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《ネタバレ》 加藤泰が東映でやれなかったことを松竹でうっぷん晴らししたような凄い映画で、これが東宝では絶対に実現不可能だったでしょう。 佐藤允が演じる主人公が実に奇妙な奴です、邦画の歴史に残るようなヘンな殺人者かもしれません。のっけから女を拷問して犯して滅多突きにして殺す、そしてリストに書かれた女たちが順番に殺されてゆく。とくると『フレンジ―』のような変態殺人映画なのかと思いますが、佐藤允には彼なりの理屈で女たちに正義の鉄槌をくだしているんです。この殺人の動機となる自殺したクリーニング屋の少年と佐藤允の関係がもっともらしい映像で描かれますが、正直さっぱり理解できません。二人は実は同性愛関係だったとすれば、腑に落ちないこともないんですがね。じゃなきゃ、あんなことで飛び降り自殺したことに説明がつきません。またバーのマダムから呉服屋の女将までいる五人の女たちの関係も、何の説明もないので摩訶不思議としか言いようがありません。「おまえたちは寄ってたかって、一番きれいなものをめちゃくちゃに壊しやがって、おまえたちにその権利がどこにある」と佐藤允は怒るんですが、あんたにも人を殺す権利なんてないでしょ、ってお返しします。 というわけでとても奇妙な作品ですけど、カメラワークや雰囲気が独特でつい引き込まれてしまうのです。倍賞千恵子や太宰久雄そして松村達雄といった後に寅さんで常連となる顔ぶれがそろっているのも、山田洋次が脚本に関わっているせいかもしれません。実に救いようのないお話ですけど、これも考えてみると『男はつらいよ』の犯罪バージョンと言えなくもないです。
【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-09-26 19:16:26)
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