君たちはどう生きるか(2023) の 鉄腕麗人 さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > キ行
 > 君たちはどう生きるか(2023)
 > 鉄腕麗人さんのレビュー
君たちはどう生きるか(2023) の 鉄腕麗人 さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 君たちはどう生きるか(2023)
製作国
上映時間124分
劇場公開日 2023-07-14
ジャンルドラマ,アドベンチャー,ファンタジー,戦争もの,アニメ,動物もの
レビュー情報
少し唐突な印象も残るくらいにあっさりと映画が終わった。
その時点で、とてもじゃないが言語化はまだできておらず、一抹の戸惑いと、何かしらの感慨深さみたいなものが、感情と脳裏を行き交っている状態の中、少しぼんやりとエンドロールを眺め見ていた。
すると、「作画協力」として、今やこの国のアニメーション文化を牽引する錚々たるスタジオの名前が整列するように並んでいた。
他のアニメスタジオが作画協力に名を連ねること自体は、さほど珍しいことでもないのだろうけれど、スタジオジブリ作品、そして本当に宮崎駿の最後の監督作品になるかもしれない本作のエンドロールにおけるその“整列”には、何か特別な文脈があるように思えた。

そしてはたと気づく、ああそうか本作の「真意」は、クリエイティブの極地に達した創造主からの、新たな創造主たちに向けたメッセージだったのだなと。

宮崎駿、その想像と創造の終着点。
そこには、彼がこの世界に生まれ落ち、いくつもの時代を越えながら吸収してきた数多のクリエイティブの産物で溢れかえっていた。
彼が吸収したものが、いくつものアニメーション作品の中で具現化され、一つ一つの「世界」となって、積み木のように積み上げられていったことをビジュアルによって物語っているようだった。
そしてその世界は、「崩壊」という形で、時を遡って、何も生み出していない無垢な自分自身に継承される。それはまるで、クリエイターの根幹たる魂が「輪廻」していくさまを見ているようだった。


宮崎駿が生み出した「世界」そのものは、創造した自分自身の手によって崩壊という終焉を経て、無に帰す。
ただし、同時にそこからは、色とりどりの無数のインコが飛び立っていく。
この色とりどりのインコたちこそが、エンドロールに名を連ねた新世代(ジブリ以降)のアニメスタジオであり、新たな創造主たち(=クリエイター)を表しているのだろう。

“声真似”をするインコを用いたのは、どこか“ジブリっぽい”アニメ作品を量産しているクリエイターたちへの皮肉めいた批評性、というか明確な“イヤミ”もあるのかもしれない。
その一方で、宮崎駿自身がそうであったように、先人たちの数多のクリエイティブを吸収し、真似て、発信しようとするプロセスは、必然であり、正道であることを暗に伝え、激励しているようにも思えた。


あらゆる側面において、極めて意欲的な作品だったと思う。
ただ、本作においいて、宮崎駿というクリエイターの本質とも言うべき“支配力”や“エゴイズム”が、全盛期同様に満ちていたかというと、そうではなかった。
クリエイティブという活動そのものの性質や限界を考えると、それは至極当然のことだろう。
むしろ、クリエイターとしての限界のその先で生まれた作品だったからこそ、本作はそれに相応しい「崩壊」や「終焉」をエモーショナルに描き切ることができたのだと思う。

創造と崩壊、巡り巡ったその先に、君たちはどんな「世界」を創るのか。
様々な解釈はあろうが、それは、「夢と狂気の王国」築き上げ、積み上げ続けた一人の狂気的なクリエイターの、決して優しくはないが、力強いメッセージだったと思う。
鉄腕麗人さん [映画館(邦画)] 8点(2023-07-20 12:47:44)(良:1票)
鉄腕麗人 さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-04-14名探偵コナン 紺青の拳3レビュー4.54点
2024-04-09デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション[前章]8レビュー7.00点
2024-03-31オッペンハイマー9レビュー6.43点
2024-03-24DUNE デューン/砂の惑星 PART27レビュー6.50点
2024-03-10アルキメデスの大戦8レビュー6.60点
2024-03-02アラジン(2019)7レビュー7.24点
2024-02-24マーベルズ6レビュー4.87点
2024-02-23別れる決心9レビュー8.66点
2024-02-12かがみの孤城6レビュー7.53点
2024-02-12インクレディブル・ファミリー5レビュー7.20点
君たちはどう生きるか(2023)のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS