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《ネタバレ》 昔の熱量に比べれば枯れてきたようでもあるが、一応の冒険ファンタジー的展開もあって普通に面白く見ていられる。
原作でもない同名の本は年少者向けの道徳読本のようなものだそうで、前に読んだらあまりにまともな内容なので感動というか感激したことがある。この映画は同じ題名で何を表現しているのかと思って見たが、題名の問いに対する答えとして、映画では次のようなものが含まれているかと個人的に思った。 【1】まず、現世を嫌って別世界を夢想するのでなく、現世をよりよく変えていこうとするのが人としての正道であり、そういう前提で自分の生き方を現実的に考えろ、ということかと思った。主人公に関していえば大伯父ではなく父親の後継者になって、技術の平和利用で社会に貢献するという感じのことかと思われる。物語を離れた一般論としてはいいにくいが、要は昔あったような、書を捨て町へ出よう的なことかも知れない。またはアニメの世界に閉じこもって完結してしまうなといったことなど。 【2】もう一つ思ったのは、人の人生は生きた時間の総体を捉える必要があるということである。終わりよければ全てよしというのはまあいいとして、終わりが悪ければ全部ダメとはならない。病気や災害や事故や犯罪や戦争など、早すぎる死とか不遇な死だから人生全体が不幸だったと断定するのでなく、その死の時点までに何をしてきたかにより、結果的に生まれた意味があったと本人が思えば幸せだったことになる。この映画では、塔の世界での出会いによって母子ともそれを確認できた形になっていた。さらに一般化していえば、いつどのように死んだとしても自分の人生に意味があったと思えるよう、悔いのない生き方をしようという意味になるかも知れない。 【3】その他、人間は常に善人でいられるわけでもないが、主人公に関しては庶民の中にある素朴な善意を知ったことで、これに応えていこうとする生き方も期待される。また自分の世界を広げるために友達を作る(異質な者と付き合う)という点は元の本とも共通だったかも知れない。 全体としてはまとまらないが、要はどう生きるかをテーマにそれぞれが考えればいいのだろうと思った。 【その他雑記】 塔の世界はいわゆる来世のようだが、誰かが作ったものという点で、仏教でいう「浄土」のようなものかと個人的には思った(サギも南無阿弥陀仏と言っていた)。しかし仏様が作ったわけでもなく、浄土にしても残念浄土とか失敗浄土というしかないものになっている。住民のうち死者?こそ殺生ができないことになっていたが、飢えたペリカンは餓鬼、肉食インコは地獄の獄卒のようで、それ自体に六界を含むものが浄土ともいえない。 一方でなぜか出生前の魂を生産?養殖?する場でもあったようで、これは良質の魂を現世に供給する意図とすれば前向きな取組みといえなくはない。しかし出荷途中でペリカンに食わせていたのは出生前段階で淘汰選抜していたようでもあり、人の受精時における熾烈な競争と似ているようでもある。人間が作ると来世も現世的にできてしまうのか。 【かっぱ堰】さん [ブルーレイ(邦画)] 6点(2025-03-22 09:16:00)★《新規》★
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