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《ネタバレ》 レドモンド・バリーの流転の人生。「虚栄の市」のサッカレーの上流階級を冷笑する筆致とキューブリックの人間性を排したような作風が噛み合い不可思議な世界を形作る。理想や模範からは遠いところにいるバリーの見えぬ心に添うこともならず、石の如く転がってゆく人生を眺むるのみだが、それに飽くこともない。ライアン・オニールも演技よりも貌(かお)が求められているのだろう。叔父の家に身を寄せる身分であったバリーが決闘により世に出で、決闘によりそこから退場するまでの年月を立身出世と呼ぶにはあまりに卑俗であり、一粒種に先立たれても天誅としか感じないが、最後の決闘場で僅かに人間らしさを覗かせることで若干の憐憫の情が湧く。もう一つの選択をすれば先は違ったろうが、そうしなかったのは既に自分のまやかしの人生に倦み未練なしとも受け取れるのである。しばしば使用された機材が引き合いに出されるほど美しく撮られた壮麗にして絵画的な画面に陶然となるが、観賞は一度で十分と思えるのはその虚しきライズ・アンド・フォールを今一度とは心が向かぬからか。
【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-02-10 07:13:34)
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