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《ネタバレ》 平和国家として大人気の中米コスタリカを扱ったドキュメンタリーである。外国映画なので最初から最後まで空想的平和主義で通すわけでもなく、平和を目指した努力を現実的な面からも説明している。なお90分版と57分版があるうち90分版を見たが、反戦平和を語りたいだけなら57分の短縮版で間に合うと思われる。
実態として「コスタリカの非武装は米軍の庇護のおかげ」という見解もあるようだが(ナレーションで言っていた)、確かに中米の小国がそれぞれ強力な軍隊を持つ必要などない気もしなくはない。特に中南米など軍隊が内政の不安定要因でしかないとすれば、廃止した方がいいという発想自体は理解できる。その上で周辺地域の国際環境が許すと思えば、強い決意をもって採用しうる方法かも知れない。 現実問題としては集団安全保障や国際社会への働きかけで自国の立場を保全してきたとのことだが、特にアメリカのせいで平和主義が脅かされたことは何度かあったようで、その都度自らの才覚で切り抜けてきた実績があるらしい。また自国の安全保障のあり方をモデルとして他国に提案するとか、中米の平和に貢献する具体的な活動も行ったと紹介されていた(1987ノーベル平和賞)。 映画の最後に安全保障上の根本的な脅威として、コスタリカの対極にある「永久戦争国家」たるアメリカの存在を、アイゼンハワーの退任演説を引き合いに出して指摘していた。確かに危ない国だ。 軍隊の廃止のほか、「中産階級」の重要性についても車の両輪的に強調していた印象がある。1948年の内戦後の社会改革に関して、当時の指導者が「中産階級革命」と表現したというのは少し感動的だった。 中間層が厚ければ社会が安定して民主主義も良好に機能するはずであり、そのために軍隊を廃止する一方で、社会保障や教育に力を入れた福祉国家を作ってきたところが、90年代からの「いわゆる新自由主義」や「グローバリゼーション」による格差拡大で中産階級の存在が脅かされ、社会の根幹までが危うくなっているとの指摘がなされていた。これは多くの国にとって他人事でない、まさにグローバルな問題提起と思われる。 その他の事項として、(アメリカばかりに依存せず)欧州やアジアから開発援助を受けたという場面で日章旗とTOYOTAの看板が映ったので、こんなのをいちいち見せなくていいという気分だった。またその直後に東洋の某大国がサッカースタジアムを寄贈したと説明が出て、このために台湾と断交したわけだなと言いたくなった。 ほか無名の語り手の中で「コスタリカ人も先の見通しは立てる」と言った人物がいたのは、本人の見た目の雰囲気もあって少し笑った。地元民のようでも英語で話していたのはグローバル化に対応できている人と思われる。また終盤では、家族や友人だけでなく近所の知らない人々なども含めて身内同然であって、みながこの国をつくって助け合う仲間だ、と言う人物が出ていたが、こういう人がいるのはまともな社会かも知れないと思った。 【かっぱ堰】さん [DVD(字幕)] 5点(2024-06-15 10:39:53)
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