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レビュー情報
本物はまだ「青いターバンの少女」と呼ばれていた頃一度見た。 その絵を愛する女性が想像力を駆使して織った物語は着想はユニークであるものの、小説のヒロイン、フリートはいまひとつ繊細さに欠けており、映画版のグリートに多くを語らせぬのはより神秘的で純粋な存在にしたいのが感じられ、製作者の妻が書いた脚本の方が好ましい。 白磁の肌のスカーレット・ヨハンソンの息使いさえ聞こえそうな、静謐な空間での寡黙な画家フェルメール(コリン・ファース)との交歓。 密やかに編まれた恋とも知れぬ絆。 採光や構図も画家の世界を再現したもので、画家が使用したとされるカメラ・オブスキュラも登場する。 耳飾りと一体化するための痛みを伴った儀式は間接的ながら官能的。 フェルメールとの関係が精神的なものならば肉屋の恋人ピーターは現実的な存在であり、演じるキリアン・マーフィは魅力的だが、映画ではグリートとの恋の結末はぼかされているのは、やはりフェルメールに重きを置くためか。 画家のパトロンである好色なライフェンや画家の心に入れない妻カタリーナも作品を盛り上げる。 小説と一番違うのはラスト。 一家を構えたフリートは想い出の品である耳飾りを金に替えてしまう現実派だが、映画はそれよりもロマンティックな余韻を残しており、地味ながら彼らの思いがまだくすぶっているかのようだ。
【レイン】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-11-05 18:34:16)
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