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スペイン内戦の傷跡は直接的には脱走兵のエピソードとして登場するが、画面は常にその傷跡を映し続けているかのようにどこか寂しげだ。しかし政治的な思想が画面を覆っているかといえばそんなことは全く無く、ただその時代を象徴する風景が映されているだけ。フランケンシュタインの怪物と脱走兵はあきらかに社会に受け入れられずに排除されるべき対象として比喩的な関係で描かれるが、ここでも政治的な思想よりもただただ現実の悲劇性を背景の中に溶け込ませているだけ。その一つ一つの情景にはいろいろな意味があるのかもしれない。でもこんなにも詩的な美しさを見せられたらそんなことはどうでもいいやとさえ思わせる画の数々にうっとりする、そんな見方も許される映画。いや、その見方こそが正しいのかもしれないし、いろいろな意味を感覚的に刺激するパワーをこれらの画が持っているのかもしれない。純真無垢な少女が自らの虚構の世界に怪物を出現させ、自らを傷つける。子供から大人への成長を表現しているのだろうが、そのことがどちらかというと不幸のようにも映る。しかし映画は現実の悲劇性を見せても、けして現実が不幸なものとはとらえていないとも思う。だから深いんだ、この映画は。
【R&A】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-05-01 17:12:34)(良:2票)
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