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《ネタバレ》 南北戦争真っただ中のアメリカ南部の田舎町。白人に誘拐され綿花農場で奴隷として働く女性エデンは、横柄な白人に日々虫けらのような酷い扱いを受けていた。日中はいつ倒れてもおかしくない過酷な労働を強いられ、夜は白人の主人に無理やり夜の相手をさせられる。少しでも抵抗しようものなら激しい制裁を受けることに。北軍が勝利しまがりなりにも奴隷が解放されるのは、まだ先の話。エデンは、生まれてくる時代を間違えたのだと自分を納得させるしかない。それでも彼女は希望を捨てず、残してきた大事なもののため密かに農場脱出を図るのだが――。一方、現代のニューヨークに生きる社会学者ヴェロニカは、黒人で女性という自身のアイデンティティ解放のために日々活動を続けている。優しい夫にも支えられ、愛する娘と充実した毎日を送るヴェロニカ。だが、そんな彼女を疎ましく思っている保守派のまなざしは、彼女が成功すればするほどより厳しさを増してゆく。ある日、仲の良い友人たちと久しぶりのディナーを楽しんでいたヴェロニカに怪しい影が忍び寄ってくる……。過酷な時代を生きたある無名の黒人奴隷と現代に華々しく生きる黒人社会学者、一見何の繋がりもない二つの物語はいつどこで交わることになるのか?実力派女優ジャネール・モネイがそんな異なる時代を生きる女性を演じたことでも話題となったサスペンス・スリラー。とにかくこの監督のセンスに尽きると思います!冒頭、不穏な音楽をバックにワンカットで撮られた農場のシーンで掴みはバッチリ。これから何かとてつもなく嫌なことが起こりそうな息詰まるようなこの空気感を、開始10分で作り出せるのは大したものだと思います。その後、主人公の黒人奴隷としての不条理極まりない現実を延々描いた後で、突如として現代の洗練されたニューヨークへと舞台が移るのも素晴らしい演出。正反対の立場にいる女性たちを同じ女優が演じることで、これまで黒人が受けてきた不当な差別の歴史を浮き彫りにさせることに成功している。彼女たちは違う時代に生を受けた生まれ変わりなのか――。そう思わせといてからのことの真相の明かし方ももはやセンスしか感じません(スマホの音!)。まぁ肝心の真相は荒唐無稽でリアリティ皆無のものだったのですが、ここまでセンス良く見せられると素直に受け入れられちゃいますね。社会派映画として充分良く出来ているのに、サスペンス映画としても普通に面白いのも大変グッド。主人公に徐々に迫ってくる危機の見せ方なんてぞくぞくする怖さがありました。特にタクシーの中で主人公が暴行を受けてるのに、隣を走る友人たちは知らずにはしゃいでるシーンは「あぁぁぁ!」と変な声が出ちゃいましたわ。この監督の知的で品のいいセンスはこれから要注目。次作が楽しみな才能にまた出会えてしまいました。
【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 8点(2023-02-10 07:31:08)
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