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《ネタバレ》 専門用語が次々に現れ、時系列を交錯させ、培ってきた技法を総動員させたクリストファー・ノーランの力作だが彼のベストではない。
恐らく半分以上は話を理解できなかっただろうし、あれほどの会話劇で本国アメリカで記録的な大ヒットしたことは、ノーランのブランドがなせる業なのか、核兵器を巡る世界情勢の重大な危機に関心が大きいのか、その両方だろう。 唯一の被爆国である日本にとって胸糞悪いのは事実で、戦争という熱狂によって人道・倫理観のブレーキが壊れ、戦場が兵器の実験場に変わり、新たな秩序と発明が生み出されていく。 戦場とは遠い世界でチェスの駒を操れそうな位置にあり、やがて自分自身も利用されて棄てられていく様が同じ天才学者を描いた『イミテーション・ゲーム』に通じるものがある。 国のエゴと利害の一致によって身動きできなくなっていく理不尽と葛藤と矛盾がオッペンハイマーに強烈なストレスとして画面に発露される。 広島と長崎の投下シーンが一切ないのは予め知っていた。 これは日本への配慮とも言えるし、挿入したとしても"オッペンハイマーとは何か"をぼかしてしまうので妥当とも言える。 英雄でもなく、悲劇の人物でもなく、功績と名誉を回復しても、これらは彼以外の大多数の所有物でしかなく、本人がどう思っているのかは知る由もない。 彼がいなくても、誰かが原爆を作り、どこかで投下されていただろう。 全人類を破滅させることができる発明が世に出てしまった以上、もう止めることはできない。 昨今に論議を巻き起こしているAIが世に出てしまったように。 現実、国の最高権力者という名の狂人が核兵器というキャスティングボードを握っている。 話し合いで解決できない相手に我々だったらどう向き合うか? もはや「核兵器について議論しない」という日和見な選択肢は残されていない。 【Cinecdocke】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-03-30 22:40:46)
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