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《ネタバレ》 「劇中劇」映画は正直あまり得意ではない。どうしても演劇の不自然さが強調されるので、結果的に映画全編が不自然に感じてうまく感情移入できなくなる。劇の台詞に過剰な意味を見出したくなってしまい、映画を観るというよりも、本を読んでる感覚に近くなる。いつでも読み返したりスピードを調整できる本とは違い、映画だとそのまま流れていってしまうので、どうしても物語を咀嚼できず、消化不良感に襲われる。なので途中で、演劇がテーマと気づいた時に「これはまずい映画に手を出した」と後悔した。
しかし、本作の特異な作りは、そんな私にも十分に堪能できるものでした。メインの西島、霧島、岡田の3人は動きも台詞回しも過度に演劇的で実在感がない。一方で他の登場人物の大半は素人を集めたかのような棒読みぞろいか、日本語が限定的な外国人。そのなかで唯一「自然に」演技してるのが三浦透子さんで、彼女が口を開くときに物語が動き始めるのがなぜだか妙に心地よい。正直、西島さんと霧島さんの演技過剰な序盤でリタイア寸前だったのですが、三浦さんの登場で一気に「映画」になったと思う。そうなると三浦さんの運転シーンのプロフェッショナルな所作、棒読みの読み合わせのシーンのリズム、その秩序とリズムをかき乱そうとするトラブルメーカーの岡田さんの絡みががぜん面白くなり、「生きる」ことへの主人公の問いかけが、急に切実さを帯びるのだから面白い。濱口竜介監督のただ者ではない感じを楽しむ事ができました。 村上春樹作品の映画化といえば、イ・チャンドンの傑作『バーニング』がありますが、それに匹敵する作品。ただ、西島さんは、自分が村上作品を読んだときに描く主人公のイメージとはやっぱりギャップが・・・。もっと「空っぽ」感がほしいのです。じゃあ誰がいいのか、と言われてもちょっと浮かばないのですが。 【ころりさん】さん [インターネット(邦画)] 7点(2023-06-17 15:30:49)
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