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《ネタバレ》 夏休みに離れて暮らす母親に一人で会いに行く正男少年と、妻(岸本加世子)の言いつけでそれについていくたけし演じる菊次郎の珍道中を描いたロードムービー。たけし映画としては分かりやすい人情ものとなっている点もそうだが、なにより菊次郎がテレビで見るいつものタレントたけしそのままなのがとっつきやすく、たけし映画の中ではかなり見やすい映画になっているのが良い。風来坊と子供が主役のロードムービーというのはありがちではあるが、競輪場のシーンなどたけしらしい毒のあるギャグも多く、それが人情喜劇として見ると少し異質な感じがして面食らうのだが、見ているうちに慣れてきて、この二人の関係も微笑ましくなってくる。車のカップル(菊次郎と正男がこのカップルと遊んでいる場所が立ち入り禁止区域というオチがなんか好き。)と別れて古びたバス停でずっと来ないバスを待っているシーンの雰囲気が良いし、そこでの菊次郎と正男のやりとりもどことなく切なさが漂っていて印象的だった。菊次郎が盲人のふりをしてヒッチハイクをするシーンやタップダンスが出て来るところは先週に「座頭市」を見ていたのでちょっと嬉しくなってしまった。正男の母の家にたどり着いて、その母が別の家族を作っていたという結末は物悲しいが、その後の海のシーンがいかにもたけしらしい美しさで、ほかにも本作では夏の風景が美しく撮られているのだが、やはりこの海の美しさは監督としてのたけしの真骨頂だろう。落ち込んでいる正男に天使の鈴を渡して慰める菊次郎がなんとも優しくていい。その後のグレート義太夫と井手らっきょとバカなことをして遊ぶシーンがバラエティ番組のようなノリで少々くどさも感じるのだが、劇中で言っているように楽しいことをしていやなことを忘れようという趣旨と思うせいかそこまで気にならなかった。(でも、好みが分かれるのは理解できる。)その近くにある菊次郎の母が入っている施設に向かうのに菊次郎が義太夫と一緒にバイクに乗っているが、おそらくこのシーンはたけしが自身のバイク事故と向き合うために入れたのではと思えてくる。正男にとっても菊次郎にとってもほろ苦い夏の思い出となったわけだが、ラストの菊次郎と正男のやりとりに救われた気持ちになり、とても後味の良い終わり方になっていて、全体的に見れば雑なところもあるかもしれないが、やはり個人的には好きな映画だ。実は本作が初めて見たたけし映画だったのだが、久しぶりに見て、最初に見たのがこの映画で本当に良かったと思えた。久石譲の音楽も映画に良く合っていて名曲であるが、今では本作以外でも耳にすることが多い曲ということもあり、たけしの映画の音楽ではいちばん有名かも。元々この映画の曲ということを知らない人も今では多そうだけど。(2024年11月14日更新)
【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2005-04-02 11:58:07)《更新》
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