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《ネタバレ》 彼の名は、フレッド・ロジャース。アメリカで30年以上にわたり人気を博してきた子供向け長寿番組で、ずっとMCを務めてきた名司会者だ。優しい語り口と明るい歌声、そして何よりあくまで子供の視点に立ったスタンスで幅広い世代から親しまれてきた。そんな彼はある日、とある社会派ジャーナリストから取材を受けることに。ロイド・ボーゲルと名乗る彼は、早速フレッドの仕事場であるテレビのスタジオへとやってくる。だが、彼は明らかに顔面を殴られた痣があり、何とも不機嫌な様子で早く取材を終わらしたがっていた。いたく興味を惹かれたフレッドは、逆に彼に質問を浴びせかける。聞き出してみると、なんと彼は姉の結婚式で久しぶりに会った実の父親と激しい口論となり、殴り合いにまで発展してしまったのだという。取材はそのまま終わったものの、彼のことが気になったフレッドは後日、取材の延長ということで彼と再び会うことに。子供のように純粋な好奇心から話を聞くフレッドに、ロイドは淡々と語り始める。父が過去、幼かった自分と病弱な母を残し、他の女の元へと逃げ出してしまったことを――。実話を元に、アメリカでもっとも有名な人気司会者と家族との確執を抱えた中年ジャーナリストとの交流を暖かな目線で見つめたヒューマン・ドラマ。アメリカでは知らない人はいないとも言われるそんな人気司会者を演じるのはベテラン俳優トム・ハンクスで、なんと20年ぶりにアカデミー賞にノミネートされたということで今回鑑賞してみました。というか、そんなに久しぶりのノミネートなんですね。なんか毎年受賞してるくらいのイメージだったんですけど、それは僕の思い込みでした。確かに長年のキャリアに裏打ちされたであろう彼の演技は抜群の安定感で、このフレッド・ロジャースという人物を知らない僕でも「ああ、確かにこの人は長年多くの人に親しまれたんだろうなぁ、こんなに大らかで見ているだけで癒される人は滅多にいないだろう」と思わせるほどの説得力がありますね。そんな彼が、ある日偶然出会った短気で偏屈な中年男の心を徐々に開いてゆくというのはベタですけど、なかなか面白かったです。特に、この大らかな人物の周りの人が「あれで昔は短気だったのよ」と語らせるとこもさりげなくて巧い。全体的に子供向け番組のような演出を差し挟んでくるのもそこまで違和感なく、逆にこの地味なお話を魅力溢れる物語へと昇華させることに成功している。うん、観終わるころにはほっこりしている自分がいましたわ。まぁお話としてはあまりにもストレートで若干パンチに欠ける気がしなくもないですが、なかなか良かったんじゃないでしょうか。監督は、前作でもそんなうまくいかない人生に疲れた人たちを終始暖かな目線で見つめたマニエル・ヘラー。この人の作風は僕の好みと合うようなので、これからも追いかけていこうと思います。
【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 7点(2021-10-01 07:02:29)
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