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《ネタバレ》 ミロス・フォアマンは「アマデウス」「恋の掟」がそうであるように、悲劇的な要素を含む時代物でも悲愴にはせず娯楽的、スペインの歴史を仮託した15年以上に及ぶ内容を2時間以内に収め理解しやすい話運び。 若干駆け足気味でも勿体ぶった気取りもなく、物語としてきちんとまとまっている。 ゴヤ役のスカルスガルドは重要な役を目立たずかつ上手に演じる人、北欧の透ける容姿も風貌だけで人目をひくバルデムと好対照。 時代のフォト・ジャーナリスト的な存在であるゴヤの私生活を見せないのは、イネスの庇護者としての立場をやりやすくするためもあるのだろう。 変身を遂げる破戒僧ロレンソは終盤で意地を見せ、彼もまったき極悪人というより時代に翻弄された小悪党なのだと思わせる。 不運なイネスは美しさも正気も失っても求めるものは変わらず、父の黒髪と母の美貌を受け継いだアリシアは変わり果てたイネスの代替の如く映える。 「アマデウス」は皇帝のつたない演奏に家臣がお追従を並べていたけれど、国王カルロス4世(似てるぅ!)のこれまたお上手でない演奏による自作の曲をゴヤが賞賛させられる箇所があって、フォアマンはこういうのがお好きなよう。 高貴な身分でも才には乏しき王族に迎合せざるをえない家来の茶番寸劇。 王妃マリア・ルイサの内面をはからずも暴いた肖像画は、本質を見抜くゴヤの異能の片鱗。 本物のゴヤ作品は末尾に上下二分割で見せる凝りよう。 哀しいはずのラストシーンは何ともいえない美しさ、最後はみごとに芸術的。 子どもらの戯れ歌も祝歌のように聴こえ、イネスは幸せなのかもしれない、欲しかったものをようやく二つともその手にできて。
【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-08-10 07:00:07)
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