噂の女 の まぶぜたろう さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ウ行
 > 噂の女
 > まぶぜたろうさんのレビュー
噂の女 の まぶぜたろう さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 噂の女
製作国
上映時間84分
劇場公開日 1954-06-20
ジャンルドラマ,モノクロ映画
レビュー情報
STINGさんに逆らうようで何なのだが、私はこの「噂の女」がえらく楽しめた。もともと溝口の良さがあんまりわからないせいなのかどうなのか、「赤線地帯」や「祇園の姉妹」に通じる遊郭ものなのだけれど、STINGさんが書かれてるとおり深みに欠けるありきたりなメロドラマなのが、逆に楽しめた理由なのかもしれない。■さらに、物語にみられるそのような底の浅さと共に、固定画面とささやかなパンショットによるリズムや役者の動きが実に軽やかで心地よいのだ。■芸者やら下働きの女中さんらが行き交うのを背景に田中絹代と久我美子を切り返し、久我の不安や孤独を的確に演出した冒頭シーンや、久我美子が夜更けに水を飲みに行くために渡り廊下を歩くシーンのサスペンスや、田中絹代が愛人である大谷友右衛門のまわりをくるくるとその居場所を変えながら甘えるシーン、久我と友右衛門の会話を盗み聞くシーン、さらには舞台上での狂言や日本舞踏の演者をフォローするゆるやかなカメラまでが、なんというか、カメラや役者たちの動きが実にさりげに良い。クレーンでぐぉんごぉんとか流麗な移動ショットや墨絵のごとき宮川タッチとは異なる、軽やかな何かをふと目にしたかのような快感。■もしかしたらこの作品は、遊郭に生きる女性たちの悲哀を描いた作品といったものではなく、久我美子がその軽やかな動きを取り戻すまでを描いた映画であるのかもしれない。■そういえば、この作品のクライマックスで、田中絹代はハサミをふりかざしながら愛人を追いかけ、久我美子はグレーのスカートを床に広げてきりりとカメラをにらんでいた。そのシーンを契機に田中は病に倒れ床に伏せ、久我美子はぽつねんと孤独に佇んでいたはずの玄関先を、黒のタートルネックとショートカットでくるくるくると歩き回るのだ。■関係ないが、久我の台詞「そんなイージーなことを考えるものではないわ」に笑った。そう、すごくイージーで楽しい「噂の女」。溝口ってあんまり…、って人が好きになる映画かもしれまへん。 ■(追記)1954年の久我美子が「イージー」なんて言うわけないわな。「意固地」つってたんだな、きっと。ま、いいけど。
まぶぜたろうさん [映画館(字幕)] 10点(2005-04-30 22:24:57)
まぶぜたろう さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2013-08-23風立ちぬ(2013)10レビュー6.54点
2013-08-18美味しんぼ10レビュー4.35点
2012-10-03アイアン・スカイ10レビュー5.63点
2011-05-25アンノウン(2011)10レビュー5.77点
2011-04-21キラー・インサイド・ミー10レビュー5.40点
2011-04-16エンジェル ウォーズ0レビュー5.73点
2011-02-23ヒア アフター10レビュー6.65点
2011-02-20ザ・タウン10レビュー6.65点
2011-02-18白いリボン0レビュー6.00点
2011-02-17ソーシャル・ネットワーク10レビュー6.55点
噂の女のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS