ピアニスト の かたゆき さんのクチコミ・感想

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ピアニスト の かたゆき さんのクチコミ・感想
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《ネタバレ》 私は音楽一筋で生きてきたわ。覚えておいて、私には感情も欲望もないの。あるとしても、必ず最後は知性が勝る――。保守的で厳格な母親と2人で暮らし、ほとんど恋愛経験もないままこれまでずっと独身を通して生きてきた、40過ぎの生真面目な音楽教師エリカ。それでも抑えきれない性欲を満足させるため、一人で個室ビデオ店でポルノを鑑賞したり、他人のカーセックスを覗き見ながら放尿したりという、誰も知らない顔を隠し持っていた。そんな空しい日々を過ごすエリカの元に、ある日、情熱的な青年ワルターがわざわざ彼女にピアノが習いたいと名乗り出るのだった。いかにも軽佻浮薄な現代の若者といった彼に最初は反発を覚えた彼女だったが、授業を進めていくうちに、突然愛の告白をされてしまう。そして、それをきっかけに、エリカの長年心の奥底に溜め込んだ暗い澱のような感情と欲望が徐々に暴走を始めてしまうのだった…。恋愛にも、セックスにも、まして男にもなれていない、そんな誇り高い中年女性エリカの愛と性欲とプライドがいびつに交錯する、いかにもミヒャエル・ハネケ監督らしい歪んだラブストーリーでした。この監督の作品は何作か観てきて、その人間の酷い悪意や欲望、理不尽な暴力を圧倒的な負のエネルギーで映像化する作風には心底うんざりさせられることもしばしばだけど、それでもその高い芸術性は認めざるをえないので、カンヌで初のグランプリを取ったという本作を今回鑑賞してみました。うん、相変わらず鬱ですね(笑)。もう最後まで絶対に人に見られたくないような人間の恥部を、これでもかこれでもかと見せ付けてくれます。愛する青年のモノを欲望のままに咥えたものの馴れていないせいで思わず吐いちゃったエリカが、怒った青年に「お前、口が臭いんだよ!」と追い出されふらふらになりながら歩いて去るシーンなんて、あまりにも鬱過ぎて見てるこっちが吐きそうです。人間なんて芸術だなんだと言いながら、一皮向けば誰しもこんなもの…、なんという絶望的でシニカルな思想に貫かれた映画なのでしょう。それでも、最後にエリカの取った行動には、微かだけど(本当に本当に微かだけどッ笑)感情よりも知性が勝った人間の高尚な姿を見たような気がします。
かたゆきさん [DVD(字幕)] 7点(2014-07-15 21:27:51)
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