合というか、グレイヤーを大切にしていないってだけなんです。  グレイヤーがどんなに彼女を大切に思い、懐いていたとしても、エリート女学生であるアニーにとっては大学院に進む前の「一夏の出来事」「給料を貰って、雇い主を研究対象にする為のアルバイト」にしか過ぎなかったという訳で、そんな女性を主人公にされても困っちゃいます。  せめて「子守りを辞めた後も、グレイヤーに手紙を書く」とか「これ以上グレイヤーが自分に依存しないように、あえて冷たい態度を取って別れてみせる」とか、そういう展開だったなら、印象も違ってたかも知れません。   ナニーカメラの映像をミスXが事前に確認せず、いきなり皆で鑑賞するってのも不自然だったし、その映像にて「大切な家族なのよ」とか何とかアニーが説教してるけど、そういうアニーは母親に嘘ついて騙してた訳で(お前が言うな)としか思えないし……  終いには彼氏役のクリス・エヴァンスにすら、全く魅力を感じなかったというんだから、もう吃驚です。  本当に「女性にとって都合が良いだけの、理想の王子様」ってだけのキャラであり、役柄が駄目だと、どんなに好きな俳優が演じていても駄目なんだなって、彼に教えてもらったような気分。   そんな具合に、終盤のアニーよろしく悪口が止まらないというか(文句を言いたいのは、映画を観てるこっちの方だよ)って気分にさせてくれる一品なのですが……  あえて良かった所を挙げるなら  ・「メリー・ポピンズ」(1964年)をオマージュする場面で、往年の特撮を彷彿とさせる合成だったのは、クスっとした。 ・グレイヤーを演じた子役は可愛らしいし、両親に冷たくされて寂しがる姿は、胸に迫るものがあった。 ・自分ではなくアニーの方に抱き着いた我が子を見て、ショックを受けるミスXの姿など、心理描写は丁寧で上手い。   と、そのくらいになるでしょうか。   明らかに破綻してるってほど作りが拙い訳じゃないし、好きな人は好きなんでしょうけど……  自分の感性には合わない映画でした。
[DVD(吹替)] 3点(2023-06-22 22:41:27)(良:2票)
39.  レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い 《ネタバレ》 
 子供の頃に観て以来、大好きな映画。   改めて再見すると「ヒロインのスザンナに共感出来ない」「主人公トリスタンが家に帰る場面を感動的に描くのは、二回繰り返さず一回に留めて欲しかった」等々、欠点らしき物も見つかるんですが……  (あぁ、やっぱり良いなぁ)って感じる場面の方が多かったですね。   特に「弟であるサミュエルの死」の件は、何度観ても胸に迫るものがあります。  瀕死の弟を抱き起こし「もう大丈夫だ」「家へ帰ろう」と呼びかける兄の姿。  ちっとも大丈夫じゃないし、弟は二度と家へ帰れないという現実が痛いほど分かるだけに、トリスタンの切なる願いと、それが叶わない絶望とが伝わってきて、忘れ難い名場面です。   そんなトリスタンが「神を呪う」と叫んだり、トリスタンの父が「アメリカ先住民を守ろうとしたが、守れなかった軍人」という立場だったりと、本来はキリスト教徒や米国人向けに作られた映画なのでしょうけど……  そのどちらにも該当しない自分でも、充分に面白かったですね。  むしろ、この映画で描かれた世界や歴史、価値観とは無縁であるからこそ、一種のファンタジーとして、夢に浸るような気持ちで楽しめたのかも知れません。   映画の要所要所で手紙が読み上げられるのも、程好いアクセントになってると思うし、序盤にも中盤にもクマを登場させてあるので「最後に主人公は、クマと戦って死ぬ」という、一見すると突飛な結末にも、しっかり納得出来る作りなのも嬉しかったです。  (この主人公の最期は、クマと戦わなきゃ駄目だ。そうじゃなかったら嘘だ)とまで思わせてくれたんだから、本当に凄い。  モンスターパニック物とは毛色が違うけど、これも一種の「クマ映画」と呼べそうですね。   それと、自分は先程「ヒロインのスザンナ」と書きましたが、どちらかといえばイザベル・スーの方が、ヒロインと呼ぶに相応しい気がします。  幼い少女時代から、健気にトリスタンを想い続け、最後は彼の妻となる。  大人になった今観ると「何があっても貴方への気持ちは変わらない」「待ってるわ、どんなに長くなっても」とトリスタンに言ってたスザンナが、彼の兄であるアルフレッドと結婚しちゃう事や「イザベルの死を願ってた」と言い出す事に、流石に付いて行けない気持ちになったりもするんだけど……  それでも楽しめたのは、彼女のアンチテーゼとも言うべき存在として「本当に何があっても、トリスタンを一途に想い続けたイザベル」が登場しているからだと思います。   