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夢や幻想の部分をあり得ない(現実感の無い)映像で見せる映画はいくらでもあるが、鈴木清順の映画は違う。すべてあり得ない世界。とくにこの作品は顕著。同じワンシーンなのにカットごとに登場人物の立ち位置が変わったり背景が変わったりする。前のカットの画は次のカットにはなくなっています。どんなに細かいカット割をしていてもこれは清順流ワンシーンワンカットなのです。(ワンシーンをワンカットで撮るのではなくワンカットがワンシーン。)そしてこれはどんな芸術分野においても出来ない、映画だからこそ出来る表現。従来の観客にやさしい映画文法をぶっ壊したのはゴダール。壊すことによって映画の表現方法の幅を広げ映画にしか出来ないことの可能性を提示した。清順映画はまさにその可能性を最大限に使いつつさらに「美」で被う。この「美」は監督のセンスそのものでまさに天才の技。これまでの作品でも奇天烈なカメラワーク、あり得ない編集、奇妙な演出に驚かされてきたが、仮に奇を衒うことを目的に作ったとしても毎回毎回あっと言わせるなんて凄すぎる。大正浪漫三部作がいかにも”芸術”って雰囲気を持っていますが、私はこの『ピストルオペラ』で気絶しそうになりました。
【R&A】さん 9点(2004-10-22 11:51:34)(良:1票)
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