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イスラエルとパレスチナの泥沼の報復合戦という重々しい題材をここまで見事に娯楽映画に押し上げた手腕は絶賛に値すると思う。時代を表現する褪せた色、殺しのたびにターゲット以外の犠牲者が増えてゆく展開、美女は危険というありふれた、そして正当な刺客の登場に甘い残り香というこれまたありふれた、しかし心にくい展開を次々と見せてゆく。しかし何かひっかかるものがある。この作品はミュンヘン事件を発端とする暴力の連鎖をスリルとサスペンスを盛り上げながら見せてゆく娯楽映画なのに、この問題を真摯に描こうとする、そして政治的な物言いを感じる。だから最後にアレを見せて今に続くこの問題の大きさを表現している。でもそれだったら、そもそもこの問題はミュンヘンが発端ではないと言いたくなる。イスラエル側を悪く描いているように見せても、この問題の根源がパレスチナ側の起こしたミュンヘン人質事件のようになっている。戦車や戦闘機でパレスチナの民間人が大量に殺されるシーンはない。電話爆弾で殺される男のセリフにちょこっと出てくるだけだ。土地の問題。水の問題、宗教の問題、米英の利益目的の介入を描けと言っているのではない。ただ、この映画は中途半端にこの問題に介入しすぎていると思う。
【R&A】さん [映画館(字幕)] 6点(2006-11-21 10:49:44)(良:1票)
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