そんな感じで、アレコレ分析させる余地もあるし、難しい事を考えず「男女の恋愛映画」「家族愛を描いた映画」として感覚的に楽しむのも可能だし、何ていうか、懐の大きい作品なんですよね。  老いて活舌の悪くなった父が、黒板に「(お前に会えて)嬉しい」と書いて、息子との再会を喜ぶ場面も良いし、不遇だった長兄のアルフレッドが、最後に父と弟を救ってオイシイとこ持っていくのも良い。  ブラッド・ピットの俳優人生で、最も美しい瞬間を収めたフィルムってだけでも、充分に価値があると思います。   作中で描かれるモンタナの風景も雄大で、音楽も幻想的な響きがあって、夢心地にさせてくれる。  初めて観た時から、今も変わらずに……  自分にとっての「夢のような映画」と言える一本です。
[DVD(吹替)] 8点(2023-06-22 22:32:08)
40.  スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション 《ネタバレ》 
 ホラー映画の「ファイナル・ガール」になりたい少女が、その願望を叶える為に「殺人鬼」になるという映画。   こうして文章にしてみると、非常に複雑なテーマを扱っているはずなのですが、それをサラッと分かり易く作ってあるのが見事ですね。  思えば初代の時点で主人公シドニーは「注目を浴びたくて嘘をついた」と周りに陰口を叩かれてるし、1&3の犯人も「生き残った被害者に成り済ます」という手口を用いているしで、スクリームシリーズに自然と馴染む「動機」と「トリック」なんです。  そしてなおかつ、犯人であるジルを「主人公シドニーが守るべき、お姫様ポジション」として描いておいたから「犯人の意外性」も高まってるという形。  スクリームの伝統である「共犯がいる」というトリックを活かし「殺人鬼から電話が掛かってくる場面」「襲われる場面」にて、ジルが被害者側にいる事が多い為、観客としても自然と彼女は犯人候補から外して考えちゃいますし、この辺りの描写は本当に上手かったと思います。   理想の「ファイナル・ガール」になる為、ジルが偽装工作する様も面白かったし、傷だらけで報道陣に囲まれ、幸せそうに微笑む姿も良かったですね。  ジルは悪役だし、母親まで殺してるような罪深い子なんだけど、ちゃんと感情移入出来るキャラクターに仕上がってたと思います。  そんなジルの夢破れた死に顔に、彼女をヒーローと称える報道が重なって終わるのも、実に皮肉が効いてて素敵。   そして、なんといっても主人公シドニーの描写が、抜群に良かったです。  「殺人鬼の相手なら任せて」とばかりに、経験を活かして適切な対応を取る様が、凄く恰好良い。  正直、前三作の彼女には全く魅力を感じなかったんですが、本作では大いに成長して「私こそがスクリームの主人公」という貫禄を得ていたように思います。   今の映画のルールで生き残るのは「処女」ではなく「同性愛者」だと語る場面や「冷蔵庫が閉まる度にドッキリ」などの台詞も面白い。  他にも、デューイの着メロが「ビバリーヒルズ・コップ」だったりして、映画オタクがニヤリとしちゃう小ネタが散りばめられているんですよね。  スクリームって「ホラー」や「スラッシャー」や「ミステリー」という以上に「オタク映画」だと思いますし、四作目になってもその芯がブレてなかった事にも、拍手を送りたいです。   とはいえ、良い伝統だけじゃなく悪い伝統も受け継いでおり、特に「シドニーを殺す前に、共犯者を刺し殺す不自然さ」まで1と同じってのは、如何なものかと思えましたが……  まぁ、そういうのも全部ひっくるめてスクリームなんだから、これはもう仕方無いですね。  「ほらっ、またシドニー殺すの忘れてるよ」って、優しくツッコんであげるのが正解なんだと思います。   あとは「前作のキンケイド刑事が出てこないのが寂しい」とか「ジグソウを好きと言ってた女の子が意味深に包丁を手にしていたけど、特に何事も無く殺されて拍子抜け」とか、不満点としてはそのくらいかな?   今回、スクリームシリーズを一気見する前は「1が一番面白く、それに次ぐのが4」という認識だったのですが、今は「4が一番面白い」って評価に変わっちゃいましたね。  十段階で評価する為、点数としては同じ「7点」って形になりましたけど、自分としては1より4の方が好み。   スクリーム2にて「続編はオリジナルを超えられない」という台詞がありましたが……  同じシリーズの続編である4がそれを否定してみせたんだから、実に痛快な話だと思います。  いずれ訪れるであろう「5」の公開も、今から楽しみです。
[DVD(吹替)] 7点(2023-06-21 15:16:09)(良:1票)
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