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デビュー作「デュエリスト/決闘者」でもキューブリックの「バリー・リンドン」を意識していたCM出身のリドリー・スコットは、「エイリアン」では同じく彼の「2001年宇宙の旅」の洗練された映像を手本としたが(これは「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスも同じで、ルーカスが2年先んじた)、スコットは彼ほど屈折してはいないし「エイリアン」のプロットはシンプルでストレートなものだけれど、特筆すべきはその感覚。 ホラーは特別好まない自分が惹かれるのもそのセンスによる部分が大きい。 スモークやライティングによる効果に加え、ブレットの顔に滴り落ちる水滴やエイリアンの口より流れる水(粘液だけではない)、リプリーの肌に光る汗、脱出艇のジェット噴射などいたる所に水が使われ、有機的な湿った空気が非現実的な世界にリアリティをもたらす。 その中に潜む異生物もまたオーガニック。 悪魔的な画風のH.R.ギーガーが原案者オバノンに送った画集「ネクロノミコン」にあった悪鬼のごときネクロノームⅣをスコットが気に入り、中に人が入れるようリデザインされたものがエイリアンの原型となり(今でもおびただしい数のソフトのジャケットを飾る)、2mのスリムな若者が入った成体は恐ろしくも美しいがわずかしか姿を見せず恐怖を煽る。 7人のクルーを演じる米英混交の俳優もスターはいないがいい役者ばかり、ランバートの場面が削られ魅力的な女性ヒーロー、リプリー(シガーニー・ウィーバー)が際立つことに。 末期のアッシュ(イアン・ホルム)は種保存のためだけに活動するエイリアンの純粋さを称え、怖いのはむしろ彼を送りこんだ企業(=人間)ではと思わせる。 美術や音楽もすばらしく、衝撃的な要素を含みながら優雅でクールな空間に魅了される、監督の「ブレードランナー」とならぶアーティスティックな作品。 「5」を作る予定もあったスコットは、シリーズの「0」にあたる「プロメテウス」を撮り今夏公開する。
【レイン】さん [映画館(字幕)] 10点(2012-03-10 07:00:11)(良:5票)
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