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《ネタバレ》 男と男が愛し合う様を特別なことと捉えず、人が人を純粋に愛する姿として繊細に描いている。だから愛し合う過程で生まれる苦悩に誰もが共感できる。しかしこの作品はただ許されない愛を描いただけの作品ではない。ゲイに対する偏見が今よりもずっと強い時代の話であるが、一番偏見を持っているのが主人公のイニス自身である。つまりこの作品は、父親から偏見を刷り込まれた男の葛藤の物語を描いた作品。世間が許さなかった愛ではなくイニス自身が許さなかった愛の物語。だのにトラウマとの格闘による苦悩が、愛することで生まれる苦悩のように映ってしまっているので、恋愛映画としてのウケが良いようだが、愛し合った後に見る羊の無残な姿の暗示的描写にしても、別れの後の嗚咽にしても、妻という障害が取り払われても愛にこたえない主人公にしても、すべてがそのことを表わしているにもかかわらず、偏見からくる苦悩ではなく愛の苦悩に置き換え可能な描写に収まってしまっているのが残念。これは冒頭に書いた、人を純粋に愛するその気持ちの繊細な表現をしたことによる弊害なのかもしれない。自分自身の中にある偏見との戦いに敗れた主人公は愛を受け入れられなかった。愛するものの死をその代償のように理解し、永遠に偏見を拭えずに負け続ける悲しい物語。
【R&A】さん [映画館(字幕)] 6点(2006-04-27 13:25:23)(良:4票)
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