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この奇怪で妖しい魅力こそが映画の魅力であると断言してもいいような、空前絶後の作品であることには間違いは無いが、その魅力を言葉で表現するのは困難である。冒頭、帽子をかぶった煙草を吸う女のクロース・ショットから始まるが、そこで繰り広げられるのはいかがわしいクラブの緩慢な日常である。カメラはあくまでのろのろと動き、人々は歌や踊りを繰り広げる。この序盤に注目すべきは、これこそが主役といっていいようなランプシェードであり、人間よりも目を引きつける存在である。そこから一転して死期の迫るラ・パロマ。鏡を使って一瞬のムダもなく入る医師は一目見るだけで診断してしまう。この荒唐無稽さこそがシュミットの演出の真骨頂で、映画であることの徹底なのである。同様に、母親がラ・パロマと同じくらい若く、息子と違ってフランス語を話すのもおかしいが、だからどうしたというのか。そして脈絡のない山頂でのデュエットは、一度観たら決して忘れることはできまい。なぜ歌うのか、なぜ二人で歌うのか、なぜ場所が山頂なのかは全くわからぬまま、その当惑と共に一生脳裏に刻み込まれる。そしてラストシーン。このマジシャンのセリフがこの映画を端的に表している。決して忘れることのない映画。
【Balrog】さん [映画館(字幕)] 10点(2014-07-15 07:37:57)
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