ひらいて の かたゆき さんのクチコミ・感想

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ひらいて の かたゆき さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ひらいて
製作国
上映時間121分
劇場公開日 2021-10-22
ジャンルドラマ,青春もの,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 彼女の名は、木村愛。何処にでもいるような普通の女子高生だ。いや、普通より少し上のクラスにいると言った方が正しい。成績優秀で推薦で早々に進路も決めてしまった彼女は、誰もが忙しく過ごす高校3年生となった今も文化祭の準備に精を出している。見た目も可愛く、ファッションセンスも悪くない。明るく実行力もある愛は、自他ともに認めるクラスの人気者。ところが彼女には誰も知らない秘密が一つだけ。それはクラスメイトの地味で目立たない男の子、たとえくんに密かに想いを寄せていることだった。2年前の高校1年生だったころから、愛は彼のことが気になって仕方ない。でも、何処か他人を避け自分だけの世界に生きているような彼に愛は近づくことが出来ない。そんなある日、愛はふとしたきっかけでたとえくんと密かに交際している彼女がいるのを知ってしまうのだった。美雪。同じく3年生で糖尿病を患う地味で目立たない女の子。そんなの、絶対ありえない――。好きな人にまっすぐで全てが自分の思い通りにならなければ許せない女子高生、愛の暴走がいま始まる……。原作は、自分が長年愛読する芥川賞作家、綿矢りさ。本作は彼女の小説の中でも一、二を争うくらい好きな作品なので今回期待して鑑賞してみました。綿矢りさ原作と言えば大九明子によるポップでキュートなミュージカル風映画が見事な出来栄えだったので、こういう淡々とした青春ドラマぽい感じに最初は若干違和感。それでもちゃんと見応えのある作品に仕上がっていたのは、やはり原作の素晴らしさの賜物。大九監督だと、恐らくもっとぶっ飛んだ内容になるはずだろうけど、こういう淡々とした雰囲気も良いですね。そんな静かな世界で繰り広げられる、この愛ちゃんの暴走っぷりが最高でした。好きな彼と相思相愛になりたいが余り、その彼女を寝取っちゃうってどんな発想やねん(笑)。でもこの愛ちゃんならそーゆ―こともしかねないと思わせるところが巧い。対するたとえくんの彼女、美雪ちゃんのいかにも大人しいキャラ造形も見事で、彼のことが好きなのに自分に触れてこないことへの不満から愛ちゃんに押し切られちゃう心理も非常に丁寧に描かれていて大変グッド。2人が身体を重ね合わせるシーンは、お互いの複雑な想いがエロティックに交錯する出色の名場面でした。終わったあと、美雪の身体に触れた手を石鹸で念入りに洗う愛ちゃんが何気に好き。青春の美しさと危うさ、そして残酷さをリアルかつリリカルに綴ったなかなかの良作と言っていいんじゃないでしょうか。ただ後半、愛ちゃんがたとえくんの家に乗り込んじゃうシーンからは何となく蛇足感がありました。特に折り鶴の木の下で愛ちゃんがたとえくんに告白するシーンは、撮り方とかピンクの色の感じ、そして風の使い方などかなり岩井俊二色が出過ぎていて、せっかくここまでオリジナリティあったのにと勿体ないです。とは言え、将来が楽しみな才能にまた一つ出会うことが出来ました。8点!
かたゆきさん [DVD(字幕)] 8点(2023-04-13 09:35:01)(良:1票)
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