《ネタバレ》　子供の頃から続けてきたフィギアスケートの大会を間近に控え、寝る間も惜しんで練習に打ち込む高校生エマ。良い結果が出せずプレッシャーに押しつぶされそうになっていた彼女はある日、気分転換にと訪れた友達のホームパーティーで〝その人〟に出逢ってしまうのだった。魅惑的な目で自分を見つめてくる彼女の名は、ミンミ。一瞬で恋に落ちたエマはそのまま2人でパーティーを抜け出し、一週間後には世界で一番幸せな恋人同士となっていた。次第に練習にも身が入らなくなってゆくエマ。リンクでの失敗も増え、コーチからはますます厳しい言葉がとぶ。一方、恋人のミンミもまた誰も知らない家族の問題を抱えていて――。そんな2人を暖かく見守る、ミンミの親友ロンコ。恋愛やセックスに興味津々の彼女は、とにかく運命の出会いを求めて様々なパーティーに出かけてゆくのだが、空気の読めない自分の言動のせいでいつも失敗してばかり。果たして3人の恋と青春の行方は？フィンランドの地方都市を舞台に、恋やセックスに思い悩む女の子たちの等身大の青春をポップに描いたガールズ・ムービー。そんなシンプルなストーリーに全編を彩る軽快な音楽、そして色彩豊かなカラフルな映像と、一言で言うならこれまで幾度となく作られてきたセンス系リリカル映画の王道。さすがにベタすぎて新味なさすぎじゃないとも思ったけど、主要登場人物であるこの3人の女の子たちが思いのほか魅力的で、途中からはかなり魅入っちゃってる自分がいました。初めて付き合った恋人といつも一緒にいたい！私の人生の全て！なんて思ってしまう彼女たちの初々しさは、普遍的であるがゆえに胸に刺さるものがありますね。でも、当然のように様々な問題から2人は擦れ違ってゆき、破局の危機を迎えてしまう。あんなに永遠だと信じていたのに……。誰もが長い人生できっと体験するであろうこの切なさは、どんな性自認を持った人でも同じというシンプルなメッセージもいたく共感。とは言え、やはりシンプル過ぎてこれまでさんざん作られてきた百合萌え映画と何が違うねんと言われると弱いところ。でも、本作の新しいところはそんな2人の親友であるロンコの存在にある。恋愛にもセックスにも物凄く興味があるのに、頭でっかちになり過ぎていつも失敗してしまう彼女。そんな彼女の前に運命の出会いかも知れない男の子が現れる。でも、結局上手くいかなくて、最後、彼女は自分がアセクシャルかもしれないことに気づく。正直、エマとミンミの2人だけの物語として完結していたら、自分もよくある百合映画として特に印象に残らなかったかも知れない。でも、そんな彼女の存在が物語に違う深みを与えている。この監督の暖かな視線は非常に良いですね。フルーツパーラーでちょこんと座る2人の女の子や夜の公園でダンスを踊る少女たちというキュートな画も良いセンスしている。最後、それぞれの道を歩みだした3人が笑顔で話すパーティーのシーンも心地良い余韻を残してくれます。うん、良質のガールズピクチャーでありました。このそのまんまの超ダサい邦題以外は！

【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 8点（2025-03-06 11:01:21）★《新規》★