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《ネタバレ》 映画ファンを名乗りながら今更「エレファント・マン」を見ました。恥ずかしながら私は「どうせファンタジーみたいなおとぎ話でしょ?」って今日まで思っていました。
デヴィッド・リンチ作品といえばやはり名作(迷作?)「イレイザーヘッド」が思い出されますが、本作もモノクロで時折イレイザーヘッドを思わせるようなシーンもあって意味深な気持ちにさせてくれます。また、壁の絵や一つ目の頭巾などの雰囲気もとても素晴らしく、序盤から映画に引き込まれる演出はなかなか素晴らしいです。エレファント・マンことジョン・メリック(ジョン・ハート)の半生を綴る本編は基本的にリアル志向で無理な描写がありません。むしろ的確に彼の心理描写を作品に落とし込むことに注力しているようで、物語の進行もドラマチックというよりは淡々とした印象でした。 やはりトレーヴェス博士(アンソニー・ホプキンス)と彼の妻(ハンナ・ゴードン)、舞台女優のケンドール夫人(アン・バンクロフト)、婦長(ウェンディ・ヒラー)らが優しくて目頭が熱くなります。対するバイツ(フレディ・ジョーンズ)や夜警の男(マイケル・エルフィック)らの仕打ちは極めて残酷で、こちらは違う意味で目頭が熱くなります。いじめのシーンは容赦がなく見ごたえ十分ですが、ここでもメリックは告げ口をせずこの人物の人の好さがにじみ出ます。奇形者の見世物興行のシーンは痛々しく描かれていますが、実際には和気藹々と人気者街道を歩んでいたようで、彼のIQの高さとポジティブ思考、そして人の好さで意外ときちんと過ごしていたことが伺えます。(映画ではそう描かれていませんが) この映画のクライマックスはやはり駅で叫ぶシーンだと思います。「僕は象人間じゃない、これでも人間なんだ」”これでも”という言葉が涙を誘います。とにかくメリックの人柄が素晴らしくて、神様は心底残酷なことをなさると感じた映画です。この後に配置されている劇場のシーンでは、、演者でなくメリックのほうがスタンディングオベーションを受けますが、これもなかなか泣かせるシーンに仕上がっています。 ある程度事実に基づいているようですが、映画版のラストは非常に素晴らしいです。頭が大きすぎて横になると窒息の懸念がある彼が「いつかは普通の人のように横になってベッドで眠ってみたい」という願望を実践、そのまま亡くなってしまったであろうラストカットが素晴らしい。ストーリー上は安住の部屋を与えられ、友人には人並みに扱われ、初めての演劇で高揚していたようで、普通にベッドで眠ろうとする彼の仕草が本当に健気で泣けます。(演出上は亡くなったかどうかは不明ですが、”横なって寝てはならない”という伏線から考えると亡くなったと考えたほうが自然) 「もしも自分が化け物のような外見だったら?」と思うと生きた心地がしません。五体満足で身体の各部位が正しい位置についているだけで幸せだし、コンプレックスなど些細な事だと感じられる映画です。多少事実と異なる点はあるものの彼の心情がとても良く描かれていて素晴らしい作品でした。一生に一度は見ておくべき名作。 【アラジン2014】さん [インターネット(字幕)] 9点(2024-11-19 16:41:42)
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