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元日。今年の正月は諸々の理由から親族との新年会が控えめだったため、午後から映画を観始めた。
3年連続で新年一発目は“寅さん”でスタート。三が日特有の空気感と正月モードの思考状態に、「男はつらいよ」が織りなす人情喜劇は、時代を越え、この国の人々の心にぴたりと合う。
長崎の五島列島に渡っていた寅次郎が、ふと郷愁の念に駆られ、故郷浅草柴又に舞い戻る。毎度お決まりの展開ではあるが、寅さんの行方を心配しつつ、同時に彼の帰郷に戦々恐々とする“とらや”の面々の右往左往が面白い。 個人的には、渥美清演じる主人公以上に、森川信演じる“おいちゃん”や、三崎千恵子演じる“おばちゃん”、太宰久雄演じる“タコ社長”らの間の抜けた掛け合いが最高に愉快で、「ああ、今年もとらやに帰ってきたな」と、鑑賞作品6作目にして感じるようになった。 本作のメインストーリーでは、とある事情で“とらや”に下宿する美人人妻(若尾文子)に、例によって寅さんが一目惚れし、トラブルを巻き起こすという、これまたお決まりのパターン。 お決まりの展開自体は良いのだが、本作のマドンナに関わる描写は、少々おざなりだったように思う。売れない小説家の夫に辟易して家を飛び出し、結局何の解決も得られないまま、少々横柄な態度で迎えに来た夫に説得されて帰っていく様子は、仕方がないとはいえ前時代的で、溜飲が下がらない思いだった。 それを見送る“さくら”の神妙な面持ちが表すように、「我を貫けない時代性」こそが、このエピソードが描き出したかったテーマなのかもしれない。しかし、それにしても描き方が類型的で面白みに欠けていた。 「妻は告白する」など、日本映画史を彩る大女優の一人である若尾文子がマドンナ役だっただけに、少し残念だった。 一方で、本作の人情物語要素を補い救っているのは、ある父娘によるオープニングとエピローグであろう。 子を抱えて家に戻ってきた家出娘を宮本信子が演じ、漁村で宿を営む年老いた父親を森繁久彌が演じている。 数年ぶりに戻ってきた娘に対して、心の中では彼女の無事と生まれた孫の存在を愛おしく思いつつ、娘のこれからの人生を考え、あえて厳しく叱る父親の哀愁が印象的だった。 彼らのシークエンスがエピローグにも描き出され、本作が伝えたかったであろう人間関係や家族関係にまつわるテーマが、感動とともにしっかりと帰着している。 メインストーリーのマドンナ像が軽薄な印象だったため、むしろこの父娘のエピソードを主軸に描いたほうが良かったのではないかとさえ思えた。 ともあれ、2025年も寅さんと共に映画ライフがスタート。今年は、悲喜こもごものバラエティーに富んだラインナップを観ていこうと思う。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(邦画)] 7点(2025-01-03 23:50:22)《更新》
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