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《ネタバレ》 前作のラストと綺麗に繋がる『陸軍中野学校』シリーズの最終作、太平洋戦争開戦の裏で暗躍した米英諜報組織と椎名次郎が率いる防諜部隊の暗闘といった感じですか。結論としては、日本国内の英米エージェントのキャラが分散というか多すぎでストーリーが散漫になってしまいました。船越英二の画家スパイなんて「このキャラ、この映画に必要?」と首をかしげたくなりますし、中野学校女子部なんてものまで登場してくる始末です。まあ一番の突っ込みどころというのは、この時期の日本の外交暗号は英米に解読されていてヒューミント(いわば生身の人間によるスパイ活動)に頼る必要がなかったという今じゃ有名な史実です。ほぼ同時期に製作された『トラ・トラ・トラ』ではこの暗号解読の経緯がばっちり織り込まれているので、別に秘密ではなくすでに周知だったと考えられます。まあ実際には英米ともに日本の戦力を舐めていたし英国に至ってはドイツに攻められまくってアジアのことにかまっている場合ではなかった、という感じです。 シリーズを通してみて感じることは、どうも中野学校が果たしていた役割をあえて捻じ曲げたような流れで製作された感じが強いです。中野学校を設立した陸軍は開戦直前まで英米は眼中になく、あくまで仮想敵はソ連です。そしてゾルゲ事件で判るように、日本国内でヒューミントのスパイ活動をしていたのはソ連でした。このシリーズでは中・米・英の三国が登場しますが、まるでこの世に存在しないかのように肝心のソ連が全く登場しません。これこそ左翼全盛だった60年代の時代を感じさせる忖度以外の何者でもないでしょう。
【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2019-07-30 23:38:57)
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