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《ネタバレ》 わたしたちって、履き古した一足の古い靴下みたいね――。カナダの田舎町で親戚の家に暮らす中年女性モードは、幼いころからリウマチを患い手足が若干不自由なため、ずっと親族の間でたらい回しされていた。「住み込みで働ける家政婦、急募」。自身の境遇を少しでも変えたい彼女は、そんな町の雑貨店に貼られていた広告を見て一大決心をする。自分の力で生きてみたい。チラシに書かれた住所を訪ねてみると、そこは町外れで長年独り暮らしをしているエベレットという男の古びた一軒家だった。粗野で偏屈、何かというと物にあたる彼に戸惑いつつも、行く先のなかったモードはそこで働き始める。給料はろくに支払われず、寝る場所もエベレットと同じ部屋で雑魚寝、何かあれば自分は犬以下だと絶えずなじられるような過酷な生活の中でのモードの唯一の慰めは、ただ絵を描くことだった。家の壁や窓、ポストカードや木の板に彼女の絵筆と想像力は、自由で素朴な生き物たちの姿を描き出す。すると彼女の絵は評判を呼ぶようになり、やがてテレビの取材まで訪れることに。数年後、夫婦となった二人の元にニクソン大統領から彼女の絵を買いたいとの知らせが…。障害を持つ孤独な女性と孤児院育ちの偏屈な男、社会のはみ出し者同士のそんな一組の夫婦のとある愛の形を実話を元に描いた大人のラブ・ストーリー。主演を務めるのは最近アカデミー賞に何度かノミネートされた実力派俳優のサリー・ホーキンスとイーサン・ホーク。とにかくこのベテラン二人の熟達の演技の掛け合いが見応え充分でした。社会のどこにも居場所のなかった二人が偶然一緒に暮らすようになり、やがて夫婦となって、最後はお互いの存在をかけがえのないものとして認めあうまでをとても自然に情感を込めて演じていて、観ていてもう切なくて堪らなかったですね。のどかな田舎の風景をバックに、手押し車に乗せられた妻をほんの少し笑顔を見せながら押していく夫。夫婦の深い愛情が伝わってきて思わず涙が出そうになりました。今にも潰れそうな二人のお家のあちこちに描かれたモードの絵も、二人の生活にほのぼのとした輝きを与えてくれている。そりゃみんな彼女の絵を買いたくなりますわ~。内容的にはあまりにも王道過ぎて若干物足りなく感じる部分もありますが、社会の片隅に人知れず咲いた一輪の花のような、そんな味わい深いラブストーリーの秀作でありました。
【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 7点(2019-05-14 22:19:45)(良:2票)
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