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3時間6分の完全復元版を見ました。前半はシチリアの美しい情景を、後半は社交界の豪華絢爛な美をバックに、貴族出身のヴィスコンティ自身が投影されているだろうサリーナ公爵を通して、貴族の衰退と自らの老いをリンクさせながら描いてゆく。繁栄すればその後には衰退がある、生きていれば老いてゆく、というヴィスコンティの哲学とも言えるテーマの中で、平民の血をいれるという変革を決断し自由奔放な若きタンクレディに跡を任せるという潔さがまさに滅びの美学。しかしそこには葛藤がある。葛藤を隠して踊る堂々としたワルツの美しいこと。葛藤とは無縁のような性格のタンクレディが新しい時代に相応しいというのもどこか皮肉であるが、情勢によって立場をころっと変えてしまうタンクレディは誰からも好かれる好青年であり、その印象の良さはことさら強調される。若さと老いの対比である。 後半の舞踏会では、本物の貴族の家を使い、食器から装飾品までもがシチリア貴族のものを提供されたものらしい。そこまで拘ってはたして映像で伝わるのかどうかはわかりませんが、風前の灯火のごとく光輝く美がたしかにありました。この「美」の部分だけでも見る価値あり。
【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-04-08 19:39:42)(良:1票)
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