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《ネタバレ》 新たに誕生した小さなウィルスが世界中で猛威を振るっていた2021年、株式市場でも史上類をみない大きな事件が起こっていた。それは「ゲームストップ株騒動」。新型コロナウィルスにより世界中にロックダウンが宣告されるなか、ゲームソフトの販売や買取を主な業務とするこの決して大きくはない会社の株が市場の注目を集めていた。何故なら〝空売り〟を主な収益源とするウォール街の大手ヘッジファンドがこのもはや潰れかけの会社を新たなターゲットに選んだからだ。金融工学という高度な手法を駆使する彼らは、これまでこの先確実に値下がりするだろう株に目をつけては莫大な利益を上げていた。株が値下がりすればするほど利益が増すという彼らの巧妙な手口は、まさにハゲタカ・ファンドと呼ぶにふさわしい汚いものだった。「俺たちの思い出がウォール街の金持ちたちに潰されようとしている!」――。ネット上でそんな声をあげはじめたのは、かつてゲームストップでゲームを売り買いしていたいわゆるオタクたち。投資系ユーチューバーであるキティの呼びかけに賛同した彼らは、ゲームストップの株価を少しでも上げようと皆で買い始めるのだった、そんな彼らに、かつて投資ファンドのせいで人生をめちゃくちゃにされた人々や富裕層の横暴に我慢ならない一般庶民も賛同。確実に値下がりすると思われていたゲームストップ株は徐々に上昇しはじめる。莫大な資金力を有する大手ヘッジファンドと彼らに草の根運動で抵抗する一般投資家たち。果たして勝負の行方は?実話を基に描かれるのは、そんな株式市場で行われた空前のバトルをコミカルに描いた経済ドラマだ。恥ずかしながらこのゲームストップ株騒動というものを今回初めて知ったのだが、こんなまるで漫画のような出来事が数年前に起こっていたなんてなかなかに衝撃的だった。金こそが全て、庶民の生活などなんとも思っていないまさにハゲタカのような大手ヘッジファンドに無謀な戦いを挑み、何度も挫けそうになりながらも最後はみんなで力を合わせて……なんてまさに少年ジャンプの経済版のようではないか。いやはや、なんという痛快なお話なのだろう。リーマンショック以来、強欲の名をほしいままにしてきたウォール街の富裕層にずっと我慢がならなかった自分としては、まさに溜飲が下がる思いだ。ただ、1本の映画としてみれば、そこまでカタルシスを得られなかったのが残念。事実を描くことに拘り過ぎたのか、もう少しフィクションとして面白く見せる工夫をしてほしかった。潰れかけのゲームショップを救うオタクたちという、とても魅力的な題材をもう少しフューチャーすべきだったのでは。とても興味深い内容だっただけに、惜しい。
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