| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 パルムドール受賞作ということで観ましたが、パルムドールらしい作品だったと思います。少ない登場人物に重いテーマ、そして手持ちカメラの使用や、BGMや効果音を一切使わない手法、ラストシーンに含みを持たせている等々、ヨーロッパ特にフランス映画の影響を強く受けているように感じました。最近のパルムドールでは「ある子供」と非常に似た手法です。
ストーリーはチャウシェスク政権をよく知らないと理解しづらいようですが、こういう時ほど世界史を勉強しておいて良かったと思うときはないです(笑) 違法である堕胎を行うルームメイトを助けるために奔走する主人公。そこで堕胎という女性に特有の行為に直面し、金の問題や闇医者によるレイプなど厳しい現実にも遭います。そこから生まれる男性への不信、将来の不安が一気に溢れだし、彼氏と衝突します。その家族とも衝突します。その家族と友人達が古い価値観しか持っていないからです。 そこを表す食卓での長い会話のシーンは恐らく1カットであり、あそこまでの長回しをするということはそれなりに意味があるのでしょう。その会話に嫌気がさしている主人公の顔が印象的でした。 ラストシーンもかなりシンボリックで、唐突に終わります。ガラスに反射する車のライト。主人公はその車に目を向けます。あの車は希望を、それとも更なる苦難を彼女たちにもたらすのか。恐らく現実は甘くはないでしょう。 暗い顔でテーブルに座っている二人の向こう側には、すりガラスを挟んで裕福な人々がパーティをやっています。その全くの別世界は当時のルーマニア人達が切望していたものなのでしょう。 それから闇医者ベベのカバンから取ったナイフや、彼が忘れていったIDカード、彼氏から借りた300レイなど、回収されていない伏線が少し気になります。 自分がパルムドールに相性がいいのもあるかもしれないけど、傑作です。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-06-13 15:39:52)
Balrog さんの 最近のクチコミ・感想
|